東京モーターショー、Again!

 モーターショーのプレスデーが終わりました。

 今年から東京ビッグサイトに移ったわけですが、会場の面積は数値的に広がっているわりに、1つ1つのブースは少しコンパクトな印象を受けます。ですから、東西の建物の移動を除けば比較的テンポよく見られるかもしれません。それほど混雑した状態でなければ……の話ですが。

 東西に分かれた展示会場は、欧州勢が戻ってきたことで前回よりもさすがに華やかな印象を受けます。欧州勢の展示ブースはそれぞれ規模こそ異なるものの、そのクオリティや造り込みにはメーカーとしての統一感が感じられます。そんなブースを歩きながら、「モーターショーはやっぱりこんな風に華やかじゃないとね」と思った次第です。

欧州勢が戻ってきた東京モーターショー。フォルクスワーゲン(左)やアウディはワールドプレミアも用意

 肝心の中身はというと、今年は環境性能もコンセプトカーも新型車も、話題に事欠かないショーになっていました。特にコンパクトカー&マイクロカー系はオモシロイ!

 クルマの展示内容についてはCar Watchの本編のほうでご確認できるでしょうから、ココでは実際に会場で見て気になった市販車と実車化されたらいいと思う魅力的なコンセプトカーをいくつかのテーマに沿ってご紹介したいと思います。

どちらがお好き?
 トヨタ「86」(ハチロク)とスバルの「BRZ」。共同開発ですから遠目に見れば同じように見えるかもしれませんが、随所で違いをアピールしているようです。

 走りには両社で若干乗り味の違いがあるとか、ないとか……。少なくとも近年の高性能化に向かうスポーツカーとは真逆のスポーツカーと言えます。日産「GT-R」のような電子デバイスで4WD制御するタイプではなく、高価でもなく(おそらく)、一方ではマツダのロードスターよりも実用性も兼ね備えたFRスポーツカー。ボディ剛性の高さや軽さ、そして低重心を可能にする2リッターの自然吸気水平対向エンジンのほどほどのパワーやトルクなど、基本性能をシンプルに楽しめる点が新鮮であり魅力でしょう。

86BRZ

早く市販しちゃえばいいのに
 私は単なるデザインコンセプトというのを見てもあまりピンとこないタイプなのですが、最近は、そこに秘められた技術がコンセプトに合致するとグッときます。

 例えば2年前のショーで見た三菱の「PX-MiEV」は、欧州のSUVと並んでも引けを取らない個性的なスタイルにカッコよさを感じました。そしてさらに1.6リッターエンジンとモーターを動力とするプラグインハイブリッドで、モーター駆動をメインとするシステムでした。インテリアもデザイン性はもちろん、殺菌や消臭効果のある素材を使用し、UV-Aを遮断するガラスやドライバーモニタリングシステムなどを採用していた点に女性はグッときたものです。

 今年のショーではデザインもほぼそのままに「PX-MiEV II」として再び登場しています。動力は2リッターエンジンとモーターを組み合わせるプラグインハイブリッド。乗車定員は4名から5名になりました。私が入手した立ち話情報では、このデザインをほぼ採用した状態で、近々市販化される予定があるのだとか。細かな技術提案がなかったのは、より現実的なカタチになってきているからなのか……。

 今回ランドローバーでは「レンジローバー イヴォーク」というスタイリッシュなSUVが日本初上陸。こちらを見ていたら、三菱だって早く出さないとせっかくの個性的なデザインの鮮度が落ちてしまいそう。

PX-MiEVレンジローバー イヴォーク

早く売り出せばいいのに × どちらがお好き?
 世の中には“美しすぎる●●●”と称される人がいますが、クルマだってありますね。

 今年のショーで美しすぎる系コンセプトカーを挙げるなら、メルセデスの燃料電池車「F125!」や、マツダの「雄(タケリ)」、BMWのプラグインハイブリッド「i8 コンセプト」あたりでしょうか。特にマツダの「雄」などは、質感も何もかもこのままで行けば、マツダのフラッグシップと呼ぶにふさわしいモデルになるのではないでしょうか。

 内燃機関にこだわって“ガソリンでもエコ、ディーゼルでもエコ”みたいな、これはもう心意気と呼ぶにふさわしいストイックさと現実味のあるパッケージがますますスピード感ある販売を求めたくなります。

雄(タケリ)F125!i8 コンセプト

 

REGINA

売っちゃえばいいのに
 スズキが展示している「REGINA」(レジーナ)。同クラス比で100kg以上の軽量化を実現し、減速エネルギー回生システムなども採用した低燃費車。そのうえ、こんなにユニークかつ質感の品のあるスタイルをしているのです。「エコカーにも個性を! デザインの楽しさを!」と私はこのコンセプトカーを見て叫びたくなりました。

 欧州ではよくよく考えてみれば個性的なコンパクトカーがあります。シトロエンやアウディはどうでしょう? それらを見ると、REGINAが市販予定のないコンセプトカーだなんて、悲しいではありませんか……。今回、個人的には一番ショッキングな情報だったかもしれません。

 トヨタのブースでボディをディスプレイにした「Fun‐Vii」を展示するとともに、映像で内外装の色や模様を変えて走る様子が紹介されていました。多くの方はコンセプトカーを見ては「こんなこと実際にできるのだろうか……」「SF映画の世界に登場しそうクルマだな」なんて考えるのではないでしょうか?

 このコンセプトカーをデザインしたトヨタデザイン本部の荒川佳則さんに可能性をうかがってみると「10年くらい先であれば現実のものになるかもしれません」と答えてくださいました。

 コンセプトカーは目に見えているデザインのみならず、細部にも技術の提案がされているわけで、パッと見の印象だけが全てではない。でも会場に展示されたスタイリッシュ&ユニークなコンセプトカーたちを見ているうちに、この数十台のコンセプトカーばかりが街中を走る様子をCGで作って、会場の一部にシアターなんかつくって見せてくれたら楽しそうだなぁと思ったのですが、どうでしょう。

 21世紀、クルマは空を飛んでいると想像していた私ですが、どうやらそれは無さそう。10年先のクルマ社会が今の想像と異なる形態であっても、私が子供のころのように何か夢を描けるような提案をメーカーの垣根を越えてできたら、次回は今年以上に楽しいモーターショーになるかもしれません。そうそう、今年のモーターショーの一番大事な感想がまだでした。私は“ショー”的な部分は確認できていないのですが、“モーター”の方は十分に楽しめる、ワクワクする内容だと思います!

飯田裕子の個人的なお知らせ
「東京モーターショー2011 “全部見せます”スペシャル」
http://www.nikkei-cnbc.co.jp/tms2011/
プレスデーにメーカーが行ったプレスカンファレンスの様子や、特別取材を行った特番を12月30日まで、105円で見られます! 遠方で会場に足を運べない方、モーターショーに行く前に事前チェックしたい方はぜひ、ご覧ください。飯田裕子がコメンテーターを務めています。

カー旅シンポジウム(12月3日14時~、東京ビッグサイト 会議棟6階 607会議室)
http://cartabi.jp/topics/index.php?itemid=48
“自動車旅行で日本を元気にする人「カーたびスト」になりませんか?”というテーマでシンポジウムを開催します。出演は飯田裕子とタレントの北川えりさん、旅エッセイストの国井律子さんの3人。ぜひ、お越しください!

飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/

(飯田裕子 )
2011年 12月 2日