レビュー
【ナビレビュー】ワイド2DINカーナビ「ストラーダ Rシリーズ CN-R500WD」
ストラーダの新フラグシップとなるRシリーズは超優等生のカーナビ
(2013/6/20 00:00)
パナソニックのカーナビブランド「ストラーダ」は今年、10周年を迎えた。従来、車種別フィッティングが特長の「Lシリーズ」をはじめ5ラインのモデルが用意されていたが、この節目の年を迎えるにあたり新ラインとなる「Rシリーズ」が追加となった。
機能満載! ストラーダの新フラグシップ
新たに加わったRシリーズはストラーダのフラグシップとなる位置づけのモデルだ。標準モデルといえる180mm幅の「CN-R500D」は、現在のカーナビの主流となっている2DIN一体型のボディーに静電式タッチパネルを備えた7型ワイドVGA(800×480ドット)ディスプレイを搭載。地図メディアも最近のトレンドといえるSDカードで容量は16GB。加えて音楽録音用として専用の16GB内蔵メモリが用意されているのが、ちょっと独特といえる点だろう。そのほか、ざっと書いておくとスマートフォン連携、CD/DVD再生、フルセグ地デジなどなど、ほぼオールインワンといえるスペックを備えている。
Lシリーズのような専用フィッティングは用意されないものの、一般的な横幅180mmの2DINモデルのほか、トヨタ車やダイハツ車などで採用されている横幅200mmのワイド2DIN対応モデル「CN-R500WD」も用意された。こちらはメニューボタンなどを右側に配置することで画面まわりがスッキリ。CN-R500Dのように「アゴ」が出ておらず前面がフラットなため、インパネに装着した際も一体感があって純正ナビのような仕上がりとなる。
もう1つ独特といえるのがDSRC車載器と接続コードをセットにしたモデルが用意されている点だ。DSRCとは高速道路などに設けられたITSスポットから道路情報や安全運転支援情報を受信、広域な交通情報を利用したルート探索をはじめ、道路上の情報を音声や画像で案内してくれるもの。VICS的な機能に加えてETC車載器の機能も備えており、従来バラバラだった機器をひとまとめにすることが可能。今後はVICSを増やさずITSスポットに移行する予定となっているため、将来的にも重要度が高いといえるアイテムだ。セットモデルは2DIN、ワイド2DINのどちらにも用意されており、必要に応じてチョイスが可能となっている。今回は、ワイド2DINモデルとDSRC車載器がセットとなった「CN-R500WD-D」のレビューをお届けする。
より便利に進化を遂げた「モーションコントロール」
昨年秋に発売されたLシリーズ「CN-LS810D」と同じく、静電式タッチパネルを利用したマルチタッチ操作にも対応している。従来はダブルタッチや2点タッチによる地図スケールの拡大縮小、地図やメニューのフリックやドラッグといったナビ関連の操作がメインだったのに対し、Rシリーズでは新たに音量調節や曲の頭出し、TVのチャンネル切り替えといったAV関連の操作も可能になった。操作性の統一といった面はもちろんのこと、単純に操作がカンタンという点からも歓迎できるポイントだ。
昨年発売された「CN-LS810D」のレビューでも書いたように、ダブルタッチや2点タッチによる操作はとてもカンタンでレスポンスも上々。「ひと目で交差点名の距離感を把握できる」という面で100m、200mといった地図の固定スケールを切り替えられるのがとても便利なのだ。もちろん、ピンチイン/ピンチアウトによる地図スケールの変更にも対応。若干重く感じられることがあるもののまずまずスムーズだし、任意のスケールで表示可能なのもイイ感じ。加えてどちらでも操作は可能だから、好みやシチュエーションに応じて使い分けられるのも実用的だ。
新たにランチャーメニューもジェスチャーで表示できるようになった。本体右下にセンサーが用意されており、ここに手をかざすことでランチャーメニューの表示が可能。同時に画面上と左右からもメニューをスワイプインすることもできるなど、いちいちメニューの階層をたどらなくても済むようになっているなど、かなり使い勝手はイイ感じだ。
惜しむらくはナビとAV系の操作を切り替えるためには画面上のボタンを押す必要があって、シームレスな操作を実現! とまではいかない。まぁ、フリックにせよドラッグにせよ、指先の操作自体は変わらないのだから、何らかの切り替え操作が必要となるのは当然のこと。操作を細分化すればワンアクション化も可能になるかもしれないけれど、そのための操作を覚えたり操作のためのポイントが限られたり、なんてことになると本末転倒。過去に独自のモーション機能を組み込んだナビがあったものの、あまり一般化しなかったことを考えると最善の方法といえるのかもしれない。
専用アプリでスマートフォン連携がさらに充実
スタンドアローンな世界であるカーナビに「今」の情報を取り込むことを可能にするのがスマートフォン連携機能……と、前回も書いたけれど、それをさらに充実させるために用意されたのが「DriveP@ss(ドライブパス)」だ。ドライブパスは各種アプリをまとめるランチャー的なモノで、AndroidとiPhone用がリリースされている。利用できるのは「Yahoo! ニュース」「Music Player」「Title Finder」の3タイトルで、順にニュース閲覧、スマホ内の音楽データ再生、ナビに録音した音楽タイトルの取得が可能。今後ネットラジオや動画プレイヤーなどが追加予定となっている。
現状ではまだまだできることが限られているため正直、今後のアプリ充実に期待といったところ。ただ、ネットラジオや動画プレイヤーに関しては、HDMI接続を利用したミラーリングにより現状でも実現可能。スマホ側での操作が必要となるものの画質も実用レベルで十分にキレイといえる品質だ。Androidの場合、スマホとの接続がBluetoothのほかに有線×2(HDMI&USB)と少々面倒なものの音楽と動画、それにハンズフリー通話まで可能となるため、それだけの価値は十二分にあるといっていい。
「おでかけナビサポート ここいこ♪」も従来どおり利用可能。「るるぶDATA」を元にした観光スポット検索、「ぐるなび」を使ったグルメスポット検索、「Yahoo! JAPAN」を使った周辺検索、近くのおすすめスポットを紹介してくれる「寄り道コンシェルジュ」、事前登録した目的地を予約しておける「送信予約」に加え、住所検索と電話番号検索が追加となった。昨年春のリリースから次第にバージョンアップが進み、より使い勝手が良くなっている。とにかく手軽で便利なので、スマホユーザーにはぜひ使ってほしい機能だ。
使い勝手を向上したナビ機能
ナビ画面を見て最初に気づくのが地図画面上のボタンの少なさ。昨年12月にレビューしたCN-LS810Dもかなり少なかったけれど、そこからさらにスッキリとした印象を受ける。これはモーションコントロールを重視したことに加え、先に書いたようにランチャーボタンを廃止し「画面に手を近づける」ことでランチャー表示を行うようにしたため。通常時は地図がほぼフルスクリーンになったようで、これはとても好印象。やっぱり地図があってこそのカーナビ、と認識できる。100mスケールに市街地図レベルの建物の形状や一方通行などを盛り込んでいるのも、この広さがあってこそ生きてくる感じだ。
各種カスタマイズが可能なストラーダチューンも搭載。地図まわりではテーマカラーが4色から選択できるほか、道路色4色、文字サイズ3種、ルート表示の太さとカラー、自車表示の大きさとカラーが変更可能。一度設定してしまえばそれほどイジることはないと思うけれど、あって嬉しい機能であることは間違いない。
検索関連のメニューは名称、住所、電話番号など従来通り一般的な項目をサポート。データまわりに関しては2012年度の最終版である12月版データを収録しているものの、基本部分は従来のモデルと変わらないようで、例の「羽田空港」などもそのまま。
ルート探索も変わりなく推奨ルートとなる「おまかせ」をベースに、必要とあれば「有料優先」「一般優先」「距離優先」「eco」の5ルートを同時探索可能。過去のVICS渋滞統計データをもとに最適なルートを探索する「渋滞データバンク探索」も対応する。 また、DSRC車載器を接続していればVICSビーコンより広範囲の交通情報を元にした渋滞回避ルートの探索が可能になる。具体的にはVICSが最大200kmを考慮するのに対し、DSRCでは最大1000kmとなる。長距離を走る際はより的確な情報を利用した探索が行われるワケだ。
地図データはWebユーザー登録&アンケートに答えることで3年分(2015年度版、2016年度版、2017年度版)の更新が無料となる。この3月、4月に開通した圏央道など途中開通した道路への即時対応はできないものの、年度更新によるフォローが行われるのは安心できる。
分かりやすく安心のルート案内
ルート案内はこれまでのパナソニックナビを踏襲したもの。シンプルながら分かりやすい交差点拡大図を筆頭に、リアルなイラストを使った「難交差点拡大図」、連続する4つの交差点の推奨走行レーンを表示する「レーンリスト」表示など、複雑な都市部でも安心してナビ任せで走ることが可能だ。それ以外にも住宅地などに多い道幅5.5m未満の道路でもキチンと案内してくれたり、一部駐車場には専用の詳細マップが用意されたりなど、細かな部分のケアもしっかり。目立ってハデな二枚目俳優というよりはキチンと仕事をしてくれる裏方さん、といった感じだろうか。
自車位置精度も変わりなく安心のハイレベル。一般道と高速道路が上下に併走している場所でも正しく認識してくれるし、GPS電波の届かないトンネルや地下駐車場でも安定。このあたりの安定度はスマホはもちろん、ジャイロ搭載などによりかなり向上したPNDにもマネのできない部分で、据え置き型ナビならではのメリットといえる。
HDMI端子搭載で映像再生力がアップ
AV系の対応ソースは最近のナビだけに豊富。フルセグ地デジをはじめSDメモリーカードに保存したTV番組やビデオカメラで撮影した動画、DVDビデオなどのディスクメディア、USBメモリーからの音楽再生などに標準対応。16GBの内蔵メモリが用意されているため、音楽CDの録音も可能だ。また、オプションの接続ケーブルや専用アプリを用意すればAndroidやiPhone/iPodを接続して動画や音楽再生も行える。iPhone5はアップル純正の変換コネクタにより音楽の再生は可能なものの、ビデオ再生は残念ながら非対応。
従来モデルはBluetoothを利用した音楽再生にも対応していたが、本機では非対応となった。その代わり新たにHDMI入力端子を備え、そちらを介して動画と音声の再生ができる。どちらがイイかは好みによるところだけれど、音楽クリップを常時再生するなんて使い方をするなら嬉しい変更といえるハズだ。
映像ソースの価値を高めているのがLEDバックライトを採用した7V型ディスプレイ。グレアパネル&広い視野角によりクッキリと美しい映像を再現。当然、ノングレアパネルより映り込みはあるものの、輝度の高さもあってそれほど気にならず、映像の美しさだけを堪能できる。ビエラ譲りの地デジもこのディスプレイにより魅力をアップ。クルマの中&7V型画面というハンデを感じさせない美しさで、4チューナー×4アンテナが実現する感度の良さ、番組表やデータ放送へも対応とハイスペック。テレビ好きには間違いなくオススメのナビといえる。
高い平均点間違いなしの超優等生
ストラーダのフラグシップとなるRシリーズ。従来、フラグシップといえば「最新機能を満載した超高性能機」で、ヒエラルキーの頂点的なイメージだった。だが、本機の場合はこれまでのモデルで培ってきた機能を着実にリファイン、操作性を中心に使い勝手を高めたという印象を受ける。
突出した機能をもって頂点をうたうのではなくナビ機能、AV機能、操作性、レスポンスなど多方面で劣る部分を潰していき、全体的な平均点を高めることに注力したモデルといえそうだ。事実、昨年の春モデルで書いたマルチタッチ非対応、昨年秋モデルで書いたカスタマイズの弱さ、というあたりもすぐに対策されている。もちろん、この記事が要因ってワケではないだろうけれど、ユーザーの不満を汲み取りつつ対処できる体制を持っているワケだ。
それに突出した部分がないかといえば、スマホ連携による「おでかけナビサポート ここいこ♪」の使い勝手はバツグンだし、総合家電メーカーならではといえる地デジのチューニングも圧倒的。
カーナビを初めて購入するビギナーはもちろん、いままで純正しか使っていなかったユーザー、それに何度も買い換えているというヘビーユーザーまで含め、多くのユーザーが満足できるモデルといえる。