知っておきたい自動車保険2010
【第1回】自動車保険の必要性とその種類

クルマに乗るなら必ず入っておきたい自動車保険。左が自賠責保険の証明書、右が任意保険の保険証券

 クルマを所有する上で、切っても切れないのが自動車保険だ。クルマで事故を起こせば、自分や相手のケガの治療はもちろん、壊れたクルマやガードレールなどの修理にもお金がかかる。自賠責保険はもちろんのこと、任意保険にも入らなければ、万が一の際の補償をカバーしきれないのが現実だ。

 しかしこのご時世、保険料だって少しでも安く抑えたい。そこでここでは、これから自動車保険に入る人にも、今までの保険を見直したい人にも役立つ、自動車保険のあれこれについて連載していきたい。

 第1回となる今回は、基礎知識として「自動車保険とは何か?」について。クルマを走らせれば、そこには必ず事故の可能性がついて回る。もちろん「自分は平気」「安全運転だから大丈夫」と思っている人も多いと思うが、どんなに安全に、交通ルールに則って走っていても、突然目の前に子供が飛び出してきたら、本当によけることはできるだろうか? 事故を起こした人は、自分が事故を起こすつもりなどみじんもなかったハズ。起こす気はなくても起きてしまうのが事故なのだ。

 年間の日本における交通事故の死者数(24時間以内に死亡した人の数)を見てみると、1970年が最悪で1万6765人。近年では1992年の1万1451人をピークに毎年減り続け、2009年には4914人まで減少している。

 しかし事故件数や負傷者数を見れば、1992年の69万5345件/84万4003人に対し2009年は73万6160件/90万8874人。事故件数、負傷者数ともに最悪となった2004年の95万2191件/118万3120人と比べれば減少はしているものの、いぜん高い数値が続いている。自動車自体の安全性能の向上や、シートベルト装着の徹底などにより、死亡事故に至るケースは減っているかもしれないが、事故自体が減らない以上、自動車保険の重要性は未だに変わっていないと言えるだろう。

1970年と過去10年間の自動車事故発生件数と負傷者、24時間以内の死亡者数

西暦事故発生件数負傷者数死亡者数
1970年71万8080件98万1096人1万6765人
1989年66万1363件81万4832人1万1086人
1990年64万3097件79万295人1万1227人
1991年66万2388件81万245人1万1105人
1992年69万5345件84万4003人1万1451人
1993年72万4675件87万8633人1万942人
1994年72万9457件88万1723人1万649人
1995年76万1789件92万2677人1万679人
1996年77万1084件94万2203人9942人
1997年78万399件95万8925人9640人
1998年80万3878件99万675人9211人
1999年85万363件105万0397人9006人
2000年93万1934件115万5697人9066人
2001年94万7169件118万955人8747人
2002年93万6721件116万7855人8326人
2003年94万7993件118万1431人7702人
2004年95万2191件118万3120人7358人
2005年93万3828件115万6633人6871人
2006年88万6864件109万8199人6352人
2007年83万2454件103万4445人5744人
2008年76万6147件94万5504人5155人
2009年73万6160件90万8874人4914人

自賠責保険と任意保険
 事故の際に掛かる治療費や補償などのさまざまな費用を賄ってくれるのが、自動車保険だ。その自動車保険にも大きく分けて2つある。一つが自賠責保険、そしてもう一つが任意保険だ。

 任意保険がその名のとおり義務ではなく任意なのに対し、自賠責保険はクルマで公道を走るうえで加入が義務づけられているもの。車検取得の際には、その期間をカバーする自賠責保険の提出を求められ、それがなければ車検を通すことができないし、臨時運行許可(仮ナンバー)を取得する際にも、その運行期間をカバーする自賠責保険の提出が必要となる。自賠責保険はさまざまな保険会社が扱っているが、金額はどこでも同じ。補償内容も変わらないので悩む必要はない。

 この自賠責保険は、国が被害者保護の観点から、被害者が最低限の補償は受けられるようにと作ったもの。そのため補償の内容は十分とは言い難い。自賠責保険は対人保険であり、クルマやガードレールといった物損に対する補償は一切出ない上に、ドライバー自身の怪我などもカバーされない。さらに対人の支払い限度額も、被害者1人に対し、死亡で3000万円、介護を要する後遺障害で4000万円、傷害で120万円まで。たとえば後遺症傷害の賠償では3億円を超える損害額が請求されたケースもあり、対人補償に関しても、自賠責保険だけで完全にカバーできないケースもある。

 そのように自賠責で補いきれなかった額や、物損などは自己負担となるわけで、額によっては自身の家族にも迷惑をかけることになるだろう。そうならないためにも、義務ではないとは言え、任意保険への加入は必要不可欠と言えるだろう。

対人賠償の高額例

認定総損害額判決日職業年齢・性別被害状況
3億8281万円2005年5月17日会社員29才・男性後遺障害
3億7886万円2007年4月10日会社員23才・男性後遺障害
3億6750万円2006年6月21日開業医38才・男性死亡
3億5978万円2004年6月29日大学研究科在籍25才・男性後遺障害
3億5332万円2006年9月27日アルバイト37才・男性後遺障害

任意保険は大きく2つのタイプがある
 自賠責保険が保険料も補償限度も一律なのに対し、補償の内容を自由に選べ、それによって保険料も変わるのが任意保険だ。

 実は10数年前までは、任意保険も内容や条件が同じなら保険料も横並びだった。しかし1996年に日米保険協議が決着し、1998年に自動車保険が完全に自由化されてからは、現在のように価格での差が出せるようになった。保険会社はそれぞれ特徴のある特約やサービスなどを用意することで他社との差別化を図り、顧客の獲得に務めているのが現状で、今回の企画で掘り下げている保険の選び方や、保険料を安く抑えるテクニックは、これら任意保険の選び方がメインとなる。

 補償の対象や条件など、ユーザーにとっては複雑に見える任意保険だが、そういった内容の以前の話として、任意保険はそれを扱う保険会社によって大きく2つに分けることができる。それが代理店型とダイレクト型だ。

 主にディーラーなどが代理店となって補償内容などを説明し、パンフレットなどを広げながら対面で販売するのが代理店型だ。保険の自由化以前はこの代理店型のみであったが、自由化以降インターネットや電話を使った保険の販売が可能となり登場したのが、TVCMなどでもよく見るダイレクト型だ。

インターネットで簡単に見積もりや申し込みができるのがダイレクト型のメリット

 ダイレクト型は代理店を通さず、直接ユーザーが保険会社と契約を結ぶ。間に代理店を挟まない分、相談する第三者がいないため、利用者自身がある程度の知識を持つ必要がある。本当にその契約内容で正しいのか、自分自身で判断しなければならないからだ。

 しかし値段が安くできるのもダイレクト型の特徴。ある程度の条件を入れれば複数の保険会社を同条件で比較できたり、インターネットを使って契約すれば割引されたりなど、努力次第でより保険料を安く抑えることができる。さらに最近はリスク細分型という、より細かい条件によって保険料を決められるシステムが導入されているので、自分の利用状況に合わせて保険を選べば、さらに価格を抑えられる可能性もある。利用者の努力次第で保険料を抑えられるのがダイレクト型のメリットなのだ。

 次回からはこのダイレクト型保険を使って、「安く」かつ「失敗しない」保険の選び方を紹介していきたい。

(瀬戸 学)
2010年 8月 25日