ワールドリポート

アルファ ロメオからアッパーミドル・サルーンが登場?

アルファ ロメオ「グローリア」

 さる3月5日~3月17日、スイスで開催された世界最大規模のモーターショー、ジュネーブ・モーターショーにおいて、アルファ ロメオがコンセプトスタディの「グローリア」(Gloria)を公開。同じジュネーヴ・ショーをワールドプレミアの舞台とした生産型のミッドシップスポーツカー「4C」ともども、世界中の注目を集めたことは記憶に新しい。

 グローリアは、イタリア・トリノに本拠を置くデザイン工科学院「IED」(European Design Institute)と、アルファ ロメオ社内のチェントロスティーレ(デザインセンター)が共同制作したもので、プロジェクトにはIED所属の若手デザイナー20人が参加しているという。

 デザインテーマは「アメリカおよびアジア市場を意識したアルファ ロメオのサルーン」というもの。あくまでモックアップの習作ゆえに、公表されているスペックは一部のボディーサイズのみだが、そのリリースによると4700×1920×1320mm(全長×全幅×全高)、ホイールベース2900mmとされている。また、パワートレーンのレイアウトや駆動方法も明らかにされていないが、パワーユニットはV6もしくはV8のツインターボが想定されているという。

 このスペックから連想されるのは、今年4月の上海オートショーで発表されたマセラティの新型車「ギブリ」であろう。ショー開幕以前の現時点でギブリのボディーサイズは公表されていないものの「5m前後」と予想されている全長の数値から、ホイールベースはグローリアと同様の2.9m程度になるものと考えられる。

 つまりこのコンセプトスタディは、マセラティのギブリをベースとした後輪駆動、およびFR由来の4WDレイアウトを持つアッパーミドル・サルーンを、アルファ ロメオが近い将来にデビューさせることを示唆している? という考察に結びつかせるのだ。

 アルファ ロメオのEセグメント車と言えば、2007年をもって生産を終えた「166」以来久方ぶりとなるのだが、その一方で今回のグローリアは来年あたりにショーデビューが噂される次期「ジュリア」のデザインを暗示している……? という未確認情報も、一部メディアでは流布している。

 これまで次期ジュリアは、現行型「ジュリエッタ」のために開発された新世代プラットフォームを拡大した、FFないしは4WDのサルーン/ワゴンになると予想されていた。またエンジンもジュリエッタや4Cと同じ、1750TBi直噴4気筒ターボが中核になるという見方が一般的である。

 それだけに、今回のグローリアでギブリを連想させるボディーサイズや搭載エンジンを公表したことには、何らかのメッセージが込められていると考える向きもあるようなのだ。

 いずれにしても、アルファ ロメオは依然として世界最大の自動車マーケットである北米市場へのカムバックを明言しているが、そのための武器としては「MiTo」ないしはジュリエッタという、小型車ばかりのラインナップでは商業的にも苦しいところ。そこで同じくジュネーヴでデビューした4Cを切り札としても考えている様子なのだ。しかし、さらに絶対的な販売数アップが見込めるEセグメント・モデルは、是非ともラインナップに加えたいに違いあるまい。

 フィアット・グループのマルキオンネCEOが、独アウディ首脳陣とアルファ ロメオ・ブランドの譲渡について何らかの交渉をしたというキナ臭い噂(アウディの「R8-Etron」にアルファ伝統の盾型グリルを組み合わせたCGは、どうやらエイプリルフールのジョークだったようだが……)が再燃する中、アルファ ロメオの今後の行方を決定づける可能性が高いEセグメント・アッパーミドルサルーンには、商品自体の魅力以上の興味がそそられてしまうのである。

武田公実