ラシーン専門店

突如現れたラシーンの群れ(ちょっとオーバー)を見て、そのまま見過ごすことができませんでした

(♪ティロリロン・リ・ロンリロンリ~♪ピ~ピ~ロ・ピピ~ロ~ン♪ X-Fileのテーマソングに載せて、今回はスタートしたいと思います)

 ある晩のことです。横浜横須賀道路を朝比奈ICで降り、鎌倉方面に向かう曲がり角の手前で、「こ、これは一体!」と思わず急ブレーキを踏みそうな光景を目にしたんです。それは……!

 ラシーン、ラシーン、ラシーン、ラシーン……夜露がかかり憂いすら感じさせる中古車展示スペースに並ぶ、たくさんの日産「ラシーン」でした。

 ラシーンは1994年から2000年まで製造/販売され、「Be-1」「PAO」「フィガロ」に続く日産のパイクカーシリーズの1台。背は低くコンパクトでシンプルな四角いボディーに生活4WD系の4WDシステムを採用する、カントリー風のラシーン。森のニオイを運んできてくれそうな、もしくはお散歩中の犬のような“街の癒し系”という印象があり、個人的に今でも好きなクルマの1台なのです。そこで「なんで、なんで、こんなにたくさんラシーンがいるの~?」と思い、お店に緊急ピットイン!?

 そこはラシーン専門の中古車店「タックス ラシーン専門店ブルーム」なのでした。怪しいオンナの飛び込み取材に快く応じてくださったのは店長の吉原さん。ラシーン専門店を立ち上げて今年で6年ほどになるそうですが、今年の2月に店舗をコチラに移されたそうで、どうりでこれまで知らなかったわけです。

 生産が終了してから10年以上が経った今でも専門店をされている理由は、やはり根強い人気があるからだとか。吉原さんご自身も2台のラシーンを乗っていたことがあるそうですが、それらもお客様に譲ることになるほど、好きな人は好きなんです。

ラシーンに限らず高年式、多走行距離車をいつまでも元気に保つために整備は大事です。専門店なら弱いところも知り尽くしているから、より安心なんですねそうそう、こういう淡い色がラシーンにはよく似合う。背の低い四角いボディながら、クロカン4WDのようにスペアタイヤをバックドアで背負っている後姿も、愛おしく感じますブルームさんではカスタマイズキットもオリジナル製作されているのだとか

 逆に言えば、どうでもいい方にとっては、このお店すら目に留まらないのかもしれません。一方で好きな人の中では特に女性の方から“可愛い”という理由で人気があるそうで、同性としてはまさに同感なわけですが、実は少し意外でもありました。旧いクルマに対して女性は不安を抱く方も少なくないからです。しかし、好きなクルマなら多少年式の旧いモデルでも購入意欲を持たれるのだと知り、嬉しくなりました。

 吉原さんに専門店ならではのメリットをうかがってみると……せっかくラシーンを好きで買ってくれた方たちが、購入直後にあちこちダメになってガッカリされないよう、ラシーンを知るお店ならではの重点的な整備をしてくれるのだとか。

 例えばラシーンはスロットルチャンバーやセルモーターが弱いそうで、これらについては新しい嫁ぎ先に向かう前に交換してしまうのだそうです。また後々のお金がかからないように、状況やお客さんの意向を汲みながら中古/リサイクルパーツなども対応。これについては修理のみならず、車検のコストも考えないと旧いクルマの場合は長く付き合うことができないことを知っているからなんですね。

日没の早まったこの季節。夜露に濡れたラシーンのどこかぼんやりと静かにたたずむ姿もいいね!価格はピンキリだそうですが、走行距離の少ないものにこだわるよりも、健康状態(車両のベース)のよいものを選ぶことで、手のかからないよい子と長いお付き合いができるそうです。バックのダイハツの看板は、同系列でダイハツのディーラーをやっているためですから、あしからずラシーンのカスタマイズは好きな人ははまるらしいけど、私は素の方がいいかなぁ
ラシーン群を発見してから緊急ピットインするまでの短時間に、何度もクルマたちとこの看板を交互に見ては、関係性を探ってみたりして……。結局は思い切ってお店に立ち寄ってみた次第です店内にはこのようなラシーンとオーナーさんの写真がいっぱい貼られていて、皆さん楽しそうに写っていましたさすがは専門店です。お店はラシーン好きが遊びにくる空間にもなっているそうです。こういう場所でたわいもないけど大好きなクルマの話をするのが楽しいんですよね

 購入時、多走行距離のモデルを嫌う方もいらっしゃるそうです。が、それはもうそろそろ難しい話でしょう。実際、走行距離が10万km、20万kmのラシーンだってピンピンして、元気よく走っているそうです。大事なのはメンテナンスなのですから……。このお店には、以前こちらで購入された方が手放す際にも相談にいらっしゃることもあるそうで、「出戻りも嬉しい」と吉原さんはおっしゃいます。ユーザー履歴が分かる方が安心だからだそうです。ごもっとも!

 今回のラシーンたちとの遭遇を通し、やっぱり専門店っていいなぁと思いました。マニアと呼ぶにふさわしい方たちが愛するモデルは、ラシーンに限らず、専門店があるとマニアにとってもクルマにとっても、ハッピーなのです。価値が分かる方に引き取られ、新しいオーナーさんにまた愛されるラシーンは幸せ。買取り価格も違うようですよ、ぐふふ……。

ラシーンは乗っても眺めても楽しいクルマと言えるのではないでしょうか。乗って楽しく見て美しいクルマはあっても、眺めて楽しくなるようなクルマはなかなかあるものではありません。改めて、クルマの魅力が性能だけではないとつくづく感じさせられました

 最近はさすがに出回る数が減ってきているそうで、仕方がないとは言え、少し淋しい気がします。そこで専門店があるクルマは、そういうお店にお持ちいただくことをおすすめいたします。それにしても、ラシーンの居場所がちゃんとあることを知ってよかった。日本で長く愛されているモデルと言えば、ヨハタチやエスハチ、トヨタ2000GTやマツダ コスモスポーツ、最近ではGT-Rやロードスター、ハチロクなどもありますが、どれもスポーツカーばかり。街の実用車的なモデルでももっと愛されていいクルマがあるはずです。

 いや、正直、そういう風に愛着を持てるクルマが日本には少ないです。クラシック・ミニや初代フィアット500のように(フィアット・パンダのほうが近いかも?)、長くたくさんのラシーンが街中を走り続けられるといいなぁと心から思ったのでした。

 ちなみに日本には4~5店舗ほどラシーン専門店があるようです。比較的、お店同士、ヨコの繋がりもあるようで、つくづくラシーンは幸せですね。

飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/

(飯田裕子 )
2011年 11月 4日