【連載】NAOさんのDIYでクルマいじり
第10回:乗り心地を改善するという、制振合金ワッシャー 準備編

 

タイヤ交換やサスペンション交換など大がかりな投資ではなく、取り付けるだけで乗り心地をよくできるというエーモンの特殊制振合金ワッシャー「静音計画 ロードノイズ低減プレート」シリーズ。きちんと科学的に根拠が証明されている素材を使用しており、それを実際に体感してみることにした

わたくし、かなり疑り深いタイプの人間です(笑)
 筆者が初めて自分名義で手に入れた新車はAE101レビンだった。バブル最盛期の設計だけあって、装備も内外装も鉄板も現在では考えられないほど贅沢に仕上げられ、クラスを超えた質感に感動したことは今でも鮮明に覚えている。

 今も昔も「パワーが上がる(かも)」「燃費がよくなる(かも)」という商品は不動の人気を誇る訳だが、残念ながら「信じる者でも救われない」というインチキ商品も(当時は)多数あり、2008年(平成20年)2月に公正取引委員会から排除勧告が出される以前などは、見るからに「こりゃダメだろう(笑)」という商品ですら堂々と店に並んでいたものだ。

 筆者が初めて購入したオカルトグッズ(あえてそう書かせてもらう)は、「燃料ホースに取り付けるだけで、磁気パワーによりガソリン分子がホニャホニャ整列され、燃費とパワーが○%よくなる」というシロモノだった。ホームセンターに大量陳列され、価格は確か7000円程で結構奮発して購入した記憶がある。そして喜び勇んで燃料ホースに取り付けたのだが……効果が全く感じられないぞ(笑)。若気の至り、1個では効果が足りないのだろうともう1個追加購入。そして、……効果なし。

 当時大手一流カー用品店で店長をしていた従兄に相談すると「おいおい、なんで買う前に相談しないんだよ!」と言われ、なじみのディーラー工場長に相談すると「燃費を0.1km/L向上させるためにトヨタがどれだけ研究投資していることか。“こんな”磁石1個で○%もよくなるなら全車に標準装備するはずでしょう」との回答。

 なるほど、至極ごもっとも。どうやら筆者はだまされたらしい(笑)。

 ちなみにこの商品、平成20年の公取排除勧告でバッチリ名指しされており、筆者の気のせいではなく、効果の証明ができなかったことを公的機関によって指摘されてしまった。

公正取引委員会排除命令
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.february/08020801.html

 元々の性格に様々な経緯が加わり、「波動パワーで……」「イオン効果で……」「電源ソケットに差すだけで……」と、書いているだけで気分が落ち込みそうだが(笑)、オカルト&プラシーボグッズについては人並み外れた嫌悪感と厳しい目で視るクセがついている。

フロントシートのボルトに挟み込むだけで約30%も振動を低減って、またまた~。でも?あれっ?きちんと測定したデータが書かれているぞ……

効果は本物、特殊制振合金で振動エネルギーを熱エネルギーに
 本連載でも紹介しているクルマのデッドニング(=静音化/高音質化)には制振材/吸音材/防音材などさまざまな素材を使用するのだが、レジェトレックスなど高性能制振材の基本原理はアルミシートとブチルゴムを使用して振動エネルギーを熱エネルギーに変換するというものだ。

 制振材はクルマのみならず航空機/新幹線/建築などさまざまな用途で用いられており、言うまでもなく科学的に明確な原理があり、性能も証明されている。今回試して見る「ロードノイズ低減プレート」も、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで特定周波数の振動を抑制することに成功しており、「波動パワーでなんとなく静かになる気がする」とか「クルマにマイナスイオンパワーがみなぎり、スムーズになった気がする」といったものではない。アルミ合金素材についての解説は膨大になるため割愛させていただくが、興味がある方は「M2052」などで検索すれば詳細なデータが手に入るので参考にしてほしい。

クルマ全体に制振材を貼り付けたくて仕方がない筆者にとって、待ってました!と言うしかないアイテムの登場だ。もちろん迷わず大人買い(笑)車種によってボルトの直径が違うのでよく確認しよう。筆者愛車の場合は、シート固定も足回り固定もM10ボルトだった
4個入りも10個入りも中身は一緒。まずは運転席シートの4個所だけ取り付けて効果を試すのもよいだろうちなみにこちらはM8ボルト用。見てのとおりサイズが一回り小さくなっている。大は小を兼ねないので、適切なサイズを選ぼう

取り付け簡単!ボルトを外して挟むだけでOK
 生まれてこのかたネジ1本締めたことがありませーん!という方はまずいないだろう。技術家庭の授業でも、カラーボックスの組み立てでも何でもよいが、ネジまたはボルトの脱着をしたことがあるならば、ロードノイズ低減プレートの取り付けは楽勝だ。

 なにしろ、ボルトを外す、ボルトに制振ワッシャー(ロードノイズ低減プレート)をはめる、制振ワッシャーが潰れるまでボルトを締める、以上完了!という簡単っぷりなのだ。ボルト保護のため、できればモンキーレンチではなくソケットレンチを使用したい。

多くの場合、ドアを開ければすぐに座席シート固定ボルトが見えるはず(写真はトヨタ ヴィッツ)ロードノイズ低減プレートは「完全に潰れるまで締める」でOKだが、せっかくなのでトルクレンチを用意したみたタイヤ交換を想定した製品なので、21/19/17mmのディープソケットのみ付属していた
このレンチの場合、お尻にあるロックつみまを緩めて、グリップ部分にあるゲージでトルクを指定するヴェルファイアのシートボルトは14mmなので、適合するソケットを用意。10mmも用意しておくと、何かと重宝かも
ボルトが深い場所にある場合、ソケットに強力磁石を取り付けておくと楽に作業できるぞそれでもボルトが取れない場合に備えて、折れた磯竿を再利用したスーパー磁石とりもちも用意。ちなみにこの磁石で燃費は向上しない

奥ゆかしいヴェルファイアのボルトたち(化粧カバーもりもりグルマの場合)
 大型ミニバンの場合、内装もそれなりに気合いが入っているためドアを開けても座席シート固定ボルトが見えない場合がほとんどだろう。ヴェルファイアもご多分に漏れずボルト関係は化粧パネルの奥底に隠れており、その化粧パネル自体も別のカバーに覆われていて、どこから分解したらよいのか迷ってしまうほどだ。とはいえ、工場で組み立てられている以上、逆の手順を踏めば必ず分解できるはず。焦らず無理せず1つ1つバラしていこう。

 まず必要なのは、ドアを全開にできるスペースの確保。狭い場所で無理に作業すると足腰肩に無理が掛かるだけでなく、ドアや部品を壊す原因にもなるためこれは必須と言える。また、取り外したパーツを傷つけずに置ける場所や、小さな部品をなくさないための準備などもしておきたい。せっかく内装を分解するのだから、あれもこれも……いろいろと妄想しつつ、次回に続く!

助手席をまじまじと眺めてみるが、座席シート固定ポルトの化粧カバーがどれなのかすら分からない状態常識的に考えてこの辺にボルトがあると思われる。こりゃ上から順番に全部バラしてみるしかないぞ
まずは足下のカバーを取り外す。プラスチック製のネジを手で回し、手前に引っ張ればパカッと外れる配線とともに外部からの騒音も入ってきてしまう場所のためか、カバー内側には吸音材が貼られている
運転席側も同様の手順で分解。このときばかりは、座席下化粧カバーになんだかんだと機材を貼り付けていることをちょっと後悔(笑)
次にステップ部を分解する。いつものことだが、クリップをバキバキ割らないよう慎重に作業しようシート下にある黄色いコネクタはサイドエアバッグ用なので、特に取扱に注意しよう(作業前のバッテリマイナス端子外しは大前提)ついにシート固定ボルトの目隠しカバーをオープン!ボルトを見つけただけなのに、この達成感はなんだろう(笑)

※クルマいじりは自己責任で。無理な改造は事故や故障、怪我の原因となる場合があります。もちろん、違法改造はやめましょう。



2012年 6月 12日