フランスの人気ブランド、続々復活か?
アルピーヌ・ルノー「A110」 |
近年の自動車業界では、かつて人気を得ていたブランド名を復活させるというのが、一大ムーブメントと化している感がある。その流れは「ブガッティ」や「マイバッハ」などの高級車に限らず、つい先日復活が発表された「ダットサン」などの安価な車種にも及び、今やあらゆるメーカーにおいて、実績と人気のあるブランドバリューを再び生かそうとする機運が高まっているのだ。
そんな中、往年のフランスを代表するスポーツカーブランドが時を同じくして復活を果たすというスクープ情報が、特にヨーロッパでは大きな話題を巻き起こしているようだ。
まずは、日本でもカルト的な人気を誇るスポーツカーブランドの「アルピーヌ・ルノー」。1956年、南仏ディエップでルノー代理店を営んでいたジャン・レドレが創業したアルピーヌは、ルノーをベースとした小型軽量なスポーツカーの傑作を数多く製作したメーカーである。
特に1963年にデビューした「A110」は、公道用のスポーツカーとしてのみならず、ラリーカーとしても大活躍。創成期のWRC(世界ラリー選手権)では最強のマシンの1つとなった。その後も「V6GT」「V6ターボ」などのヒット作を残すが、1995年に「A610」の生産を終えるとともに、アルピーヌ・ブランドも一旦は幕を降ろすことになったのである。
実はアルピーヌの復活が取り沙汰されたのは、今回が初めてではない。1995年にルノー・スポール「スピダー」が発表された際には、アルピーヌ・ブランドでの発売が噂されたほか、今世紀初頭には「フェアレディZ」(Z33型)をベースとする新生アルピーヌ・ルノーが復活する? とのスクープ情報も出ている。
さらに2007年にはブランドネーム復活が発表までされたものの、翌2008年のリーマン・ショックの影響か、プロジェクトは頓挫したかに思われていた。ところが、ブランド復活が発表されて5年を経た今年になって、ついにコンセプトモデルが発表されるという、かなり確度の高い情報が出てきたのだ。
この復活版アルピーヌ第1弾として日本国内のメディアでも有力視されているのは、日産「GT-R」をベースとした大排気量4WD(あるいはFR?)の本格的スーパーカーという説。その一方でヨーロッパの一部スクープ系情報筋などでは、ロータス「エリーゼ」やアルファロメオ「4C」(2013~14年頃に発売予定)に対抗する、ライトウェイトスポーツカーになるという説も唱えられている。後者の場合は、カーボン製モノコックに「メガーヌRS」用パワートレーンを組み合わせたミッドシップ? などとも言われているが、少なくとも現時点では噂の域を出るものではないだろう。
ファセル・ヴェガ「HK500」 |
さて、もう1つの復活ブランドは「ファセル・ヴェガ」である。第2次大戦前のフランスで隆盛を極めた超高級ツーリングカー「グラン・ルティエ」の伝統を、第2次大戦後の税制により高級車がほぼ死滅したフランスで復活させるべく、アルピーヌの創業にも近い1954年から、自社ブランドの自動車生産を始めたファセル・メタロンの製品である。
自社製のクーペ/デカポタブル(カブリオレ)、あるいは観音開き型のドアを持つ4ドア・サルーンに、北米のクライスラーから供給を受けたV8ヘミ・エンジンを搭載したファセル・ヴェガは、アルピーヌのごとき純粋なスポーツカーではないが、退廃的なまでに豪奢なスタイルとゴージャス極まりないインテリアで当時のヨーロッパの富裕層を魅了し、ひと頃はパリ社交界の花形とも称されていた。しかし、さらなる販路拡大のために開発した小型車「ファセリア」の営業的失敗が祟り、1964年をもって自動車生産から撤退してしまった。
復活版ファセル・ヴェガのイメージスケッチ |
復活版のファセル・ヴェガについては、既にボディの一部を映した写真やエクステリア/インテリアのデザインスケッチまで公開されているが、現時点ではモデル概要について何らの発表もなされていない。しかし、大排気量エンジンをフロントに搭載するクーペというのは、この写真からも容易に想像できるだろう。
そして1950~60年代の大型ファセルと同様に、クライスラー系の最新型V8ヘミ・ユニットが乗せられることは間違いないとも言われている。また、インテリアのスケッチに見えるシフトセレクターから判断すると、マニュアルモード付のATが組み合わされる可能性が高いようだ。
新生ファセル・ヴェガは、どうやらルノー・日産連合のような大企業ではなさそうなので、シリーズ生産化までこぎつけられるか否かは現時点では未知数なところ。しかし、ティーザーキャンペーンが開始されていることから、少なくともショーデビューだけは間違いなく行われると見られている。
アルピーヌ・ルノーとファセル・ヴェガ。どちらブランド復活も、今年秋のパリ・サロンにて。それぞれのコンセプトモデルのワールドプレミアが行われるとの観測がなされている。今後の成り行きに、是非とも注目してゆきたい。
■ワールドリポート バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/wr/
(武田公実 )
2012年 4月 11日