特別企画
【特別企画】橋本洋平の「エクストレイル ブラック・エクストリーマーX」の魅力に迫る
本格SUVとしてのタフなイメージを強調しつつ、「LEDヘッドランプ」などで上質さも向上
(2015/2/17 00:00)
エクストレイルの本来の姿? 「エクストリーマーX」
新型車といえば、旧モデルでのネガを洗い出し、それを徹底的に潰した上で新たなるタマを盛り込むのが自然な流れ。“ない物ねだり”を続け、新たなる世界を構築して行くのが常だ。これは工業製品ならば当然。けれどもクルマってやつは、そう単純にはいかないところが面白さでもあり難しいところでもある。特に根強いファンが多く存在するモデルなら、その難しさはかなりのものだ。
日産自動車「エクストレイル」のモデルチェンジはその最たるものかもしれない。初代、2代目ともにタフさを前面に押し出した“4駆テイスト”が世間に受け入れられたこのクルマ。だが、3代目となる現行モデルは先代モデルから一転し、ややシティユースを意識したデザインへと変貌したことは周知の事実である。もちろん「ALL MODE 4×4-i」など本格4駆としてのメカニズムを継承しつつも、ことデザインに関しては主に欧州市場からのリクエストがそうさせたと聞くが、従来のテイストを支持していた層からすれば、それは物足りないと感じる人々も少なくはなかった。
しかし、従来からのタフさを引き継ぐモデルもラインアップしていた。大型フォグランプやアンダーカバー類、そして専用アルミホイールなどを奢った「X-TREMER X(エクストリーマーX)」がそれだ。このクルマは他のモデルでも「Rider(ライダー)」や「AXIS(アクシス)」、そして特装車をリリースしているオーテックジャパンが企画を担当。カスタムカーを得意とする同社が仕上げているだけあって、従来あったエクストレイルならではの世界観を上手く引き継いでいるように感じる。やはり、エクストレイルならこれくらいの4駆テイストがあってもいいよね、と思わず頷ける仕上がりなのだ。
ただ、ここまで二分する世界をともに構築すると、さらなる欲求が出てくるのがクルマ造りというもの。ない物ねだりの始まりだ。今度はタフさを持ちつつも、街中でも溶け込むような統一感を持たせたいとなるわけだ。いかにも4駆テイストのアンダーカバーや専用ホイールをクルマと一体化させたらどうか?
こうして仕上がったクルマが、今回紹介する「BLACK X-TREMER X(ブラック・エクストリーマーX)」という1台だ。エクストリーマーXが持っていたシルバー基調のホイールやアンダーカバーをダーク化することで車体との一体感を持たせ、タフな装備がありながらもそれを前面に押し出すことをやめたこのクルマ。外装色がダイヤモンドブラック(他にバーニングレッド、チタニウムカーキ、ブリリアントホワイトパールも用意)に塗られた今回の仕様では、ギュッと引き締まった感覚があり、これをシティユースでも何ら不満が出ない仕上がりをみせている。それでいて、エクストリーマーXと同様の装備(ルーフレールは標準化)を持っているのだから、タフさも十分。オリジナルモデルとエクストリーマーXとのオイシイとこ取りをしたような仕様なのだ。
センスよくまとめられた内外装デザイン
装備をあれこれ取り付けると、いかにもコテコテなカスタムカーになってしまう場合が多いが、ブラック・エクストリーマーXの場合、その印象がまったくないところが絶妙だ。あらゆるカスタムカーをトータルプロデュースしてきたオーテックジャパンのセンスのよさが光っているといえるだろう。欲をいえば、エンブレムや窓枠、そしてルーフレールもダーク系に塗って欲しいとも思えるし、室内の天井もブラックアウトして欲しいような気もする。
カスタムカー好きな僕からすれば「もっとブラックを!」となるのだが、それはきっとやり過ぎ。程よく留めているのがメーカー系カスタムという世界であり、だからこそセンスよく見えるのだろうとも感じる。ここまで仕上げてエクストリーマーXの8万8000円高にしかなっていないというからお買い得。ルーフレール、LEDヘッドランプなどの標準化があってその価格はお値打ちだ。
さらには、ミニバンの代わりとしても注目できる7人乗りが設定されたことも現行エクストレイルのよさの1つ。決して広いとはいえないが、いざという時のことを考え、多人数乗車がどうしても欲しいというユーザーには、候補車種の1つとしてこのクルマをぜひとも加えて欲しいところだ。事実、ミニバンからの買い換えも多いと聞く。
一方、走りの部分で一切変更点がないところも魅力の1つ。雪道を走ろうが舗装路を走ろうが、思い通りに走る4駆になっているエクストレイル。歴代が積み重ねてきた4駆システム「ALLMODE 4×4-i」は、どんな路面も受け入れる仕上がりとなっている。
つい先日、このクルマで雪上を走ってきたが、改めてその走破性とコントロール性が両立していることに感心したことを思い出す。アクセルを入れながらコーナーリングしてもライントレース性はかなり高いことがその特徴だ。こうして悪路走破性が特化しているにも関わらず、ロードホールディング志向になりすぎず、舗装路を走った際にグラグラと動きが大きくなりすぎるところがないことも魅力の1つ。都会で使ったとしても何ら不満が出ないところも絶妙。ストレスを感じることなく要求に対して応答してくれる直列4気筒DOHC 2.0リッターのガソリンエンジン+CVTの組み合わせも好感触。それでいてJC08モード燃費はベースのエクストレイルとして16.4km/L(2WD車)を達成しているから、なかなかのバランスだ。
いま登場した“ない物ねだり”の究極にいるブラック・エクストリーマーXは、まさにそんな走りを体現しているように思う。タフさを強調しながらも、都会に馴染むスタイルを手に入れたこの1台は、エクストレイルが持つ走りの世界観をみごとに打ち出している。これぞ、男の中の男ならぬ、エクストレイルの中のエクストレイル! 根強いエクストレイルファンでも、きっと受け入れてくれる1台ではないだろうか。