旧車も走ってこそ
このイベントでは1カテゴリーにつき2回のフリー走行が行われました。フリー走行とはいうものの、最初だけはレースのスタートのように並び、走行開始。この眺めがまたよかった |
「リヴァイバル・モータリング・ジャパン in 茂原ツインサーキット」にお邪魔しました。これはクラシックカーのイベントで、34年前に筑波サーキットで初めて開催された「クラシックカー・フェスティバル」を再現したいと、テクニカルイラストレーターの大内 誠氏が発起人となり、旧いアルファに乗りとして有名な眞田文宏氏、ロータス乗りの福田美雄氏らと共に企画・開催されました。
クラシックカーのイベントとはいうものの、車輌や年式にはこだわらず、そのかわりカテゴリーを分けて、フリー走行が行われます。例えば「リヴァイバル・船橋」。1965年からわずか2年間という短命ながら、名勝負が繰り広げられ、今もレースの歴史に名を残す船橋サーキットがありました。そこで日本のクラブマンレースの原点を再確認すべく、ロータスやオースティン、日産ブルーバード411やホンダのS800などが元気よく、本当に元気よく走行をしていました。
他にも「リヴァイバル・シルヴァーストーン」や「リヴァイバル・スパ・フランコルシャン」、「リヴァイバル・モンツァ」など、その時代やサーキットでのレースシーンや車輌の性能に合わせたカテゴリーの中で数十台のクラシカルなモデルが走行を行っていました。
1965年式のアストンマーチン「DB5」で参加された神谷さんのオーナー歴は、なんと22年。エンジンパワーもトルクもある4リッターエンジン(5速MT)のボンドカーで、サーキットを走るのがとにかく楽しいのだとか。当然ながらクルマはピッカピッカ。ボディーカラーがまた渋くてカッコイイ。オーナーの方も渋いオジサマで、DB5がよくお似合いでした。
1968年式の真っ赤なトライアンフ スピットファイアMk3のデザインに惚れているという小江畑さんは、パドックで走行前の車両準備すらも、愛おしそうに楽しそうにされていたのです。その様子を見るのも心が温かくなるようで、そういう風景を目にする度に「いいなぁ」という言葉を私は何度つぶやいたことか……。
実は私も今回、現行モデルの「フェアレディZ Version NISMO」で、オリジナルというランチア「ラリー037」やマツダ「コスモ スポーツ」などと共に走行に参加させていただきました。
ニスモのZもしっかりと造り込まれていて、走らせていて楽しいのですが、周囲のクルマに対して現代のスポーツカーのボディーサイズの大きさを実感。それほどスピードを出していたわけではないのですが、どうも威圧感があったのか、前を走るクルマが次々と避けてくださり、その中を色々なクルマを見物しながら走行した次第です。ラリー037の近くを走っているときなどは「あのランチアと一緒に走ってる~」と思うと興奮しました。
小さなボディと俊足さとクルマの挙動がわかりやすいほどよいロール感が新鮮で楽しいコニリオ(後方のレモンイエローの車両) |
興奮と言えば、さらに私は1968年式のホンダ「コニリオ」のハンドルも握ることができたのです。コニリオはホンダ「S800」をベースに造られたレーシングカー。なかなか見る機会もないと思われます。昨年の某自動車イベントでこちらのレモンイエローのコニリオを見つけ、当時は名前すら知らなかったためオーナーさんにクルマの素性をうかがっていました。
そして今年、偶然にも再会し「よかったら運転してみませんか」なんてありがたい声をかけていただきました。実は最初は、こんな貴重なマシンを運転することに躊躇していたのですが、某CG編集者大谷氏が「めったにないチャンスだよ」と背中を押してくださり、お言葉に甘えることに……。オーナーの方に「エンジンは何回転まで回していいのですか?」と聞くと「回せるだけどうぞ。でも9500rpmくらいがいいでしょう」。「キュ、キュウセンゴヒャク~!?」。それは未知の世界。
しかし実際に走らせてみると、小柄で超軽いコニリオは、エンジンは素早く高回転まで吹け上がり、とても軽快に走ってくれました。近年のボディーやサスペンションをガチガチに固めたライトウェイトスポーツカーにない、適度なしなやかさとロール感が快感! 近年のソレよりも、私は断然コッチの方が味わい深く、楽しくていいなと思いました。
夢のようなコニリオとのドライブ。横から見るといかにボディーが小さいかお分かりになるでしょうか | 右側にしっかりとトラクションがかかっている様子。クルマがイキイキと走っている証拠です! | コニリオのオーナーの池田さん(左)とCG編集者の大谷さん。この2人のおかげでコニリオのハンドルを握るという夢のような経験ができました。ありがとうございました! |
クラシックカーのイベントは、国内外でいくつか見る機会がありました。旧いクルマを博物館で見るのも楽しいものです。しかし私がこれまで見たイベントの中では、アメリカ西海岸で夏に開催されるペブルビーチでのクラシックカーショーと同時に行われる、ラグナセカでの模擬レースや、初夏にイギリスのグッドウッドで開催されるフェスティバル・オブ・スピードなど、旧くて貴重なモデルながら実際に走らせて見せてくれるイベントにワクワクします。つまり、動かない名車を眺めるのもいいけれど、クルマは走っている姿がやっぱり美しいと思うことが多いのです。
今回のイベントもレースではなくフリー走行というカタチではあり、走行ペースも様々でしたが、コース脇で走行を眺めているだけでも、十分にこのイベントを楽しむことができ、来てよかったと思いました。もし旧いクルマを博物館でしか見たことがないという方は、サーキットやラリーイベントなどをご覧になることをお勧めします。街中よりも雰囲気はあるし、ドライバーたちもその気になって走るため、よりクルマたちもイキイキとして見えるからです。
これからの季節は旧いクルマにとって優しいシーズン。“食欲よりも車欲の秋”を楽しみたいものです。
【お詫びと訂正】記事初出時、茂原ツインサーキットの名称を誤って記述しておりました。また、大西さんのお名前を誤って記述しておりました。お詫びして訂正させていただきます。
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2011年 10月 27日