特別企画
【特別企画】岡本幸一郎の新型「アクセラ」で行く南九州1泊2日の旅
今回は桜島をバッチリ見てきました
(2014/3/10 00:00)
アクセラの2.0リッターガソリンモデルはバランスに優れる
マツダの新しい風物詩となりつつある試乗会に参加するため、1年ぶりに鹿児島へ。今回ドライブするのは、新型「アクセラ」だ。これまで何度か触れて非常に好印象を持っているアクセラのよさを、あらためて味わえることに期待したい。なお、1年前の新型「アテンザ」でのドライブについては、下記の記事を参照していただきたい。
●岡本幸一郎の新型「アテンザ」で行く南九州1泊2日の旅
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20130319_592270.html
アクセラは同試乗会当日の時点で、すでに2万5000台を超える受注があるという。まだ街を走っている姿をあまり見かけないのだが、こうして目の前にして、まずはデザインのよさを再確認。そういえば同試乗会の直後に、「2014ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」および「2014ワールド・デザイン・オブ・ザ・イヤー」のトップ3に名を連ねたとの報道があった。もはやアクセラは日本を代表する存在といえそうだ。
アクセラが搭載するパワーユニットは、1.5リッターと2.0リッターのガソリン、2.2リッターのディーゼル、そしてハイブリッド。一部のモデルではMTも選べるなど、パワートレーンのラインアップが豊富に選べるのもアクセラの特徴だ。その中から今回は、アクセラ スポーツ(5ドアハッチバック)の2.0リッターガソリン(6速AT)と、2.2リッターディーゼル(6速MT)、セダンのハイブリッドに試乗した。
初日は、お昼すぎに鹿児島空港をスタートし、15時30分に九州自動車道の桜島SA(サービスエリア)で2台目の試乗車に乗り換える予定となっている。まずは、スポーツの2.0リッターガソリン車に乗り、空港から国道504号を南下する。シートに収まると、まるで乗り慣れたクルマのように最初からしっくりくるのはアクセラの美点。また、ピラーの形状やドアミラーの位置が工夫されており、ドライビングポジションから外を見たときにできるだけ死角を作らない設定になっているので視界は良好だ。
さらに、新型アクセラの特徴の1つであるヘッドアップディスプレイも、表示の仕方がちょうどよい。あまり視野を妨げることなく、主張しすぎることもなく、欲しい情報を的確に伝えてくれる。運転するための快適な環境が整えられていることを感じさせる。
前述のとおりパワートレーンが豊富に選べるアクセラの中でも、ほかのエンジンほどウリのポイントが明快でなく、埋没している感のある2.0リッターガソリンだが、こうして乗るとバランスのよさを実感する。余力のあるトルクが生む加速感が心地よく、とても乗りやすい。高速道路での合流や再加速でも、頼もしい加速力をそなえている。各種装備が充実していて、パドルシフトが標準で付いているところもよい。
試乗した車両の走行距離が5000km台半ばと、少し距離を走っていたこともあり、適度にダンパーなどにあたりがついたのか、以前乗ったものよりも渋さが取れて乗り心地がしなやかに感じられた。途中、テレビの情報番組などでもたびたび取り上げられている、大型スーパーの「A-Zはやと」に立ち寄り。こちらでは朝の9時から夜の23時まで、クルマを購入することもできるというから驚きだ。
近くの公園には南国特有の植物が立ち並び、その背景に桜島がキレイに見えた。昨年鹿児島を訪れたときは、桜島の姿をしっかり見ることはできなかった。今年は、桜島のドライブに挑戦してみようと思う。
イメージを打破するハイブリッドの走り
予定よりも少し早く桜島SAに到着すると、これから乗り換える予定のハイブリッドの姿があった。好天に恵まれたおかげで、太陽の光を浴びて、空の青が移りこんだ「ソウルレッドプレミアムメタリック」のボディーは、より一層きれいに見えた。念のために述べると、ハイブリッドはセダンのみ。欲をいうと、ハイブリッドを含むセダンにも18インチタイヤ&ホイールの設定があるといいのになという気もする。
ハイブリッドということで、イグニッションONにしてもエンジンがすぐに始動しなかったり、セレクターレバーが専用になっていたりするのだが、トヨタのハイブリッド車では当たり前のことでも、マツダ車でこの感覚というのは、なんだか新鮮に感じる。
せっかくのハイブリッドということで、その真価を試すために鹿児島北IC(インターチェンジ)で下りて鹿児島市内へと向かう。エンジン停止~再始動のスムーズさは、やはりハイブリッドならでは。発進と停止を繰り返す市街地でも、煩わしさを感じさせない巧みな制御を実現している。
また、以前に伊豆で行われた試乗会の際にも、リニアなアクセルレスポンスや、自然なブレーキフィール、一体感のあるハンドリングなど、ハイブリッドのイメージを打破する走りを実現していると感じたのだが、今回も改めてそれを実感した次第である。
鹿児島といえば、「氷白熊」の発祥の地。それを食しに本家の「天文館むじゃき」に向かう。筆者は初めてだが、その美味さとボリュームに圧倒された。スイーツ好きの妻には内緒にしておくことにしよう。
ハイブリッドはアクセラの中では特別な存在といえそうで、販売比率もそれほど高くないようだが、このクラスで増えつつある他メーカーのハイブリッド車と比べると、走りの仕上がりの面で優位性がある。もちろん見てのとおりのスタイリッシュさも魅力に違いない。たとえば現行「プリウス」ユーザーが次に乗る選択肢としても面白い存在となるのではないかと思う。
日没の少し前には、指宿市内の景色のよいところを目指した。イッシーが棲むといわれる池田湖や、薩摩富士と呼ばれる開聞岳を望む絶景ポイントへ。なお、指宿界隈を流していたときの実走燃費が、25.0km/L近くまで伸びたことには驚いた。
回して楽しめる2.2リッターディーゼル
翌朝は、指宿から桜島を目指す。最後のお楽しみにとっておいたのは、スポーツにしか設定のないディーゼルの6速MTだ。このディーゼルエンジンは、最初のひと転がりから素直にトルクが出るので、クラッチをつないで軽くアクセルを踏み込むだけで軽やかに発進できる。MTでもまったく苦にならない。ディーゼルとしては音や振動が抑えられていて、洗練度の高さをうかがわせるものだ。
その走りを堪能するため、池田湖から指宿スカイラインへ。トルクフルでありながら、5500rpmからレッドゾーン表示となっているとおり、回して楽しめるディーゼルだ。中~高速コーナーの連なる指宿スカイラインには、このエンジンフィールが心地よかった。
ハンドリングについても、専用チューンのサスペンションが与えられ、エンジンのまわりの重量増もあって、ガソリンモデルとは別のよさが出ている。軽快なガソリンに対し、ディーゼルはしっとりとした印象があり、路面にタイヤがしなやかに追従して、安定してグリップを得られる感覚がある。また、途中で後席にも乗ってみたところ、快適性は十分に確保されている。
指宿スカイラインを堪能した後は、九州道 鹿児島ICを下りて鹿児島港に向かう。鹿児島港からカーフェリーに乗って桜島を目指すのだ。フェリーの船上では、1年前はほとんどその姿を見ることができなかった桜島が、みるみる近づいてくるのを、今回はつぶさに見届けることができた。
桜島のフェリーターミナルに到着すると、素早い作業で下船の準備が整えられ、アクセラとともに桜島に上陸。そして、南まわりに海沿いのルートを走って、帰着地である鹿児島空港へ向かう。どうやらこの日の朝にも噴火があったようで、白煙を上げる桜島をずっと左手に見ながらドライブ。桜島では海岸線の右手に見える鹿児島湾との対比が、絶景を楽しませてくれる。
追従クルーズコントロールをはじめ各種安全装備や運転支援装置は、いずれもストレスを感じさせることなく仕事をこなしてくれる。車線を逸脱しそうになると音で知らせてくれるレーンデパーチャーウォーニングも分かりやすくてよい。一方で、カーナビゲーションの仕上がりは、案内の発話タイミングやJCT(ジャンクション)の分岐表示などもう一歩。さらなる改善に期待したいところだ。
そして、桜島がかなり遠くに見えるようになった10時40分頃、東九州自動車道に乗ろうかというタイミングで、高々と新しい噴煙を上げる桜島の姿が目に飛び込んできた。こんなシーンを目の当たりにするのは初めてのこと。つい1時間ほど前にすぐ近くにいたのだと思うと、もう少し早ければ間近で見ることができたと思う半面、連日のようにこのような状況だと、現地に住む人たちはさぞかしご苦労されていることと思った次第である。
こうして3通りのパワートレーンを試し、アクセラの優れたドライバビリティと鹿児島の景色を楽しむことができた2日間であった。それにしてもアクセラというのは、本当にいろいろと“刺さる”ポイントの多いクルマだ。デザインとドライバビリティともに優れ、豊富に選べるパワートレーンと低燃費、高いコストパフォーマンスと、いろいろなところに魅力がある。
そんなアクセラで風光明媚な中を走ると、クルマも景色も、より一層、輝きを増して感じられるのである。