特別企画

【特別企画】岡本幸一郎の新型「デミオ」で行く南九州1泊2日の旅

初春の南九州でディーゼル&ガソリンの両デミオをドライブ

クラスを超えた新型「デミオ」の走り

 「CX-5」「アテンザ」「アクセラ」ときて、今回のデミオで4回目を迎えた、マツダの恒例行事となった試乗会。例年は3月に開催されるところ、今回は1月ということで、きっとそのころには、そのころに話題となっているであろうニューモデルの大きなイベントが控えているから前倒しされたのだろう、などと思いつつ鹿児島へ飛んだ。

●新型「アテンザ」で行く南九州1泊2日の旅
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20130319_592270.html

●新型「アクセラ」で行く南九州1泊2日の旅
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20140310_638595.html

 約10カ月ぶりに訪れた鹿児島は、前回に鹿児島に上陸したときにも活動が活発になっていると耳にした桜島の影響で、火山灰が多く舞っているようだった。スタート地点が空港近くのホテルではなく、市内のホテルとなったのも前回からの変更点で、今回もワインディングでの楽しさはもちろん、デミオのクラスを超えた高速安定性や、市街地走行のしやすさをぜひ味わってほしいと、まず開発主査よりメッセージを頂戴した。

 往路は希望したディーゼルの6速MT車を受け取り、いざ走り出す。往路の目的地は、これまでと同じく指宿だ。我々はまず市街地走行を楽しむため&桜島フェリーで食事をするため、フェリー乗り場を目指す。

 前回のアクセラのときは、桜島のふもとで撮影したあと、鹿児島湾をぐるっと反対側まで移動したタイミングで車内から桜島を眺めていたら爆発したという衝撃的な出来事があったのだが、桜島は今でも頻繁に噴煙が上がり、クルマにもうっすらと灰をかぶった状態になっていた。

桜島フェリーで食事をするため、桜島行きの一路フェリーターミナルへ
乗船待ち中。ピーク時は10分ヘッドで出航している
いよいよ乗船
2階建ての駐車スペースがあり、その2階へ乗り込んだ
火気厳禁
桜島へ向け出航。向かいからは鹿児島港に向かうフェリーが入ってきた
桜島からは噴煙が上がっていた
桜島を背景に「Be a driver.」。風は西から吹くのであった(http://www.mazda.co.jp/beadriver/music/
てなことしていたら桜島に到着
桜島港で記念写真
記念写真を撮ったらすぐに鹿児島港へ。今度は1階の駐車スペースへ
駐車スペースに掲示してあった料金表。手軽に利用できる料金になっているのが分かる
本来の目的である食事
今年はそば
美味しくいただきました

 あまり長居する余裕もなかったので、桜島港から復路の便に乗り、鹿児島市内へ。そして鹿児島港の近くを通っている、国道58号を走行してみた。国道58号というのは不思議な道路で、起点は西郷さんの銅像のある鹿児島市の中央公民館前交差点だが、鹿児島市内は700mほどでおしまい。その後は海を越えて、種子島、奄美大島を経て沖縄本島に達する。沖縄本島の主要道路であり、その番号をご記憶の方も多いだろう。路線の長さは877.9kmと日本で2番目に長いが、その3分の2あまりは海の上というのが面白い。

国道58号の起点となる中央公民館前交差点。西郷さんの銅像がある交差点として有名
海へと向かう
この先で突き当たって、鹿児島市内はおしまい。種子島、奄美大島経由で沖縄本島に続く

太いトルクを自在に操れるディーゼルの6速MT

 市街地を走っていても、デミオの運転環境のよさは実感できる。あまりに違和感がないので、むしろ見過ごしてしまいそうなところだが、同じクラスのクルマにはどこかしら不自然なところが見受けられるのに対し、デミオは本当によくできている。開発関係者がかなりこだわって作り込んだことがうかがえる。

 市内を抜けて、九州道を経由して指宿スカイラインを目指す。1.5リッターと排気量の小さな新しいクリーンディーゼルだが、それでも太い中低速トルクがもたらす余裕の走りは、さすがはスカイアクティブDだ。ディーゼルの余裕のある動力性能により、高速で長距離移動も苦にならない。2000rpmから4000rpmあたりにかけての力強い加速感はディーゼルならでは。静粛性が高く保たれているところもよい。スカイアクティブDの強みである、低圧縮により、振動や騒音が抑えられているところも好印象で、これは同クラスの競合車にはないデミオならではの価値に違いない。

 そして指宿スカイラインへ。

 待ってました!のワンディングロードで、ディーゼルで6速MTという、デミオがこのカテゴリーでもっとも異彩を放つものを駆使して、ここからさらに本領発揮である。ディーゼルならではのトルクの美味しいところを、自分の力で操ってドライブできるところがMTの醍醐味。シフトフィールも小気味よい。MTの販売比率は約1割にも達しているというが、やはりそれだけMTに楽しさを感じる人が少なくないということだ。

往路は1.5リッターディーゼルを搭載するXD ツーリング Lパッケージ(2WD、FF)の6速MTモデル。ディーゼルエンジン搭載車は、フロントグリルに赤いラインが入る
ディーゼルエンジンのトルクと6速MTを駆使して走る指宿スカイラインは爽快。
6速MTが分かるように握ってみましたの図

 終点の頴娃IC(インターチェンジ)で下りて、宿泊地である指宿に向かう前に、「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳方面へ。例年よりも2か月早く来たからこそ、この地の名産である菜の花をからめて撮影することができたのが幸いである。素晴らしい景色だ。

開聞岳と菜の花と一緒に記念撮影

 そこから30分ほど一般道を走って、宿泊地に到着。これまでもデミオに触れる機会はたびたびあったものの、半日ずっとドライブしたのは初めてのこととなる。かねてからドライビングポジションやシートの作り込みなど運転環境のよさは感じていたが、長時間ドライブして、あらためてそれを実感することができた。そして天候にも恵まれた中、デミオは1日エキサイティングな走りを楽しませてくれた。

実は秀作、軽快でスムーズな1.3リッターガソリン

 翌朝は、まず指宿市内にある池田湖を目指すことに。車両は、ガソリンの6速AT車に乗り換えた。池田湖畔のあたりも、菜の花がいたるところで咲き乱れている。そこにデミオを置くと、スタイリッシュなルックスが、より生き生きとしたように目に映る。

復路は1.3リッターガソリン+6速ATの13S
13Sはノーズが軽く、ファンな走りを楽しめました

 指宿から鹿児島市内のホテルまでは、再び指宿スカイラインを走ってもどる。ディーゼルよりもノーズがかなり軽いようで、走りは軽快そのもので、フラットライド感も高い。エンジンサウンドやスムーズな吹け上がりも心地よく好印象だ。とかくディーゼルの陰に隠れがちなガソリンだが、こちらはこちらでとても気持ちのよい走り味を持っている。絶対的なトルク値ではディーゼルに劣るも、特性が素直なので、こちらのほうが運転しやすく感じられたほどだ。

 ガソリンのみに与えられたドライブセレクションモードで「SPORT」を選ぶと、よりピックアップが鋭くなり、ドライブする楽しさがレベルアップする。アップダウンの続くところでは、さすがにディーゼルほどの余力はなくても、大きな不満を感じることもない。また、このクラスながら充実した先進安全装備が設定されているのもデミオの優位点。なかでも、車線の複数ある道を走る際には、「BSM(ブラインド・スポット・モニタリング)のある安心感は大きい。そして帰路もそれなりに長い距離を走行したが、やはり疲労感は小さくてすんだ。

海沿いのワインディング、アップダウンのある指宿スカイライン、そして鹿児島市内と、ガソリンモデルの素直な走行特性は好ましいものだった

 これで4回目となる鹿児島での試乗会で、これまでだんだん車体が小さくなっているわけだが、そのハンデをあまり感じさせることなく、同じような感覚で高速道路を安心して、ワインディングを楽しく走ることができることが分かった。そしてデミオは、競合メーカーの同クラスの車種のことを思い出しても、やはり稀有な存在であることを、あらためて確認することができたように思った次第である。

開聞岳をバックに、池田湖畔の菜の花畑で「Be a driver.」。風は西から……以下略

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛