【インプレッション・リポート】
シボレー「キャプティバ」

Text by 会田 肇


 ミニバンはちょっと大きいけれど、広い室内空間は欲しい。そんなニーズにピッタリなのが先のソウルモーターショーで初公開されたシボレー「キャプティバ」だ。ソウルモーターショーを取材した際、このキャプティバに試乗する機会を得た。今回はその試乗リポートをお届けしたい。

 まずはキャプティバが登場した背景から簡単に解説しておこう。これまでGMは2002年に大宇(デーウ)自動車の大部分を買収し、韓国では「GM大宇」として展開してきた。キャプティバはそのGM大宇によって生産されていた人気SUV「ウィンストーム」の後継車にあたる。しかし、GM大宇も今年1月に廃止。代わって3月より導入されたブランドがシボレーで、キャプティバはそのブランドを冠した初のニューカマーとして登場した。

 3列シートを備えたMPVとしても使えるSUVとしての性格も持ち合わせ、韓国内では2.4リッター ガソリン車と、2.2リッター ターボディーゼルの2つのエンジンがラインアップされた。トランスミッションはすべて6速ATが組み合わされ、世界的には3リッター V6モデルもラインアップされるようだ。世界110カ国で、4つのブランドで展開を予定しているグローバルカーで、日本市場向けには今年7月より2.4リッター ガソリンモデルを導入することがすでに決定している。

試乗したキャプティバ 2.2リッター ディーゼルターボ。走行している姿は前からも後からも堂々として頼もしい。妙に大きさを感じさせないデザインも好ましく感じた体験試乗用に用意された3台はすべて2.2リッター ターボディーゼル車。このPyeonghwanuri公園は、北朝鮮まで目と鼻の先の場所

 今回試乗できたのは2.2リッター ディーゼルターボ車だった。驚いたのはその静粛性の高さ。アイドリング時からアクセルを踏み込んだときまでは、多少ディーゼル特有のガラガラ感を感じたものの、一度走り出してしまえばほとんど感じなくなる。高速域に入ってもノイズレベルはそれほど高くならず、後席に座っていた同乗者とも多少声を大きくした程度で会話が普通にできたほどだ。強いて言えば、加速時に多少の振動が伝わってきた感じはした。でも、それも気になるほどではない。仮にガソリン車だったなら、十分に満足できるレベルにあったのではないかと思う。

 キャプティバは通常は2WD(FF)で走り、路面の状況に応じて自動的に52:48にまでトルク配分してくれるのだと言う。2.4リッター ガソリン車で1868kgという重量から推察すると、ディーゼルエンジン+4WDということもあり、重量は2t近くになっているはず。しかし、それにもかかわらず、加速感は十分なものだった。とくに高速域での加速感はディーゼル車であることを意識させず、重いボディーを軽々と引っ張り上げる。ターボの力も大きいとは思うが、一緒に走ったキャプティバに後れを取ってしまったときもしっかり加速してすぐに追いつくことができたほどだ。

 キャプティバにはエコモードも採用されている。説明ではエコモードに切り替えるとシフトスケジュールとエンジンパワーをコントロールし、燃料消費を抑えるようプログラムされていると言う。実際にこのボタンを押して走行すると、ノーマル状態と比較して、アクセルを踏み込んでも加速が鈍くなるような感じを受ける。パワー不足というよりも、燃料を絞っているなぁ、という感じ。傾斜がきつい道路でこのモードを使うとちょっとツライかもしれないが、クルージングがメインの場合や、パワーを必要としない走行に使うと有効なモードと感じた。

 乗り心地は低速時はややゴツゴツとした感触があったけれど、通常速度域に達するとそのショックをうまく吸収してくれるようになる。ステアリングフィールは多少軽めだけれど、高速道路では直進性もしっかり。そのため、約1時間程度の走行でも疲れを感じることはなく、むしろ運転することの楽しさを感じたほど。それほど軽快な動きを見せたのだ。

 室内の広さは十分なスペース。前席は余裕の広さを感じ、セカンドシートもニースペースがしっかりと確保されている。さすがにサードシートは窮屈感があるが、シート位置が高めなので子供が座っても開放感は十分確保されそうだ。使い勝手で便利と感じたのはシートアレンジがとても簡単だったこと。「イージーテック」と呼ばれる新機構の採用により、カーゴスペースにあるノブを引くとアッという間にサードシートのヘッドレストがたたまれ収納完了。これだけでも相当広いラゲッジルームが確保されるわけだが、セカンドシートをたためばさらに広大なスペースが出現する。しかも畳んだ状態は完全なフラット状態になり、隙間もほぼゼロ! これならカーゴスペースとしての実用性も十分に高い。

ダッシュボードからドアトリムに至るまで硬めのソフトパッドで覆われ、手触り感はかなり上質な感じ。センターのシルバー加飾がややチープさを感じたキャプティバのコンソール部分。シフトレバーの右側にあるのがエコモードボタン。その下には電動パーキングブレーキのスイッチが見える
シートは本革仕様で、見た目は平坦な印象を受けるが、座った感じのホールド感はわるくなかった。前席は十分な広さがあり、セカンドシートもまずまずのスペースを持つ。写真は左からフロントシート、セカンドシート、サードシート
すべてのシートを倒した状態。前方に行くに従い、若干高さが減少するが、床面がフラットになっているので使い勝手はかなりよい。開口部も十分な広さがあったシート横にあるレバーを押すだけで、シートが折りたたまれ前方に倒れる。ワンタッチで操作できるので、サードシートからも簡単に“脱出”できる

 ところで、目的地まではカーナビによる誘導が行われた。音声案内については韓国語で行われたため、その意味を把握することはできず。ただ、分岐ポイントに近づくと音声での案内と合わせて詳細な車線ガイドも行われるなど、日本で使うカーナビと同様の案内が行われていたようだ。色使いもカラフルで見やすく、モニターの輝度も十分だったため、太陽光が射し込んでも見づらくなるようなことはなかった。

目的地まではこのカーナビを使って誘導が行われた。高速道路への入口案内も行われるほか、車線ガイドや高速道路走行中はIC(インターチェンジ)のリスト表示も行われた

 内装はダッシュボードやドアトリムに至るまで硬めのソフトパッドが施され、日本車の多くが採用する硬質のプラスチックよりも質感はずっと高い。シルバー加飾されたインパネのセンター部に少々チープ感を感じたものの、電気式パーキングブレーキの採用はより高いグレード感を感じさせるし、操作レバーやスイッチ類も上質な造り。全体としてはクラスにマッチした高い質感を感じさせるものと評価できるだろう。

 曲線を多用したボリューム感のあるデザインは全幅1850mmを超える堂々としたもの。狭い道路が多い日本の道路事情では多少持て余し気味になることも予想されるが、個人的にはこのボリューム感があるからこそシボレーなのだと思う。日本で販売されるまであと3ヵ月。新しいシボレーの展開が楽しみになってきた。


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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/

2011年 4月 13日