【2010デトロイトショー
フィアットとのコラボレーションに期待がかかるクライスラーブース

フィアットから供給される高効率パワートレーンやEV版?フィアット500などを展示

1月11日~24日(現地時間)
米国ミシガン州デトロイト
Cobo Center



ダッジ、ジープといったクライスラーブランドにフェラーリ、フィアット、マセラティのフィアットグループブランドが挟み込まれたブース

 ビッグ3で唯一、プレスカンファレンスをキャンセルしたクライスラーだが、ブースに見るべきものは多い。資本提携を早速反映してフィアットグループと共同出展となったブースには、クライスラーの3ブランドと、フィアット、マセラティ、フェラーリが同居することになったのだ。フェラーリ599XXの隣にダッジバイパーがいる、と言った具合だ。

 この中には、エンジンルームに内燃機関でなくモーターらしきものを積んだフィアット500「elettra」などというサプライズもあった。

 注目を浴びていたのは、クライスラー風外装をつけたランチア・デルタだ。ランチア・ブランド自体が存続の危機にあり、クライスラーに吸収されるといった憶測が流れる中での展示で、こうした噂は本当だったのかと思わせた。

 しかし、クライスラーによればこの車両は、まさにランチア・デルタの外装をクライスラー風にアレンジしただけもので、市販するわけではないという。クライスラーとしての車名もない。とは言え、なんの意味もなくこのような展示をするとは考えられず、クライスラーの手薄なミッドサイズレンジとランチア・ブランドのコラボレーションが、なんらかの形で検討されたことは、事実だったようだ。

バイパー、ナイトロといったアメリカン・マッスルカーとフェラーリ599XXが並ぶ
これが件の「クライスラー版デルタ」。バッジやキッキングプレートだけでなく、グリルもクライスラー風に
ヘッドレストやステアリングホイールのセンターパッドにもクライスラーのロゴが入るが、なぜかダッシュボード右端にデルタの車名バッヂがそのまま残されている。「クライスラー・デルタ」になるのだろうか
アバルト500とフィアット500だが、フィアットのほうのエンジンルームをよく見ると、内燃機関らしきものがなく、太いオレンジ色のケーブルがつながった、「エレクトリック」と書かれた箱が見える。車名は「elettra」

 

クライスラーの新しいエンジンラインナップ

 一方、公式リリースに基づく興味深い展示としては、フィアットグループが持つ小型エンジンがクライスラーに供給され、クライスラーが一気に手持ちのエンジン・ラインナップを拡充したことがある。

 しかも供給されるのは、1.4リッターの自然吸気とターボエンジンという、最新流行のダウンサイジングエンジンだ。さらにこの2基には、フィアットグループの最新技術「マルチエア」が採用されている。マルチエアは、吸気側バルブをカムシャフトではなく、油圧ラッシュアジャスターで駆動するエンジン。バルブタイミングやリフト量をシリンダーごとに自在に変えられる。このため、スロットルバルブを廃するなど、燃費向上が可能となっている。フィアットグループでも、この春に欧州で発売されるアルファ ロメオ・ミトに搭載される予定となっている。

 フィアットグループからはエンジンだけでなく、6速乾式デュアルクラッチトランスミッション(DDCT)も供給されることになっている。これによりクライスラーは、ダウンサイジング・エンジン+デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせた高効率パワートレーンを、いち早く導入できるようになったことになる。

 一方クライスラーも、2.4リッター直列4気筒の「ワールドガソリンエンジン」にフィアットのマルチエア技術を導入し、燃費を改善した3.6リッターV型6気筒の「ペンタスターエンジン」を開発。ペンタスターエンジンにもマルチエアやターボ、直噴などの技術を導入する予定だと言う。

 ヨーロッパの最新技術トレンドを手に入れたクライスラーグループ、今後の展開に目が離せない。

フィアットから供給されるDDCT。6速の乾式デュアルクラッチトランスミッションだ2.4リッター4気筒の「ワールドガソリンエンジン」。“ワールド”というネーミングにクライスラーの気概を感じるワールドガソリンエンジンにはクライスラーのパーツが使われている
クライスラーが開発したV6ペンタスターエンジンフィアットから供給される1.4リッターのマルチエアエンジンマルチエアのヘッド。写真左側のバルブの上にはカムシャフトがなく、油圧ラッシュアジャスターで駆動される

North American International Auto Show(英文)
http://www.naias.com/

(編集部:田中真一郎)
2010年 1月 13日