日下部保雄の悠悠閑閑

スリックのスタッドレスタイヤ

 寒い時は寒いところに、暑い時は暑いところに行くのがこのところの行動パターン。ほんとはこの季節、温泉など入ってホッコリしたいんだけど。

 さて今冬もすでに20年以上続いている氷上でのドライビングレッスンを長野県女神湖で行ない、続いては北海道旭川でのジャーナリスト・ミーティングに行ってきた。これは横浜ゴムにお願いしてすでに15年ほど続いている息の長い勉強会で、クルマにとって最重要でありながら、意外と知られていないタイヤをジャーナリスト向けにもっと勉強してみようということから始まった。

 この冬は当然冬用タイヤの勉強会。旭川にある横浜ゴムのタイヤテストセンターで屋内試験場のお披露目も兼ねて行なわれた。今回はコンパウンド違いで雪と氷でグリップがどう違うか。そしてパターンが違うと何が違うのか。さらに冬用タイヤといっても国によって使われるタイヤは違う。これも雪と氷で違いを比べてみようというわけだ。

 インパクトの大きかったのはコンパウンド違いのタイヤだ。純粋にゴム比較を確認するのでタイヤはスリック、つまりパターンがない。これに最新のスタッドレスのコンパウンドと欧州で使われるウィンター用タイヤのコンパウンドを搭載したタイヤを乗り比べた。氷のブレーキは最新のスタッドレスが圧勝で、雪上の8の字旋回でもハンドルの効きが全く違う。そもそもスリックで雪上を走れることに皆、驚いた様子だ。

 スタッドレスタイヤはレーシングタイヤのように接地面積でグリップを稼いでいる面もあるので接地面積の大きなスリックタイヤは実は有利なのだ。ただこれは管理された屋内試験場だからこその比較実験。実際はさまざまな路面を走らなければならないタイヤは氷では荷重がかかるだけで氷とタイヤの間に水幕ができる。それが滑る原因となってしまうが、それを排水する溝や、タイヤに細かく刻まれたカーフと呼ばれる溝で氷を齧るようにグリップすることもできるので、パターンは重要なのだ。もちろんスリックタイヤでは法律上も公道は走れない。

 そしてパターンではブロックが氷や雪に接地した時に倒れないように、ブロック同士がお互いに支え合うような複雑な内部構造が重要であることも再確認できた。

 そのほかにも世界の地域ごとの冬用タイヤの実力を垣間見ることができたし、なかなか実のある勉強会でした。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。