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マツダ「アクセラ」スカイアクティブ搭載車プロトタイプ

Text by 河村康彦


 マツダは10日、スカイアクティブ・テクノロジー搭載車第2弾「アクセラ」の詳細を公開。山口県の同社美祢自動車試験場で、そのプロトタイプの試乗会を開催した。河村康彦氏によるインプレッションをお届けする。

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 「スカイアクティブ」のテクノロジーが当初狙っていた“燃費と走りのバランス”に対し、「意図的にやや燃費方向へと振った」のが、第1弾として去る6月にリリースされたデミオに搭載のシステム。

 それに対して、本来目標としていた性能バランスのライン上でまとめたのが、こちらのモデルに搭載のシステム――開発陣がそう紹介するのが、発売以来2年強を経て行われた今回のマイナーチェンジを機に、前出デミオに続いて「スカイアクティブ」の技術が採用された最新の「アクセラ」だ。

 正確に言えば、そうしたフレーズを使えるのはラインナップ中の、2リッターエンジン搭載の前輪駆動モデル。1.5リッター・エンジン車や2.3リッターのターボ付きエンジンを搭載する「マツダスピード」、そして4WDモデルには、この最新のテクノロジーはまだ使われていないからだ。

エンジンに加え、トランスミッションがスカイアクティブに
 エンジンの熱効率を高め、その出力を、ロスを極力減らした変速機を介して駆動輪へと伝え、さらに軽量化と剛性の高さを追及したボディと「操る楽しさと快適性の高次元での両立」を狙った軽量シャシーを用いることで、クルマとしての様々な基本性能に磨きを掛ける――そんな“3点セット”の技術の追求によって、この先長きに渡って通用する環境性能や走りの性能、さらには多くの人々に受け入れて貰える価格を実現させようというのが、マツダが提唱する「スカイアクティブ」の考え方。

 個々の技術で同様のキャッチフレーズを謳うメーカーは世界に少なくないが、包括的にデザインされたそれぞれの技術がお互いのメリットを引き出し合うことで、強い相乗効果を上げるべく当初から設計されているのが、いわばこの“トータル・テクノロジー・システム”の大きな特徴と言ってよい。


 すなわち、エンジンやトランスミッションから成るパワーパックのみならず、ボディやシャシーまでもが様々な効率を高めるという共通の目的を持ったテクノロジーとすることで、それら全てに同時進行で磨きを掛けて行こうというのが、「スカイアクティブ」の最も重要なポイントなのである。

 それゆえに、前出デミオに採用されたアイテムは、実はまだスカイアクティブの完成形とは言えないものだった。確かに、14という際立つ圧縮比を最大の特徴とする1.3リッターの新エンジンは、このテクノロジーの流儀に則ったリファインの手が加えられたもの。しかし、そこに組み合わされるトランスミッションは、基本的には以前と同様のCVT。

 そして、実は先のエンジン本体にも、「スカイアクティブ」の技術の肝の1つである「4-2-1」排気系が採用されていない。熱効率を高めるための高圧縮比化の妨げとなる、排気行程でのシリンダー内残留ガスの低減のために「ほぼ全回転速度域で効果的」というのが、この特殊なデザインによる排気系。しかし、そのネックは通常よりもずっと長いために、より大きな搭載スペースを必要とすること。そもそも、スカイアクティブ用の設計が行われていないデミオのボディ(エンジン・コンパートメント)には、残念ながらそれを収める“余地”はなかったのだ。

 そして、実はこうしたフレーズはやはりボディは従来からのアイテムをキャリーオーバーで用いる、今回のアクセラにもそのまま当てはまる。すなわち、耐ノック性を高めるための独特のピストンヘッド形状や、円滑な火炎伝播を実現させるための分割燃料噴射、吸気の冷却効果を促進させるための燃料噴霧パターンなど、「スカイアクティブ」用エンジンとしての様々なスペックを採用するアクセラ用の新エンジンにも、やはり4-2-1排気系だけは採用されていないのだ。

アクセラ スカイアクティブ搭載車のエンジン
車体スペースの関係上、4-2-1排気系は採用されないが、キャビティ付きピストン(右)や可変給排気バルブタイミング機構「デュアルS-VT(シーケンシャル・バルブタイミング)」、6つの噴射口を備えるマルチホールインジェクターなどを備える

 

アクセラではエンジンに加えてトランスミッションもスカイアクティブになった

 一方、デミオの場合と異なるのは、こちらでは前出新開発のエンジンを、やはり完全新開発された6速ATとの組み合わせで採用が可能となったこと。これによってアクセラの「スカイアクティブ」はデミオのそれよりも、一歩“理想形”へと近付いたことになる。ボディやシャシーは通常のマイナーチェンジ・レベルの一部リファインに留まっているが、パワーパックに関してはオールニューと言ってよいのがアクセラの内容だ。

 空力性能向上を目的としたフロント・バンパーの形状変更や、メーター視認性向上のための文字色変更と言った、機能性改善を求めての変更メニューも見当たりはするものの、ルックス面に関しては従来型に対してさほど大きな違いは感じられないのが、「スカイアクティブ」を搭載した今度のアクセラ。

 もっとも、それは裏を返せば「これまでのモデルのルックスが、世界で好評を博しているから」とも言えるだろう。ちなみに、「スカイアクティブ」車を導入するのは日本以外では北米やオーストラリアの市場に限られるというが、前述のような見た目のリファインに関しては、欧州向けなども含めての対応になるという。

前後バンパー、アルミホイールが新デザインになった。写真右の手前が従来車、奥がスカイアクティブ搭載車。ちなみにこの車体色は新色のスカイブルーマカ
ヘッドライトのブルーリングはスカイアクティブ搭載車専用

 大きくて見やすいアナログ式の2眼メーターに、やはり大きくて操作ロジックも簡潔で理解しやすい空調スイッチを採用するなど、ベーシックな実用モデルとして不可欠な扱い易さをしっかりと踏まえた上で、単なる道具感の強調だけには留まらない“ワクワク感”の演出もなされているのは、相変わらずのアクセラのインテリアのチャームポイント。

 ただし、本来は手元に用意することで操作の簡易化を狙ったはずにも関わらず、そこに置くスイッチの数を無闇に増やしたお陰でかえって操作性が難アリとなったステアリング・ホイールにだけは、残念ながらの「やり過ぎ感」が伴う。敢えてアップ用とダウン用を別建てとしたステアリング・シフトスイッチも、わざわざスイッチ数を増す意図が読み辛い。余談ではあるが個人的には、この種のものはステアリングの動きとは無関係の固定式デザインとした上で、右側にアップ用、左側にアップ用のパドルをレイアウトするのがベストと思う。

センターコンソールのガーニッシュがクリアブラックになり、シルバーの加飾が増えた シフトスイッチは奥がアップ、手前がダウン。これが左右に用意される ブルーグラデーションメーターとシフトノブはスカイアクティブ車専用
ダッシュボードのマルチインフォメーションディスプレイにはi-stopの動作状況が表示されるが、新たにi-stopが動作しない理由なども表示されるようになった
アイドリングストップで削減できたCO2排出量も表示される

 

単なる“エコ・エンジン”には終わらせない気概
 エンジンに火を入れDレンジをセレクトすると、まずはごくオーソドックスなトルコンAT車なりのクリープ現象が発生。そこからさらにゆっくりとアクセルペダルを踏み込むと、スタート時の滑らかさや力強さは、なるほど「敢えてDCTやCVTではやく、トルコンAT方式を選んだ」という開発陣の思いが納得できるものだ。

 今回の走行はクローズドコース内で行っているが、街乗りでの緩加速をイメージした走りでは、滑らかさやシフトプログラムに関する違和感は皆無と言える。

 変速機部分はマツダで内製するものの、「今のところサプライヤー名はお教えできないんです……」との回答に留まった薄型設計のトルクコンバーターは、基本的には“スタートクラッチ”としてのみ活用し、発進後にエンジンとギアボックスが“直結状態”になった後は、トルコンスリップを利用する場面は無いという。

 実際の変速感もそうしたコメントが納得できるDCTに近いタイトなものだったし、またそうした制御を行うからこそMTに近い伝達効率をマークするのだろう。従来型が採用していた5速ATに比べると変速レンジは上と下に広がり、レシオとしては5.2台の数字であったものが5.9台へと拡大されて「CVTに遜色ない」という。

アクセラに搭載された6速AT「スカイアクティブードライブ」はロックアップクラッチに多板クラッチを採用、クラッチダンパーを大型化し、さらにトルクコンバーターを小型化することでロックアップ領域を拡大、エンジン回転数と加速感が一致するダイレクト感を実現した

 ちなみに、デミオ用1.3リッター・エンジンでは「14まで高めた圧縮比によって落ち込むトルク分を、CVTの制御でエンジン回転を増すことでカバー」という話題があったが、6速ATを用いるアクセラ用エンジンでは圧縮比を12に“留めて”いる。ただし、「もしもデミオと同様の手法(CVT)が使えるのだったら、やはり14程度の圧縮比にしていた可能性はある」と語るのは、スカイアクティブ用エンジン開発のキーパーソンのひとりである、パワートレイン開発本部長の人見光夫氏。付け加えれば、レギュラーガソリンのオクタン価が日米などよりも高い欧州市場向けの適合を図るならば、「やはり圧縮比はもう少し高くなる」と人見氏は言う。

 排気量は従来型エンジンと殆ど不変ながら、最高出力と最大トルクの上乗せに成功した新エンジンが発する力感は、なるほど「レギュラーガソリン仕様の2リッターエンジンとしては満足の行くもの」と総評を与えてよさそうだ。前述のように、タイト感の強いATとの組み合わせで、アクセルペダルの踏み加えで素直なトルク感の上乗せが実感できたから、日本市場向けには用意されないがこれならばMTとの組み合わせでも“イイ感じ”が期待できそうだ。

 3500rpm付近からのリニアなトルクの盛り上がり感は、このエンジンの“見せ場”の1つ。乾いた排気サウンドと共に力強く加速する様は、なるほどこの心臓の「単なる“エコ・エンジン”には終わらせないぞ」という気概が感じられる部分でもある。

 一方、ちょっと気になったのはタコメーター上のレッドゾーンが始まる6500rpmを前にして、6200rpm付近からかなり明確な頭打ち感が現れることだ。

 もちろん、こうした回転数は常用域からは外れているし、日常の走りのシーンでは「まず気にする必要のない話題」とは言えるかもしれない。しかし、例えばもしもレッドゾーンの表示が6000rpmからということになってさえいれば、そうしたネガティブな印象は受けることはなかったはず。カタログ上での“凄さ”を訴えるためにそうした表示になっていたとしたら、これは残念なポイントだ。

 ちなみに、シフトスイッチでダウンシフト操作を行った際に、低位ギアへと変速する瞬間のエンジン・プリッピングの機能があるというが、実際に乗った範囲ではそれは実感し辛く、「回転を合わせ切れずにショックが発生」という印象が残っていたのは惜しい。もちろん、“空ぶかし”のために燃料を吹くのは燃費の観点からはマイナスだが、しかしせっかく機能があるならばそれが実感できた方がユーザーの満足度は高まるはずだし、当然、シフトショックを完全に解消できてこそ価値ある機能ということにもなるはずだ。

シャシーもリファイン
 ところで、そんなマイナーチェンジを受けたアクセラには、従来のボディ/シャシーをキャリーオーバーで使うという制約の範囲内で、一部に操安性や快適性の向上を狙ったリファインが行われたことも紹介しておこう。開発陣が狙ったのはのは「アクセラならではの“キビキビ感”は維持しつつ、安定性や快適性の向上を図る」という事であったという。

 そこで具体的に採られた策は、床下整流の意味も含めてデザインされた新採用のブレースバーや、フレーム結合部の溶接点数増しによるフロア剛性のアップ。サスペンションのダンパー・チューニングの見直しなど。また、「残念ながらマイナーチェンジ・レベルでは“フル電動化”にまでは至れませんでした……」という、電動油圧式パワーステアリングのチューニング・リファインなどという項目が挙げられている。

床下にブレースバーを増やし、Bフレームを厚くするなどの対策でボディー剛性を強化。ホイールの剛性強化と合わせ、ロードノイズ低減にも貢献している
アンダーカバーやデフレクターにより床下の空気の流れを整えた
サイレンサーも空力を意識した形状に変更された
ステアリングやダンパーもリファインされた

 低転がり抵抗を意識して開発されたという15インチのタイヤと、「従来型が用いていたものと変わっていない」という17インチのシューズを履くモデルのうち、より安心したドライビングを行えるのはやはり後者の方だった。

 完全にフラットで舗装の変化もないサーキット路面ゆえ、快適性に関しての判断はとても困難だったが、15インチのシューズを履くモデルはやはり“前輪の踏ん張り”が物足りない感が否めない。端的に言えば、ちょっとしたコーナリングでもたちまち悲鳴を上げるのがこちらのモデルだったし、路面を叩くノイズが耳についたのも、予想に反してむしろこちらの方だった。

 一方で、17インチのタイヤを転がり抵抗の低減を目指して“新作”しなかったのは、「その分を“走り”へと振らせて貰いました」と担当エンジニア氏。

 ただし、傍らに置かれていた従来型車と比較すると、指定のタイヤ内圧が4輪2.3barから、前輪2.2bar/後輪2.1barへと引き下げられていることに気が付いた。この点を質すと、先の床下の補強等によってボディ剛性が上がったことによるステアリング・ゲインの高まりや、乗り心地のハード化を、ダンパーのチューニングやタイヤ内圧の変更でアジャストする意図があったという。

 実際、操舵初期のノーズの動きのシャープさは、よい意味で「若干落ち着いた」印象を感じる結果になっている。ただし、こうしたフットワークのリファインは日本や欧州市場などに向けてのもので、「“ピンシャンしたハンドリング”が好まれる米国市場に向けては、従来セッティングのまま」というのは、なるほどこれも“想定内”だ。

 今回は限定されたロケーション内での、ごく限られた時間でのテストドライブゆえ、肝心の燃費性能などまだ新型の本質を見極めるところまでは到っていない。しかし、そんな新型アクセラが街中を走り始めた後には、すでに「スカイアクティブ」が謳う全てのテクノロジーを入れ込んだコンパクトSUV「CX-5」のローンチも控えている。

 EVやハイブリッドなど、人々がイメージをしやすい“電動化”という時代の動きに対して、まずはもう1度、既存のクルマのテクノロジーを極めようというマツダの「スカイアクティブ」。その実力が世界で問われるのはいよいよこれからだ!

  アクセラ スポーツ アクセラ セダン
モデル 20S-SKYACTIV 20C-SKYACTIV 20E-SKYACTIV 20C-SKYACTIV
全長×全幅×全高[mm] 4460×1755×1465 4580×1755×1465
ホイールベース[mm] 2640
前/後トレッド[mm] 1535/1520
重量[kg] 1330 1320 1310
エンジン 直列4気筒DOHC直噴
ボア×ストローク[mm] 83.5×91.2
最高出力[kW(PS)/rpm] 113(154)/6000
最大トルク[Nm/rpm] 194(19.8)/4000
トランスミッション 6速AT
10・15モード燃費[km/L] 18.8 20 20
JC08モード燃費[km/L] 16.2 17.2 17.6
駆動方式 2WD(FF)
前/後サスペンション マクファーソンストラット/マルチリンク
前/後ブレーキ ベンチレーテッドディスク/ディスク
前/後タイヤ 205/55 R16 195/65 R15
前/後ホイール 16×6.5J 15×6J
定員[名] 5

インプレッション・リポート バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/

2011年 9月 12日