ISO-FIXチャイルドシートの定番モデルを試す
「DUO plus」
メーカー:レーマー
購入価格:284.33ユーロ(2万9984円[購入時レート])

 

ISO-FIXの定番チャイルドシート
 ISO-FIXのチャイルドシートが国内でも登場しているが、今でも汎用ISO-FIXシートの定番中の定番と言えばレーマーの「DUO plus」ではないだろうか。数年前から汎用ISO-FIX対応の車両が登場し、メーカー系ディーラーが推奨アクセサリーとして販売するもののうち、海外メーカーの多くと、国内ではマツダ、三菱自動車の純正アクセサリーに指定され、ホンダはOEMとして採用している。

 肝心の安全性だが、国内のチャイルドシートアセスメントではテストが行われてないが、欧州での各テストでは良好な結果を出している。自動車そのものの安全性をテストするユーロNCAPの試験では、欧州各メーカーのほか、日本では純正採用していないトヨタ「プリウス」でさえもDUO plusを使って3歳児の安全性試験を受けている。良好な試験結果を出すために厳選されたと考えれば、世界でトップクラスの製品と言っても過言ではないだろう。

 ただ、日本のチャイルドシート市場ではメジャーな製品とは言いがたい。乗車できる子供の体重が9kg~18kgまでで、年齢ではおよそ9カ月~4歳までが目安。チャイルドシート選びをした人なら分かると思うが、日本では新生児~4歳までを1台で済ませられる製品が一般的で、DUO plusはそれからは外れた製品となってしまう。

 そのため、新生児からクルマに乗せるためには、DUO plusを使う前に、別に新生児の時期に使うシートを揃える必要がある。ISO-FIXの定番品でありながら、あまり国内では話題にならないのも仕方がないのかもしれない。

レーマー DUO plus、シートカラーは国内未発売の「Cowmooflage」日本の新安全基準「ECE R 44/04」に準拠しているISO-FIXでの取り付け方法は側面のシールに書いてある

装着は簡単だがトップテザーが面倒
 装着はISO-FIX対応製品だけに難しいところはない。カバーを外し、コネクターと呼ばれる接合部を引き出し、車両側のロアアンカレッジに押し付けるだけだ。レーマーの本国のWebサイトに掲示してある適合表に「トップテザーなしでよい」とされた車種ならこれで装着完了だ。

 しかし、適合表以外の汎用ISO-FIX対応車に取り付ける場合は、トップテザーのベルトの装着が必要となる。大型セダンの場合はリアトレイにトップテザーを引っ掛ける場所があって取り付けしやすいが、ハッチバック系のクルマの場合はシート裏になることが多い。装着を試したフォルクスワーゲン「ポロ」の場合は、リアシートの背もたれの裏側にあり、リアトレイを一旦外さないとベルトを回すことができなかった。

 また、外す場合はトップテザーのベルトを緩めてからフックを外すようになる。引っ掛けるための先端は金属なので、取り扱いに注意しないと車内を傷付けかねない点も注意が必要だ。

 取り付けた後も、シンプルに使いこなせるのがレーマーの特徴。子供の乗車は、ベルト先の金具であるタングを一時的に抑えておくタングホルダーがあるため、乗せる際にベルトの上に座ってしまうということがない。これは他のレーマー製品にも共通する仕組みで、たいへん重宝しそうだ。

 ベルトの肩の位置調整は、他の製品に多いベルトを通す位置を変更するのではなく、肩全体が移動する仕組みとなっている。調整の単位も細かい。

チャイルドシートをクルマに運びこむ後ろ側の緑色のレバーを引くとコネクターとコネクターカバーが引き出せるコネクターを露出したところ
装着前に、付属のガイドカップを先に車両側のロアアンカレッジに差し込んでおくコネクタをガイドカップにむけて差し込む
差し込むと自動的にロックされ、押し込んで緩みをとるトップテザーを出しておく車両側のトップテザーアンカレッジに引っ掛ける
ベルトを引いて緩みをとれば装着そのものは完了リアトレイを元に戻す装着が済んだDUO plus
シートベルトは5点式タングホルダーに引っ掛けておけば、ベルトが絡まず子供を乗せやすい肩ベルトの位置は黒い部分全体が上下して調整できる
調整は裏側の肩ベルトアジャスターで簡単に上下できる。車載前なら別の場所で子供を座らせたまま調整できるベルトの長さは緩めにしておいて、子供を乗せたら引いて合わせる肩ベルトの裏側

ISO-FIX対応品なのにシートベルト固定が簡単?
 一方で、DUO plusはシートベルト取り付けにも対応している。ISO-FIX非対応のクルマとシートを共有したり、他のクルマで利用しなければならない場合にも有効。シートベルト取り付けといえば一般的には難しいのだが、このDUO plusはそれも簡単だ。

 取り付け方は、DUO plusをシートに置き、背面の隙間に3点式シートベルトを通して装着し、シートベルトを引っ張りながらDUO plusをシートに押し付け、ロックオフクリップでベルトを挟むだけだ。

 ISO-FIXでの取り付けでトップテザーのベルトを取り付けるまでの時間を考えると、シートベルト取り付けのほうが早く済んでしまいそうなほどだが、実際にはベルト固定と金具固定の差もあり、多少時間がかかってもISO-FIXでの強固な固定を選びたい。

シートベルトで固定する場合はコネクタカバーを装着してコネクタを隠しておくロックオフクリップを開くシートベルトを通して固定する
シートに体重をかけてベルトを引っ張るロックオフクリップを締めて、装着完了

並行輸入はリスキーだが、カラーが豊富
 今回試したDUO plusは、個人輸入で直接ドイツから取り寄せた。個人輸入は何か問題が起こった場合にサポートが期待できないことや、手間がかかりすぎるといった点でリスキー。メリットとしては、昨今の外国為替の影響で安く買えるという点と、正規輸入品にはないシートカラーが入手できる点だ。

 国が違うことによる安全基準の差は、現在の日本のチャイルドシートの安全基準は欧州の「ECE R 44/04」をそのまま採用するため、欧州で販売されているものなら使用には問題はない。

 購入した店はドイツの通販サイト「kidsroom.de(http://www.kidsroom.de/)」で、日本への発送も可能。買ったものは以下のとおり。

購入製品価格(ユーロ)
Romer Duo Plus Highline 2012264.87
Romer Top Tether23.5
送料49.98
VAT 免税-54.02
合計284.33

 到着時に消費税を払い、クレジットカードの請求と合わせて総額で約3万円だった。梱包も国内通販と比べれば緩衝材などまったくないも同然。しかも航空便で届けられたため、箱はだいぶ痛んで到着した。初期不良も心配だったが、幸いにして問題はなかった。ただし、万一の場合もあるので個人輸入をすすめるものではないことをお断りしておく。くれぐれも自己責任でチャレンジしてほしい。

 ドイツで販売されるDUO plusは、欧州やその近隣諸国の言語に合わせて3冊の説明書がついている。日本語はないが、基本的には写真の解説というようにまとめられているので、外国語が得意でなくてもおおよそは理解できる。GBの印が英語なので、日本人ならGBの印の部分を読み進めばだいたい理解できるのではないだろうか。

 なお、DUO plusを個人輸入するときに注意する点は、汎用ISO-FIXの要件を満たすために必須のトップテザーのベルトが別売りとなること。トップテザーなしの装着が認められた車種なら準汎用ISO-FIXとして使えるが、正規輸入品では本体付属品となるためベルト単品での国内販売がない。同時にオーダーすることを忘れないように注意したい。

ドイツ購入時の付属の説明書はさまざまな言語版があり、合計3冊が付属する写真とその説明、という形式で記載してある付属の適合表にはトップテザーなし準汎用ISO-FIXの対応情報もある
ドイツ購入では別売りのトップテザー。汎用ISO-FIXの条件を満たすために買い忘れないに。国内正規版は付属品だトップテザーの装着は簡単。先の金具を説明書どおりに差し込んで引っ掛けるシート後ろのホルダーにトップテザーを収納できる

新生児非対応という以外は文句なしの製品
 DUO plusは、ISO-FIX対応品では各メーカーが純正採用するなど安全性にも実績ある製品と言える。しかし、対応する子供の年齢が限られること、その上で正規輸入品では6万3000円という高価格がネックとなる。

 それでも、新生児は別のチャイルドシートを用意でき、安全のために投資も問題ないという環境の保護者の方には検討してほしい製品だ。

(正田拓也)
2012年 6月 8日

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