9月にドイツで開催されたフランクフルトモーターショーに行ってきました。今回はモーターショー取材に加え、メルセデス・ベンツの新型「Sクラス」のハイパフォーマンスモデル「S63 AMG」の試乗をオーストリアでするという、強行かつ濃厚な3日間を現地で過ごしました。S63 AMGについては、次回紹介したいと思います。
そんなわけで、ショーの方は2日間の取材が許されているプレスデーの1日のみ。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、フランクフルトショーの会場は広大です。何かの資料で幕張メッセの5倍以上の広さがあると読んだ記憶があります。主要メーカーが入る建物だけでも8つあり、その端から端まで移動するだけでも徒歩で15~20分はかかる。とても1日ですべてを取材するのは至難の業。綿密な行動計画を立てて移動しないと大変なことになるのですが、計画通りにいかないのも現実です。ここからはその様子を写真でご紹介していこうと思います。
メルセデス・ベンツのプレスカンファレンス。メルセデスとスマートがホールをまるまる1棟分使うという大変大掛かりなスペースです。中央は天井まで抜けていて、その周囲が3階建てになっており、エスカレーターで最上階まで上がって必然的にグルグルと市販モデルや体験ブースを見ながら1Fへ降りてくるという仕組みになっていました。1Fのエントランスにはスマートが展示されていました。
大きな専用会場にはとにかく多くのメディアが詰めかけていました。プレスカンファレンス後のステージ上ではディーター・ツェッチェ会長を囲み大勢の人だかりが……。驚くべき来場者数の多さを確認するなら、ぜひ画像を拡大してご覧ください フランクフルトショーに限らず、モーターショーの前日にはいくつかのメーカーが前夜祭的なプレスイベントを開催します。私は「Mercedes-Benz&smart Media Night」に出席。開始前にシャンパンなどのドリンクやフィンガーフードがふるまわれ、軽く喉とお腹を満足させたところで45分ほどのプレスカンファレンスが開始。会場入り口では、今年メルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク@東京でも紹介されたファッションデザイナーのジェレミー・スコットが手掛けた「翼のあるスマート」がお出迎え メルセデス・ベンツのプレゼンでは「エミッション&アクシデントフリー」が大きなテーマでした。いよいよメルセデスがクルマの自動化=自動運転を形にしたという感じです。
1888年にカール・ベンツの妻、ベルタ・ベンツがマンハイムからプフォルツハイムまでの106kmという長距離を初走破したBenz Patent Motorwagenとともに、メルセデスの大きな変化をアナウンスするディーター・ツェッチェ会長。それは革命ではなくクルマの進歩であるとし、「自動運転機能=インテリジェント・ドライブ」を備えた新型Sクラスが125年前にデルタ・ベンツが走った道を自動運転で走ったことを映像とともに紹介。ほかにも新型S500のプラグイン・ハイブリッドも登場。
スマートは都市におけるファミリー・ポリシーがテーマ。ライブ演奏とともに4人乗りのEVスマート「Smart four joy」(コンセプト)が登場。この新型が誕生すれば、「シティ・ユースでクルマの選択をする際にスマートかファミリカーかと悩まなくていい」と、スマート部門の責任者Dr.アネット・ウインクラーさん。
新型S500のプラグイン・ハイブリッドも登場したメルセデスのプレゼン さまざまな国の都市部でスマートがフリートユーザーを増やしていることを、23都市の名前が書かれたスマートを続々とステージ上を走らせました。小さなスマートならではの演出でした 技術解説の後、運転席に誰も乗っていない「S500 Intelligent Drive」の後席に乗って再び登場したツェッチェ会長。「正直、慣れが必要ですね」と笑っていました。公道を100km以上も走ることができた(万が一を想定しての有人ドライブでした)とは言え、まだまだ「S500 Intelligent Drive」は完全ではないそうで、今後も開発は続きます 自動運転をするために追加している装置はほとんどないのだとか。ただしダッシュボード上には間近の信号を認識するためのカメラを追加。フォルムが可愛い(すみません)。また、エアコンの吹き出し口付近にある赤いスイッチは自動運転中にトラブルが発生したときのためのエマージェンシースイッチなのだとか スマートのディーラーではありません。プレスデー当日のメルセデス&スマート・ショー会場の入り口です。ちなみに向かって左の端にはなんとビーチバレーのコートがあり、試合のほかダンスショーも行われていました EVスマート「Smart four joy」は来年デビュー予定です。fourはfor(~のために)とfour(4人)がjoyにかかったネーミング。joyは“生きる楽しみ”。シンプルなインテリアで印象的だったのは前/後席にスマートフォンがセットされているところ。ちなみに将来的には、ドイツ市場でパーキングチケットも料金精算をせずに利用できるという、街中でより便利な“スマートアプリ”なるものを導入するとかしないとか。いや、こういった流れは日本でもあるので、導入されるのでしょう。街でスマートが“もっとスマートに”使えるようになるわけですね メルセデスのCセグメントラインアップはBクラスから始まり、Aクラス、CLAに続いてこのGLAが4モデル目となります。メルセデスのSUVラインアップとしては5番目のモデル。もっともコンパクトなSUVはご覧のとおりスタイリッシュに仕上がって初披露されました。日本導入は来年の予定 CLの後継モデルは次期型から名前が「Sクラスクーペ」に変更になります。クーペの場合、やはりスタイリングが美しくなければクーペとは呼べないと改めて思い、頷けるデザインとなっていました。エクステリアとインテリアの雰囲気もマッチしています。コンセプトカーながら、かなり本番仕様のニオイがしました。市販化が待ち遠しい1台 i3でも移動。今回は専用スタンドを設けて、BMWのホールから各方面へと送迎をしていたようです。私は運よく流し(目の前でお客さんが降りた)をつかまえることができました。乗り心地はいいし静かだし、エクステリアは近未来的、インテリアはBMWの新しいデザインの世界を味わえます。かなり感動できる“乗り物”でした(私も大喜び!)。ちなみにこちらのドライバーさんはBMWのテストドライバーをされている方でした。「こんなにコンパクトなのに子供の乗降性やチャイルドシートの取り付けも楽なんだ」と教えてくれました。おっしゃる通りでした 今回のショーで発表となったi3(約460万円)は会場内をすでに走行して存在感をアピール。一方、i8はデザインがグッとデザインにまとまりが出て、来年の発表を待つばかりと言う感じか。価格は1000万円後半くらいだそうです iシリーズのグッズもすでに準備が整っている様子。こちらもデザインセンスが大きく変わっています 会場では2列シートのミニバン「ゴルフ スポーツバン」を発表。日本には導入の予定はないそうです アウディの「ナヌーク クワトロ コンセプト」。2010年にフォルクスワーゲングループ傘下に入ったイタルデザインによるコンセプトカー。ボディーサイズの4541×1990×1337mm(全長×全幅×全高)はR8よりも全体的にわずかに大きい。搭載エンジンはV型10気筒5リッター TDI(直噴ターボディーゼル) 「スポーツクワトロコンセプト」。30年前のフランクフルトショーで「スポーツクワトロ」が発表されたのだとか。その後継となる(?)コンセプトモデルを市販に近づけるべく進化させて発表(初披露は2010年パリショーです)。V型8気筒4リッターターボエンジンとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド。燃費は40km/L、EVモードでの走行も可能で、モーターのみで50km走行できるのだとか。アウディのクワトロを象徴するモデルとして多くのファンを納得させるデビューを期待したいですね ポルシェ918スパイダーの市販モデルを発表。販売台数は918台で約8500万円。918スパイダーはV型8気筒4.6リッターエンジンに2つのモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを採用。0-100km/h加速は2.8秒。ニュルブルクリンクの最速記録を7分台を切る速さで更新したようだ。恐ろしい…… ポルシェ911は1963年9月のフランクフルトショーでデビュー。今年のフランクフルトショーは登場から50年目となる記念すべき年なのです。そこで「911 th アニバーサリーエディション」をお披露目。ボディーカラーやホイール、室内のシートなどを当時にちなんだ色や形、柄を採用し、最新(搭載する3.8リッターエンジンや7速MT/PDKは現行モデルと同様)にして懐かしさ漂うモデルに仕上がっていました。価格は7速MTが1637万円、PDKが1712万円だそうです ランボルギーニ「LP570-4 スクアドラ コルセ」。ガヤルドの限定モデルであり、ガヤルドは今年生産終了をアナウンスしているため、この限定モデルがガヤルドの最終モデルになる可能性が高いのだとか。スクアドラ コルセは「ガヤルド スーパートロフェオ」の公道バージョン。車重が1340kgと聞いてその軽さに驚きました シトロエン「C4ピカソ」をワールドプレミア。日本導入が待ち遠しい1台 今年私も取材に行ったパイクスピーク・ヒルクライム・レースでセバスチャン・ローブがドライブした現物マシンが展示されていて、数カ月ぶりの再会にちょっと感動。さらに来年はセバスチャン・ローブがフィールドをサーキットに変え、WTCCに参戦予定。そのマシンも展示されていました。来年のWTCC日本ラウンドがますます楽しみになりました シトロエン「DS3レーシング」「DS3カブリオレーシング」。スポーティに仕立ててもシトロエンらしい品格が保たれ、ボディーカラーの効果もあるのかシブいのに速そう! 余談ではありますが、写真に偶然映り込んでいる初老の男性が乗ってもコンパクト・スポーツ・ハッチが似合う! これは男性の雰囲気のせいか、クルマのせいか……。日本でもこういう組み合わせ(初老の方とスポーツ・ハッチ)を見てみたいなぁと思いました プジョー「308」がフルモデルチェンジ。新プラットフォームを採用する新型308はボディーの軽量化も進み、ボディーサイズは全長が若干短くなった。けれど、相変わらず室内は十分な広さを保ち、一新されたインテリアデザインの質感も上がっていました。ただエクステリアデザインはややコンサバになった印象あり プジョー・スポールが手掛けた「308Rコンセプト」も同時に披露 そして、久しぶりに訪れたフランクフルトショーでは心強い移動手段がありました。各メーカーが“メディアシャトル”というステッカーを貼ったクルマを敷地内で走らせていたのです。そこで、タイミングさえ合えば流しのタクシーみたく色々なモデルに同乗試乗することができました。
残念ながら車種のすべてを把握するのは難しかったのですが、例えばメルセデス・ベンツは新型Sクラスのガソリン車のほかにプラグイン・ハイブリッドを、MINIはなんと現行モデルではなくクラシックMINIを、ボルボやシトロエン、日本では販売されていないオペルやシュコダなどさまざまなメーカーがシャトルを提供していました。ポルシェやフェラーリはなかったけれど……。
さらにBMWは10台以上のi3を専用スタンドから発着させており、ハンドルを握ることはできないものの、メディアなら誰でも同乗試乗が可能でした。グッドアイディア!