どうなる? 次期「GT-R」

GT-R 2013年モデル

 2002年の東京モーターショーで、コンセプトスタディとして初登場。その5年後となる2007年の同じく東京モーターショーにおいて、まさしく国民的な期待を受けつつ生産型デビューを果たした日産「GT-R」は、500台のみ製作されたレクサス「LF-A」とともに、日本製スーパーカーの牙城を守る象徴的モデルとなった。

 そして正式なリリース後も、水野和敏プロジェクトリーダー率いる技術陣による不断のアップ・トゥ・デートが施され、パワー/トルクは初期バージョンの480PS/60.0kgmから、2011年モデルでは530PS/62.5kgm、2012年モデルでは550PS/64.5kgmに増強。また2013年モデルでもスペック上のパフォーマンス数値こそ変わらないが、シャシーからエンジン/駆動系に至るまでのドラスティックな改良により、GT-Rが常にベンチマークとしてきた「ノルドシュライフェ(独ニュルブルクリンク北コース)」では7分18秒6という、4シーターの市販車としては驚異的なラップタイムを叩き出すまでに至った。

 しかし量産バージョンの正式デビューから5年、コンセプトの発表まで加えれば既に10年を経過したGT-Rについては、そろそろ次期モデルに関する噂話が聞こえてきてもよさそうな時期。2010年に水野和敏氏がインタビューに答えた際には、近い将来に誕生するであろう次期GT-Rでは、ハイブリッド・システムやディーゼルエンジン搭載の可能性も示唆されていた。

 ところが今年7月末、アメリカの自動車Webメディア「INSIDE LINE」から気になるスクープ情報が伝えられた。同誌が独自ソースから得た情報として「次期GT-Rの開発は行われない可能性がある」と報じたというのだ。

 その情報によると、かつて現行型GT-Rの開発を主導したカルロス・ゴーンCEOが、昨今の欧米を震撼させている構造不況、あるいは反日デモ以前から兆しを見せていた中国マーケットの冷え込みを考慮してか、次期GT-Rの開発計画を棚上げとしていたとのこと。また日産社内には、次期型GT-Rの開発プロジェクト自体が存在していなかった? などという極端な情報まで伝えられていた。

 しかし現行「R35」型GT-Rは、日本国内はもとより欧米や中近東、あるいは東南アジアの裕福なスポーツカーファンからも「GODZILLA(ゴジラ)」のニックネームとともに敬愛されているモデルであり、現代の日産のテクノロジーを象徴するイメージリーダーとしての役割も期待されていることから、やはり次期モデルの開発が継続されているらしいことが、今年秋になって判明したという。

 暫定的に「R36」型と仮称されている次期GT-Rは、2018年の正式デビューを目指して開発中との由。パワートレーンには、新たにハイブリッド・システムの導入の可能性が高いとされる。そしてこの新情報により再び注目を集めているのが、日産のプレミアムブランド、インフニィティが2009年に発表したコンセプトカー、「エッセンス」である。

 「エッセンス」のパワートレーンは、現行型スカイラインやフーガにも搭載される3.7リッターV型6気筒「VQ37」エンジンにツインターボを組み合わせて、エンジン単体でも440PSを発生。さらにフロントのエンジンとトランスミッションの間に配置された新開発の3Dモーターを組み合わせた「パラレル・ハイブリッドシステム」により、システム総出力は600PSに達するとされた。

 また、モーター用2次電池にはリチウムイオンバッテリーが採用されるほか、回生ブレーキも装備。ブレーキング時にはバッテリーに充電され、低速域や低負荷域ではモーター単独でも走行を可能にしているとの由。つまり、パフォーマンスは完全にスーパーカーの領域でありながら、当代最新のエコロジー性能をも目指していた。

 次期GT-Rでは、この「エッセンス」のハイブリッド・システムをブラッシュアップ。システムの基幹となるガソリンエンジンも、よりハイパワーなVR38DETTをベースとするであろうことから、総出力は700PSクラスにも達する可能性も否定できない。

 一方ハイブリッド車となれば不可避的に重量が嵩んでしまうことから、シャシーやボディについてはカーボンファイバーなどの軽量素材の使用範囲が大幅に拡大されることが予想される。しかしニュルブルクリンク北コース7分18秒台という高性能に加えて、4人の乗員とそれぞれのラゲッジを軽く飲み込む実用性を完全両立したGT-Rは、世界的に見ても稀有な存在。次期型でも軽量化や重心低下のため基本的なパッケージングまで変えてくることは、まず考えられないだろう。

噂や希望的観測はさておき、現在の世界的な経済状況や政治情勢などを勘案すれば、次期GT-Rの登場についてはまだまだ不透明と言わざるを得ないところもある。

 その一方で、もし2018年フルチェンジの噂を信ずるとしても、まだまだ5年以上の猶予があることから、現代のGT-Rの通例に従って「R35型」にもさらなるブラッシュアップが施されることは間違いあるまい。

 いずれにせよ、世界に誇る日本発のスーパーカーの灯を消さないためにも、我々は次期GT-Rの登場に熱烈なエールを送りたいのである。

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(武田公実 )
2012年 11月 19日