ブリヂストンのブリザックといえば、降雪地で大きな信頼を得ているスタッドレスタイヤだ。北海道/北東北主要都市において、一般ドライバー装着率45.8%を誇るほか、北海道札幌市のタクシー装着率73.3%を獲得。16年連続で装着率ナンバーワンの実績がある。確かなアイス性能は安全と安心をもたらす。それを一番体感している降雪地ユーザーのデータは、どれだけアイス性能が優れているかという証といっていいだろう。

9月1日に発売されたばかりの新型スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX2」。進化した「非対称パターン」や「アクティブ発泡ゴム2」などによる性能向上を、テストコースで存分にテストした

全ての要素を進化させた総合性能

だが、いまスタッドレスタイヤを求めているのは何も降雪地ユーザーだけの話ではない。非降雪地においても近年では突然の大雪に見舞われる機会が増えており、そこでもスタッドレスタイヤを求める人々は増加している。東京、名古屋、大阪のデータを見ると、保有率は年々増しており、2016年には保有率31%にまで達している。特に突然の雪に弱い東京や名古屋においては、その数値を大きく超えており、3人に1人はスタッドレスを持っているというデータもある。ウインタースポーツを趣味とする人はもちろん、それ以外にも万が一の降雪や凍結に備えてスタッドレスタイヤを購入する人々が増えているのだ。こうなると求められるスタッドレスタイヤの性能にも変化がみられる。アイス性能の向上はもちろん、ドライ路面における静粛性や、もっと長く使えるライフ性能といったものまで、ユーザーが求める声は多岐に渡る。

※1 2017年1月~2月に、札幌市、旭川市、青森市、盛岡市、秋田市の5地区において、二段無作為抽出法により抽出された乗用車(含む軽)を保有している一般世帯を直接訪問して、乗用車の装着スタッドレス銘柄を調査。ブリヂストンタイヤジャパン株式会社が第三者の調査会社に委託して実施。※2 2017年2月~3月に、札幌市においてタクシー営業車1063台(法人873台、個人190台)を対象に、調査員が直接装着スタッドレス銘柄を調査。同一車のダブルカウントを避ける為、ナンバープレートも確認。ブリヂストンタイヤジャパン株式会社が第三者の調査会社に委託して実施。

そこで新たに登場する「BLIZZAK VRX2(ブリザック ヴイアールエックスツー)」はゴムからトレッドパターンまでを刷新した。ゴムについてはブリザックの十八番ともいえる発泡ゴムをさらに進化させている。アクティブ発泡ゴムと名付けられたそれは、ゴムの内部に滑りの原因となる水を取り除くためのミクロの気泡が多数存在しているのだが、その穴の内部に水を吸水しやすくするための親水コーティングを施し、氷の表面に存在する水をより除水しやすくしたという。さらに、氷にゴムをより密着させるための新シリカを配合し、柔らかさはそのままに、ゴムと氷のグリップ力を高めている。

さらに進化したアクティブ発泡ゴム

トレッドパターンについては、ブロックに多数のサイプを刻むことで、ひっかき効果をもたらす思想だった従来品のVRXとは変化し、VRX2ではサイプとサイプの間隔を大きく取り、サイプで分断されたブロックを大きくすることで高剛性化。ブレーキング時のブロックの倒れ込みを抑制することで、ゴムをより氷に接地させることが可能になった。これは、アクティブ発泡ゴム2の採用によってひっかき効果を備えなくても氷に食いつくことができるようになったことも影響しているように見受けられる。すなわち、パターンに頼らずしてグリップが得られるからこそ、ブロックを大きくする方向で設計ができるようになったわけだ。

VRX2で刷新されたトレッドパターン。サイプの間隔を広めに取ることでブロック剛性を向上、接地面積を拡大している

結果として倒れ込みがなくなり、アクティブ発泡ゴムをきちんと氷に接地させることで、氷上ブレーキは10%もアップ。前後ブロック剛性は24%も高まっている。こうした新たな思想によって仕上がったVRX2は、剛性を高めたことでドライ路面における摩耗に対しても強くなった。降雪地におけるアイス性能を確保した上で、非降雪地における摩耗も両立した設計は、ブリザックが新たなステージに踏み込んだといっていいだろう。

雪上と氷上で比較テスト

今回はそんなVRX2の進化を見るためにVRXと比較しながら試乗を行った。まずVRXを改めて試乗してみると、アイス性能はいまだ一級品と思える仕上がりがある。ブレーキング時における確実なストッピングパワーは、確かな安心感をもたらしてくれるし、水が浮いた氷の上でも安心してコーナーリングしてくれる感覚もある。ただし、冷静に見てみるとステアリングの切りはじめでブロックの倒れ込みを感じ、そこから一気にスライドをはじめるシーンがあることを確認した。トラクションやブレーキといった直進時の性能は高いが、そこから曲がって行く際のフィーリングに唐突感があり、ややオーバースピードで走った場合、一気にブレークしてしまうイメージがつきまとう。ここをどう進化させているかが見どころだ。

北海道のブリヂストンテストコースで、ブリザック VRXとブリザック VRX2を乗り比べる

圧雪路を走行すると、VRX2はクルマの大きさや駆動方式に関わらず雪を「ひっかく」力が向上していることが分かる。接地性がより高まっていることに加え、太めの横溝を多く配置したパターンが効いている

VRX2に乗り換えてまず感じたことは、ブレーキング性能が確実にアップしていたことだった。30km/hから減速を開始すると、VRXよりもさらに減速感があり、最終的には半車身くらい手前で止まることができたのだ。だからこそ安心感が高い。けれども見所はそこだけじゃない。VRXのネガだったブロックの倒れ込みを感じることなく、ステアリングの操舵感にクセがないところがよくなったと感じるポイントだ。路面を確実につかみ、けれどもヨレを感じないことで、頼りがいのあるコーナーリングを実現。特にフロントタイヤは最後まで路面を捉え、狙ったラインを外さないライントレース性能を実現。横方向のスリップを始めたとしても、一気にブレークすることなく、少しずつ滑り出す感覚があり、限界の掴みやすさも備えていることが伺えた。これはアイスだけでなくスノーでも同様であり、コントロール性はかなり高い。

スケートリンク状態に整備された氷盤路を、まずはVRXで走行。いまだ一級品と思える仕上がりだが、限界を超えた際のフィーリングがやや唐突か

VRX2に乗り換えると、ブレーキング性能の向上をすぐ体感できる。コーナリング時の安定感も増しており、限界を超えても少しずつ滑り出すイメージでコントロールしやすい

テストコースでは「全く発泡させていないゴム」を使用した特製?VRX2にも試乗することができた。ビックリするほどグリップせず、「アクティブ発泡ゴム2」の性能を思い知る

ブリザック史上最高性能を誇るブリザック VRX2の性能を、テストコースで存分に楽しむことができた。さらに進化した安全性能によって、より安心して冬道をドライブできる

アイス性能を確保した上で剛性感もシッカリと得られるこの仕上がりは、かなりの好感触だ。その上で剛性アップによる摩耗性能の向上もあるとは恐るべし。これなら降雪地だろうが非降雪地だろうが、どんな地域の人にとってもメリットのあるスタッドレスタイヤではないだろうか。

後編では一般道路をドライブ

後編ではさまざまなボディタイプで試したVRX2の性能を、動画を交えてお伝えする