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ついに始まったGPウィークエンド。「F1日本GPが100倍楽しくなるガイド」第2弾は、サーキットでのF1撮影に挑戦し、2008年のF1日本GPの思い出を形に残そうという企画だ。 モータースポーツ撮影には難しそうなイメージがあるが、決して素人に不可能なものではなく、趣味とする人も多い。 ここでは趣味のモータースポーツ撮影を25年以上続けてきた、デジカメWatchでもおなじみの奥川浩彦氏に、モータースポーツ撮影のいろはを語っていただこう。 いよいよ2008年のF1日本GPが今週末に迫ってきた。筆者の初F1は1986年のモナコ、翌1987年から鈴鹿を20年、昨年の富士と観戦してきたので、今年で23回目のF1GPとなる。 今回は初心者向けにレース写真の撮り方について書いてみたい。レース観戦の楽しみ方は人それぞれだが、写真を撮ることもそのひとつだろう。最近はデジタル一眼レフカメラも手軽に購入できる存在になった。すでに持っている方も、これから購入される方も、サーキットへ行ったついでにレース写真にチャレンジしてみてはいかがだろう。
筆者が一眼レフカメラを買うきっかけになったのはモータースポーツだった。 初めてサーキットへ行ったのは1981年の富士GCシリーズの開幕戦。一発で病み付きになり、サーキット通いが始まった。1982年頃、AUTO SPORT誌に掲載されたモノクロ2ページ程度の「レース写真の撮り方」を読んで、「どうせ見に行くなら、写真を撮ってみよう」と思ったのは翌年の秋だった。1982年のGCシリーズ最終戦、買ったばかりのキヤノンA-1を持って撮影に行ったのが、レース写真のデビューだ。気付くとレース観戦もレース写真も四半世紀を超える長い付き合いになっている。
■デジタル一眼レフで撮ろう
すでにデジタル一眼レフを使用している方は、それを使い倒していただければいいと思う。これから購入する方は、各社から何機種も発売されているので、どのメーカー、どの機種がいいか迷うだろう。使い物にならない機種はないと思うが、機種により向き不向きはあると思う。 デジタル一眼レフカメラは、フィルム一眼レフカメラのフィルムが撮像素子(イメージセンサー)に置き換わったもので、イメージセンサーはおおむね「CCD」と「CMOS」の2種類がある。これはどちらでもよい。 イメージセンサーの性能の指標のひとつに「画素数」があるが、これもいま売られている機種なら、ほぼ気にする必要はない。800万画素でも1000万画素でも十分だ。 ただし、イメージセンサーの大きさは、「フルサイズ」と呼ばれる大型のものより、小型の「APS-Cサイズ」の方いい。その方が安いし、望遠レンズを多用するレース写真には有利だ。APS-Cサイズだと、レンズの焦点距離が、レンズ本体に書いてある焦点距離の1.5〜1.6倍になるからだ。たとえば、300mmのレンズなら450mmや480mmとなって、遠くのものをより大きく写せることになる。 連写性能(1秒間に何枚写せるか)は速い方が気持ちよく撮れる。以前キヤノンのEOS Kiss X2(3.5枚/秒)でSUPER GTを撮影したとき、結果として撮れた絵に不満はなかったが、上位機種のEOS 40D(6.5枚/秒)と比べると撮影のリズムに違いを感じた。目安としては連写速度が5枚/秒以上の機種を選択したい。 オートフォーカスの性能も重要だ。これはレンズにもよるのでスペックでは比較しにくいが、オートフォーカスのセンサーに、クロスセンサー等を使用した機種が望ましい。 AFポイント(測距点)は9点、11点のように、ある程度多い方が撮影の幅が広がる。一番多く使うのは中央のAFポイントだが、例えば次の写真のように、コーナーから立ち上がって来るマシンを左端に寄せて撮りたいといった場合、左のAFポイントを使えれば、フレーミングがしやすくなる。静物撮影ならピントを合わせてからフレーミングをすることも可能だが、レース撮影ではそのようなゆとりはない。 ほかにも液晶モニターは大きい方がいいとか、細かなチェックポイントはあるが、おおむね、以上の点を押さえれば、入門用としては十分であろう。
■レンズ選びも大切
さらに最近では、手ブレを抑えてくれる手ブレ補正機能(メーカーによってISとかVRとか呼び名が異なる)の有無もあるが、筆者はレース写真にはそれほど重要だと思っていない。また機種によっては、カメラのボディ側で手ブレ補正してくれるものもあって、この場合はレンズ側の手ブレ補正は不要だ。 初めてデジタル一眼レフを買ったなら、「18-50mm F3.5-5.6」のようなレンズが付属してきたはずだ。あるいは「50-200mm F3.5-5.6」のようなレンズも一緒に付属しているかもしれないし、「18-200mm F3.5-5.6」のようなレンズが1本だけ付属してきたかもしれない。 レンズの焦点距離は、数字が大きい(長い)ほど遠くのものを大きく写せる。また、明るさの数字は小さいほど、暗い所でも明るく写せる。だから、長くて明るいレンズがいいということになるが、プロやハイアマチュアが使う400mm F2.8とか600mm F4のようなレンズは高価な上に大きくて重い。 一般的に、レース写真で使うレンズは200〜300mmくらいだろう。APS-Cサイズのイメージセンサーなら200〜300mmのレンズを300mm〜480mmくらいとして使える。筆者の場合、焦点距離を1.4倍にする「コンバーター」を一緒に使用するので、最大は672mmになる。今回のF1日本GPの舞台である富士スピードウェイは、撮影可能な場所からコースまでが遠いので、もう少し長いレンズが欲しくなるかもしれない。 ズームレンズか単焦点レンズかは意見の分かれるところで、筆者は単焦点派だが、ズームはフレーミングの自由度が高く、レンズを交換する手間を減らせるというメリットがある。70-300mm F4.5-5.6あたりの手軽なズームレンズで始めてみて、より長いレンズに挑戦してみてもいいだろう。 筆者はキヤノンユーザーなので、もしこれからデジタル一眼レフを買ってレース写真を撮るなら、次のような組み合わせにするだろう。
■そのほかの機材
撮影スタイルにもよるが、一脚もあると便利だ。三脚はほかの撮影者の迷惑になるし、実際にサーキットで使ってる人は少ない。一脚の目的は手ブレ防止ではなく、重いレンズを支えて体力を温存するためと言っていいだろう。一脚を使用するだけで、かなり楽になる。 作風によっては、NDフィルターがあると表現の幅が広がる。NDフィルターは、レンズに入る光の量を減らして、シャッター速度を遅くするためのフィルターだ。天気がいい日にシャッター速度1/15秒といったスローシャッターを切ろうとすると絞り込んでも露出オーバーになることがある。銀塩時代はフジクロームの50D(ISO50)を使用していたが、デジタル一眼レフではISO感度を下げられない機種も多い。その様なときにNDフィルターは役に立つだろう。 撮影機材に関しては以上だが、FMラジオも筆者がサーキットに持っていく常備品だ。現地で放送される実況放送を聞けば、レースも楽しめるし、レースの流れも分かるので撮影にも役に立つ。電波が弱い場所も多いので、お洒落なカードタイプよりは、アンテナが付いたタイプの方が安くて受信状況も良好だ。 ■シャッター速度が決め手
同じ場所でシャッター速度1/160秒と1/30秒で撮ったものだ。シャッター速度を遅くすると背景が流れ、動きの迫力が増す。当然ブレる率も高くなりボツ写真も増える。では実際にどれくらいのシャッター速度で撮ればいいのかを考えてみたい。 一般的に「1/焦点距離」が手ブレしないシャッター速度と言われている。100mmの焦点距離なら1/100秒、300mmのレンズなら1/300秒が目安となる。実際には腕のいい人なら100mmのレンズで1/30秒でも手ブレしないだろうし、撮影する姿勢など様々な条件で異なってくる。 筆者は流し撮りのシャッター速度の基本を1/125秒と考えている。これをベースに、条件や目的によって上げ下げして撮っている。 焦点距離300mmのレンズで1/125秒で撮ることは、動かない静物撮影でも手ブレするのが普通と考えられる。よってスローシャッターで動く被写体を撮ることが、それほど簡単にはいかないことが理解できるであろう。初心者であれば100枚撮って全部ボツでも気にすることはない。フィルム代もかからないデジカメならガンガン撮って慣れることが上達への近道だと思う。 同じ場所、同じレンズでも被写体となるマシンの速度によってシャッター速度は異なってくる。同じコーナーを予選のフライングラップで走る場合と、フォーメーションラップで走る場合では車速に差がある。車速が速ければ、速いシャッター速度で撮っても背景は流れるが、車速が遅ければ止まった写真となる。慣れれば車速が速くてもマシンをフレーム収めることは難しくないが、遅いシャッター速度で縦方向のブレを抑えるのは難しい。レース写真は遅いコーナーの方が撮りやすいと言われることが多いが、筆者は少し慣れれば車速が速い方が流し撮りはしやすいと思っている。 鈴鹿のS字と130Rで撮った写真を比較してみた。S字は1/160秒、130Rは1/200秒だ。1/200秒でもそこそこ背景が流れているのは、130Rで車速が速いからだ。1/200秒の撮影なら、かなりの確率で撮ることができる。
また筆者はマシンの背景によってシャッター速度を変えている。背景がシンプルな場合、例えばアスファルトしか写らない場合はシャッター速度を速くしても、そこそこ動きがある写真に見える。背景にゴチャゴチャしたものが写る場合はシャッター速度を遅くしないと止まって見えてしまう。 2枚の写真を比較してみよう。真横から撮った写真は1/125秒、上方から撮った写真は1/160秒だ。1/160秒でもそれほど止まっては見えないと思う。背景がシンプルだと少し流れていればそれなりに動きが表現できる。ちなみにホイールとタイヤのサイドウォールの文字(読めないがミシュラン)を比較すると1/125秒の間によりマシンが移動している(タイヤが回転している)ことがわかる。
次の2枚も比較して見ていただきたい。シャッター速度は同じ1/160秒だが、赤白緑のバリヤまで写っている方は、あまり動きが感じられないと思う。マシンがアップになっている方が、多少スピード感を感じないだろうか。実はこの2枚は同じ画像をトリミングしたものだ。他の理由もあるが、背景がシンプルだと同じシャッター速度でも動きが感じられるようになる。
フレーミングによっても背景の流れ具合は変わってくる。同じ背景の写真(同じ場所での撮影)でも、より望遠で撮影し背景が少なく写る場合はシャッター速度を上げてもそれなりにスピード感が出る。景色が多く写る場合はスローシャッターが求められる。次の2枚も同じ写真をトリミングしたものだ。元画像の背景が多く写っている方は動きのない写真になっている。トリミングして(実際にはより望遠で撮影して)背景が少なくなると、多少スピード感が増してくる。
次の2枚は同じ場所からズームを変えて撮った写真。背景が大きく写る場合はよりスローシャッターでないと動きが止まってしまう。
■いざ流し撮り
シャッター速度は1/125秒が基本と書いたが、野球やゴルフに素振りがあるように、最初は素振りの気持ちで少し速めのシャッター速度から始めよう。まずは1/250秒あたりで何枚か撮ってみる。そこから徐々にシャッター速度を遅くしていこう。後で画像を確認すれば、シャッター速度ごとの差が今後のデータとして蓄積される。シャッター速度以外の設定は、
これらの設定も意見はいろいろあるが、まずはある程度カメラ任せでスタートすればいいだろう。筆者自身はほとんどオートで撮っていて、モニターで確認して露出補正を少しマイナスにすることが多い。銀塩の時代は露出計やアスファルト路面から露出を決めたが、現在はGTマシンを正面から撮るときだけ、ヘッドライトの影響が出るのでマニュアル露出にしている。 フレーミングは最初は少しゆとりがあった方がいい。画面いっぱいにマシンをとらえると、頭が切れたり、尻切れトンボが多発する。デジカメは後からトリミング(必要なところだけ切り抜くこと)するのは簡単なので無理することはない。撮影ポイントの前後もマシンをしっかりとファインダー内に入れるようにスイングしよう。 そう、流し撮りはある意味スポーツなのだ。ゴルフのスイングがテイクバックからフォロースルーまで大切なように、シャッターを押す前後も大切だ。物理的にはクラブとボールが接触する時間は千分の数秒でも、スイング全体がそのインパクトに影響するように、カメラを振るスイングがシャッターを押す瞬間に影響する。 流し撮りのコツは? と聞かれることがあるが、「秘策があったら教えてほしい」と思っている。イチローからバッティングのコツを聞いてすぐに打てるなら、誰でも3割バッターになれるはずだ。流し撮りも、才能のある人は1/60秒で5割、6割の成功率だが、凡人は1割、2割と差があるだろう。練習=慣れにより率は上がるはず。強いて言えば「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」がコツだろう。 肘の位置とか構え方を変えたり、身体を左右に振ったりいろいろ試したがいまだ秘策は見付つからない。心掛けていることは、漠然とファインダーをのぞくのではなく、マシンの1点を見ること、ファインダーの中でマシンが上下左右に振れても、無理に位置を補正せずにスムーズにスイングすること、両足のスタンスはシャッターを押す撮影ポイントに正対することを心掛けている。秘策をお持ちの方は是非ご連絡いただきたい。 連写が単写かは状況によって使い分けている。卓越した方はきっとこのアングルしかないところを一発で撮るのだと思うが、撮影ポイントによっては斜め前、真横、斜め後ろと3アングルが狙えるケースもある。人によっては1枚目より2枚目以降の方が手ブレが少ないと言う説もある。
同じく連写の作例だが、こちらは日没後の鈴鹿のスプーンカーブ一つ目。斜め前、真横、斜め後ろの3アングルを連写で撮影。正確には連写した12枚の2枚目、7枚目、11枚目の3枚だ。最初の1枚はライトの影響でアンダーになっているし、スピード感も足りない。1/125秒で撮影すれば3つのアングルともOKになる可能性はある。一写入魂もよし、マシンガン連写もよし、好みのスタイルで撮ってほしい。
以上が筆者の流し撮りの基本的ノウハウだ。それ以外にもアウト側よりイン側で撮った方がいいとか、細かな点はいくつかあるが、またの機会にしよう。初心者の方に何か一つでも参考になれば幸いに思う。 ■正面からの撮影
サーキットでコースを走るマシンを正面から撮れるのはヘアピンなどのコーナーが主となる。機材として必要なのは長めの望遠レンズだ。足りない場合はトリミングするか、縦位置で背景とのバランスを取るなど工夫すればいい。カメラを振り回す必要もないので、一脚があると撮影は楽になる。 数年前、小学生の息子に富士のヘアピンで一脚を使ってGTマシンを撮らせてみたが、意外と問題なく撮れていた。鈴鹿8耐の流し撮りは全滅だったので、難易度はかなり易しいと言えよう。
筆者の場合シャッター速度の目安は1/1000秒。基本的な設定はオートだが、SUPER GTの様にヘッドライトを点灯している場合は、その影響で露出アンダーになる場合があるのでマニュアル露出にしている。 正面からの撮影で筆者の好みの構図は、切り込んだ前輪が真っ直ぐこちらを向く位置と、マシンのボディが真っ直ぐになる二つのポイントだ。
状況によって多少ズレてもOKとすることはある。例えば上の一番右の写真は真正面を少し通り過ぎているが、左前輪がダートの奮迅を巻き上げているのでOKとした。捨てるつもりで連写で撮れば、前後のカットにラッキーな1枚があるかもしれない。 撮影方法はシャッターポイントの少し手前からマシンをファインダーに入れ、小さくレンズを振って追従する感じだ。モトクロスと違ってサーキットの場合はレコードラインが安定している。とはいえ、アウトインアウトラインやクリッピングポイントはドライバーによって微妙に異なるので微調整は必要だ。特に雨の日はカントの付いたコーナーでは水の溜まりやすいイン側を避けるケースもあるのでレコードラインがドライと大幅にズレることがある。 流し撮りと比べれば正面からの撮影は難易度は格段に低い。初心者はまず正面の撮影から入るのも一つの方法だと思う。 ■そのほかの撮影
■富士スピードウェイ
時代によって変化はしてきたが、コース改修前の富士はそこそこ撮影ポイントが多く、1コーナーからヘアピンまではイン側でもアウト側でも撮ることができた。 コースが新しくなって、セーフティーゾーンが広がってドライバーが安全になった一方、撮影ポイントは減った。だがF1では、F1の時にしかない仮設スタンド(指定席)によって、普段では撮れないアングルでの撮影ができる。指定席のチケットを持っている方は、その場所も撮影ポイントになる可能性が高い。 実際に足を運べばわかるが、望遠レンズを持った人が集まっている場所が、撮影のお薦めポイントと思っていただければいい。筆者が初心者に最適と思うのは、ネッツコーナーの立ち上がり側の土手だ。Mスタンドと最終コーナーの間となる。 ここならコーナー部分を正面から撮り、最終コーナーへの短いストレートで流し撮りをすることができる。自由席なので誰でも撮影可能だ。この場所はコースに対し少し高台になっていて、脚立なしでも金網越しに撮ることができる。まずはこのポイントから初めてみることをお薦めする。初心者は定番のポイントでじっくり撮ってみればいだろう。
■最後に
また、F1は年に1回だが、国内を代表するフォーミュラーニッポンやSUPER GTなら東北でも九州でも開催されている。レース好き、写真好きな方は、機会を見つけてサーキットに足を運んでいただきたい。
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