【連載】橋本洋平の「GAZOO Racing 86/BRZ Race」奮闘記

第17回:3位入賞も、近くて遠いトップ2との距離

前回の3位入賞を機にダイエット!

前回の3位入賞に気をよくした筆者はダイエットを敢行! 気合を入れて第4戦に臨んだのでした

 前回のレースでようやく3位表彰台を獲得。プロクラスに参戦している佐々木雅弘選手によるドライビングテクニック&セッティング指南により、どうやれば上手く行くのかが見えかけてきた。あと少しで優勝が手にできるかもしれない。心昂ぶる第4戦・菅生ラウンドである。

第16回:“佐々木セット”で初の表彰台! 俄然やる気が沸いた第3戦富士
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/gazoo/20150615_706953.html

 菅生といえば、GAZOO Racing 86/BRZ Race初年度に予選2番手を獲得したことがある僕にとって相性のよいサーキット。起伏に富んだレイアウト、さらにはハイスピードコーナーが存在するなど、気合い一発で乗り切ることが多いオッサンアマチュアレーサーにはうってつけのサーキットだ。ここなら優勝だって手にできるかもしれない。

こちらはチューニング誌「REVSPEED」のDVD出演時のようす。第3戦富士の模様が特集されているので、ぜひこちらもご覧ください

 やる気に満ちたオッサンは、前回のレースが終了して以来ダイエットを開始。75kgあった体重は、73kgに減少した。たった-2kgと言うなかれ! 大好きなスイーツを減らし、もっと大好物の白米を減らして何とか獲得した-2kgである。菅生の坂を少しでも速く駆け上がってくれるなら……、そんな思いの-2kgなのだ。ま、登り坂のあとは下り坂なんだから、重いほうがスピード乗ったかもですが(笑)。

 さらにクルマも万全の体制を敷いた。たった2戦でダメになってしまうトルセンLSDを新調。それをスペアのデフケースに入れ込み、練習走行が終了した後に交換しようという作戦だ。LSDもデフケースも新品を揃えるほどの予算はなく、ともにヤフオクで手に入れた品ではあるが、それほど走っていないと書いてあったし、まあ何とかなるでしょ!

足まわりのセッティングに悩んだ第4戦

まずは交換前のトルセンLSDで練習走行に挑む。これが後にあだとなるのでした……

 まずは賞味期限が終了してしまったトルセンLSDで走り出した練習走行。すると、いきなりの好感触。そこにたまたま通りかかった佐々木選手から走り方やセッティングについてアドバイスを貰えたのだから鬼に金棒である。前回のようにクルマに乗ってもらって比較するまでには至らなかったが、それでも十分に心強い。

 だが、それを聞けば聞くほど今回は走りがどんどん崩壊して行くから難しい。菅生が地元の佐々木選手が伝える走り方やセッティングは、どうも乗りこなしにくく、ポッと出のよそ者には受け入れがたいほどオーバーステア傾向で、さらにピーキーな動きだった。レースウイークの金曜日にきてすぐさまそれを自分のものにし、翌日の予選に合わせるには不可能だと判断し、自分好みのセッティングで予選に挑んだのだった。

 予選でマークした人物は、つい先日のスーパー耐久で86に乗ってきた小野田貴俊選手だ。チャレンジプログラムで得たシートに収まり、プロドライバーとともに戦ってきた小野田選手ならば、道先案内人としては十二分な存在。彼の後ろでアタックすれば、何かよいことあるかもね、という軽い気持ちでスタートした。

前回に続きSUPER GT参戦経験があり、スーパー耐久などでチャンピオン経験のある佐々木雅弘選手(34号車)にアドバイスをいただいた。参戦を開始した前回はバキュームホース抜けで満足にレースできなかったことが残念だったが、第4戦ではプロフェッショナルクラスで4位に入るなど参戦2戦目でさっそく頭角を現してきた。さすがです!
こちらは第4戦からプロフェッショナルクラスに投入されたPOTENZAブランドのハイグリップスポーツタイヤ「POTENZA RE-05D」。やる気のあるトレッドパターンに興味津々です

 だがしかし……。前日とはうって変って、我が愛車はなかなか曲がってくれない。リアが見事に引っ掛かり、根性、根性、ド根性~♪ もとい、アンダー、アンダー、ドアンダー……。一体なぜ??? あとで冷静に考えてみると、例の新品(に近い)トルセンLSDがわるさをしていたような気がしてならない。たしかにトラクションはシッカリなのだが、進入側の安定感も増してしまったような気がするのだ。

 つまり、イキのよいLSDを装着した状態で足まわりのセットをしなければ何の意味もなかったということ。足まわりだけ、LSDだけと単体で物事を考えているからこうした事態に陥ったような気がする。いつでも新品で練習できていれば……。貧乏チーム、そしてアマチュアレーサーならではの落とし穴に引っ掛かったということかもしれない。とはいえ、予選結果を見てみればトップと0.143秒差の2番手。前日の練習中にはもっと速く走れていただけに残念でならないが、優勝が見えない位置じゃない。

 ただ、予選で出たネガを潰すセッティング変更をする勇気はなかった。賭けに出るのが怖くなってしまったからだ。守りに入ったというか、自信がなかったというか……。予選と同じセッティングで決勝に挑むことにしたのだ。

第4戦スポーツランドSUGOのフリー走行時の様子

3位入賞も……

 いま振り返ればそれが間違いの始まりだった。決勝でも案の定曲がらない感覚が強く、スタート直後からペースは一向に上がらない。トップの遠藤浩二選手にジリジリと置いて行かれ、3番手の小野田選手には突かれる始末。そこで追い詰められて精神的な弱さを露呈してくるから始末がわるい。オープニングラップの最終コーナー進入でアプローチをミスり、ストレートへ向けた登り勾配で小野田選手に並ばれてアッサリと抜かれてしまうことに。やはりもう少し曲がるようにセッティングし直せばよかった……。

決勝の序盤、曲がらない感覚にとことん悩まされた

 ただ、周回を重ねてリアタイヤが少しタレ始めたところでクルマはニュートラルステアになってくるから面白い。レース後半はとても走りやすくなってきたのだ。この状態が始めからあれば言うことなし。レースのどこに照準を合わせてセッティングするか否かが大切だということを学んだような気がする。つまり、前半をシャキッと走って後半は我慢するか、前半は我慢して後半勝負するか。今回の場合はいくら後半のバランスがよくなったとはいえ、前の2台を抜けるほどペースがよくなかったところに問題があったのだと感じている。どっちつかずのセッティングだったのだろう。

遠藤浩二選手(305号車)、小野田貴俊選手(450号車)にジリジリと引き離されていくも、レース後半にクルマがニュートラルステアになって乗りやすくなり、結果3位に入賞できた

 こうして今回もまた3位表彰台を獲得することができたが、問題は山積み。トップ2は近いようでかなり遠いことも痛感している。一発の速さも、ロングディスタンスもまだまだ。さらには追い詰められた時の精神力も……。優勝を手にするにはさらなる修行が必要だと感じた菅生のレースでありました。悔しい!

3位表彰台を獲得することができたが、トップ2との差を感じた第4戦だったのでした。次戦は今週末、8月1日~2日にオートポリスで開催。より高みを目指し、頑張ります!

Photo:高橋 学

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は18年落ちの日産R32スカイラインGT-R Vスペックとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。