アナログTVでカンタンにワンセグを
アナログカーテレビ用ワンセグセット「MOVT2」
メーカー:マスプロ電工
価格:1万5330円

 

MOVT2のパッケージとチューナーなどが納められた本体

 テレビのアナログ放送がデジタル放送へ完全移行するまで、いよいよ1年を切った。家庭用テレビはエコポイント制度による補助が行われたこともあって、これを機会に買い換えた人は少なくないようだ。

 一方、クルマの中はとなるとカーナビとセットになっている場合が多いこともあって、まだ手つかずという人が多いはず。カーナビを買い換えるとなると、家庭用なら50型クラスのテレビがラクに買えるぐらいの予算が必要になるワケだから、このご時世ってことを考えれば、躊躇してしまうのは当然っちゃ当然。

 あと1年待って、デジタル放送移行同時にカーナビを買い換えるってのもアリだけど、もっと手軽に、今すぐデジタル放送を受信する方法があったりする。それは、アドオンタイプのチューナーを追加することで、家庭用TV向けにはすでに安価なデジタルチューナーがリリースされている。

 ただし、車載用でも同じ手が使えるかというと、少し問題がある。それはチューナーとTVの接続方法。家庭用のTVならD端子やビデオ入力端子(黄色いヤツね)がまず間違いなく用意されているから問題はないけれど、カーナビとセットになっているタイプや純正カーナビだと、専用端子のみとか、入力端子なしなんて場合もある。となると、装着に費用が掛かることになって、「買い換えた方がいいや」ってことにもなりかねない。

 そんな面倒くささを解消して、カンタンにワンセグ放送の受信を可能にしてくれるのが、マスプロ電工の「MOVT2」だ。クルマ関連では直接ユーザーとの接点が少ないメーカーだけど、ETC車載器をOEM供給していたり、その昔はカーナビをリリースしていたこともあったりする。アラフォー世代には「見えすぎちゃって困るの~」なんてCMでもお馴染みだ(古いか)。

 それはさておき、このMOVT2の最大のウリとなるのが、チューナ部とTV(ナビ)を電気的に接続する必要がないこと。「じゃあ、どうやって映像を送るのさ?」ってギモンが出るかと思うが、それがこのMOVT2の凄いトコロ。なんと、

「デジタル放送をチューナーで受信」→「VHF信号に変換」→「既設のアンテナに再送信」

するのだ。「デジタルなのにアナログ」というコロンブスのタマゴ的なシステム(特許出願中らしい)を使うことで、ナビには一切、手を触れずに取り付けることができるってワケ。

 VHF信号の送信にはフィルムアンテナを使うため、既存のアンテナがフィルムタイプであることが必要になるけれど、そこさえクリアしてしまえば後はカンタン。電源をシガーソケットから取って、パーキングブレーキコードを接続するだけでいい。

本体とCFのサイズ比較。サイズは102×72×26mm(幅×奥行き×高さ)ととてもコンパクトだコネクタ類は後ろ側にまとめられている。コネクタはアンテナのほか電源とリモコン受光部の3つだけ左からリモコン受信部、アンテナ、電源コネクタのアップ。電源コネクタにはパーキングブレーキ連動機能用コードも
送受信用のアンテナはフィルムタイプ。コードは6mあるので取り回しに悩む必要はなさそうだ専用のリモコンも付属。ボタンの色や形状が工夫されているから手探りでも操作できそうアンテナ装着用のコードクランプや両面テープのほか、ガラスクリーナーまで付属している
マニュアルも取り付け用、操作用と充実。かなり詳しく解説されているので、DIYでの取り付けも難しくないはずだ

 さて、それでは実際に取り付け。お相手はエクリプスの「AVN9904HD」というちょっと古いHDDナビだ。といっても、MOVT2を取り付ける場合、アナログチューナーさえ積んでいれば、TV側のスペックはあまり関係ない。

 取り付ける必要があるのは、

・本体
・電源
・アンテナ
・リモコン受信部
・パーキングブレーキコード

の計5点。

 本体はちょうど手のひらサイズといった大きさなので置き場所には困らない。今回はスペースに余裕があるクルマだったので目立つ場所に装着したけれど、リモコン用の受光部が別途用意されているから、グローブボックスやシート下など見えない場所でもOKだ。

 ちょっと面倒なのがアンテナとパーキングブレーキコード。アンテナは取り付け自体はカンタンだけど、慣れていないとケーブルの取り回しが少し面倒かも。もっとも、既存のケーブルがあるわけだから、それをたどっていけば取り回しに悩まずに済む。パーキングブレーキとの接続も、カーナビが付いているならすでに配線が来ているはずだからそこにかませてやればいい。

 電源やリモコン受信部は付けるだけ、だ。カーオーディオを自分で取り付けられるぐらいのスキルがあれば、1時間もあれば作業を終えることができるはずだ。

リモコンの受光部は小指の先ぐらいの大きさ。インパネの邪魔にならないところに装着しようリモコン受信部のコードは2m。余った部分などは付属のコードクランプでまとめておこう電源はシガーライターにソケットを差し込むだけと、とってもカンタンだ
一番の難関となるのがパーキングブレーキコードの接続。この部分のコネクタは付属しないので別途用意する必要があるフィルムアンテナは既存のアンテナの上に貼り付ける。受信状態を見ながら微調整する必要があるので、まずは仮付けでアンテナコードはAピラーに這わせる。樹脂製のパネルが付いているクルマならそれほど難しくない作業
すべてのコードを付けた本体に接続。置く場所によって受信状態が変わるので、様子を見ながら装着したいテストに使ったクルマはスペースが余っていたのでこんな場所に装着したが、リモコンの受光部が別途用意されているので、見えない場所に隠してもいい

 取り付けが終わってしまえば、あとはカンタンな設定を行うだけでワンセグ放送を見ることができる。そのあたりの流れは写真で詳しく追っているので、そちらを参照して欲しい。

 で、気になる映像はといえば、もともとが15fps&低解像度のワンセグってことを考えれば、十分に満足できるレベル。逆にアナログならではのアマさが、フレームレートや解像度を補間(?)してくれるためか、なめらかな感じさえ受けるほど。“砂嵐”とは無縁なデジタルならではの受信の安定度、音声のクリアさといったメリットもカーTVとしては大きなメリットといえる。

装着が終わったらリモコンで受信チャンネルを設定。画面が見えない状態で行なわなければならないのでちょっと不便チャンネル設定ができるとテストパターンが映る。アンテナの位置を微調整すると受信状態がかなり変わるので、慎重に位置決めをしたい
アンテナ設定を終えると次はチャンネル設定あらかじめ設定されているチャンネルを地域ごとに選ぶ「地域選択」と、実際に電波を受けて受信可能なチャンネルを探す「チャンネルスキャン」の2パターンが行える
「地域選択」は地方→都道府県の2ステップ地域を決めるとあらかじめ決められたチャンネルが設定される
その後、「チャンネルスキャン」を行うと、電波状況がよければ受信できるチャンネルが増えることもホームチャンネルを設定しておけば、別のエリアでチャンネル設定をし直してもすぐに元に戻すことができる1度アナログに変換されているため、デジタルらしいパキッとした映像にはならない。とはいえ、ワンセグと考えれば十分に満足できる画質だ
設定を「ワイド」にした場合の表示は、スクイーズ出力となるため、左右に圧縮される。設定を「標準」にすると、前の画面のようにレターボックス表示となる画面上にはチャンネルや番組表示ができる
地デジならではの電子番組表も表示可能。受信チャンンネル一覧と選択チャンネルの放送時間順の、2パターンの表示が可能
画面サイズや字幕表示の有無などのほか、色合いやコントラストなどの調整も行える

 少し価格が高いのが難点だけど、性能はもちろん細部の作りやマニュアルの親切さといった点を考えれば十分ナットク。個人的には最近、こういうの(http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/minigoods/20100806_384480.html)で苦労したこともあって、国産メーカーならではの仕上がりには感激してしまったり。

 ただ、DIYで取り付けるなら1つ注意を。それは、受信するのがデジタルのワンセグ放送とはいえ、MOVT2の場合はほとんどがアナログで処理されているという点。ゆえに、本体の設置場所やコード類の取り回しで、意外なほど映像の品位に差が出てしまう。コダわるのならそのあたりを考えて装着を行うようにすると、より美しい映像でワンセグ放送が楽しめるハズだ。

(安田 剛)
2010年 9月 3日

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