レビュー
【タイヤレビュー】ダンロップ 「エナセーブ RV504」
ミニバン用低燃費タイヤにもロングライフ性能を
(2015/5/19 00:00)
いまや低燃費タイヤの市場は拡大を続け、今回取り上げるダンロップ(住友ゴム工業)でも、低燃費タイヤのシェアは9割にも達するというほどに成長しているという。低燃費タイヤのラベリング制度の浸透、そしてそこにユーザーの興味が向かっていることは確実だ。
タイヤメーカーはそのラベリング制度が定める性能、つまり転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を少しでもよくすることに今までは向かっていた。だが、今はそうじゃない。燃費性能は当たり前として、新たなる付加価値を盛り込むこと、それが今の課題といってよいだろう。
ミニバン専用タイヤとして誕生した「エナセーブ RV504」も、その考え方は同様だ。旧モデルとなる「エナセーブ RV503」に対し、ふらつきを抑えること、そして耐久性を向上させることが開発の課題だったという。この流れは乗用車用のエコタイヤとしてラインアップする「エナセーブ EC203」(http://car.watch.impress.co.jp/docs/review/20140327_639881.html)と同様。ダンロップはエナセーブ RV504が「長持ちタイヤの第二弾」だといっている。
とはいえ、低燃費へ向けた対策も抜かりはない。トレッド部に採用したコンパウンドには、「4D NANO DESIGN」と呼ばれる設計思想により、内部にあるスチレンを分散配置する新シリカ用変性ポリマーが盛り込まれている。スチレンとはSBR構成材料の1つで、スチレン同士で凝集しやすく、発熱しやすい特徴を持つものだというが、これが旧モデルでは分散していなかったことで発熱し、そこでエネルギーロスが発生していた。そこを改善したことが低燃費へつながっている。結果としてラベリング制度では旧モデルの「A」より1ランク高い「AA」を獲得することに成功。転がり抵抗も13%低減している。
ロングライフに対する答えは、パターン剛性の変化が効いている。RV503とRV504を見比べてみると一目瞭然だが、ひとつひとつのブロックがかなり大き目になり、アウト側のショルダー部を広くしていることも理解できる。まるでスポーツタイヤのような顔つきだ。これにより接地圧も均一化が図られ、耐摩耗性能は8%向上、耐偏摩耗性能は33%も引き上げられたというから興味深い。
シッカリ感が進化したエナセーブ RV504
その実力を知るため、新旧製品を比較試乗する。そこで明らかに感じたことは、シッカリ感がかなり高まったということだった。ステアリングを切り始めた瞬間から感じられる剛性は、クルマがひと回り小さく、そして車重が軽くなったかのような錯覚に陥るほど。特にS字カーブのような場所で切り返した時に、ふらつきが少なくなった感覚が高い。これはブロック剛性が高まったことだけでなく、トレッド内部に高剛性ブレーカー(RV503比で20%増量)と、フルバンドを採用したことも効いているのだろう。
そして特に感心したことは、スピードレンジが高いワインディングにおいて、操舵角が明らかに減っていたことだった。同じコーナーを拳1つ分くらい少ない操舵角で曲がれるこの感覚があるからこそ、ふらつきも抑えられるのだろう。レーンチェンジで計測したヨーの収まりも8%向上しているという結果も教えられたが、それが肌で感じられる仕上がりがこのタイヤには存在している。この操舵角の小ささがあれば、リアルワールドでの摩耗性能もさらに期待できそうだ。
ただ、乗り心地に関してはやや硬質。RV504のダンピングは入力を一瞬で収めるようなタイプに変化している。RV503のソフトなテイストとは違うのだ。RV503は始めの入力こそソフトに感じるが、その後はいつまでも動きが収まらない感覚がある。そして音に関しても決して静粛性に優れるタイプではない。こうした部分を求めるのであれば、より上級のVEURO(ビューロ) VE303を選択したほうがよいだろう。
だが、多くの人々が装着するであろうベーシックなエナセーブでこの仕上がりはなかなかのレベル。低燃費を確保しながら、摩耗や走りまでをよくしてくれたこのエナセーブ RV504の実力があれば、今後の低燃費タイヤのシェアはさらに拡大していくに違いない。