飯田裕子のCar Life Diary

犬と温泉

我が家の愛犬、ラブラドールのルビー

 日本ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査(2010年度)によると、犬猫の飼育頭数の合計は2147万3000頭(犬:1186万1000頭/猫:961万2000頭)。この数は人間の子供の人口をはるかに上回っています。近年、ペットと人間の距離はグーンと縮まり、家族の一員としての存在が大きくなっていると、私も実感しています。

 私の実家でも私が子供のころから犬を飼っていました。ビーグルのジンに始まり、雑種を多いときには5~6頭も一度に面倒見ていたこともあります。その後ジャーマンシェパードのラッキーを飼うことになり中型犬の賢さと可愛さが忘れられず、ラブラドールのアニモとハナに出会い、ラブラドールは現在のルビー(以後は愛称の“ルビさん”)で3頭目。

 10頭以上の犬と過ごし、看取ってきました。犬は番犬として外で飼うものという印象も、今では家の中で寝食を共にするパートナー的な存在へと変わっています。犬の健康を気遣い食事も変わりました。もう“エサ”なんて言ったら失礼なくらい?

 そんな時代ですからペット(今回は犬に注目)とお出かけしたいという方が増えるのも不思議ではない。例にもれず、私の家でもラブラドールの“ルビさん”と娘(私)と温泉に行きたいという母の希望により、箱根のホテル凛香という温泉付きの宿泊施設に行ってきました。

「お出かけするのよ~」と声をかけるも、気が進まずウロウロ。シブシブ乗り込むも少々ふてくされている様子のルビさん
休憩後、相変わらずクルマに乗り渋るルビさん。フィットはボディーサイズと後席を畳んだ際のこのスペースが魅力で選びました。つまり母とルビさんがお出かけするためのクルマなのです
箱根湯本から強羅までは新緑のドライブが気持ちよく楽しめました

 「愛犬とクルマで温泉旅行」は私にとっても初の試みでした。ルビさんは現在13歳(メス)。盲導犬を生む母犬として8歳まで子供を産み続け、リタイヤすることになり私の家にやってきました。ちょうどハナが癌で亡くなり、寂しくしていたところでした。若くないルビさんはあと何年生きられるのか分からないけれど、おとなしくて躾も行き届いており、若くない母にとってはちょうどよい相棒です。私も実家に帰る度に癒され、大好きでたまらないのです。

 ところで母とルビさんとのこれまでのドライブと言えば、病院かペットホテルへの往復のみ。つまりルビさんはクルマに乗る=“病院”もしくは“預けられる”という印象しかないのです。前の飼い主さんとクルマでお出かけしていたそうですが、我が家にやってきてからは彼女にとってステキな所へ連れていってもらうことがなかったのです。果たしてルビさんは今回の温泉旅行を楽しんでくれるのか……?

 ちなみにクルマはホンダ「フィット」です。母用のクルマとして大きなサイズは必要ではなく、少々小太りのラブラドール(家のラブラドールは代々太り気味)を乗せるのに、センタータンクレイアウトを使用するフィットの後席を跳ね上げて前席の後部をフラットに使えるのが便利という理由で選ばれました。

 お洋服まで新調してもらったルビさんはシブシブとクルマに乗り込みました。おそらくルビさんは母がよそ行きの洋服を着て私と嬉しそうに出かける様子から「また私はペットホテル行きなのね(ショボン)」と思ったに違いありません。が、次にクルマを停めたのはPA(パーキングエリア)。そして遂には色んな犬のニオイのするこれまでにきたことのない場所(ホテル)に到着。動揺していた様子が少々心配でしたが、人間は館内やお部屋の犬と泊まることを忘れてしまいそうなほどの清潔感ある雰囲気に大満足。

 到着後はまずルビさんを温泉に入れ、続いて人間も温泉に入り、湯上りに夕方のお散歩をすませるとディナータイムです。こちらのホテルは人間のみならず犬のご飯もデザートを含む4品のコース料理(有料)が楽しめるのが魅力でした。そして、犬と泊まれるホテルのレストランは私にとって不思議かつ特殊な空間でした。「何でしょう、この雰囲気は…!?」てな具合です。

 ほとんどの宿泊客が犬を同伴し、何とも幸せそうな笑みを浮かべながらお食事をしている。皆さん犬好きなわけで、よそのワンちゃんにも優しく声をかけ、皆さんが癒し癒されることにより生まれるホンワカとした空気は特別。ほかのどこでも味わったことはありません。人間の赤ちゃんや子供にも癒されるけれど、食事となるともう少し大変でしょう? ディナータイムは犬平和ボケしそうなくらい、ゆったりと優しい時間が流れていました。

お部屋には「ウエルカム ルビーちゃん」と書かれたプレートがついていて人間大喜び。紛れもなく“親バカならぬ犬バカ”です
お部屋には犬のための飲食用のお皿やトイレはもちろん、排泄物を片付ける用品、消臭剤などもお部屋に完備されていました
犬用のエントランス。お散歩のあと、こちらで足を拭いたり糞の後片付けもできました。ちなみにこちらのホテルは人間の入るお風呂以外、犬はどこにでも居ることができ、それはお部屋の中も同様でした
犬のスパエリアへ。普段からお散歩中に川に入ることもあり水を嫌うことはなかったのですがなぜか躊躇。母に抱えられるようにして半ば強引にお湯の中へと入りました。全身にお湯をかけられ、しばらく大人しくお座りをして湯船に浸かるルビさんが気持ちよかったどうかは分かりません。が、人間は「気持ちよさそう」と満足
ディナー用のお洋服に着替えて食事を待つルビさん。いつもならお散歩の後にすぐ食事ができるのに、少々待たされてちょっと申し訳ないと思う人間(私と母)
犬用の食事は人間と同様素材にこだわり、薄味ながら人間も食べられるのだとか。デザートのロールケーキを一口いただいてみたら美味しかったんですよ。もちろん人間の食事も大満足。テーブルの傍らで次の食事を待つルビさんの視線が少々痛かった……

 実際のところ、ルビさんは相変わらず大人しいものの落ち着かない様子でした。家では昼夜を問わずいつも寝てばかりいるのに、ココではなかなかお昼寝もしません。念のためにと用意してきた自分のお布団のニオイに安心感を抱いているようでしたが、夜中に突然起きてお部屋の中を徘徊するという珍しい行動もあり、深夜のお散歩に出かけました。また早朝にどこかの犬がキャンキャンと吠え始め、私も母も思いの外早起きをすることになってしまったのも事実。慣れない旅、ましてや犬と一緒とあらば色々なハプニングがあるもの仕方ありません。

 それでも母と私とメス犬のオンナ旅は楽しい2日間でした。家とホテルの往復とは言え、ルビさんを乗せて走るドライブは嬉しくてルンルンでした。自然と速度もゆっくりとなり、私にとってすべてが癒しの時間でした。また動揺や不安を抱く様子も見受けられたルビさんの一挙手一投足がすべて可愛くて愛おしかったのです。今回の旅が人間の自己満足だけでなく、ルビさんにとってもハッピーな時間であったのならよいのだけど……。

珍しくお昼寝をしなかったのは緊張していたのかもしれません。また深夜にも起き出し、母を起こすことも珍しいそうです。寝顔が可愛くてずっと見ていたいと思う私でした
朝のお散歩のあと朝風呂へ

 ところで、宿泊先選びは人間のみで利用するよりも少し注意が必要で難しいことが分かりました。インターネットで検索しただけでもペンションや高級旅館、ホテルなど色々とヒットします。そこで大事なのはコンセプト。

1.人間が旅のメインで犬も連れていきたい(宿泊先での犬の行動範囲の制限が異なる)
2.人間と犬が一緒に泊まれればハッピー(カジュアルさが魅力)
3.犬も人間も快適なのがよい(食事やホスピタリティのレベルがともに高い)

 大きくはこの3タイプに分類できそうです。

 私たちの場合はルビさんとは初めて、母とは久しぶりの旅行だったため、犬も人間も快適であることを求めましたが、頻繁にお出かけされる方にとってはホスピタリティよりも気軽さを優先したくなるのかもしれませんね。また、犬のサイズによって選択肢は異なり、もっとも利用しやすいのは小型犬。箱根や伊豆周辺でも中型犬や大型犬は限定されます。

 とは言え、高速道路のSA(サービスエリア)にもドッグランや水飲み場があり、ペットと入れるお店や宿泊施設も増えています。そんな状況からカー&ライフスタイルの変化に何となく気づいていたものの、今回の旅でそれらを改めて実感できました。

 人間とペットとの距離が近づくことでクルマの役割も変わり、もしかしたらこれまでよりもクルマの存在価値も大きくなっているのではないかと。ヨーロッパのようにもっと自由になるとよいと思いますが、そのためには飼い主の躾やマナー、モラルある行動が求められるのかもしれません。

 最後に、ルビさんは温泉旅行から戻ったあと爆睡していたそうです(笑)。また付き合ってくれるかなぁ、ルビさん……。

宿探しはWebサイトのほか専門誌も参考に選びました。ペットとの旅情報はますます増えているようです
後日、取材中(クルマ)に出会ったドライブ休憩中のフブキちゃん。クルマでのお出かけに慣れている様子で、お行儀もよく、飼い主さんに撮影の許可をいただくとポーズもご覧のとおり。クルマはトヨタ「アイシス」でした。ご家族の和やかな様子から、ペットとドライブに出かける魅力をさらに実感

飯田裕子