東京モーターショー最終日に行ってみた

フォルクスワーゲン・ブースのフィナーレ

 第42回東京モーターショーの最終日(12月11日)、来場されている方たちにお話をうかがってみたくて、大混雑の会場へ踏み込んできました。

 最初に声をかけさせていただいたのは、会場から出てきたばかりの小室ファミリー(茨城県)。家族みんなでクルマで来たそうで、「駐車場は混んでたんですけど、臨時駐車場に停められました。今年から会場がビッグサイトに変わったせいか、とにかくもの凄い人でしたね」というのが奥様の第一印象。

 展示内容についてご主人は次世代自動車が目についたそうですが、奥様はスズキのレジーナ(コンセプト)が一番印象に残っているとのこと。「いつ、いくらで出るのかがとても気になりました。あれで幼稚園に送り迎えしたいなぁと思ったんです」と奥様。私も奥さんのチョイスには賛成! 個性的なスタイルのエコカーがもっとあってもいいと思うからです。

 一方のご主人は「エコカーが気になったので色々と見ていましたが、まだ高いですね」と残念そう。息子さんのタクヤくんはバスが好き。やはり子供は大きなクルマが大好き?

 男性2人で埼玉県からやって来ていた高柳さんと安田さん。レクサスの文字が入った黒いトレーナーを着ていた高柳さんはレクサスのファン? 印象的だったのは電気自動車が増えたこと。しかし14年間乗り続けているというトヨタ「チェイサー」の買い替えを検討中の高柳さんの今回の一番の目的は「86」。「TRD仕様などを期待していたのですが、それはオートサロンまでのおあずけですかねぇ」と、少々残念そう。

レジーナ86を見るだけでも30分待ち

 安田さんは、お台場という立地のせいか、子供を連れた家族連れが多かったのが印象的だったそう。展示内容については安田さんも電気自動車が多かったことだそうで、「モーターで静かに動くところがとても興味深く、カッコいいEVならウエルカム。でももう少し安くなって欲しいですね」とおっしゃっていました。

 “若者のクルマ離れ”が取り沙汰されていることもあり、浦安から来た19歳の理系の男子学生たちに恐る恐る声をかけてみました。彼らは免許を取ってからクルマに興味を抱くようになり、今回初めてモーターショーに来たのだとか。そして「色々なクルマを見ることができて面白かった」と言ってくれました。特に印象的だったのは「輸入車系の速い高級スポーツカー」だそうですが、同時に国産でもオレンジ色の86やレクサスのLFAもカッコよかったのだとか。

 その一方で今回、マツダのLPG車に試乗できたそうで「自分の足として買うなら、あ~いうクルマかなぁ」と思ったそうです。私が「高級スポーツカーの速いやつを買えばいいのに」と言うと「そういうクルマは一般道よりサーキットで走らせてみたい」のだとか。クルマのゲームもあまりやらないそうで、趣味は水泳とかスポーツと言う男子たち。夢と現実をはっきりと分けているようで、感心と関心を抱きもっと色々とお話しをうかがってみたいくらいでした。

 また、原子力について勉強をしているという男子は新しい技術を見るのが目的だったのだとか。ホンダの自動運転のできるクルマが印象的だったそうです。「寝てたら、着く……みたいなのがいいんです」と言います。そもそも運転席より助手席が好き、という彼の意見も今どきの一意見なのでしょう。

 別の男子は、「スピードを出して空中を飛ぶ自動車があればいい」という意見。「道路を走るというのは決まった道しか走れないから、自由にどこにでも行かれる技術ができたらスゴイなと思うんです」という理由もまた興味深かったです。モーターショーに来るくらいですから、彼らは“クルマ離れの若者”にはあてはならないのかもしれませんが、会場には彼らのような男子たちが大勢来場していたことも喜ばしく目に映りました。

 「“クルマを持とうかなぁ”と思えるようなクルマがソコソコあったのかなぁ」とおっしゃるのは世田谷区からいらしていた宮本さん。「トヨタの86とかは非常に面白いなあと思いましたし、エコカーがどこもアピールしていたなぁと感じました」とおっしゃるので、特に印象に残ったエコカーをお聞きすると、「今後普及するかどうかわかりませんけれど、日産のEVなどはクルマ自体がよくても実際にもっとインフラの整備が進まないと普及はしないかなぁと思うので、どこまで普及が進むのかが興味ありますね」と私も深く頷ける感想と期待を述べてくださいました。

 鴨下さん(男性)、小野さん(女性)のカップルは、鴨下さんはBMWのコンセプトカーが印象的で、小野さんは人が多すぎて見れなかったから余計に86が印象に残り、さらに上層階の未来系のクルマやカーライフを展示しているコーナーが良かったのだとか。加えて「コンセプトカーを見ると、あ~いうのが出てくれたらいいなぁと思うんですけど、コンセプトで終わってしまうとモーターショーなんか楽しめないですよね。2年後、今回のコンセプトカーがまだ販売されていなくても、より現実的なカタチになって見せてくれるといいですね」と鴨下さん。おっしゃる通りだと思いました。

 埼玉から家族で来た千田ファミリーの奥様には、ヒュンダイのバスの中に乗る列にご主人とお子さんが並んでいるのを待っている間にお話をうかがいました。ご主人は数日前にお仕事で来場していたこともあって、「今回は私がBMWの、映画に出てくるのを見てみたくて来た感じです」と言い、映画に登場するクルマの宣伝効果も大きいことを強く実感させられました。

 三重県からモーターショーのために来たという女子は、目下、改造にハマっているほどのクルマ好きでした。マツダ派で現在は「CX-7」に乗っているのだそうですが、彼女には少々大きいようで、「CX-5」が見たくて来たのだとか。CX-5にはディーゼルエンジンも搭載予定なので意見をうかがうと、「今は環境とか燃料の種類とかあまりこだわってなくて、どちらかと言えば見た目重視なんです……」と苦笑していましたが、これもまた現実。

 しかしCX-5に試乗した感想を聞かれ答えると、目の前のその女子は目をキラキラさせて聞いてくれている……。そんな女子がいることにむしろ「ありがとう~」と言いたくなるほど、私は感動しました。

大きなクルマが好きで次回は是非アメリカメーカーにも戻ってきてほしいという、吉田さん(横浜)とお友達。後姿ながらモーターショーのガイドブックを掲げてくれて、雰囲気のある写真を撮ることができました

 横浜から来た吉田さんはどちらかと言えば大きなクルマが好き。だからアメリカ系メーカーのクルマも見てみたかったけど、参加していなかったのが残念だったそうです。初めて来たというお友達の女性、木村さんはこんなに盛大なものだとは思わず、驚いていました。彼女は現在、愛車の買い替えを考えているところで、コンセプトカーよりも、市販車を中心に見ていたそう。次回はアメリカのメーカーも出展してほしいと願うのは私も同じでした。

 会社の同期でやって来た某メーカーの方たちと、そのお友達たちからは少しシビアな感想をいただきました。

 1人の方は、「環境対策車ばかりで、それが決して悪いわけではないですが、どれもみんな同じように見えてしまうのが残念だった」と言います。「若者のクルマ離れを心配しながら、似たようなクルマばかりになってしまっているメーカー側にも責任があるのかなぁ、と思います。もっと自社カラ―を押し出したメーカーがあってもいいのかな」と厳しいご意見。「環境対策も非常に重要だと思いますが、もっとクルマに興味を持ってもらえるような環境対策車以外の提案があってもよかったんじゃないでしょうか」というご意見も。

 「想像よりもメーカー数が少なくて見応えには物足りなさを感じたけれど、それでも楽しかった」という方もいらっしゃいました。

 女性たちはほとんどがモーターショーが初めてということでしたが、チャンスがあればまた次回も来てみたいと言ってくれました。

 公平を記すためにも、私がお話しをうかがった方たち全ての感想をまとめて紹介させていただきました。ファミリーや女性へのインタビューは決して探し回ってうかがったわけでもなく、週末は本当に子供連れの家族も多かったんです。さらに私が声をかけて断られてしまったのは何とたったの1組。皆さん快くインタビューに答えてくださいました。ご協力ありがとうございました。

 今回、私がお話しを伺った方たちの中ではトヨタの86を見に来たという方も多かったのですが、それは注目度のみならずトヨタの宣伝効果も大きかったのだと思います。実際には兄弟車であるスバル「BRZ」も、多くの方がまわりを取り囲んでいたこともお伝えしておきたい。また、エコカーや電気自動車というコトバもとても多く聞こえてきました。中でも電気自動車はより身近な乗り物として興味を持ち、確実に身近な存在として期待を抱いている方が多いことを実感できました。

 今回の10日間の来場者数は842,400人。これは動員数の少なさが取り沙汰された前回に比べ37%増となりました。震災や海外の水害など自動車業界にとっても様々なことのあった今年、これだけ華やかにショーが開催され多くの方が来場されたことは本当によかったと思います。

 フォルクスワーゲン グループ ジャパン広報の池畑さんも、「どこのメーカーさんも同じだと思うんですが、今年は震災もありましたし、どういう風に演出していこうかとみなさん悩まれたと思うんです。ただ幸いにしてウチのグループ(フォルクスワーゲン/アウディ/ポルシェ)はショーとしてお客様に夢をご提供するということで、非常に賑やかにそして華やかにやれたことで、よかったね、と多くの方から声をかけていただいたんです。それはそれとしてよかったのかなという気がします」と、ショーを終えた感想を述べてくれました。

 私の同業者であり、たまたまショーのフィナーレを私と同じくフォルクスワーゲン・ブースで迎えた河口まなぶさんは、「前回が暗いムードだったので、それに比べるとすごく明るいモーターショーになっていたし、今年の前半に震災があって日本中が深刻な状況だったじゃないですか。それを超えてみんなで盛り上げて行こうみたいな意思が自動車メーカーからも感じられたし、外国のメーカーも戻って来てくれて、日本でワールドプレミアなんかもやってくれた。そこには応援のメッセージが入っていると思うんですよ。なので、我々はそれを受けて今後も自動車で元気になっていけるように盛り上げていきたいなというのを強く感じましたね」と、シミジミと語ってくれました。私もまったく同感です。

 今年は大成功と言ってもいいのではないでしょうか。だからこそ2年後のクルマやクルマを取り巻く社会の変化や進化も含め、次回のショーがまた楽しみです。

 2年後の東京モーターショーがより一層華やぎ、より一層エコでもファンでもメーカーの個性を強く感じさせてくれるクルマたちが、ステージに並ぶことを心から願っています。そのために、メーカーもインフラ整備や新たなクルマ社会に取り組む人たちも、我々のような仕事に携わる者たちも、夢(理想)と現実を確かに繋ぐ役割を担っていかなければいけないのではないか、と思います。

飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/

(飯田裕子 )
2011年 12月 19日