カーグッズ・ミニレビュー

走りのしっかりしたスタンダード低燃費タイヤ

ヨコハマタイヤ「エコス ES31」

 今や自動車用のタイヤにおいても「エコ」はひとつのキーワードとなりつつある。最近では「低燃費タイヤ」というカテゴリーが定着しており、ユーザーが購入時に燃費性能を考慮してタイヤ選択を行う光景はそう珍しいものではなくなっている。そして、タイヤに燃費性能を求めるユーザーは、その価格にもシビアだ。いくら燃費がよくてもタイヤを買うときの出費が大きければ、トータルの維持費としては、節約したことにならないからだ。

 価格面でいうと、最近では海外ブランドの銘柄が増えてきていることもあり、さらにユーザーを悩ませる。タイヤ選びに際して、ごく一般的なユーザーの優先事項は「価格が安い」ということだが、だからといって「安全・安心」を軽視していいというわけでもないはずだ。性能および信頼性を確実に期待できるタイヤであることは必須で、「その中でもできるだけ安いものを買いたい」という購買心理があるに違いない。そのうえで、「さらに燃費がよくなればいい」と考えているのではないだろうか。

スタンダード低燃費タイヤ「エコス ES31」

ヨコハマタイヤの新スタンダード低燃費タイヤ「エコス ES31」

 そこで今回は、価格と性能(燃費面も含む)を高次元でバランスさせるべく開発された、ヨコハマタイヤ(横浜ゴム)の「ECOS ES31(エコス イーエス サンイチ)」を試してみることにした。定番スタンダードタイヤ「DNA ECOS ES300(ディーエヌエー エコス イーエス サンビャク)」の後継モデルになる。ただ、発売時点でのサイズバリエーションが145/80 R13 75S〜225/45 R18 95Wの全30サイズとなっており、一部サイズについてはDNA エコスも併売されていく。

 エコス ES31は、DNA エコスに対して「転がり抵抗:−11.5%」「ウェット制動性能:+14.1%」など、あらゆる面で性能向上を果たしたタイヤ。最大の変更点は、同社の低燃費タイヤ「Blu-Earth(ブルーアース)」開発時に培ったテクノロジーを、スタンダードクラスのタイヤに投入し、低燃費タイヤのラベリング制度に対応し、転がり抵抗性能:A、ウェットグリップ性能:cを実現したことにある。タイヤのパターンも新規にデザインされ、上記の性能を実現したほか、走行音を低減することにも成功している。

従来モデルであるDNA エコスとの比較
数字的にはこのような感じ。転がり抵抗性能とウェットグリップ性能がとくに向上している
その結果、転がり抵抗性能は「A」となり低燃費タイヤになった。ラベリング制度では、A以上が低燃費タイヤに分類される

タイヤガーデン浦和東でタイヤ交換

 このエコス ES31はどんなタイヤなのか? 筆者が普段の足に使っているホンダ「フリード」に装着し、一般道(住宅地、市街地、幹線道路)や高速道路(関越自動車道、外環道、首都高速、常磐自動車道、横浜新道など)を走ってみた。まず、タイヤ交換のために専門店に行く。やってきたのはヨコハマタイヤの直営店である「タイヤガーデン浦和東」(埼玉県さいたま市)だ。交換作業の合間を縫って、お店のスタッフにエコス ES31についてお話を聞いてみた。

 エコス ES31はこの3月1日に新発売となったニューモデルだが、売れ行きは好調なようだ。タイヤという商品は、一気にブームに乗って爆発的に売れるとは考えにくく、エコス ES31も純正装着サイズのリプレイスが中心となるだけに、これまでのエコスの人気を納得させられる。

 春は冬タイヤから夏タイヤに履き替える時期ということで、その際にエコス ES31を購入するユーザーが増えていると言う。ユーザー層としては、「クルマを仕事や買い物の足に使っている」という普段使いがメインの人が多いため、通販などで売られている海外ブランドの低価格タイヤと比較検討した結果、購入に訪れる例もあるそうだ。

 早速交換作業をしていただいたが、迅速で的確なスタッフの作業能力もあって20分程度で完了。お店のスタッフによると、「新品時のタイヤは若干膨張する傾向があるので、少しだけ空気圧を高めにしています。1カ月ぐらい走ったら、空気圧点検をして、再度適正空気圧に合わせてみてください」とのこと。なるほど、ひとつ勉強になった。

タイヤ交換のため、タイヤガーデン浦和東に到着したフリード
店内。通勤にクルマを使うユーザーも多く訪れるお店のようで、低燃費タイヤが店内中央に置かれていた
店内で見かけたポスター。5月6日まで「春得市」というキャンペーンを実施中
店員さんとあれこれ相談。最近のタイヤの傾向について教えていただいた
ピットに入れて、いよいよタイヤ交換へ
ジャッキもフラットタイプの立派なもの。2段昇降式となっていた
今回取り付けるエコス ES31。サイズは185/70 R14
トレッドパターン。左右対称、方向性指定なしのパターンながら、ブロック面はエッジ部分が工夫されているなど、接地性に配慮されているのが分かる
パターンデザインに投入された技術。ストレートグルーブがしっかり通っており、ウェット性能に加え、ハイドロプレーニング耐性も高そうだ
タイヤ取り付け作業。古いタイヤの空気を抜き
タイヤチェンジャーでビードを落としていく。いわゆる耳落とし作業
その後タイヤチェンジャー上部のテーブルにセットし、クルッと回して古いタイヤを外す
ホイールの確認と、バルブの交換など。バルブのゴムは、タイヤ交換の際には新品にしておくのがお勧め
エコス ES31をキレイにしたホイールにセット
タイヤバランサーで、タイヤのバランスをチェック
無事バランス調整も終了
エコス ES31が取り付けられたフリード。ロゴが凹モールドなので、すっきりして見える

 タイヤ交換後、市街地から幹線道路を周囲の流れに合わせて走る(天候は晴天、ただし風がかなり強かった)。このとき、それまで装着していた純正タイヤとの違いとして、最初に感じられたのは、“連続接地感”だ。イメージとしては、トレッドの各ブロックが転がりながら次々に接地していく感じだ。路面状況がステアリングに「ザッザッザッ」と伝わってくる。この印象は初期状態のみで、タイヤ製造時に発生し、新品タイヤに付いているスピュー(タイヤ成型時のヒゲ)が影響していたと思われる。このような感覚は高速道路を走り出す頃には消えていた。その代わりに「直進安定性の高さ」と「タイヤのしっかり感」がステアリングを通して伝わってくるようになった。

エコス ES31で走行開始

 交換後に最初に走った高速道路は首都高速 埼玉新都心線(S5)。さいたま見沼ランプから入る。しばらく、緩やかなカーブや分合流のループなどが続くが、タイヤの慣らし走行も兼ねて、タイヤにいつも以上に気を配って走ってみた。

 とくに問題はないと判断し、その後、外環道に入る頃には、そこそこペースを上げて走ってみた。そこで伝わってきたのが、「直進安定性」と「しっかり感」というわけだ。ハイグリップラジアルタイヤのように、直進走行中にタイヤ全体がしっかりしたグリップ感をステアリングに伝えてくるというのではなく、ちょうど4輪それぞれのタイヤの中央部分に荷重が乗っている感覚で、クルマが「スーッ」と前に進んでいるような気がする。もしかすると、この感覚が「転がり抵抗が小さいタイヤ」独特のものなのかもしれない。その後、外環道を西に向かい、関越道に入り、所沢IC(インターチェンジ)で折り返すというルートを走行した。その途中には車線によってはやや荒れた部分や、浅い轍(わだち)があるところもあったが、そういう路面でも直進性が大きく変化することはなかった。この辺りがタイヤ交換直後の感想になる。

 このエコス ES31の特徴として挙げられるのは「しっかり感」があること。これまで装着していた純正タイヤは、旋回時の荷重移動によって「ブロックが潰れる」印象があったのだが、エコス ES31はブロックではなくサイドウォール(タイヤ側面)のダンピングによって、荷重を「いなしている」という印象。乗り始めた当初は、それが乗り心地の「硬さ」として感じられたのだが、ダンピングの収まりがいい(揺れが続かない)ので、空気を入れすぎてポンポン跳ねるようなタイヤの「硬さ」とはまったく異質で、つまり「しっかり感」として感じられるということだ。

 さらに乗り込んでいくと、その「しっかり感」の先に、予想以上のグリップ性能の高さがあった。これには正直驚いた。これまで、スタンダードタイヤに対して「グリップ性能は大したことはないだろう」という先入観を持っていたのだが、エコス ES31は、それをよい意味で裏切る(?)グリップ性能の高さを見せたのだ。

 グリップ力の高さは、意外な形で認識した。高速道路を走行中のその日はかなり風が強く、フリードのようなミニバンスタイルの車両にとっては、風にあおられて車線を逸脱しそうになるという難しい状況だった。もちろん、その分、速度を落として走るが、それでも時折吹く突風によって、20〜30cmほど横に流されることがあった。

 そのような状況では、反射的にクルマが流された方向と反対側にステアリングを若干操作する(カウンターステア)ことになるわけだが、そのとき、タイヤに角度が付いて荷重が乗ると、タイヤのグリップ感が急激に立ち上がってくるのが分かった。たとえば風で車体が右に流されて左に操舵したとき、右の前輪、後輪のグリップが明らかに高まっているのが分かるという感じだ。同様に、高速道路のループ部を走行する際など、横Gが長く続くコーナリングの際にも、横方向のグリップが十分に高く感じられた。直進走行時の「スーッと走る」というイメージから、タイヤに荷重が乗ると「グッと踏ん張る」というフィーリングに変わるのだ。

 このグリップ感覚の変化は、制動時にも感じられた。今回は公道でのフィーリングチェックなので、クローズドのテストコースで行うような、故意にクルマの挙動を乱す運転はしていないのだが、それでも、前方での不意の割り込みなどで、わりと強めのブレーキングを強いられる場面もあった。そんな状況でも、エコス ES31の安心感は高かった。直進時から旋回時へのグリップ感覚の変化については先述したとおりだが、制動時には、それとは異なるフィーリングなのだ。タイヤ全体が路面に押しつけられているようなグリップ感覚で、ブレーキペダルを踏んでいる間だけ、タイヤの接地面積が大きくなっているように感じられる。もちろん、タイヤ(とくに前輪)はそもそも制動時には潰れて接地面積が増えるものだが、その変化の度合いが一般的なタイヤより大きいような気がした。それだけ安心してブレーキを踏めるということだ。

期待のウェット性能はどうだろう?

 直進時には「転がり抵抗」が小さく、旋回時・制動時には「グリップ性能」が高いという特徴を見せるエコス ES31。ではその性能は「ウェット路面」ではどうなのか? 後日、雨天時にも試乗してみたが、その印象はウェット路面でもほぼ変わらなかった。試乗コースは、横浜新道、第三京浜、首都高速・湾岸線、常磐道などの高速道路や、それぞれの周辺の一般道といったところだが、通常走行時であれば、たとえばある速度を超えると急激に操舵力が軽くなったり、明らかにフワフワとした乗り味になることはない。安心して乗っていられるのだ。

 「転がり抵抗」が小さいタイヤは、ウェット路面でとくに縦方向のグリップ感が希薄になるという先入観を持っていたが、発進加速で前輪が空転しやすいFF車のフリードであっても、そういう挙動はまったく見せなかったし、制動時に「接地面積が増える感覚」はドライ路面での走行時とほぼ同。「ウェット路面では温度が上がりにくくグリップ性能が低下しやすい」という、かつての低燃費タイヤに見られがちだったデメリットは、激しい開発競争が行われた結果開発された製品だけに払拭されているようだ。

首都高 湾岸線を走る。海沿いの道路では強烈な横風が吹くことがあるが、そういうときでも横方向のグリップを発揮し、タイヤのしっかり感も高かった
雨天時の常磐道。ウェット路面を走っていても、とくにタイヤが浮き上がるような感覚はなく、しっかりグリップしていた
一般道でのウェット走行では、水溜まりを通過することもあるが、そういうときでもグリップが破綻することなく車両安定性は保たれていた

 走行性能については、よい意味で期待を裏切る結果を示したエコスだが、燃費についてはどうだろう。結果を先に言うと、純正タイヤ装着時とエコス ES31での燃費データは、若干エコス ES31のほうが優れているかなというレベルだ。フリードの普段の燃費は、エアコン非使用時の平均燃費が一般道で約11.5km/L、高速道路で約13.2km/L、トータルでは12km/L台前半というところだが(あえて燃費を意識せずに「流れに合わせる運転」をしているので、フリードとしては低めかもしれない)、タイヤ交換後はトータルで12.5km/Lとなった(走行距離は延べ4日間で500kmを超えている)。一般道、高速道路ともにそれぞれで「完全なる同条件」を再現することができないため、そもそも比較すること自体が難しい。

 その上、タイヤの記事を書くためにさまざまな走り方をしたため、全体的には燃費は低下しがちと考えられる(気温が高くエアコンを使用した日もあった)。そのような走行条件でも燃費がわずかによくなっているのは、うれしい傾向だと言える。とはいえ通常運転時の燃費の違いを知るためには、もう少し時間をかけて判断する必要があるだろう。

 なお、走行中の騒音(ロードノイズ)に関しては、極端な違いは見られなかった。もともとフリードはエンジン音が目立つ(?)くらいで、全体的にはこのクラスとしては静かなモデル。高速道路でウインドーを開けて走行してみたが、とくにうるさいと感じることはない。ただ、ショッピングモールなどにある大型の立体駐車場で運転しているとき、純正タイヤでは駐車場のコンクリート上で旋回すると、だいたい「キュー」という音を発していたが、それがほぼ聞こえなくなった。これはこれで、個人的には大きなメリットと感じたが……。

 最後にエコス ES31の総合評価だ。全体的な印象としては「スタンダードタイヤとして、かなり高性能なタイヤ」といえる。とくに、グリップ性能が期待以上に高かったのは大いに評価できる。しかもそれが「過敏なレスポンスを見せるハイグリップ」ではなく、「通常使用でストレスを感じず、むしろ安心感を提供してくれる適度なグリップ」だった点を評価したい。スタンダードタイヤは「毎日使うもの」なので、安心感が高いということは、それだけで何物にも代え難いメリットといえるのではないだろうか。

(松本尊重/Photo:清宮信志)