マツダの新しいフェーズ

CX-5

 マツダが大きな変革の時期を迎えています。今年はマツダが環境性能という大テーマに対し、新しいフェーズに入ったことを実感できる年になる模様です。

 マツダは、世の中がハイブリッドやEVに注目している間にも、マツダ流のビジョンのもと、環境対策技術やそれを搭載するクルマ造りを進めていました。2002年に「アテンザ」が登場すると同時に「zoom zoom」というコンセプトが生まれ、走る歓びを追求してきたマツダは基本性能の洗練にこだわり、「ロードスター」のようなスポーツタイプのモデルでなくても運転が楽しいと思えるモデルを登場させていました。「デミオ」のちょっと硬めと言われていた足まわりも私は好きでした。

 その後、環境意識が急激に高まり、マツダも「zoom zoom」を継続しながら、2015年には世界中のマツダ車の平均燃費を2008年比で30%改善する計画を、2007年に立てたのでした。

 このビジョンを達成するために、内燃機関の改良を軸に、トランスミッション、ボディー、シャシーなどのプラットフォームを含めた、すべてのベース技術の進化を最優先にしているとのこと。またアイドリングストップやエネルギー回生、ハイブリッド、EVなどを段階的に導入する予定であり、すでにアイドリングストップは2009年のアクセラから順次、採用されています。

 では、メインとなる内燃機関の改良やトランスミッション、ボディー、シャシーなどはと言えば……その柱となるのが「スカイアクティブテクノロジー」なんですね。この技術を採用するモデルが今年6月から、“ポンッ”、“バーン”、“ダ・ダーンッ”という具合に登場中であり、ゆえに今年が新たなフェーズに入ったことを感じさせる年になりそうなのです。

 6月には「デミオ」のマイナーチェンジに伴い、直噴エンジン「SKYACTIV-G 1.3」を搭載する10・15モード燃費30km/Lの低燃費モデルを追加しました。これはi-Stop(アイドリングストップ機能)など、燃費に有効な機能も搭載されているけれど、スカイアクティブ系としては、エンジンにだけそのテクノロジーが採用された、言わば第1弾でした。確かにエンジンが素晴らしいのですが、後に登場するフル・スカイアクティブ・モデルと比べたら“ポンッ”。

スカイアクティブエンジンを搭載したデミオ(左)と、エンジンに加えてトランスミッションもスカイアクティブになったアクセラ

 では第2弾はと言えば、先日マイナーチェンジされたアクセラ。こちらには新開発の直噴エンジン「SKYACTIV-G 2.0」に加え、6速AT「SKYACTIV-DRIVE」も採用され、10・15モード燃費が20km/Lという低燃費で“バーン”と登場。

 そして第3弾として“ダ・ダーンッ”と登場予定なのが「CX-5」です。このモデルでは、2リッター直噴エンジンと6速ATの組み合わせはアクセラと同様ながら、さらにボディーやシャシーにもスカイアクティブテクノロジーが採用され、現在のマツダが可能とする技術を盛り込んだ、現段階の理想モデルということになるでしょう。

 排気システムや軽量化まで追求しなければ、理想的な低燃費車は作れません。ボディーの軽さは走りにも貢献するわけで、マツダは走る歓び「zoom zoom」性能でも新たなフェーズに入るにふさわしいモデルをこのCX-5でやろうとしているのです。

 走る、曲がる、止まるという基本性能に優れたモデルはドライバーの思い通りに走らせることが可能で、その結果、万一の際の回避性能も高まり、それ以前に万一の場面を減らすこともできるはずです。そして思い通りに走らせることができるクルマなら、たとえセダンであってもドライビングも楽しめるものと、私はこれまでの経験を通して実感しています。

パワートレーンだけでなく、シャシーやボディーまで総合的に低燃費と気持ちよい走りを目指して開発したのがスカイアクティブ

 マツダもそんなことはとっくに分かっているわけですが、今回はクルマ側がそのようなドライビングを仕向けるというよりも、ドライバーの感覚や操作に対し、より忠実なハンドリング性能を持つモデルへと進化させています。

 実はCX-5のプロトタイプを試乗させていただいたのですが、アクセルの踏み込みに対しスムーズかつリニアに反応する加速感や、ハンドルを切ったらしなやかに曲がる応答性など、進化というよりも洗練を感じさせるクルマへとこのSUVは向かっているようでした。

 足の小さな方でもアクセルが踏み込みやすいようにオルガンタイプのアクセルを採用し、今後は標準化する予定。さらにサイドミラーもドア下に取り付け、Aピラーとミラーの隙間を作り死角を減らす設計も、CX-5から全モデルに採用していく予定なのだとか。CX-5は乗降性にもこだわっていましたし、ラゲッジの使いやすさにも工夫が感じられます。そもそも着座位置が高く視界の良いSUVですから、デザインさえお好みに合えば、新フェーズに入ったマツダのエコと「zoom zoom」を十分に感じられるモデルになりそうです。

 その点では、ディーゼルはどうでしょうか。今回はプロトタイプながら右ハンドルの2.2リッターターボディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」を搭載するCX-5の試乗も可能でした。ガソリンエンジンのような、スムーズかつ伸びやかな加速感を持つディーゼルエンジンはかなり魅力的。それにディーゼルにもi-stopを初採用しているという点も好感が持てます。ディーゼルは欧州を睨んだモデルではありますが、あらゆる性能に優れ、日本の排ガス規制に対応しています。そんな国産ディーゼルが日本にも導入されたら乗ってみたいと思いませんか?

 内燃機関の劇的な改良とそれを効果的に生かすクルマ作り。ちなみに低燃費ガソリンエンジンは、ダイハツからも「ミラ イース」というモデルで登場させていて、こちらも一目を置くモデルです。ハイブリッドやEVもいいけれど、そういった新兵器に頼らずに既存のクルマに最先端の技術で挑むこの取り組み、ハイブリッドやEVが世の中の話題の中心にある今だからこそ、マツダのプロジェクトが新鮮でありマツダらしいと思えるのは私だけでしょうか。

飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/

(飯田裕子 )
2011年 10月 13日