オグたん式「F1の読み方」

追い抜きを増やすために?

「諸君らのスポーツマンシップに任せる」

 オーストリアGPの決勝から、F1は1つのルール運用を変えた。それは接触に関する事項で、従来までは接触があればその都度レースディクター(競技長)からスチュワード(競技審査委員会)に報告された。そして、スチュワードが審議してその場でペナルティを科したり、レース後の事情聴取から裁定したりといった手順を踏んできた。

 しかし、オーストリアGPからは、接触の当事者チームからのアピールがない場合には、レースディレクターからスチュワードへの報告はしないとされた。また、スチュワードが接触を見ても、接触したどちらかにその責任があることが明確な場合にのみ裁定を下すとなった。結果、アピールがなければ、あるいは一方的に接触の原因があることがはっきりしたとき以外は、何もペナルティがないままで終わるということになる。実際、オーストリアGPでのセバスチャン・ベッテルがエステバン・グティエレスに後方から接触した件について、スチュワードはこの新基準に基づいて何もしないと宣告した。

 この一連の決定は、F1のルールや運営について考えるFIA(国際自動車連盟)のF1コミッションからの勧告に従ったものだった。F1コミッションの勧告には、接触についていちいち審議対象にしてペナルティを科すことが、ドライバーに積極的な追い抜きを思いとどまらせる要因であり、これを緩和することでより追い抜きを増やしてレースを面白くしたいという意図がある。

 このF1コミッションの勧告とその意図には長所がある。ドライバーがこれで積極的に追い抜きを仕掛けてくれれば、よりレースは面白くなる。今年はドライバーのペナルティポイント制度が導入され、累積ポイントが12点以上になると次戦出場停止処分となる。これは、安全でフェアなレースをするために導入された制度であるが、ドライバーにとっては追い抜きをためらわせる制度になっているのかもしれない。

 半面、この規制緩和だけでドライバーがより積極的に追い抜きを仕掛けるための心理的な後押しになるのだろうか? という思いもある。レーシングドライバーとしてライバルに勝るためには、追い抜きに伴うリスクは冒さなければならないときもある。しかし、そのリスクを冒した代償が大きく響く恐れもまだ残っているのだ。

 それはスポンサーとコストという重圧だ。追い抜きを敢行して成功すればヒーローだが、失敗すればマシン修理に多額のコスト負担がチームにのしかかり、スポンサー露出のチャンスも減る。すると、「なぜ無理をしたのか? もう少し待てなかったのか? 安全に順位を維持すればよかったのに」という非難が、ドライバーと担当エンジニアにふりかかる恐れがある。特に現代のF1では保守的な傾向があり、順位を上げるよりもリスクを避けて結果を、という考えも強い。一部のトップドライバーを除くと、多くのF1ドライバーとレースエンジニアは、一般企業で言えば契約社員のような雇用上弱い立場になっている。この現状では、ドライバーも担当エンジニアもその判断が保守的になってしまうのもいたしかたないだろう。

 そもそも、接触があったらすぐに審議するようにしたのも、ペナルティポイントを導入したのも、ドライバーのコース上の行為に問題があったからだ。1980年代からマシンの安全性がどんどん高まってくれたおかげで、ドライバーはよりスリリングな走りができるようになった。半面、自分と相手の安全、コースマーシャルや観客の安全などはよりないがしろになってしまいがちになった。

 以前にも紹介したが、先日天寿を全うされた元チャンピオンのサー・ジャック・ブラバムはこうした状況を嘆いていた。サー・ジャックが活躍していた時代は、映画「ラッシュ」で描かれた時代よりさらに10年近くも前で、ドライバーの死亡率や重篤な外傷を追う率はとても高かった。だからこそ、ドライバーは激しく戦う中で、互いに最後の一線はきちんと守り、相手のためにラインを残すように努めたという。それでも稀に事故が起き、それが重大なものになった。一方、接触が多発する現代について、サー・ジャックはドライバー間の信頼と敬意が損なわれていると厳しく語ってくれた。「少しくらいぶつけても安全だ」という慢心がこうした問題を生んでいたともいえる。

 さらにF1での追い抜きにはもう1つ課題があるようだ。確かに、数年前と比べたら追い抜き回数は増えた。特にリアウイングフラップを動かし、空気抵抗を減らすことによってスピード増加をもたらすDRSの導入から、追い抜き回数はとても増えた。だが、これは前を行くドライバーはまったく無抵抗な状態であり、後ろのドライバーはマシンが空気抵抗を減らしてスピードを上げたおかげで追い抜けるという、「人工的な追い抜き」の要素も大きい。そのため、ドライバーの本音としては、もっとバトルをして追い抜きをしたいという思いと、達成感の足りなさも感じている。

 これまで、F1は幾度も空力性能とデバイスに規制をかけてきた。その目的はコーナリングスピードの低下による安全性の向上もあった。そして、近年の規制理由には追い抜きを増やすという目的も加えられている。

 マシン1台1台が空力性能を高めるためには、空気の流れをより上手く捉えてダウンフォースを高めようとする。半面、空力性能をより高めようとすると、走行マシンの後方にできる乱気流もより敏感に捉えてしまうようになりやすい。しかも、空力性能を高めようとすると、この後方の乱気流もできやすくなりがちだ。そこで、ウイングレット類を禁止したり、前後のウイングの枚数、サイズを規制したりしたものの、F1チームはより速く強いマシンを目指して独自開発する中で、ルールの盲点を突いてくる。そして、ルールの理念はないがしろになってしまう。

 たとえばフロントウイングでは、メインプレーン(主翼)1枚と左右のフラップが1枚ずつと規定されている。これでフロントウイングの効きをやや鈍くする半面、乱気流の影響を受けにくくしようとした。しかも、翼幅を車体の横幅いっぱいまでに広げることで乱気流のエリアから横に抜け出しやすくして、少しでもダウンフォースを回復しやすくしようとした。これは、FIAの研究機関であるFIAインスティテュートが中心になって行った風洞実験などの研究から編み出されたものだった。

 しかし、現実はメインプレーンとフラップにスロットという隙間を多数あけて、事実上の多段式ウイング+フラップにしている。これなら、より大きなダウンフォースを生み出すことができる一方で、乱気流に対しても敏感になりやすくなってしまう。しかも、今年はフロントウイングの翼幅を15センチ狭めた。これは、縁石などで姿勢を崩した場合や接触などでウイング破損を防ぐにはよかったが、乱気流のエリアから横に抜け出してダウンフォースを回復するという点では、弱くなってしまった。

 まとめてみると、空力性能を高めようとすると気流の影響も受けやすくなり、接近戦を難しくし、ひいては追い抜きを困難にしてしまう。

 ここでその対策例として、今年のスーパーフォーミュラを例に挙げてみたい。今年のスーパーフォーミュラSF14のダウンフォース発生量は、昨年までのSF13よりもやや少ない。しかし、リアウイングとディフューザーをはじめとしたボディーは、後方の乱気流を抑えるデザイン(設計)とした。また、フロントウイングは乱気流の影響を受けにくいシンプルな形状で、翼幅を広くしたことで乱気流のエリアから横に逃げてダウンフォースを回復させることもやりやすくしている。インディカーのDW12もこれに似た考えで、あえて空力性能をやや鈍くすることで、乱気流に対する過敏さを抑え、ドライバーがより安心して積極的に接近戦と追い抜きをしかけやすくしている。

 F1はワンメイクではなく、マシンを開発するところにも魅力がある。しかし、単独での性能向上を図るあまりに、乱気流に対して過敏で、追い抜きを難しくする傾向が強かった。空力開発については、さらなる規制が必要なのかもしれない。とくに、ルールの精神の隙をついたフロントの隙間翼は考え直す時期かもしれない。これらをやめて、開発を鈍化させたほうが追い抜き回数は増えるだろう。そして、空力開発にかけるコストを削減できれば、チームの参戦費用負担軽減にもつなげられるかもしれない。

 この空力開発規制を実際にどう網掛けするかは難しい。だが、さらなる空力開発規制が必要となっていることは、チーム関係者たちの中でも薄々感じていながら、それを公言する人も少なくなってきているようだ。

 ドライバーのドライビングについても同様だろう。実際にルールで平等に網をかけるのが難しいのは、オーストリアGPでもうかがえた。しかし、よりよいレース、より面白いレースにするには、誰かが声を上げて、皆で改善をしなければならないだろう。

 これらの改善のために、ある考えが1つのヒントになりそうだ。映画「炎のランナー」に描かれたような昔の英国のスポーツ選手たちには、ルール以上に厳格に守られていたものがあったという。それは「スポーツマンシップ」であり、ライバルに敬意を払い、正々堂々と戦うことを尊ぶ精神だった。

「諸君らのスポーツマンシップに任せる」

 この言葉は、英国で多くのエリートを生んだオックスフォード大学の学生生活規定にも掲げられていたという。これは決して放任ということではなく、ルールを守ることもさることながら、正々堂々とした“あり方”を問うものであった。そして、1人ひとりに大きな責任が課せられると同時に、その誇りと自負が試されるものでもあった。

 歳月が過ぎ、時代は変わった。だが、今一度エントラント、ドライバー、レースのルール決定と運用に関わる人々、スポンサーたちは、この「スポーツマンシップ」という言葉の意味をもう一度熟慮してもよいのではないだろうか。そうすれば、追い抜き、ペナルティ、ドライビング、空力などに関する諸課題の答えが見えてくるかもしれない。F1はモータースポーツの最高峰とされ、それは立派なスポーツなのだから。

コスト抑制問題への懸念ふたたび

 誰かが声を上げて、皆で改善をしなければならないと先に述べたが、このことはF1チームの参戦コストの問題にもいえるだろう。多くのチームの収支が悪化し、またしてもアロウズ、プロスト、スーパーアグリのように財政難から撤退するチームが出てきそうな状況ともいわれる。こうした中で、またコスト削減案やコスト上限規制案などが出されているが、上位チームと中堅・下位チームとでは意見に隔たりが出ている。結果、まとまりがつかないのが現状だ。

 F1のプロモーターであるバーニー・エクレストンは、来年参戦チームと台数が減るのではと危惧する声に対して「歓迎だ」と強弁した。曰く、ポーカーゲームと同様に参加する財力がないものは参加しなければよいという考えだという。しかし、ティレルなど過去に財務的に厳しくなったチームに私費で支援をして台数を確保してきたのも、ほかならぬエクレストンだった。だからこそ皆エクレストンを慕い、ついてきた。今回のコメントはエクレストン流のポーカーゲームなのだろう。もともとスタッフと仲間をとても大切にするエクレストンなので、本心ではチーム撤退と台数減少とそのスタッフの生活を心配しながらも、表向きは台数が減ってもF1の質は落ちないという態度をとることで、F1の興業的価値を落とさないよう努めているように思える。そして、アメリカのNASCARチームを率いるジーン・ハースによる2016年からのF1参戦などに、なんとか望みをつなぎたいのではないかともうかがえた。

 一方、英国のモータースポーツ専門誌「AUTOSPORT」とのインタビューで、レッドブルチームのクリスチャン・ホーナー代表は興味深いことを語っていた。それは、「コスト抑制の草案をFIAが作り、それをチームが選べるようにすればよい」というものだった。このホーナーのコメントには、チームはそれぞれが戦いの中で自分が優位に立つことを目指しているので、意見にまとまりをみることは不可能であるという前提があった。ホーナーの考えはとても筋が通っていると思われるし、これまでのF1のコスト削減やコスト抑制に関わる経緯を見ても、まさにそうだった。だが、このホーナーのFIA主導でという考えには、大きな不安を抱かせる記憶もある。

 2009年、FIAはそれまでのコスト抑制に関する対策として、2010年からのコスト上限規定を導入するとした。しかし、主要チームはこれに対してまとまって反対し、独自にF1を分離開催するとまで脅してこのコスト上限規定を廃案にした。そればかりか、FIAとチームの和解の条件として、この提案者だったマックス・モズレーFIA会長(当時)を退任に追い込んだ。FIA案に反対したチームは「FIAが独裁的だ」としたが、それはそれまでの話し合いがまとまらないことを受けて、FIAが積極的に案を出した結果でもあった。このあと、チーム側はRRA(リソース・リストリクション・アグリーメント=資本制限協定)を互いに結んだが、レギュレーションとしての強制力も執行力もない不完全なものだったので、なし崩しになってしまった。その協定をなし崩しにした主要チームがレッドブルだった。ホーナーは強制力と執行力のない協定の脆弱性と、やはりレギュレーションで縛ることの重要性をもっともよく解っている人物ともいえるだろう。

 コスト抑制はとても重要な課題だ。シリーズを継続させるためにも、チームの存続を図ってスタッフの生活を守るためにも、“資金調達力競争”ではなく優れた才能を持つドライバーがより多くステップアップできるようにするためにも、チーム間の格差を少なくしてより接戦にするためにも、マシンの性能差を少なくしてよりドライバーが主役となった追い抜きを実現するためにも、とても重要だ。

 近年、F1はサーキットの観客数も、テレビの視聴者数も減ってきている。今年の音もその原因として挙げられている。その対策にメガフォン型排気管や、排気ガスの一部をそのまま排気口に導くことで音を大きくしようとする研究も行われている。また、見た目を面白くするために、スキッドブロックの部分にチタニウム製の部品を使うことで、かつてのF1のような火花を出そうともしている。観客の皆さんが楽しめるように、面白さを増すための研究をすることはとてもよいことだ。F1観客数減少のもう1つの要因として、特定のチームやドライバーの独り勝ちも挙げられた。だが、勝つために努力してきたチームとドライバーを責めるのは間違っているように思える。むしろ、もっと根本にあるコスト抑制、マシン開発競争、チーム間格差という課題に真剣に向き合わなければならないときにきているように思える。

 考えようによっては、現在のF1の観客数と視聴者数の減少も、かえってよいことなのかもしれない。これによって、チームとFIAとプロモーターが現実にある課題により危機感を持ち、より積極的かつ建設的に向き合うことへの契機になるかもしれないからだ。これがうまくいけば、F1はよりよいレースとなり、しかもコスト抑制からチームが要求する商業分配金が削減されればF1の開催契約金も下がり、観戦チケットの値段も以前のようなレベルにまで下げられるかもしれないからだ。

 レースファンの皆さんにとって、F1を魅力的なものとして存続させるために何らかの動きを取るのは今であり、これを失してしまうとF1の未来が危うくなる恐れが増大するように思える。

ル・マンに見たレギュレーションの妙

 今年のル・マン24時間は、LMP1、LMP2、GT各クラスともなかなかの接戦だった。中でもLMP1は、アウディがディーゼルターボにフライホイール式ハイブリッド、トヨタが自然吸気ガソリンエンジンにキャパシタによるハイブリッド、ポルシェがガソリンターボエンジンにリチウムイオン電池によるハイブリッドと、それぞれの技術開発の違いがある上に、激しいトップ争いを展開したのは実に興味深いものだった。

 レースに関する詳しいことは他の記事に任せるとして、ここではこうした接戦を実現したFIAとACO(フランス西部自動車クラブ=ル・マン主催団体)の技術スタッフの努力を称えたい。

 2012年にWEC世界耐久選手権が始まった時は、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンとでは差があった。特にピットストップ回数ではディーゼルが有利だった。それをガソリンエンジンが速さでどう突き崩すかという面白さはあったものの、それは本当に好きなファンにしか分かりにくいものになっていた。だが、その当時FIAのスタッフは、すでにガソリンエンジンとディーゼルエンジンのマシンの性能とピットストップ回数がほぼ互角になるようにしながら、そのうえ技術開発がよりできるようにするルールを考えていた。果たして、その考えが現実のものとされたのが、今年のLMP1のテクニカルレギュレーション(技術規則)だった。

 今年のLMP1のテクニカルレギュレーションの中のAppendix B(附則B)には、エネルギーとパワーに関する表が掲載されている。これがその理想をよく表している。

 そこではハイブリッドによって回生/利用できるエネルギー量を2/4/6/8MJ(メガジュール)とハイブリッドなしの5つに分類し、燃料でもガソリンとディーゼルで2つに分類している。そして、このハイブリッドの性能と燃料の違いに応じて、燃料流量、燃料タンク容量、車重を細かく規定している。

 これによってハイブリッドの性能、燃料の種類が違っても、走行性能やピットストップ回数で大きく差が出ないようにしている。おかげで激しい接戦が展開された。しかも、レースをより有利に展開するためには、ハイブリッド技術やエンジンの効率をより高めることが求められるようにして、技術開発もしやすくしている。日産自動車が来年LMP1で参戦することを決定したのも、こうした自動車メーカーにとって魅力的なルールとなっているおかげでもある。

 ル・マン24時間は、1923年のはじまりから「近未来の市販車をよりよくするための開発の場にする」という理念がある。今年のル・マン24時間とWECのレギュレーションはまさにこの理念を受け継ぎながら、より面白いレースを実現している。このレギュレーションは、経験豊富なACOの技術スタッフとFIAの技術スタッフが手を組み、さらにそこに優れた人材による英知が加わったことの賜物だった。

 このレギュレーションをそのまま引き継いでいるWECもまた、とても面白い接戦となっている。10月には富士スピードウェイでもWEC富士6時間が開催されるが、最先端のテクノロジーとLMP1、LMP2、GTの各クラスの接戦に次ぐ接戦は、見ごたえのあるものになるだろう。

 一方、今年のル・マン24時間では、クラッシュしたマシンの安全性の高さが実証されたのと同時に、予選でのアウディのクラッシュはプロトタイプカーの空力的な安全性能についてまだ研究と改善の余地があることも示した。

 床面積の広いプロトタイプカーは、設計通り気流が前からきちんと車体の底を抜けている間はダウンフォースを発生して安定しているが、スピンやハーフスピンなどで車体の進行方向と気流の向きに角度ができると、車体の底が凧か帆のようになって車体を空中に飛翔させやすい。このことは1990年代のグループCやFIA-GT1のころから問題視され、研究がなされてきた。結果、現在のLMP1とLMP2には大きなドーサルフィン(背びれ)がついてハーフスピンに陥りにくくしている。さらに、車体が浮き上がり始めた時には、車体を持ち上げようとする気流を抜くために、タイヤハウスの部分に空気抜きの大穴も開けられた。

 だが、それでも今年のアウディは予選で飛び上がってしまった。かつての規定のままだったら、件のアウディはフェンスを越えて観客のエリアに飛び込んだかもしれなかった。そういう点では、これまでの研究開発とレギュレーションは成功だった。しかし、幸いドライバーは軽傷で、コースマーシャルらも無事だったものの、車体が浮き上がってしまったことを考えると、さらなる対策の研究と開発が必要だろう。

 車体を浮き上がりにくくするという安全性向上でも、車体の安定性と速さを確保して勝てるものにするということでも、接近戦ができて面白いレースにするということでも、これらすべてを高いレベルで実現させるというのは難しい研究開発作業になるだろう。半面、現在多くのレースで空力開発に規制がかかる中、レーシングカーの空力を専門とするエンジニアや研究者にとって、この研究は取り組み甲斐のある新たなフロンティアともいえる。

 ACOとFIAには、パワーユニットでレースと開発の面白さを両立させた技術開発陣もおり、この空力に関する課題にもきっとまたよりよい答えを見出してくることだろう。

LMP1のテクニカルレギュレーション(仏文/英文、PDF)
http://www.fia.com/sites/default/files/regulation/file/LMP1%20%2814-15%29_11%2004%202014.pdf

小倉茂徳