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マツダ、燃費30.8km/Lのハイブリッドを初展示した「新型アクセラ」予約開始発表会

新型アクセラは「最新の考え方、最新の技術を惜しみなく投入したもの」

新型アクセラ予約開始発表会に展示されたアクセラ ハイブリッド
2013年10月9日開催

 マツダは10月9日、新型アクセラの価格を公表するとともに、10日から予約を開始すると発表した。また、9日に「新型アクセラ」予約開始発表会を開催。5ドアハッチバックのアクセラ スポーツを展示するとともに、2.0リッター ハイブリッドエンジンを搭載するアクセラ ハイブリッドを初公開した。

 詳細なラインアップに関しては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20131009_618713.html)を参照していただきたいが、新型アクセラは、ガソリンエンジンとして1.5リッター(SKYACTIV-G 1.5)と2.0リッター(SKYACTIV-G 2.0)、ディーゼルエンジンとして2.2リッター(SKYACTIV-D 2.2)を用意。そのほか、トヨタ自動車と技術協力して開発したハイブリッド(専用設計のSKYACTIV-G 2.0+モーターに電気式無段変速を組み合わせたもの)を用意。ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3つのパワートレーンを用意した市販車となる。

 JC08モード燃費は、ディーゼルと4WD車については現段階で未公表となっているものの、代表的なSKYACTIV-G 2.0搭載車で19.0km/L、SKYACTIV-G 1.5搭載車で19.4km/Lを実現。2.0リッターハイブリッドとなるアクセラ ハイブリッドでは30.8km/Lとなっており、1.8リッターハイブリッドであるプリウス G/Sの30.4km/Lを上回る値を実現した。

5ドアハッチバックのアクセラ スポーツ
セダンのみに設定されるアクセラ ハイブリッド
アクセラ スポーツ
アクセラ ハイブリッド。セダン車型となっているが、ハッチバック並にスタイリッシュ
アクセラ ハイブリッドのエンジンルーム。ハイブリッド用にチューニングされたSKYACTIV-G 2.0と、ハイブリッドシステムが納まる
SKYACTIV-G 2.0のエンジンカバーも専用のもの
ハイブリッドシステムの一部。オレンジ色のケーブルは高電圧が流れることを示す
アクセラ ハイブリッドのコクピット
メーターパネル
セレクトレバー部。ハイブリッド専用のセレクトパターンとなる
トランクルーム。駆動用バッテリーは、奥側に納まっているものと思われる
電気式無段変速と組み合わされたSKYACTIV-G 2.0
SKYACTIV-G 2.0は、ガソリンエンジンモデルでもミラーサイクルとなっているため、ハイブリッドシステムとの組み合わせに適していたのだろう
左が電気式無段変速部。遊星歯車とモーターが納まる

マツダの基幹車種となる新型アクセラ

マツダ代表取締役 社長兼CEO 小飼雅道氏

 予約開始発表会には、マツダ代表取締役 社長兼CEO 小飼雅道氏が登壇。2003年10月に登場した初代アクセラを振り返るとともに、アクセラがマツダのグローバル販売台数の3割を占める最量販モデルかつ、累計販売台数が370万台を超える基幹車種であると語り、新型アクセラに込めた思いを語った。

 小飼社長は、「2003年の10月に初代のアクセラを発表し、当初はグローバルで年間25万台を販売する予定でした。コンパクトカーの枠を広げて、安心してスポーティな運転が楽しめる運動性能、個性と存在感のあるデザインなどが好評をいただき、世界で数多くの賞をいただきました。2007年にはマツダ車として過去最高となる年間44万台以上を販売し、グローバル市場で大ヒット作となりました」とその実績を強調、新型アクセラは、マツダの新世代テクノロジーであるスカイアクティブと、新デザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」を全面的に採用した「CX-5」「アテンザ」に続く第3弾モデルであり、日本の自動車メーカーでは、国内市場向けとして初めて1つの車種に、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3種類のパワートレーンを揃えたモデルであると紹介した。

初代アクセラ
2代目アクセラ
3代目アクセラに取り入れられた魂動モチーフ

 新型アクセラを投入するCセグメント市場は、「グローバルで年間1600万台の市場規模があり、2016年には2000万台を超える市場となる見込み」とし、「国内のほか、北米、欧州、オーストラリアなど世界の120カ国以上に導入し、年間約50万台の販売を目指します」と語り、グローバルモデルであることを強調。国内販売目標は、月販3000台、年間3万6000台になるという。

 CX-5やアテンザといったスカイアクティブテクノロジー全面採用車の業績に与える影響は大きく、マツダは昨年度5年ぶりに黒字化。新型アクセラの市場投入により、今期は「業績改善を確実な軌道に乗せるとともに、新しい成長の時代に入るための重要な時期にあたる」ものであるとした。

Cセグメントの市場予測
新型アクセラの導入市場
世界5カ国ですでに発表会を実施
予約開始日と発売日
マツダが取り組んでいる改革プラン

 新型アクセラの生産は山口県の防府工場のほか、来年初めに稼働を開始するメキシコの新工場など複数の拠点で行い、「1台1台心を込めて生産します。ぜひとも皆様にも新型アクセラを試乗いただき、私たちの努力の結晶を体感していただきたいと思います」と挨拶を終えた。

「強い絆」が開発コンセプト

新型アクセラ 開発担当主査 猿渡健一郎氏

 新型アクセラの詳細については、開発担当主査 猿渡健一郎氏が詳説。新型アクセラの開発コンセプトが「強い絆」であり、「お客様の人生そのものを豊かにするように、そういうクルマをぜひ提供したいと考えた」と、開発背景を紹介した。

 開発にあたって重視したのが、「人間の感覚を大事にしたい。運転することが心から楽しいクルマ」であること。そのために、人間工学や心理学を採り入れ、クルマの開発を行っていった。

開発コンセプトは「強い絆」
CX-5、アテンザに続く、フルスカイアクティブ第3弾
毎日の生活において、所有期間全体で、クルマとの強い絆を育んでいく

 「アクセラを見ていただいて、非常にスタイリッシュだけど小さいのではないかという声も聞きます。アクセラというのは4人がしっかり乗れるスポーティなクルマであるベきだと思います」「乗降性ですとか、室内の空間というものも大事な要件です。この相反するものを両立させるために、人間工学や心理学とかを駆使して開発しました」と語り、その1例として挙げたのが、Aピラー部の設計。

 人は、身長の低い人、高い人、いろいろな体形の人がいるが、マツダの研究によると、乗り込む際に頭部が通る場所は、ある部分に限られているのだという。絶対に守らなければならない領域を確保すれば、それ以外の領域はデザインスペースに使えるため、新型アクセラは「スタイリッシュだが、長い間愛してもらえるクルマになった」と、その研究成果が反映されたものであるとのことだ。

新型アクセラのデザインについて
イメージスケッチ
乗降性について
黄色い点線が頭が通る位置を示す。このラインを確保しつつ、デザインの自由度を上げている

 インテリアに関しても同様の考え方で作られており、「ダッシュボードを低く抑えると開放感が演出できます。ただ、あまりにも低く抑えると地面が近くなり、恐怖感が出てきます。逆にダッシュボードを上げていくと安心感は増しますが閉塞感も増大します」と語り、心理学を駆使して、最適なものにしたという。また、インテリアは常に見る個所となるため、色使い、材質に気を使い、ピアノブラックとシルバーのコントラスト、カーボンファイバー地と赤いステッチのコントラストなど、素材やデザインの組み合わせに配慮している。

ダッシュボードデザインの考え方

 運動性に関しては、「マツダの運動性能のコンセプトとして、“人馬一体”というのがあります。これはクルマを馬にたとえ、人の意のままにクルマが動く関係を作ろうというもの」「アクセラはスカイアクティブをフルに採用したクルマ。人とクルマとの関係において、どのような関係が最適か研究しており、その最新の成果を採り入れています」とし、「人が正しく運転できるコクピットを作った」と語った。

 「人間を脱力状態で無重量空間においたとき、関節がある角度になります」「その角度は、人間が快適かつ素早く動作できる角度であり、アクセラのコクピット空間はその角度を再現できるよう作られています」「新型アクセラは現行アクセラよりも60mmホイールベースを延長しており、そのうち50mmをドライバーを中心にタイヤを前に持って行くことに使いました。タイヤをドライバーのほうに近づけると、ドライバーの足下にタイヤハウスが張り出し、十分なスペースがなくなります。するとアクセルペダルやブレーキペダルを配置する空間が減るため、それらのペダルをクルマの中央方向に持って行く必要があります。その結果、体は真っ直ぐ前に向いているが、足下は中央方向になるため、体がねじれてしまいます」といい、タイヤを前に出すことによって、運転席の足下に十分なスペースを確保し、ホイールベースの延長分を、アクセルペダル、ブレーキペダルといったものを人間工学的に、一番正しい場所に配置するために使っている。

 新型アクセラでは、まずドライバーが正しく操作できる空間を確保。その上で“構え”という概念を導入している。この“構え”というのは、何かを行うための予備動作ともいえるもので、予備動作からつながる動きを違和感のないものとすることで、人間の感性にマッチしたクルマに仕上げるものだとする。

 「クルマを運転しているとき、アクセルペダルを踏むと、頭が後ろに下がる。このときに、耳の後ろにある筋肉が緊張します」「マツダの調査ではアクセルペダルを踏んでから0.3秒後に緊張が発生し、その緊張度は加速度と相関関係があり、加速度を微分したものと非常に似通っています」「この筋肉の緊張と加速度をあわせることで、非常に気持ちのよい加速を実現しています」と、新型アクセラの工夫の一端を明かした。

60mmのホイールベース延長のうち、50mmをフロント軸の前進にあてた
それにより、ペダル配置を最適化
“構え”について。筋肉の緊張について語る猿渡氏

 また、新型アクセラでは「強い絆」、つまり“つながる”ということを重視しており、スマートフォンがすでに生活の中に入り込んでいることに着目。さまざまな情報を自由に得られるスマートフォンは確かに便利な機械なのだが、運転中に使うことは危険であり、もちろん法律でも禁止されている。マツダは、スマートフォンのような情報の自由度をクルマの中で手に入れるため、安全に、さまざまな情報を得られる「マツダ コネクト」を開発。このマツダ コネクトでは、「見るわき見」「意識のわき見」「操作のわき見」を防ぎつつ情報を得られるように、コクピットデザインで情報をゾーニング。ステアリングまわりを「走行情報ゾーン」、センターコンソールと助手席側を「快適・利便情報ゾーン」としている。

 快適・利便情報ゾーンに配されたダッシュボード上の7インチディスプレイには、ナビゲーション画面、音楽などのエンターテイメント画面などが表示でき、スマートフォンと接続することで、インターネットラジオ「Aha」などを楽しむこともできる。猿渡氏がとくに言及していたのは「古くならないこと」で、現在をVer.1.0とし、2.0、3.0と進化していくという。

マツダ コネクトについて
情報のゾーニング
センターコンソールに配されたコマンダーコントロール
上位グレードでは、HUDを装備する
バージョンアップするというマツダ コネクト
ナビ画面

3種類のパワートレーンの特徴

 新型アクセラには、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドと3種類のパワートレーンが用意されており、セダン、ハッチバックの2つのボディータイプが存在する(ディーゼルはハッチバックのみ、ハイブリッドはセダンのみ)。

 この3種類のパワートレーンについては、「ターボを持たない自然吸気のエンジンで、低回転から気持ちよく高回転まで伸びる、まさに回して楽しいガソリンエンジン」「ディーゼルは4リッターV8なみの420Nmのトルク。高回転まできれいに伸びる、そういう特性を活かしてスポーティな運転を楽しむ、あるいは長距離を運転される方」「新開発のハイブリッドエンジンは、加減速で非常に効率のよい特徴がある。街中を多く使う人に取っては最良のものとして、セダンとの組み合わせを用意している」と、その特徴を紹介。「大事なことは、どれを選んでいただいても運転していて楽しいものになっている。お客様の好み、あるいは使い方によって適切なパワーユニットを選んでいただきたい」と、選択のポイントを紹介した。

 先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」は、新型アクセラではすべてを装備できる。後方からの接近車両を知らせる「リア・ビークル・モニタリングシステム(RVM)」や、ハイビームでの走行時に必要に応じてロービームに自動で切り替える「ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)」、ヘッドランプがステアリングを切る角度と車速に応じて自動的に進行方向を向く「アダプティブ・フロントライティング・システム(AFS)」、フロントガラス上面のカメラで車線を認識し、車線から逸脱しそうな際に音で知らせる「車線逸脱警報システム(LDWS)」と、「マツダが持っているすべてのアクティブセンスを投入した」とのことだ。

 これは、「お客様とクルマとの関係を徹底的に考え抜いて、我々が今思っている最新の考え方、最新の技術を惜しみなく投入したもの。大事なことは人間の感覚にあったクルマを提供することで、結果として運転することを楽しんでいただく。そういうクルマを作ったつもりです」という考え方のもとに新型アクセラが作られているためで、「新型アクセラの魅力を堪能していただき、クルマを運転すること、人生を運転すること、人生を豊かにすることが少しでもこのクルマで多彩になるのであれば、我々としては幸いなことだと思っています」と語るとともに、「みなさん運転することを楽しんでください」と新型アクセラの紹介を締めくくった。

猿渡開発担当主査は、「みなさん運転することを楽しんでください」との言葉で新型アクセラの解説を締めくくった

(編集部:谷川 潔)