2万円を切るお手軽PND
「nuvi 1460」
メーカー:ガーミン
価格:オープンプライス(購入価格:1万9800円)

 

ガーミン「nuvi1460」本体。5インチ液晶を搭載し、タッチパネルを装備する。ワンセグなど地デジ関連の機能はない

 カーナビの地図記録媒体として数年前よりフラッシュメモリーが使われるようになり、大幅な小型化と低価格化が起こった。その中でもっとも小型で安価なのがPND(Portable Navigation Device)と呼ばれるタイプだ。携帯電話やスマートフォンでもナビができるようになり、この分野の競争が激化したせいか、実売価格で見ると2万円を切っているモデルもある。

 もちろん価格が安いのには理由がある。PNDは据え置きカーナビの簡易版になり、機能が大きく異なる。主要な機能の違いを以下にまとめてみた。最近はPNDの高機能化も進んでおり、機種によっては据置型並みの機能を一部持つものも存在する。



 PND据え置き型携帯電話&スマートフォン
液晶画面4~5型ワイド5~7型ワイド3~4型ワイド
本体サイズ画面部分のみ1~2DIN程度の設置スペースが必要本体のみ
音声本体から本体からも出せるがカーオーディオと接続も可能本体から
GPSユニット内蔵外部内蔵
渋滞情報(FM VICS)機種によるソフトにより対応する
ジャイロセンサー機種による機種による
車速パルス××
バック感知××
内蔵バッテリー×
自転車/徒歩での利用×
設置と移設簡単難しい簡単
地図の更新ない場合が多い2~3年間無償が多いネット経由で常時地図最新

 PND最大のメリットは、とにかく電源さえつなげば、スグに使える設置の容易さだ。愛車には据え置き型のカーナビをすでに設置しているが、ナビのない実家のクルマや、レンタカーでトラックを借りる際などに気軽に設置して使うために今回購入してみた。たまに使うにはそれこそ携帯電話のナビ機能でもよいのだが、運転中に確認するには画面がやや小さいと感じたのと、ナビ中に電話がかかってくると面倒なので見送ることにした(もちろん道交法上の問題もある)。

 安価なPNDでの自車位置精度は、衛星からのGPS信号のみが頼りになる。据え置き型ナビの場合、クルマの速度を車速パルスで、向きや高さをジャイロセンサーで、さらにバックした場合にはそれも感知して自車位置精度を上げている。つまりPNDであると、トンネルに入ったり、高架で上下に分かれている道路を通ったり、高層ビル街などに行ったりすると、自車位置を見失う可能性が高いワケだ。こういった部分は値段なりに省かれているので、割り切って使うことになる。その分設置作業は簡単になる。

 今回選んだのは、近所のカー用品店で特売されていたガーミン「nuvi1460」というモデル。PNDとしては大きめの5インチ液晶を持ち、タッチパネルで操作する。2010年5月に発売されたモデルなので、そろそろ発売から1年近く経っているため安価に販売されていることも多い。カーナビの新製品は5~6月頃に発表されることが多いので、次期モデルが登場するかも知れないが、PNDはシンプルな作りのため、地図が新しくなること以外、神経質に新製品を追うこともないと考えた。

 なお、姉妹モデルとしてワンセグを搭載した「nuvi1480」と、少し小さめの4.3インチ液晶を搭載した「nuvi1360」がある。このあたりのチョイスはお好み次第。搭載地図は2010年度版のゼンリン製だ。

 ガーミンというメーカーは日本でのカーナビ製品としてはなじみがないかも知れないが、山歩きや災害現場などで使われる防水ポータブルGPSのメーカーとしては老舗。搭載されるGPSユニットが高性能な点が大きなウリだ。GPSが頼みの綱のPNDではこの感度が重要になることはいうまでもない。

 nuvi1460はPNDとしてはやや大きめの部類に入るが、日本メーカーの一般的カーナビと比べれば、とてもシンプル。タッチパネル液晶の画面以外には、電源スイッチとminiUSBポート、microSDスロットしかないというシンプルさだ。

nuvi1460の内容物。本体以外には、USBケーブル、シガー電源アダプター、クレードル、吸盤マウント、吸盤を固定する際に使用するプレートなどを同梱ガーミンのポータブルGPS「Legend Cx」(手前)。ガーミンは、このポータブルGPSの分野で著名なメーカーだ

 車内への設置は、本体を保持するクレードルと吸盤マウントを使い、ダッシュボードなど見やすい位置に吸盤で取り付ける。あとは、miniUSBに接続するシガーライターソケットアダプタを使って電源を確保するだけ。USBの電源は5Vなので、シガー電源アダプターを使ってDC12Vから電圧を変換している。12V電源ラインへの直接配線はできないので注意してほしい。

 愛車はフロントガラスが熱線反射ガラスになっていて、電波を通すのはバックミラー近辺のみになっているので、GPS衛星の電波をキチンととらえてくれるか心配だったが、特に問題なく複数の衛星を常時補足していた。GPSモジュールが高感度なのは間違いがないようで、実際の走行時もトンネル内でこそ衛星を見失うものの、高架下の道でも衛星を見失うことがあまりなかったのには驚いた。まれに停車時に方向を見失って画面が回転することはあったが、これはジャイロが搭載されていないので仕方がないだろう。走り始めればすぐ補正される。

本体背面にminiUSBポートがあり、そこから電源を供給する本体を保持用クレードルと吸盤マウントは分離しているので、使用時に合体させる。取り付け個所の状況に応じて付属のベースを利用するダッシュボードまわりに吸盤を利用できる平面がない場合、付属のベースを貼りつけてそこに吸盤で取り付ける
電源は、付属の専用シガー電源アダプターから本体をダッシュボードまわりに設置した状態配線は電源ケーブルのみだが、汎用のコードステッカなどを使って止めると見栄えがよいだろう

 ナビ機能は、完全にナビに頼り切るのではなく、自分である程度判断しながらルート選びの参考にするという使い方で割り切ると、極力シンプルな操作方法と画面なので、想像していたよりも使い勝手がよい。VICS渋滞情報や渋滞考慮ルート機能もないので、その辺りは割り切りが必要だ。地図は建物の形状が分かるほどの詳細地図や一方通行表示もないが、ドアtoドアまで要求しなければこれでも十分だろう。主要道路が色分けされているので見やすい。

 交差点ではレーン情報の表示もあり、地図が自動拡大されたり方向看板表示がされたりするなど工夫されている。高速道路の分岐ではジャンクション情報も表示される。ナビの指示で運転に迷うシーンは特になかった。画面は一般的なカーナビの詳細かつ繊細な画面案内と比べると見劣りしてしまうが、逆にシンプルで見やすいので瞬間的な判断はしやすいと思う。また、地点アイコン(POI)は、ジャンルを細かく指定して表示できるので、この使い勝手は一般カーナビと変わらない。

ナビ画面。交差点付近に方向看板情報がある場合は表示される交差点では自動拡大され、推奨走行レーン情報も表示
高速道路での分岐標示GPS衛星の受信状況を確認している画面。感度は良好でトンネル内以外で見失うことはほとんどなかった

 実はこの機種を選ぶ強い動機となったのは、走行軌跡ログをパソコンに取り込むことができる機能があることだった。カーナビでは走行軌跡が表示されるが、それをデータとしてパソコンに取り込んで活用することまでは特別な機種以外考えられていない。しかし、ガーミンのポータブルGPS製品では軌跡ログを簡単にデータとして取り込むことがほとんどの機種で可能だ。ポータブルGPSでは本来そちらが主目的なので当然とも言える。nuvi1460も例外ではない。パソコンに転送したログデータは、Google MapsやEarthに軌跡を表示させることができる。この手法は取扱説明書に詳しく書かれていないので手順をお見せしておこう。

1.本体をUSBでパソコンと接続する。デバイス検出時には大容量記憶装置モードを選ぶ2.Google Maps(http://maps.google.com/)を使う。あらかじめユーザー登録をしログインしておく。「マイマップ」をクリックする3.「タイトル」を記入して、特定の人のみ見ることが可能な「限定公開」を選択する。「インポート」をクリックする
4.「ファイルを選択」をクリック5.接続している本体内の「GPX」フォルダにある「Current.gpx」を選択する。選択後「ファイルからアップロード」をクリックしてアップロードする6.軌跡ログがアップロードされマップ上に表示される

 地点の登録は最初だけプラグインをインストールする必要があるのだが、以後はGoogle Maps経由で簡単にできる。Google Mapsで検索した地点ピンの情報をUSBに接続したnuvi1460に手軽に転送できる。この作業も本体をUSBでパソコンと接続しておいてから操作する。

1.「Garmin Communicator Plugin」(http://www8.garmin.com/products/communicator/index.jsp)にアクセスし「Begin Installation」をクリック。自動で始まらない場合、右の「Download-PC/Mac」のリンクからファイルをダウンロードしてインストールする。Webブラウザーは再起動が必要2.インストーラを実行後、テストページ(http://www8.garmin.com/products/communicator/test/)が表示されるので、本体が認識されていることを確認3.Google Mapsで検索し、地点ピンをクリックして詳細情報を表示させる。「その他」→「送信」を選ぶ(上部「送信」アイコンでも同じ)。任意の場所にピンを置きたい場合、任意地点を右クリックして「この場所について」を選ぶ
4.「ナビメーカー」タブで「名前」を入力。「ナビメーカー」は「Garmin」を選び「送信」を選択5.「USB」タブで本体名にチェックを入れ、「GPSに送信」をクリックをすれば完了。本体をUSBポートから外して構わない6.転送した地点は、ガーミン側の「目的地検索」→「お気に入り」に登録される
「出発」を押せば、現在地からルート検索をして案内が開始される

 これ以外にも、大量の地点情報を登録する「POILoader」というツールがガーミンから提供されている。一度にたくさん登録したい場合にはこちらが便利。ただしサポートはない。

 なお、自前の携帯電話が対応していなかったので触れなかったが、対応携帯電話をBluetooth接続してハンズフリー通話をしたり、データ通信機能(DUNデバイスとして動作させる)を使って情報を検索したりする機能もある。対応デバイスリストは、ガーミンの正規代理店である「いいよねっと」の製品ページ(http://www.iiyo.net/products/nuvi1460/)にて公開されている。

 最近ではスマートフォン向けのカーナビサービスも高機能になってきているが、車内でのナビ使用時と、電話やメール着信は分けておきたいとか、もう少し画面が大きいほうがよいと考える人も多いはず。2万以内で手軽に導入できる低価格PNDなら、ナビ専用の投資してもわるくないだろう。ちなみにバッテリーでも駆動するため、徒歩ナビとしても活用できる。ただこちらの用途ではスマートフォンに軍配があがるかも知れない。

(村上俊一)
2011年 6月 3日

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