V6、直6、またV6?:BMW次期M3

 新型F30系への代替わりが急速に進行しているBMW「3シリーズ」だが、当然のことながら最高性能バージョンである「M3」についても、開発が急ピッチで進められているようだ。

 またF30系では、クーペおよびカブリオレが新たに「4シリーズ」に改名されるとの可能性が濃厚になってきていることから、M3および「M4」(?)にはさらなる発展性も期待される。

 そして誰もが気になるに違いないのが、BMWでは要となる心臓部であろうが、実は次期M3に搭載されることになるエンジンに関しては、これまで各方面から諸説が噴出。確度の高さはさておき、大いに錯綜しているようなのだ。まずは、F30系3シリーズのデビュー前である2010年あたりから、現行M3のV型8気筒4リッターは廃止されて直列6気筒に回帰するという噂が先行していたのだが、そこにV型6気筒の新設計ターボユニットを搭載? という第2報が飛び込んできたのが、2011年4月ごろのことだった。

 ところが、同じ2011年の夏にイギリスの名門自動車誌「AUTOCAR」が、BMW M社内の消息筋からの情報として「新型BMW M3には、直列6気筒+ツインターボのエンジンが搭載される」という報道をしたことで、次期M3のエンジンに関するスクープ合戦は、少なくとも一旦は落ち着いたかに見えたのだ。

 同誌の報道によると、次期M3に搭載予定の直6ツインターボ・エンジンは、現行型「1シリーズM」(日本市場には未導入)用をリファインしたもので、M3専用としてエンジンのマネージメントシステムやシリンダーヘッド、ピストン、コンロッドなどを新たに設計。また既にディーゼルでは導入済みのトライターボも採用され、現行E90系M3の4リッター V8自然吸気が発生する420PSを上回る、450PS級のパワーを獲得するとされていた。

 これでようやく確定情報かと思いきや、今年4月あたりから次期M3/M4に乗せられるパワーユニットは、やはりV6になる? という観測が再燃しているようなのだ。

 この最新情報の伝えるところによると、次期M3/M4に搭載されるという新V6ユニットは、V型6気筒のレシプロエンジンでは理論上最もバランスが良いとされる60度のバンク角ではなく、これまでBMWのV8やV10でも実績のある90度バンク角を採用しているとのこと。そして、各バンクにシーケンシャル・ターボチャージャーを1基ずつ装着するという。つまり現行型M5/M6、ないしはX5M/X6Mに搭載されている4.4リッター V8ツインターボ・ユニットを、2気筒分だけカットオフしたようなレイアウトになるものと見られている。

 またこのV6ユニットは、近い将来に「M」以外のBMW各モデルでも、従来のV8自然吸気ユニットに取って代わるダウンサイジング・エンジンとして搭載されることが見込まれるうえに、コンパクトな構成からハイブリッド化にも適していると目されているのだ。

 とはいえ、これまで語られてきた次期M3/M4用エンジンに関する情報が、直6から再びV6に戻ってしまったという前代未聞の錯綜ぶりを思えば、今回の最新スクープ情報に関しても依然としてクエスチョンマークを付けざるを得ないのが実情。さらに昨今の欧米メディアで配信されている、独ニュルブルクリンク北コースにおけるスクープ動画を見ても、そのエンジン音は直6ともV6とも受け取れるものなのである。

 BMWといえば、「バイエルン・エンジン製造会社」を意味する「Bayerische Motoren Werke」の頭文字を屋号としているように、ことエンジンについては格別のこだわりを持つブランド。しかも1930年代から綿々と製造してきた直列6気筒エンジンは、同社のシンボルとも言える存在である。

 それだけに、BMWが初めてV6を生産化するというのは大きなニュースだろうが、まだ確定情報と判断するには少々早すぎると見るべきかもしれない。

 いずれにせよ次期M3については、2014年モデルとして、恐らく来年後半までには概要が公表されると予測されている。それまで、楽しみに待ちたいところである。

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(武田公実 )
2012年 5月 9日