信頼の油圧式パンタジャッキで楽々タイヤ交換
シザースジャッキ「MSJ-850」
メーカー:マサダ製作所
価格:オープンプライス(購入価格:1万円)

 

 夏用タイヤとは別に、冬用タイヤとしてスタッドレスタイヤを用意し、どちらもホイールに装着した上でシーズンの始まりと終わりに交換するという人も多いだろう。タイヤをホイールに装着しておけば、夏タイヤと冬タイヤの交換作業を自分で済ませることができるうえ、交換時にタイヤを痛めずにすむ。わずかだが工賃が浮くのもありがたいところだ。

 自力での交換で意外と重労働なのが、ジャッキを使って車体を上げ、タイヤを地面から浮かす作業だ。ジャッキは車載工具に含まれているのが一般的で、ネジの力を使って手回しで上げていくのだが、それなりの力が要るうえ回す回数も多い。これをタイヤ4本分ジャッキアップするとヘトヘトになる。しかも愛車の車載工具のジャッキは特殊で、一般的なパンタグラフ型の片方しかない。コンパクトで携行には便利だが、作業時にとても不安定で困っていた。

マサダ製作所のシザースジャッキ「MSJ-850」

 そこでタイヤ交換に便利な油圧ジャッキを導入することにした。油圧ジャッキであれば、軽くレバーを上下させるだけでジャッキアップすることが可能になり、かなり作業がラクになるはずだ。

 一般的な自家用車向けのコンパクトな油圧ジャッキは、フロアジャッキと呼ばれる、床をキャスターで転がして動かすタイプが主流だ。できれば収納場所に困らず、車載も可能な大きさにしたかったので、パンタグラフ型の油圧ジャッキを選んでみた。このようなコンパクトタイプの油圧ジャッキは種類が少なく、今回はマサダ製作所のシザースジャッキ「MSJ-850」を紹介する。


重さはそれなりにあるが、携帯しやすいようにプラスチックケースが標準で付属するプラスチックケース内には、MSJ-850が動かないようしっかり収まっているこちらは愛車に標準で付属してきたジャッキ。片側パンタグラフタイプ。もちろん手回し

 油圧ジャッキ選択時の注意点は、まずジャッキアップ可能な車両の最大重量を確認すること。MSJ-850は1.5tまで。もう1つは、ジャッキの最縮長を見て愛車のジャッキアップポイントと地面の間に入るかを実測しておくこと。最低地上高の低いクルマだとジャッキが入らないという事態になる。逆に最低地上高が高めなSUVタイプのクルマでは最伸長でちゃんとクルマが持ち上がるかを確認しておく。パンタグラフ型は、外観がコンパクトな割に、最縮長が短く、最伸長が長いという特徴がある。

 以下に「MSJ-850」の仕様から抜粋して掲載しておこう。
・適用車両:車両重量1500kg以下
・呼び荷重:850kgf(シリンダー自体の推力)
・最縮長:121mm
・最伸長:381mm
・本体長:390mm
・本体重量:5.9kg

 コンパクトな油圧ジャッキは、DIYショップなどで格安の製品も見うけられる。しかしながら、数回の使用で油圧ピストンのパッキンが破れ、オイルが吹き出したり変形するなど、耐久性に問題のある製品も存在する。筆者は別の格安油圧ジャッキで、突然のオイル抜けを経験したことがある。

 油圧ジャッキのオイルやパッキンは、定期的なメンテナンス交換が必要なのだが、この時はそういった経年劣化ではなくジャッキアップを始めたら突然オイルが吹き出した。単にハズレ製品であったのかもしれないが、オイルの始末や車体落下の危険を考えると、最初から信頼性の高い製品を選ぶことをお勧めする。

 その点このMSJ-850を作るマサダ製作所は、自動車用油圧式携行ジャッキの専門メーカーなので信頼性は高いと思われる。もちろん国産。「Made in Japan」であり、1年間の保証書もついている。

 ちなみに「シザースジャッキ」という名称は、以前はショックアブソーバで有名なKYB(カヤバ)が販売していたことを記憶している方もいるだろう。近年惜しまれつつ販売終了になったのだが、それとほぼ同形状の製品となっている。

油圧ジャッキには、油圧を抜くためのリリースシステム(リリース弁)がある。ジャッキを上げる前に、右に回しきって閉め、下げる場合には左にゆっくり回して油圧を開放する。リリースシステムはハンドルを使って回すことができるジャッキを上げる際にはハンドルを装着するリリースシステムを閉めてハンドルを上下すると、パンタグラフ部分が上がっていく
「STOP LINE」表示が出ると、そこが上限。このライン以上に上げないように注意受金部分は、車体への攻撃性の小さいアルミでできている。シッカリした作りで、ゴムよりも断然耐久性が高い。自由回転する作りになっている

 最初に気をつけたいのが作業場所の確保だ。水平でアスファルトやコンクリートで舗装され、クルマの出入りのない安全な場所を選ぶ必要がある。交換作業でクルマの横にうずくまった際に、ほかのクルマの走行のじゃまになるような路肩を使ってはいけない(交通のじゃまになるほか、自分も危険だ)。

 油圧ジャッキ以外に用意する工具は、交換するホイールのナットサイズにあうソケットレンチと、輪止め。ソケットレンチは十字(クロス)レンチがタイヤ交換の定番だが、規定トルクで締めることが可能なトルクレンチのほうが断然お勧め。締め過ぎを防止できるほか、ラチェット式なので締め込み作業も楽。ほかにバッテリー式電動ドリルがあると作業がさらにはかどる。

 また重要な点として、ジャッキアップした車体の下には絶対に入らないようにしてほしい。この製品に限らず、ジャッキを使って上げた車体の下に潜り込んで作業をする場合には、万一のことを考えてジャッキだけに頼らずに必ずジャッキスタンド(リジットラック)を使って落ちないようにして作業する。ジャッキアップ時に車体が落下しても、車体を壊してしまわないよう、装着しないタイヤなど緩衝材を車体と地面の間に入れておくと万全だ。

 作業のポイントは、最初に緩める際と最後に締めつける際だけ、タイヤが着地状態で行うということ。いきなりジャッキアップして、ホイールナットを緩めないこと。これはジャッキアップした状態で、ホイールナットに力をかけると、ジャッキが倒れて危険だからだ。ホイールの脱着は国産車の場合、ハブにボルトがついているのでそれをガイドにホイールを入れればよい。輸入車などではハブボルトがなく、ハブ側のボルト穴にホイールをあわせる必要があり、慣れないと手こずる。自分の愛車もハブボルトがなく、外部からボルトで止めるタイプだ。

 国産車の場合は、ナットを緩めて交換することになるが、愛車の場合はボルトを緩めて交換していくことになる。その点に気をつけて、交換写真を見ていってほしい。

最初にパーキングブレーキをかけ、MT車の場合はギアを1速またはバックに入れる。AT車の場合は「P」レンジに入れておく。クルマのドアはすべてしっかり閉めておくジャッキアップするタイヤの対角線上にあたるタイヤに輪止めをしておく。これは車が動かないようにするためジャッキアップする前、タイヤが地面についた状態で、すべてのボルトを軽く緩めておく。強い力が必要なのは最初のひと押しだけ。ホイールが外れない程度に緩めておく
リリースステムを右に回してしっかり閉じておく。ハンドルを使って締めることもできるクルマのジャッキアップポイントを見つける。取り扱い説明書で位置を確認しておく少しずつジャッキを上げていき、ジャッキアップポイントと受金の位置を正確にあわせる
車体に受金が接したらハンドルを上下させ、様子を見ながら車体を上げていく。軽い力で上がっていくのが油圧ジャッキならではの快感タイヤがわずかに浮いたら、その時点で止めてOK。必要以上に上げないようにあらかじめ緩めておいたボルトをすべて緩めてタイヤを外す。ボルトは軽い力で外れる。ソケットを装着可能な電動ドリルがあると素早くできる
タイヤを外したところ。国産車ではハブにボルトがついている構造が多い。ハンドルは不意に引っかけると危険なので、ジャッキを上げ終えたら外しておこう回転方向指定のあるタイヤもあるので、取り付ける向きには注意する。このように「ROTATION」マークがある場合には、矢印の方向が前側になるように装着するタイヤを装着する。がたつかない程度まであらかじめボルトを締めつけておく。タイヤが上がった状態で強く締めるのは危険
ハンドルを使ってリリースステムを左にゆっくり回すと、クルマの自重でジャッキが縮んでいく。2回転以上は回さないよう、状況を見ながら作業する受金を車体から外すためにジャッキを縮める際は、足を使ってパンタグラフ部を踏む。手を使うと指を挟む危険性があるタイヤが地面に完全に接したら、ボルトを力をかけて締める。締めすぎには注意。トルクレンチの場合、設定したトルクになると「カチ」っと言う。確認したくなるが2回はやらないように

 油圧ジャッキの導入で、毎年2回あるシーズンごとのタイヤチェンジが格段に楽になった。上げるときはもちろんだが、下げる作業がリリースステムを緩めるだけよいため、かなり作業効率が上がる。ハンドルを回すタイプのパンタグラフジャッキでは下げる際にも結構な重労働になる。油圧ジャッキであれば、タイヤとホイールが重いという問題はあるものの、女性でもタイヤ交換作業が可能だと思う。

 このシザースジャッキは、重さはそれなりにあるがコンパクトなので、車載にも問題ない。たとえば、雪国に行って際にチェーンの脱着時に活用するという使い方も可能だ(安全を考えると、スタッドレスタイヤの装着が望ましい)。

 なによりジャッキ専業メーカーなので、ある程度信頼して使えるのがうれしいところ。オイル交換時にはISO VG10のジャッキオイルが使用できるため、末永く愛用していきたいと思う。


(村上俊一)
2011年 4月 8日

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