【インプレッション・リポート】
「フォルクスワーゲン ポロTSI」長期レビュー

最終回:1年たっても優等生
Text by 正田拓也


 季節は梅雨の真っ最中、梅雨が終われば夏。そしてポロも納車から1年がたとうとしている。気温が上がることで燃費がよくなってほしいのだが、梅雨から猛暑の時期になればエアコンの稼働が始まり、燃費はずるすると落ちていくだろう。

 実は今回でポロの長期レビュー最終回。そのしめくくりとして1年点検を受け、そのまとめもお知らせしたい。

エアコンの本格稼働前で燃費は15km/L超え
 梅雨の影響でエアコンの利用が多くなったが、まだ燃費悪化は始まっていない。今回は過去最高の17km/Lという燃費を記録しているが、これは御殿場までの往復のほか、比較的中距離の移動が多かったからだ。

 特に御殿場から東京までの東名高速の道のりは、連続した緩い下り坂が多く、ポロの惰性走行能力ならDレンジのアクセルオフやNレンジで数kmに渡って減速せずに惰性走行できる区間もあり、しかも渋滞がなかったため区間燃費で20km/Lを超えていた。

 ポロにおける高速道路の燃費走行テクニックとしては、なるべく低い速度で走ること。高速道路は上り坂であっても一定の速度で走ることが求められるため、上り坂はしっかりアクセルを踏み込む必要があるが、その場合でも低速で一定速なら燃費悪化も最小限に押さえられる。

 筆者の低速走行の目安としているのは、速度規制のある大型車についていくこと。90km/hなので燃費にも好影響。しかも大型車の流れができているので、交通の流れを乱すことがない。アルミバンやコンテナ車なら、近づけばスリップストリーム効果も期待できそうだが、そこまで近づいてはダメだ。

 また今回、全体的に燃費がよかったのは、梅雨ながらあまり気温が高くなかったことも理由。そのためエアコンを使わず、さらに気温が低ければ弱めの暖房をガラスに吹きつけるようにすることで、曇りを解消できた。筆者の2010年のコンフォートラインでは、送風口をデフにすると自動的にエアコンONになってしまうが、手動でエアコンOFFにするなどONかOFFかを十分に意識していた。

 最近では、気温が30度に迫る雨の日という最悪の条件の日もあった。エアコンをつければ目に見えてアクセルが重くなり、燃費も変わってくる。エアコン付きで市街地走行をすると、エアコンなしなら13~14km/Lのところが11km/L台に区間燃費が落ち込むこともあり、これからの季節はしばらくエアコンと燃費との戦いになるだろう。

給油日走行距離(km)給油量(L)燃費(km/L)
2011/5/964942.3015.34
2011/5/3157333.6717.02
2011/6/2055036.6015.03

 なお、新車時からのトータルの燃費は13.94km/Lとなった。納車すぐのポロの低燃費を引き出せない運転と、エンジンに当たりが出ていない時期の燃費も入っているため、来年の今ごろには平均燃費がさらによくなっていると予想される。

とうとう30度を超える日が続く季節になった給油ごとの平均燃費はモード2のほうで見ているが、中距離走行した後でも14.4km/L。エアコンを使う日々がつづくとさらに落ちるだろう曇り取りのポジションなどにすると、自動的にエアコンがONになり黄色く点灯する。雨の日は必要に応じて手動でOFFにしてやるのが燃費走行のコツ

1年点検とサービスキャンペーンその2
 乗り始めて1年間の締めくくりとして1年点検を受けたので、その結果をお知らせしたい。結果は特に問題なしだった。また、合わせてサービスキャンペーンとして実施されたエンジン制御プログラムの書き換えも受けた。

 点検の少し前、エンジンオイル量の警告が点灯するときがありエンジンの再始動で消灯するような状態があったため、少しだけオイルを補充していたが、改めてオイル量を点検して補充していただいた。前回のオイル交換から約4000km。交換の必要はないが、オイル量には注意してくれと納車時に言われていたことが、そのとおりになった。

 それ以外は、何も問題はなかった。交換部品などもなし。ワイパーブレードは1度交換しているので今回は交換しなかった。部品の交換がないため、標準装備の「Volkswagen Professional Care」によって一切費用はかからなかった。

 エンジンブレーキが弱いポロだけにブレーキパッドの減りが心配だったが、フロントは新品時の13mmに対して約12mmと減りはほとんどなし。1年で1mm単位の消耗ならば10年近く持ちそうな印象である。省燃費運転をすれば自然とブレーキの使用も少なくなるためで、もし、将来ポロに回生ブレーキが備われば、さらに減らないブレーキになるのではないだろうか。

 エンジン制御プログラムの書き換えの理由は「Dレンジでブレーキを踏んで停車中に、わずかにアクセルを踏むとエンジンが停止する場合がある」。よく考えてみると左足ブレーキでもしなければあり得ない事態なので、不具合としては極めて軽度。少し神経質になるくらいのメーカーの対応に、かえって安心した。

1年点検のはがきも来たが、サービスキャンペーンのはがきもやってきた点検の数日前にオイルのマークが黄色く点灯した。本当にヤバいときは赤色で点灯するらしい点検とプログラム書き換えのためにディーラーに到着
作業開始。1年点検はタイヤを外して各部をチェックする1年たっているが、未舗装道路はほとんど走っていないのでまだ綺麗ブロントブレーキはほとんど摩耗していない。パッドも分厚いままだ
リアブレーキも減っている様子はなしエンジンルームの下はアンダーカバーがあるので汚れはほとんどないパーツ交換がなかったので「Volkswagen Professional Care」で費用はゼロだ

CAR NAVITIMEの通信機能は筆者には代えがたいもの
 前回の最後でバージョンアップしたCAR NAVITIMEであるが、昼夜の画面切替が自動になってやっと使いやすくなった感がある。それ以外はオープニング画面の推移が若干変わったことに気づくくらいで、あまり変化した感じはない。

 前回も少し触れたが、バージョンアップの少し前の時期、2DINのAVNであるイクリプスの「AVN110M」を短期間借りて装着していた。ダッシュボードがすっきりするほか、車速パルスを使っているため、地下駐車場などに停めた後の復帰の速さや、自車位置の安定度はさすが固定ナビだ。今後取り付けたいアイテムであるバックカメラにも対応することも見逃せない。

 しかし、筆者にとっては通信機能のほうをとりたい。ご近所ツアラーとして活躍するポロだけにルート案内の使用頻度は低く、リアルタイムな渋滞情報や駐車場情報のほうが圧倒的に重要だからだ。毎回燃費報告している数値も、CAR NAVITIMEのマイカーマネージャーを経由してデータを入力していて便利というのもある。

 なお、今になっての報告で申し訳ないが、2DINナビを装着したときに判明したこととして、ポロに装着したCAN-BUSアダプター(PAC Audio「C2R-VW2」)は、車速パルスは順調に出力されているものの、バック信号とサイドブレーキ信号が出ていなかった。ポロとの適合が完全でないのか不良なのかは不明だが、装着を検討している人は注意してほしい。

渋滞情報や駐車場情報は絶対必要。クルマで千代田区の某社に立ち寄るときは事前チェックしてから行かないとひどい目にあうからだ通信前提のメニューとなっており、地点登録はネットにつながったPCでできるため、カーナビ本体で検索などはほとんどしなくて済む
e燃費のマイカーマネージャーが、画面でできる。給油時はその場で入力すれば面倒がない問題のCAN-BUSアダプターのPAC Audio「C2R-VW2」。これをポロに使うときは自己責任にて

タイヤは純正装着品もミシュランもよい

 2月にタイヤをミシュランのエナジーセイバーに交換し、余っていた純正装着のタイヤと乗り比べるために格安なホイールを物色していたが、最近やっと中古アルミホイールが見つかって装着できた。アルミとスチールの違いはあるが、同じ6J、同じオフセット+38、1本あたりの重量もタイヤ込みで約15kgとほぼ同じなので特性は変わらないと思われる。

 改めて乗り比べると、ミシュランよりもコンチネンタル・プレミアムコンタクト2のほうが若干固いという印象を受けた。ただ固いのではなくコシの強い堅さとなり、ステアリングの反応はほんのわずかだがコンチネンタルのほうが上。といっても、違いはほんのわずかで、ホイールの差という影響もあるかもしれない。

 ロードノイズも、ミシュランに交換したときに感じた違いどおり、どんな場面でもある程度の音がして高い周波数の騒音のコンチネンタルという印象だ。転がり特性も、全体的に優秀なコンチネンタルと、路面の安定した道ではさらに転がりやすいミシュランという印象を受けるが、どちらも甲乙付けがたいと感じた。

 すり減って交換するような時期はまだ先になると思うが、タイヤ交換を考えているなら、快適性や路面の安定した道での特性、そして国内での入手のしやすさからミシュランもおすすめだ。

スチールホイールと同サイズの格安中古ホイールを調達、以前のコンチネンタル製タイやを装着した工場装着の「プレミアムコンタクト2」5000kmしか走行していないので、溝もまだまだ十分

最後に~1年乗ってみて
 ポロとの1年を振り返ると、不満が出てこない優等生的なクルマであったことに尽きる。小さいクルマなりの挙動はあるものの、一般道から高速道路まで自然かつ正確な走行をする。極めて高いレベルのコンパクトカーに仕上がっている。

 1.2リッターTSIエンジンは、2000回転くらいの太いトルクを活かせば他車に負けない加速や道路のペースを引っ張る運転が簡単にできる。買う前は心配していたDSGの挙動も、以前のものより改良され進化しているため問題なし。坂道発進時はロックが効くので、1年を通して神経質になる場面もなかった。

 筆者は内装パーツの高級感を気にするほうではないが、各スイッチ類の造りがしっかりしていることにより、安心して操作できることがよい点だ。同等クラスのクルマに乗るとそこがはっきりわかる違いだ。ダッシュボード類はソフトな表面になっており、万一の事故の可能性のあるクルマとして、固い部分があまり露出していないのも安心して乗れる点だ。

 ただ、質感という点で残念なのが、前回も触れたアイドリング時のカタカタ音が未だに解決しない点。せっかくの最新の上質なクルマとしてのポロの価値を下げかねない。すでにインポーターでは改善対策の検討に入ったという話も聞くが、ぜひ根本的解決をして欲しいところだ。

 燃費の点では、正直、期待が大きすぎたゆえに、もう少し伸びて欲しいという気持ちはあったが、乗り方次第で大きく燃費が変化するという点を楽しめたと思う。

 筆者のような都市部のサンデードライバーは、平均して20km/Lの燃費を出すのは絶対に無理だが、ポロの低燃費を有効に引き出せるドライバーは、交通密集のない地域で10km以上の自動車通勤の人だ。そういう人は信号にほとんど引っかからない、自分だけの最適化された通勤経路があるもので、平均で20km/L近い燃費が可能だと思われる。都市部を除けば、そんな条件の揃った人は多いと思うので、そういう人にはぜひポロをおすすめしたい。

 逆に都市部で燃費を意識しながら乗ることで、ポロの渋滞、信号待ち時間が燃費に大きく影響を与える特性をイヤというほど実感し、エコドライブの意識が高められるクルマだと思う。個々の人の燃費追求運転ではなく、渋滞を起こしにくい走行、スムーズな交通環境の整備こそが、社会全体の省エネルギーには必要という意識も強まった。

 さらに、現在のポロには付いていないアイドリングストップや、エネルギー回生システムの利点が目につき、装備がさらに欲しくなるという意識の変化もあった。

 つまりは、一見地味だが、万人向けの省燃費技術、油脂類の消耗品の考え方など、いろいろな意味で現代の最先端のクルマ技術を体験できるということになるだろう。

 最後に、1年間の長期レビューにお付き合いいただき、読者のみなさま、関係各位のみなさまに感謝している。このポロは自腹購入なので、今後も我が家の愛車として活躍してもらうつもりだ。何か報告の機会があればまたお知らせしたいと思う。ありがとうございました。

エンジンルームがスカスカの小ぶりなエンジンだが、パワーは十分ソフトなさわり心地のダッシュボード。万一の際でも大怪我はせずにすみそうだヘッドライトのスイッチは上級車種と同パーツのようだ。スイッチにはガタつきもなく操作感は良好
ドアのパワーウインドウなどのスイッチ類もしっかりしたものだ。ライトを付ければ照明が付くターンシグナル、ワイパーといった左右のコラムレバーも操作しやすい残念なカタカタ音のスポンジ詰め。根本的対策がとられ、スポンジを早く卒業したい

 


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2011年 6月 27日