【カーナビ・レビュー】 カロッツェリア「楽ナビ」の地図データを更新してみた |
5年前に購入したHDDカーナビ。その後もどんどん新型のカーナビが登場し、価格の手ごろなPND(Personal Navigation Device)も市民権を得て、カーナビ事情は大きく様変わりしたが、まだまだナビのしての機能は十二分。そこで最新ナビを追い越すことはできないまでも追いつくべく、地図データの更新にチャレンジしてみた。
今では完全に据え置き型カーナビのスタンダードとなったHDDカーナビだが、DVDからHDDへとスタンダードが移ったのがちょうど2005年頃、パイオニアがハイエンドグレードの「サイバーナビ」だけでなく、スタンダードグレードの「楽ナビ」にもHDDを搭載した年だ。標準価格でも20万円台前半、実売価格では10万円台と当時のHDDカーナビとしてはとても手ごろになった。これに続くように各社からモニター一体型の低価格HDDカーナビが続くこととなる。
筆者はまさにこのHDD楽ナビに飛びついたクチ。会社のクルマですっかりカーナビの便利さに慣れた筆者は、自身初のカーナビとして、オンダッシュタイプのHDD楽ナビ「AVIC-HRV02」を購入した。
それから5年近くが経過したが、オプションでVICSにも対応させ、Bluetoothでハンズフリーにもなるカーナビは、今でも非常によく働いてくれている。たった1つの問題を除いては。その問題というのが地図データの古さだ。特に筆者の生活圏では、関越自動車道から中央自動車道まで圏央道が繋がったのが大きい。関越道方向に行く際に、環八を走って練馬から乗るのか、調布から乗って圏央道経由で行くのか。距離で言えば圏央道経由が遠くなるが、環八のド渋滞にはまるよりはマシ。しかも圏央道を使っても上限1000円となる土日ならば、値段もさほど変わらないからなおさらだ。しかしいくらVICSによる渋滞考慮機能を持っていても、地図データにない道は案内できない。
圏央道を使うこと自体は別に迷うものではないのだが、カーナビ上にはないはずの圏央道を走っている間、ずっとリルートを続けるのと、到着予想時刻が大幅に遅れて表示されるというのも、カーナビの便利さになれた身としては不安にさせる。また、一度一般道へ降りたことになるので、通行料の表示もめちゃくちゃ。まあ、どちらにしてもETC割引は反映されないので、もとからめちゃくちゃだとの話もあるのだが。ほかにも新たに開通している道、オープンした施設は数多く、仕事柄、不慣れな土地へ足を運ぶ機会の多い筆者にとっては、地図データの古さは致命的な問題だ。
カーナビ購入時から地図の更新をしたことはなく、起動画面にも2005の文字が出る | 八王子周辺の地図。当時はあきる野IC(インターチェンジ)までしか開通していなかったため、何もないところに軌跡(点線)だけが残っている。こうなると到着予想時刻はめちゃくちゃになる | 現在、横浜ららぽーとの場所にも、かつてのNECの工場が表示される |
ということで、自身初のカーナビを使って、これまた初めてのデータ更新に挑戦してみた。サイバーナビなどでは、自宅のパソコンからインターネット経由で更新情報をダウンロードできたり、最近の楽ナビでも、DVDを使ってのデータ更新ができたりするが、筆者の持っているAVIC-HRV02は、内蔵HDDを取り外して送付し、データ書き換え後返送されてきたものを組み込む、という作業が必要になる。HDDの脱着作業は量販店などでも行ってくれるが、さほど難しいことでもないので、自分で作業した。
バージョンアップの申し込みはとてもよくシステム化されていて、初めてでも迷うことなく行うことができた。申し込みはパイオニアのWebサイトから行え、自分の個人情報や送付先などを記入する。シリアルナンバーも記入するようになっているが、これは分からなければ記入しなくても問題ないようだ。
カーナビバージョンアップの申し込みは、パイオニアのWebサイトから行える | 自分のカーナビの機種を選ぶ | AVIC-HRV02の場合は、インストールパックとして料金は2万1000円 |
申し込み手続きはインターネットからのほか、電話でもできる | 申し込み画面。送り先は現住所以外にも設定できる |
申し込みを行うと、数日で「HDDナビバージョンアップ申し込みセット」が届く。中には取り外したHDDを入れる箱や静電袋と送付用の伝票、「HDDナビゲーションバージョンアップ申込書兼承諾書」、HDD取外し手順が書かれた紙などが届く。HDDの取り外し方は機種によって若干異なるが、パソコンのハードディスク交換ができる人なら問題なく作業できるレベルだろう。また、HDDを外す前に付属のCD-ROMを使ってアプリケーションをインストールする必要のある機種もあるようだ。
申し込みセットが届く | 申し込みセットの中身 | HDDを梱包するための箱や静電袋、緩衝材などが含まれる |
作業の詳細は下記の写真を参照してほしいが、機種によって異なるので、添付の手順書をしっかりと読んで作業を進めよう。AVIC-HRV02の場合は六角レンチが必要となるが、最初に買ったときに付属しているものなので、それを使う。写真では手持ちの工具を使って作業している。注意点としては、作業前にバッテリーのマイナス端子を外しておくことと、HDDを外す前にクルマのボディーの金属部分に触れて静電気を逃がしておくこと。悩みながらでも15分あれば終わる作業だ。
外したHDDは静電袋に入れて、申し込みセットに含まれる箱にしまう。申込書に記入したものも一緒に梱包してたら、添付の伝票を使ってパイオニアに送る。伝票は着払いなので、ユーザーが料金を支払う必要はない。
HDDを外した状態でも機種によってはCDの再生などはできるらしいのだが、AVIC-HRV02はアンプなどを内蔵しない、いわゆるAVNではないタイプのためか、HDDを外した状態では、実質なにもできなくなった。
HDDを送ってからおよそ10日でデータ更新されたHDDが佐川急便で送られてきた。データ更新にかかる費用は2万1000円だったが、それはこのHDD返送時に代金引換で支払う。支払いは現金のほか、クレジットカードやキャッシュカード(デビットカード)、電子マネーなども利用できる。料金が発生するのはこの時だけで、往復の送料や振り込み手数料といった細々とした支払いがいらないのはとても便利だ。
戻ってきたHDDは、外したときと逆の手順で装着すればOK。バッテリーを繋いで電源をオンにすると「プログラムを更新しています」といったメッセージが表示され、電源を切らないよう指示される。3分程度で更新作業が終わり通常の起動画面になる。今までとは違った起動画面には「PIONEER CORPORATION 2009」の文字が出る。以前は2005だったから4年分進化したことになるわけだ。
地図の文字など読みやすくなっているとのことだが、個人的にはあまり差を感じることはなかった。それより気になるのはなにかを操作する度に、その操作のヒント画面が現れることだ。初めて購入したときも同様のものが表示され、「今後表示しない」を選べばよいのだが、データ更新したことを真っ先に実感させられる部分だろう。早速圏央道沿いの施設を検索してみると、見事圏央道を使ったルートを引いてくれた。さらに、以前の地図データには収録されていなかったららぽーと横浜なども収録されている。
これまで収録した音楽データが残っているのはもちろんだが、学習データもそのまま継承され、また、登録した目的地、過去に検索した目的地なども収録されていた。
HDDに収録した音楽データもすべて元どおり。ただし万が一にも消えてしまう場合はあるとのこと | センサーの学習度も元どおりだった |
そして今回のバージョンアップで注目したいのが、右左折する交差点の案内表示に「アローガイド」モードが追加されたことだ。従来からあった交差点拡大図やドライバーズビューに加わるもので、右左折ポイントまでの距離と曲がる方向を大きな矢印でシンプルに表示する。交差点拡大図よりも自車位置からの距離が直感的に分かりやすく、幹線道路などある程度の速度が出ているときには便利だ。
ただし、表示がシンプルなゆえ、細街路や交差点が連続する場所、5差路といった複雑な交差点では、ユーザーを悩ませる感がある。目印なるコンビニなどがアイコンで出たるもするのだが、そのコンビニが右にあるのか、左にあるのかといった情報も分からない。また、高速道路の料金所でETCレーンが表示されるようになったのは便利だ。ただし、バージョンアップ後もETCの割引料金が反映されないのは従来のままだ。
それと地図データを更新した場合、オービスROMも更新する必要があるとなっていたのだが、オービスROMを更新しなくても従来のオービスデータが残っていたのはうれしい誤算。もちろん新しい道のオービスデータは記録されていないが、従来からあったデータは、これまで同様近づくと警告もしてくれている。ただし、注意書きには「鳴らない可能性もある」とのことなので、今度オービスROMも更新する予定だ。
2万1000円というと、格安のPNDや、PSP/iPhoneを使ったナビソフトなどが買えてしまう金額ではある。しかし、大きな画面、クルマでの操作に特化したインターフェイスなど、据え置き型ナビのメリットは大きく、満足度は十分だ。しかし道路は日々開通しているもので、すでに首都高3号と4号を結ぶ山手トンネルが開通してしまった。今度は山手トンネルを通る度に歯がゆい思いをするのだろう。2012年度に圏央道が概ね完成するので、筆者の次の更新は2013年頃だろうか。むろん、その時点でACIC-HRV02向けの地図データが更新されていればであるが。
(瀬戸 学)
2010年 4月 13日