【2009デトロイトショー】
やじうまデトロイトショー(2)

デトロイトの自動車名所巡り

雪に煙るGM本社
1月11日~25日(現地時間)
米国ミシガン州デトロイト
Cobo Center


 

デトロイトは「モータウンレーベル」や「デトロイトテクノ」など、音楽の街でもある。音楽活動ができるのも自動車産業があってのこと。写真はモータウンレーベルの博物館
 デトロイトといえばビッグ3のお膝元であり、「Motown」(モータウン=Motor Town)と呼ばれる自動車産業の中心地。自動車に関する見所もいろいろある。ここではそんな施設のいくつかを紹介する。ここに紹介した以外にも車絡みの名所は山ほどあるし、そのすべてを回りたかったが、折からの大雪で回り切れなかった。しかし、代表的なところは紹介しているつもりだ。

 そう、デトロイトショーが開催される冬は雪が多い。筆者が訪れたほぼ1週間のうち、4日は雪が降っていた。そんなわけで、春夏秋だけ開いていて冬は閉まるという施設も結構ある。したがって、自動車好きがデトロイト観光をするなら冬はあまり向かないと言える。

The Henry Ford
 デトロイト最大の自動車関連施設といえば、「The Henry Ford」に尽きる。正確にはデトロイト郊外のディアボーンという町。周囲にはフォードの開発施設や本社、ヘンリー・フォードの家など、フォード関連の施設が多数ある。

 The Henry Fordは、「Henry Ford Museum」(ヘンリー・フォード博物館)、「Greenfield Village」など複数のアトラクションから成る大規模な教育観光施設だ。

 Henry Ford Museumはアメリカの歴史を主に機械産業の側面から展示する博物館。展示面積は約3万6000m2もの広さを誇り、なんと平屋だ。IMAXシアター(巨大な画面の映画館)が同じ建物の中に併設されているほどの大きさ建物の中には、自動車はもちろん、馬車、機関車、農耕機、飛行機、コンピューターや家電、家具、はては住居やレストラン、モーテルの部屋、T型フォードの生産ラインまで、アメリカ史を形作った製品たちが展示されている。その中にはケネディ大統領の専用車やダイマクションハウス(建築家リチャード・バックミンスター・フラーが開発した住居)など、貴重な展示品も多数ある。

 展示は「Automobile in American Life」、「Heroes of the Sky」、「With Liberty and Justice for ALL」などのセクションで構成されている。自動車好き、乗り物好きにはたまらない博物館だが、公民権運動に至る人種差別の歴史もちゃんと展示されているのは感動的だ。

 

博物館の建物の中は広大。自動車だけでなく、飛行機や機関車、産業機械も展示されている
左から、フォード製の旅客機「トライモーター」、モーテルの1室を再現したセット、ダイマクションハウス
アメリカの家具の歴史T型フォードを分解した展示人種差別の歴史を語る展示

 博物館の脇には、フォードのRouge Factory(ルージュ工場)への見学ツアーバスの発着場がある。ルージュ工場は、1917年にT型フォードの生産拡大のために作られた工場で、現在も稼働している。最盛期には約809万3700m2の敷地で10万人の従業員が働いていたという大工場で、その中の展示ホールと、ピックアップトラック「F-150」の生産ラインを見学することができる。展示ホールにはフォードの歴史についての映画と、ルージュ工場での工程を360度スクリーンと特殊効果で見せるシアターなどがあり、後者は英語が分からなくても楽しめる。

 

広大なルージュ工場。T型フォード生産のために作られた工場だが、現在では屋上緑化など、近代化が図られている。工場の生産ラインは撮影禁止

 Greenfield Villageは、博物館に隣接する野外博物館で、約8094万m2の面積に、20世紀初頭のアメリカの建物などが保存されている。T型フォードをはじめとする自動車や船などは動態保存されているそうだ。「そうだ」と書いたのは、屋外のため、冬期は入場できず、筆者は訪れていないからだ。

The Henry Ford
http://www.thehenryford.org/

Automotive Hall of Fame(自動車殿堂)
 The Henry Fordの敷地の一角には、「Automotive Hall of Fame」(自動車殿堂)の建物がある。自動車産業界に貢献した人を表彰し、その功績を展示する施設だが、本田宗一郎氏をはじめとする日本人も数人含まれている。自動車の発達の歴史が展示されており、こちらも興味深い。

 

Automotive Hall of Fame殿堂入りした人の名前が刻まれた部屋。本田宗一郎氏の殿堂入りは有名だが、日本人の名前はほかにもいくつか見られる
車の歴史を、殿堂入りした人に絡めて展示しているこの空間は「Soichiro Honda Atrium」と名付けられている。いかにホンダがアメリカの人々に愛されたが感じられるThe Henry Ford周辺にはフォードの関連施設が多数

Automotive Hall of Fame(自動車殿堂)
http://automotivehalloffame.org/

フォードの工場跡

Piquette工場。現在は博物館のほか、増築部分にFord Health Systemの記録センターが入る
 デトロイト周辺にはフォードの工場跡がいくつかある。Piquette工場は、ヘンリー・フォードが初めて開設した工場だ。T型フォードはここで開発された。自動車のみならず、社会を変えたT型フォードのふるさとというわけで、T型フォードに関する博物館になっているのだが、こちらも残念なことに冬期は閉まっている。

 Piquetteで開発されたT型フォードは、より大規模なHighland Park工場で大量生産され、その後Rouge工場に移る。Highland Park工場の建物は残っているが、こちらは閉鎖されていて内部に入ることはできず、外から建物を見ることができるだけだ。


 

Highland Park工場は廃墟状態Highland Park工場の隣のショッピングセンターの名前は「T型フォードプラザ」

Piquette工場
http://www.tplex.org/

Walter P. Chrysler Museum(ウォルター・P・クライスラー博物館)

Walter P. Chrysler Museum
 最後に、フォード以外の施設を1つ。クライスラー本社の近くにあるウォルター・P・クライスラー博物館は、その名のとおりクライスラー車(ダッジ、プリマスなど含む)専門の博物館だ。フォードの博物館がフォード車以外も収蔵しているのに対して、ここは純粋にクライスラーだけ。それだけに、クライスラーブランドの特色がはっきりと分かり、見やすいといえるかもしれない。


 

クライスラーの名車がぎっしり
クライスラー名物「HEMI」エンジンのヘッド構造がよくわかるカットモデル乗れる車が用意してあったり、過去の名車のダッシュボードを操作できたりするのがここの面白いところ雪でよく見えないが、クライスラー本社ビル
地下はレース車両やマッスルカーの宝庫

Walter P. Chrysler Museum
http://chryslerheritage.com/

URL
North American International Auto Show(英文)
http://www.naias.com/

(編集部:田中真一郎)
2009年1月26日