少し長めのアンテナでラジオの感度アップを
ELS スカイシフトロングアンテナ
メーカー:ワッツ
価格:5980円

 

 ドライブ中は、ラジオを流しておくのが長く習慣になっている。特に見知らぬ遠方に行った場合には、地元の情報を得たいために積極的に地元局をサーチして聞くことが多い。災害時のいち早い情報伝達手段としても、東日本大地震以降改めて見直されてもいる。そこで、常々もっと広範囲でラジオを受信できないかと思っていた。

ワッツ「ELS スカイシフトロングアンテナ」のパッケージ

 最近は車でラジオを聞く人が少なくなっているのか、車の購入時にはあまり感度を気にしない人が多いのか、標準装備のラジオ用アンテナは短くなる一方。愛車は古いので最近のショートアンテナ系よりやや長めの純正アンテナが装着されているのだが、もう少し感度アップを狙って外付けアンテナを探してみた。そこで見つけたのが、ワッツ「ELS スカイシフトロングアンテナ(以下スカイシフトロング)」という製品だ。

 FM放送の受信を考えた場合、80MHzを中心周波数とすると1波長は3.75m。1/4波長にしても約94cmの長さが必要になる。この長さがアンテナ線として必須。短くするため、この長さの線をヘリカルコイル状に巻いている。こういったアンテナは短縮型と呼ばれ、このタイプがもっともポピュラーだ。ただし、短くすればするほど感度が低下してしまう。AM放送受信を考えると、もっと長さが必要になるので長ければ長いほどよいと言える。多くのショートアンテナではブースターを併用していることが多い。

 長い方がよいとは言っても、やみくもに長くしては駐車場の屋根で引っかかってじゃまなだけだし、なんといっても危険だ。ほどほどのバランスが重要だろう。ちなみに愛車の純正アンテナでも、立体駐車場では外さないと入れない。立駐入庫時に外すのは覚悟の上での選択だ。


スカイシフトロングの長さは実測で53cm純正アンテナ(左)とスカイシフトロング(右)の長さ比較

 さてここで少し堅苦しい話になるが、カーラジオ用アンテナに関係する法律関連をまとめておこう。

 乗用車に取りつけるアンテナは、道路運送車両法の保安基準で指定部品に指定されていて、全高が3.8mを超えない限りで交換することは問題ない。車検時の全高はアンテナを含めない状態での高さになっている。しかし、その一部が改正されていて(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示)、今後猶予期間を経て2009年以降に製造された車に関しては(2009年より古い車は無関係だ)、2017年から突起物に関する規定が厳しくなり、既存の車用アンテナとして販売されていても交換ができなくなるケースも出てくるので注意してほしい。これは衝突時に歩行者を傷つけないような車を作るための法律になる。

 関係のある部分を抜き出してみると、「シャフト部分は曲率半径2.5mm未満」でも大丈夫で、その場合「曲率半径が2.5mm以上を有する固定式保護キャップを取り付ける」こととある。また、たわまない構造の場合、ほかにいろいろと細かな制約がある。このアンテナの場合、パッケージに適応品とは書かれていないが、直径約5mmの外せない保護キャップが先端に付いていて、たわむ構造のため問題はないと思われる。ただし、「車両の最外縁を超えて突出しないように」とあるので、後ろに傾けた際やたわんだ状態ではみ出さないように注意する必要があるだろう。

 新しい車に対するこのような規制は世界的な流れになっていて、すでに外部にアンテナをまったく出さず、ボディー内部に収めている車種も見かけるようになっている。アンテナ以外の突起物にも規制があるため、1度目を通しておくとよいだろう。

○道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 別添22 外装の電波送受信用アンテナの技術基準(PDF)
http://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokubetten/saibet_022_00.pdf

○道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 〈第一節〉第6条(長さ、幅及び高さ)(PDF)
http://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokukokuji/saikoku_006_00.pdf

○「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の一部改正について~乗用車の外装基準の適用を猶予します~
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000055.html

 このスカイシフトロングの長さは実測で53cmあり、販売されているラジオ用アンテナとしては長い部類になる。エレメントはしなやかに曲がるジュラコン素材でできている。よくラリーカーの無線アンテナで使われているあのタイプだ。エレメント部分にゆるやかなヘリカル状に巻かれたコイルが見えるデザイン。今回はブラックを選んだが、バリエーションとしてカーボン調のタイプもある。ちなみに国産だ。

 車の屋根などにすでに装備されている、ネジ脱着式のルーフアンテナを交換して使うアンテナで、新たにアンテナを新設する商品ではないので注意。

 適合車種は、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スズキ、三菱、スバル、ダイハツ、フォルクスワーゲン、オペル、アウディ、プジョー、シトロエン、BMW、メルセデスベンツ、MINI、ボルボ、SMARTと書かれている。アンテナ側のネジ穴径はM5で、それに付属のM5×10mm、M5×12mm、M5×15mm、M5×17mm、M6×M5×15mm、M6×M5×15mm、M5×M4×10mm、M5×M4×15mmのいずれかのアタッチメントネジを使い、車体側のネジ穴に合わせて装着する仕組みになっている。アタッチメントネジが多く対応範囲はかなり広い。

エレメント部分のアップ。ヘリカル状に線が巻いてある付属のアタッチメントのネジとリング類。かなりのバリエーションがある本体側にはM5(直径5mm)のネジ穴が刻まれている

 交換は特に難しくない。純正アンテナは左回りに回すと外せるので、外した後の純正アンテナのネジ径を見ながら、現物合わせで確認する。スカイシフトロング側にはM5のネジ穴が刻まれているので、それが変換できるネジを装着してスカイシフトロングを右回しで取りつければ完了だ。外れないようにシッカリ締め付けよう。どうしても隙間が空いてしまう場合には、付属のリングを使って隙間を埋める。

 愛車へ取り付けてみると、外径に微妙に段差が付いたが、雨の侵入は問題なさそうだ。この車のアンテナ台座は角度調整ができないため、かなり寝たままの状態になる。大きな段差を超えた時にエレメントがしなって、屋根に当たる可能性もありそうだ。今のところ当たった様子はないが、台座の角度調整が可能なら、なるべく立てた状態で装着するのがオススメだ。

純正アンテナが付いている最初の状態純正アンテナは左回しに回転すると外れる。固着しているとかなり力が要るかもしれないネジを回していくとこのように外れる
純正アンテナのネジ部分の現物を見て、ネジ径が合ったアタッチメントのネジを選ぶアンテナ台座側にアタッチメントのネジを付ける。マイナスのミゾが切ってあるので、ドライバーで締めこむことができるスカイシフトロング本体をネジに締めこむ。隙間があく場合には、リングを活用する
スカイシフトロングを装着したところ少し離れて見ても全体のバランスはわるくない。個人的には長いアンテナが好みエレメントは柔らかく、この程度まで軽くしなる

 さて交換後の受信状態だが、元の純正アンテナの設計がそれなりによかったのか、期待していたほど大幅な感度アップとは残念ながらならなかった。差はほとんど誤差。FM放送はまったく変化が分からず、AM放送の感度が少しよくなったかなと感じる程度だ。

 聴感上ではあまりに差がないので、シグナルメーターのある無線機(アマチュア無線用機材になるが筆者は免許を所持している)に繋いで、メーターの振れを見てみたが、これまたあまり差はなく、誤差程度でわずかにスカイシフトロングでの受信が安定している程度。ただこの計測時は固定しているが、実際に車で走行するとアンテナが結構しなるので、受信状態に揺れが生じやすいのもスカイシフトロングのほうではあるので微妙な勝敗となった。

スカイシフトロングでFMのTOKYO FMを受信中。フルスケールで安定している純正アンテナでFMのTOKYO FMを受信中。フルスケールではあるが少しメーターが変化する。そのため写真ではメーター部の液晶が薄く写っている
スカイシフトロングでAMのNHKラジオ第1放送を受信中。十分に強く受信している純正アンテナでAMのNHKラジオ第1放送を受信中。聴感上は大きく変わらないが、メーターはやや振れが弱い

 比較結果としては差が小さかったが、これは愛車の純正アンテナの性能が元々よかったということで、スカイシフトロングのアンテナ性能がよいのは間違いがない。短縮率の高い20cm以下のショートアンテナからの交換であれば、感度アップの効果はあるだろう。特にAMラジオをよく聞くなら、改善効果を体感できるだろう。

 またカーナビのFM-VICS渋滞情報受信用アンテナでは、カーナビのテレビアンテナを流用したり別にフィルムアンテナを貼ったりして使うことが多いが、これをルーフアンテナから分岐受信している状態であれば、アンテナ交換の効果も大きくなる。

 40cm前後の純正アンテナとの交換では、AMでは受信改善が見られたものの、FMに関してはあまり差がない結果となってしまった。ショートスタイルのアンテナが主流の中、受信感度が気になる方は、このアンテナでドライブ中の安定受信を楽しんでみてはいかがだろうか。

(村上俊一)
2011年 6月 10日

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