【第21回】富士のふもとで吉田のうどんを食すですの、の巻


茹でたキャベツに甘辛く煮込んだ馬肉、極太で強烈なコシが自慢の「吉田のうどん」

 富士急ハイランドがある山梨県富士吉田市といえば、「吉田のうどん」が最近のご当地グルメブームですっかり有名ですわよね。市内には70軒近いうどん屋さんがあるそうですが、今回のグルメ隊はその激戦区のお隣、忍野村にある人気の手打ちうどん屋さんをご紹介します。ふたりが乗り込んだ車は、まんまるお尻がかわいらしいシトロエンC3ですの。

「ゆきぴゅーさんは信州出身だから蕎麦派じゃないんですか?」
「実はわたくし、蕎麦よりうどんのほうが好きなんですの」
「へぇそうなんですか。あっ、だんだん青空が見えてきましたね。じゃここらへんで……よいしょっと」
「ちょっとエイミー、シート倒して何するですの?まさか助手席で寝るつもりですの?!」
「違いますよ! この開放感あふれるフロントウィンドーから見る青空をカメラにおさめようとしているんです!」
「なるほど~! でも、こうも頭上までガラスだと頭皮が日焼けしちゃいそうですわ」
「大丈夫ですよ。ちゃんと紫外線カット加工が施されていますから」

 都心から2時間半ほどのドライブで目的地「渡辺うどん」に着きました。が、どう見てもフツーのおうち。暖簾と看板が出ていなければ絶対に通り過ぎてしまいそうな場所にありますの。

いきなりシートを倒して寝るのかと思いきや、エイミーが撮ったシトロエンC3から見た広~い夏空雲の切れ間からようやく夏の黒い富士山が! 今この瞬間にどれだけの人が登っているのでしょうか富士吉田市に隣接する忍野村にある「渡辺うどん」。このあたりは、見た目が普通のおうちといったうどん屋さんばかり

 このように富士吉田市を中心とした周辺のうどん屋さんは、民家を改造したような店構えのところが多いと言います。それもそのはず、今でこそ吉田のうどんを食べようと週末は観光客が押し寄せるようになりましたが、本来このあたりのうどん屋さんは、近所の人がお昼を食べに来たり、夕飯用の生うどんを買いに来るといった、もっぱら地元のお客さんが相手の商売だったからなのです。

「だからどこのうちも、昼間だけってところが多いね。2時くらいには閉めちゃうんだよ」

 とはご主人の渡辺鉄男さん。

「吉田のうどんといえば、とにかく太くてコシが強いのが特徴なんですよね?」
「そうね。それから茹でたキャベツと油揚げが入っていて、肉うどんの場合のお肉は馬肉というのがこの辺では一般的なんですよ」

 そう言って、大鍋いっぱいに煮込んだ馬肉を、お女将さんが見せてくださいました。

「私は冷やしにしようかな。ゆきぴゅーさんどうしますか?」
「肉玉うどんの大にしますわ」
「ぇええ!? 大丈夫ですか!?」

 すると女将さんが、

「食べてみたら? 女の人で大を注文するかた、たま~にいらっしゃいますよ」

30人ちょっと座れる広々としたお座敷。ここがお昼時にはいっぱいになります「このくらい打ち粉をしないと包丁にくっついちゃうんだよ」とご主人大きな釜でゆでること約10分。混雑時は見込み茹でしているので、注文してからすぐ運ばれてきます
お母さんがおつゆを注ぎます。卵の白身が固まるようにやさ~しくかけるのがコツなんだとかどんぶりには大、中、小があります。エイミーは中、ゆきぴゅーは大に挑戦!「ゆきぴゅーさん、ホントに大を注文するとは思いませんでした」byエイミー
冷やしつけうどん(中)300円。大中小、それぞれ麺は何グラムなのか聞いたところ「このどんぶりを目安にしているだけだから量ったことないわねぇ」油揚げが入ったおつゆにつけて、いただきま~す♪ ちなみに茹でたキャベツは地元の鳴沢キャベツ薬味は胡麻、油、一味唐辛子で作る辛味唐辛子と、毎朝お母さんが揚げるという揚げ玉。どちらも自家製です
「茹でたキャベツが添えられているうどんなんて初めて見ましたわ~」本来はタマゴとお肉のみという肉玉うどん。わかめ・キャベツ・油揚げは常にサービスという太っ腹ぶりこれで650円とは、お腹のふくれ具合からしてすばらしいコストパフォーマンスでございます

 というわけで、席について2、3分で出てきた「肉玉うどん(大)」650円。まずはおつゆをズズズっとすすってみます。煮干しで出汁をとって、味噌とお醤油で味付けしたそのお味は、さっぱりしていていい意味で主張が無いという印象。次に食べた馬肉が甘辛く少し濃い目の味付けなのでこれまたよく合うんですの。

 いよいようどんを1本口に入れます。なるほど上の歯と下の歯でしっかり噛み切らないといけませんわ! つるつるっとのどごしさわやかな白いうどんとはまったくの別物ですの。

「(もぐもぐ)うーん、すごい歯ごたえですわね」
「でも硬すぎるってことではなくて、麺に塩味がきいていて、噛めば噛むほどおいしい素朴な麺ですよね」

 ご主人曰く、生地は一晩以上寝かせるとのこと。きっと長時間寝かせることで弾力のあるグルテンが形成されて、それがこの力強いコシになっているですのね……な~んて大昔に家庭科の授業で習ったことを思い出しながら極太うどんと格闘すること15分。シャキシャキしたまったく違う食感の茹でキャベツの援護もあって、見事「大」を完食したゆきぴゅー。あごに心地よい疲労感が残る吉田うどん初体験でございました。

「いやぁ~食べた食べた! おいしかったですわ~、もうお腹いっぱいですわ~」
「ちょ、ちょっとゆきぴゅーさん。お腹さわっていいですか……うわぁ! なんかすごいことになってますよ!」

「さぁ、次は何食べに行くですの~!?」

食後のデザートは忍野八海のお土産ストリートで買った村名物のよもぎ餅。甘いものは別腹な2人はぺろり周辺の見どころといえば「忍野八海」。富士山の雪解け水が作った8つの泉は、吸い込まれそうなほど透明お隣の山中湖村にある花の都公園からは残念ながら富士山の姿は雲に隠れて見えず。75万本の百日草のお花畑が9月中旬まで楽しめます

 

行ったところ
渡辺うどん
山梨県南都留郡忍野村内野514
TEL:0555-84-2462
営業時間:11~14時
定休日:水曜日(祝日の場合は営業)
駐車場:あり
アクセス:東富士五湖道路「山中湖IC」より車で約5分
メニューは、かけうどん(中)300円や、わかめうどん(大)550円、肉つけホットうどん(中)400円などすべて1000円以下。お財布にやさしいのも、通ってしまいそうな魅力のひとつです。

 


より大きな地図で【第21回】富士のふもとで吉田のうどんを食すですの、の巻を表示

 

このクルマでドライブしました!

シトロエンC3

5月にフルモデルチェンジしたC3。エイミーが撮ったのは、フロントガラスとグラスルーフが繋がった「ゼニス・ウインドー」。フレンチ・コンパクトらしい明るい内装と相まって、他にはない開放感を味わえます。

プロフィール

ゆきぴゅーゆきぴゅーおふぃしゃるほーむぺえじ
イラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”。長野でフツーのOLをしていたが何の因果か鬼畜デジカメライターの弟子(奴隷)となり2000年に上京。日々の過酷でセクハラな毎日を絵日記で綴っているうちに絵の道に目覚め、ついに2005年独立。以降あちこちでタダでごはんを食べながらポンチ絵画家としてのお気楽な人生を歩んでいる。


エイミー
女性カメラマン。カメラマンとして名を馳せるべくボスニアに戦場カメラマンとして渡るも、行った早々流れ弾に当たってしまいあえなく帰国。車にまったく興味がないゆきぴゅーとは正反対に機械モノが大好き。食べるのも大好き。封印したはずの赤いバンダナは、ネット上で復活希望の声があるとかないとか(でももうしません!)



2010年 9月 1日