写真で見るフォード「エクスプローラー」


 フォード「エクスプローラー」は日本でも人気のアメリカンSUV。初代モデルが登場した1990年はちょうど「ヨンクブーム」の兆しが見え始めた頃で、クライスラー(ジープ)「チェロキー」と並び、多くのユーザー予備軍のあこがれのマトとなった。人気アウトドアブランド「エディバウアー」とのコラボレーションによる上級グレードの存在も、魅力だった。

 残念ながら日本での「ヨンク」ブームは程なく終焉を迎えたものの、本国でのSUV需要は根強く1995年、2000年、2005年と定期的なモデルチェンジを実施。トラックタイプのバリエーションモデルを追加するなど着実な進化を重ねた。

 そして2010年に登場したのが、すべてを一新した新型エクスプローラー。「すべて」というのは決して誇張ではなく、この5代目はボディーを一般的な乗用車と同じモノコックに変更。いわゆるクロカン四駆では標準といえるラダーフレームとの決別を果たすことになった。

 エンジンは従来のV型8気筒4.6リッターから3.5リッターのV型6気筒へチェンジ。「アメ車」的なムードという意味では少し残念ではあるものの、パワー的にはTi-VCT(吸排気独立可変バルブタイミング)などの採用により、216kW(294PS)/6500rpm、345Nm(35.2kgm)/4000rpmとほぼ同等。また、現状ではまだラインナップされていないが、将来的に直列4気筒2リッターターボユニットの搭載も予定されている。

 加えて、高張力/超高張力鋼板を骨格の60%に使用したほか、アルミ製のボンネットフードやマグネシウム製シートフレーム(3列目)を採用するなど、徹底した軽量化を追求。その結果、5020×2000×1805mm(全長×全幅×全高)とボディーを大幅に大型化したにもかかわらず、車重は2045kg(米国仕様)と185kgの軽量化を果たしている。

 大型SUVとなると燃費が気になるところだが、エンジンそのものの軽量化、モノコック化によるボディーの軽量化、エンジンの高効率化などにより、10・15モード燃費は7.6km/Lを実現。これは従来のV6モデルと比較して約20%向上しており、このクラスのモデルとしては良好な数値といえる。

 4WDシステムはテレインマネージメントシステムによる直感的なモード操作が可能なインテリジェント4WDを採用。4WDシステムは通常時フロントにほぼ100%の駆動力を配分し、スリップを感知すると自動的にリアに最大100%までトルク配分を行うタイプ。「サンド」「スノー」「マッド&ラット(わだち)」「ノーマル」と4つの走行モードが用意されたテレインマネージメントシステムは、エンジン出力やスタビリティコントロールなどをそれぞれのシチュエーションに最適化。センターコンソールにあるダイヤルでモードを切り替えるだけで、ドライビングスキルの少ないオーナーでも上級者並の走りが可能になる。

 ボディーは4ドアのステーションワゴンタイプのみで、ベーシックグレードとなる「XLT」と、上級グレードとなる「リミテッド」の2グレード構成。装備の違いはサンルーフの有無、シート表皮のマテリアル(本革/クロス)、3列目パワーフォールディングシートの有無が代表的な部分。価格はXLTが440万円、リミテッドが530万円。撮影車両はリミテッド、ボディーカラーはタキシードブラック。

これまでのいかにも「クロカン4駆」的なスタイルから一新。エアロダイナミクスを重視した新世代のSUVらしいスマートなフォルムとなった。全幅2000mの大きなボディーだが、見た目にはもう少しコンパクトな印象

 

3本のバーとフォードのエンブレムで構成されたフロントグリル。このフェイスデザインは新世代フォードのデザインアイコン。バー部分は「リミテッド」ではボディー同色だが「XLT」はシルバーとなるバンパー下部にはフォグランプをビルトイン。「XLT」にも標準ホイールデザインは両グレードで共通。タイヤは245/60 R18で、撮影車両にはH/Tタイヤ、ミシュラン・ラチチュードツアーHPが装着されていた
ウイング風のシャープな造形を採用するヘッドライトユニット。オートランプシステムやオートレベライザーが備わる。横方向にはエクスプローラーのロゴも
リアのコンビランプ。ブレーキランプは消費電力の少ないLEDを採用
リアゲート上部にはハイマウントストップランプ内蔵のスポイラーを装着アンテナは短めのロッドタイプSUVらしさを感じさせるルーフレールもグレードにかかわらず標準装備
リアゲートは上開き式。「リミテッド」はスイッチひとつで開閉が可能なパワータイプを採用マフラーはボディー左右にタイコを備えたデュアルエキゾーストタイプ
ボンネットはグリルの上から開く。アルミを採用することで7.7kgの軽量化を実現したというエンジンはV6の3.5リッター。ガソリンはレギュラー仕様。省燃費化により燃料タンクはちょっと容量減の70Lとなった

 

乗用車ライクなインパネ。ドアパネルへと続くラウンドしたフォルムを採用することでボディーの大きさを感じさせない適度な包まれ感がある空間。ウッド調のトリムアクセントは「リミテッド」のみ電動パワーステアリングを採用。シチュエーションによってアシスト量を変える制御が組み込まれている。位置は左のみ5ウェイコントロールスイッチをスポーク部に配置。左側では車両情報の表示など、右側ではエアコンやオーディオの操作が可能
トランスミッションは6速AT。シフトレバーはP-R-N-D-Mの5レンジ仕様で、ノブには親指でシフトアップ/ダウンが可能なスイッチが備わるシフトレバー後方に配置されるテレインマネージメントシステム用ダイヤル。4つのモードを切り替えられるほか、中央には滑りやすい坂道を安全に走行するためのヒルディセントコントロール用スイッチもサイドブレーキもフット式
ステアリングコラムのスイッチで、ペダル位置を調整できる電動アジャスタブルペダルを採用。これは「リミテッド」のみの装備
アームレストを兼ねるセンターコンソールボックス。内部には小型のトレイやアクセサリー電源ソケットもオーディオ下のフタ付きボックスにはシガーソケットなどとともに、RCA入力端子やSDカードスロット、USBポートを用意照明付のグローブボックス。内部は2段式
助手席側Aピラーの根元に液晶モニターを用意。グリル内に設けられたフロントカメラ(下段左)、ドアミラー下部に設けられたサイドビューカメラ(下段右)の映像を表示できる。切り替えはイグニッションキー横のボタンで行う
アナログメーターと2つの4.2インチ液晶モニターを組み合わせたメーターパネル。左の液晶モニターには走行に関連する情報を、右の液晶モニターにはエアコン/オーディオ/ハンズフリー携帯電話の情報を表示することができる。表示の切り替えはステアリングスポークの5ウェイスイッチで行う
ステアリングコラムの左側にはライト関連の操作パネル。下側はリアゲートの電動開閉スイッチ
エアコンやオーディオ、携帯電話をモニター上で操作できる「マイフォードタッチ」を搭載。これはメーターパネル左右のモニターのほか、センターコンソール上部の8インチモニターでも表示および操作が可能。音声操作にも対応しているが、対応言語は現在英語のみ
センターコンソールの最下部にはオーディオシステムが収まる。「リミテッド」にはソニー製390W、12スピーカー、5.1chサラウンドシステム対応モデルを採用。「XLT」は190W、8スピーカーのシステムとなる。対応ソースや外部入力端子の種類はどちらも同じルーフ前端にはサングラスホルダー付のマップランプ。「リミテッド」にはデュアル・パネルサンルーフ用のスイッチも
サンバイザーは裏面に照明付のバニティミラーを装備「リミテッド」のフロントシート。座面はゆったりとしたボリュームのあるもので、本革らしい質感の高さを感じさせる運転席・助手席とも10ウェイのパワーシートを採用。さらにシートヒーター、シートクーラーも標準。「XLT」は運転席のみの6ウェイ
運転席ドア。パワーウインドウのスイッチや運転席シートメモリーのスイッチ(「リミテッド」のみ)を配置
2列目のシートは6:4の分割可倒式でリクライニングも可能。座面ごと前側に起こすこともできる
フロントのセンターアームレスト後端にはエアコンのスイッチのほか、ACコンセントおよびDCソケット、カップホルダーを用意2列目にもマップランプとエアコンの吹き出し口が備わる
リアドア。ルーフ部にはグリップがなくアームレストが兼ねる。下部にはドリンクホルダー3列目シートは5:5の分割可倒式。車幅が広いだけあって横方向の余裕はタップリ。大きめのヘッドレストは未使用時に前方に倒せる仕掛け
3列目にもエアコンの吹き出し口とマップランプを用意
2列目、3列目とも倒した状態での容量は2285Lと広大。2列目を個別に倒すことで同時に長尺物を積み込むことも可能
3列目のみ倒した状態。5人乗車時でもこれだけのラゲッジスペースを確保できるフロアを掘り下げることでフル乗車時でも595Lのラゲッジスペースを確保
3列目は収納するだけでなくバックレストのみ前に倒すことも可能すべてのシートを片側だけ倒せば乗車人数を稼ぎつつスキーなどの長尺物が積み込める
ラゲッジスペースのフロア下にはスペアタイヤが収まるラゲッジルーム左サイドに備わる3列目パワーフォールディングシート用操作パネル(「リミテッド」のみ)。3列目シートの収納、リクライニングなど各種操作がワンタッチで行える。手前側はアクセサリーソケット
ラゲッジのフロアおよびサイドウォールには荷物の固定等に利用するためのフックを用意テールゲートに設けられたパワーリフトゲート用のスイッチ

 


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(安田 剛)
2011年 8月 22日