編集後記
2021年7月23日
ちょっと前の話になるが、1987年に公開された映画作品「ハチ公物語」が、NHKのBSプレミアムで放送されていたのを見てしまった。映画公開当時、自分は10歳、映画館に見に行ったおぼえがある映画だ。
TVで映画を見終わってその余韻に浸りながらも、はて? と思う部分があって「忠犬ハチ公」のことをウィキペディアで調べてみると、なんとそこには「1934年(昭和9年)には渋谷駅前にハチの銅像が設置されることとなり、その除幕式にはハチ自身も参列した」と、映画「ハチ公物語」の世界観のまま今日まで生活してきてしまった自分にとって素通りできない情報がある。
なんと、映画「ハチ公物語」は忠犬ハチ公の生涯を、実話に基づき創作を加えて描いた作品であったのだ。ウィキペディアに書かれている忠犬ハチ公の項目を読み進めていくと、「野犬にならないでいたのは次の飼い主がいたからで、晩年には街の人気ものにもなっていたんじゃないか!」と、少なくとも映画で描かれた忠犬ハチ公より、幸せに過ごしていたであろう忠犬ハチ公の姿に涙した。
映画の演出のために忠犬ハチ公をめぐる当時のムーブメントの部分は省かれたというのは、今の自分なら理解できないではないが……。野犬狩りに対して「ハチは逃げるのが遅かったため、簡単に捕まっていたという」というエピソードや、日本犬保存会初代会長・斎藤弘吉氏が自著の中で述べている「ハチが墨で眼鏡を書かれ八の字髯をつけられて悠々と出て来たのに対面し、私も失笑したことを覚えている」、こういったシーンこそ映像で見てみたいと思ってしまうである。