「大橋ジャンクション」の建設現場を公開する「おとなの社会見学
 高低差約70mの都心ジャンクションをレポート

2009年開通予定

 首都高速道路(首都高)は、現在建設中の中央環状新宿線大橋ジャンクション(大橋JCT)の現場見学会を9月21日に開催した。今回開催した見学会は、特定非営利活動法人シブヤ大学との連携により企業CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の一環として行われたもので、首都高の中央環状線建設に伴う渋滞解消プロジェクト「東京SMOOTH」の広報スタッフが講師となり、シブヤ大学の参加者に中央環状新宿線や大橋JCTについて解説した。

(左から)首都高「東京SMOOTH」広報プロジェクトチームの田沢誠也氏、須長順行氏、小川隆氏、高橋邦博氏。今回の見学会では、シブヤ大学の授業における先生として、大橋JCTの説明や解説を行った

都心環状線への交通集中を解消するため中央環状線を建設。今回公開された大橋JCTは、池袋~新宿~渋谷を結ぶ山手トンネルと接続し、東名高速方面から来る車を分散させる
現在の首都圏の高速道路は、東京都中心部の都心環状線(C1)から、東名高速道路や中央自動車道、関越自動車道などが放射状に敷設されている。これらの放射線から放射線へと通行する場合は、都心環状線を経由する必要がある。

このため、都心環状線に自動車が集中することによる慢性的な渋滞が発生している。首都高によれば、現在都心環状線の利用者のうち、約6割が放射線から放射線へと通過する、都心環状線沿道に用のない利用者だという。

この都心環状線の渋滞解消に向けて、現在都心から半径約8kmの位置に建設される中央環状線(C2)のほか、都心から半径約15kmの位置に建設される「東京外かく環状道路(外環道)」、都心から半径約40~60kmの位置に建設される「首都圏中央連絡自動車道(圏央道)」の3つの環状線の建設が進められている。

このうち中央環状線は、首都高湾岸線から6号三郷線(常磐自動車道に接続)、川口線(東北自動車道に接続)、5号池袋線(埼玉方面に延伸)を結ぶ東側と北側の区間が2002年までに開通。また、2007年12月に5号線と4号新宿線を結ぶ「中央環状新宿線」が開通した。中央環状新宿線は全線が山手通り地下に造られており、これを「山手トンネル」と呼ぶ。開通直前の山手トンネルで日産GT-Rの発表会が開催されたのを、覚えておられる方もいるだろう。

現在、中央環状新宿線の残りの区間である、4号新宿線から3号渋谷線を結ぶ部分が、2009年の開通を目指して建設中だ。また、3号渋谷線から湾岸線の大井を結ぶ中央環状品川線も、2013年の開通を予定している。これらの区間も中央環状新宿線同様に地下に建設される。

今回公開された大橋JCTは、中央環状新宿線と3号渋谷線を結ぶジャンクションだ。大橋JCTおよび中央環状新宿線の開通に伴って、これまで都心環状線に集中していた東名高速方面および中央道方面からの交通が分散され、渋滞の減少や、渋滞減少に伴うCO2の削減につながるとしている。 

中央環状新宿線と3号渋谷線との接続は、地下約30mにある山手トンネルから、地上約35mの3号渋谷線とをループ線で結ぶ構造で、3号渋谷線の上下線が中央環状新宿線と接続される。 

ループ線部分は上下線が2層構造で2周する4層構造となっており、地上約36m、地下約35m、ループ1周が約400m。約800mの走行で約71mの高低差が生じ、この間カーブが連続することから、看板と路面の色を接続方面ごとに変えるなど、体感的に利用者の運転を支援できる仕組みを採用する予定だ。

また、大橋JCT自体を壁や天井で覆い騒音や排気ガスを抑制する「覆蓋(ふくがい)構造」を採用しており、内部の換気は大橋JCTに敷設される大橋換気所によって行われる。

大橋JCTの説明図中央環状新宿線の概要図大橋JCT完成時の路線接続図
大橋JCTの模型。写真左側が用賀方面、左側が都心方面で、写真奥が新宿方面となる大橋JCTの覆蓋構造。首都高では大橋JCTを「Ohashiトルネード」と名付けている大橋JCTの走行車線における利用者の運転を支援する仕組み

大橋JCT内部の下層車線。完成後は3号渋谷線から中央環状新宿線に向かう車線で、2車線道路となる。大橋JCTと3号渋谷線を結ぶ高架も現在建設中で、完成後は上りが3号渋谷線池尻出入口~渋谷入口間の追越車線から、下りが走行車線から分岐し大橋JCTへとつながる

大橋JCTの上層車線。中央環状新宿線から3号渋谷線に向かう車線となる部分だ。3号渋谷線とは上下線とも走行車線と合流する大橋JCT下層車線の壁面。排気ダクトや送風ダクト、非常電話などが設置される予定
大橋JCTの屋上部分で、公園として整備される予定。写真奥の壁がない箇所は、建設予定の地上41階のビルとの連絡通路が設けられる予定だ大橋JCTを外部から見たところ。ここにはかつて、東急バスの営業所が、さらに遡ると廃止された東急玉川線の車庫が設けられていた場所だ大橋JCTの非常階段。非常階段も周辺景観を考慮して金属製の網状の壁が設けられている
大橋JCTの外壁。周囲に圧迫感を与えないために、上部に擬似窓、下部にはスリット状のデザインが施されている建設中の大橋JCTを屋上から見下ろしたもの。大橋JCT中央部には大橋換気所のほか広場も建設される予定
見学会では、中央環状線や山手トンネルについても、建設の経緯や概要が説明された。首都高によると、都心環状線は約6割は通過するだけの利用者だという山手トンネルの新宿~池袋間開通によって、中央道から常磐道への所要時間が約22分短縮。中央環状線によって渋滞が解消される結果となっている
山手トンネルは11本の鉄道路線と2本の河川と交差するため、地下約30mに建設される山手トンネルの換気所の概要。電気集塵機などによる空気清浄を行い、風速約10m/sで地上約100mまで排気を飛ばす構造だ
換気塔の空気清浄施設は、1日平均で浮遊粒子状物質を80%以上、二酸化窒素を90%以上除去できるとしている換気所の換気塔は景観を損なわないデザインを採用。グッドデザイン賞にノミネートされている
高架区間となる西新宿JCTでも、防音壁の設置や緑化により景観への影響を配慮している

このほか、大橋JCTの建設敷地が約2万5000m2と広大となることから、大橋JCT建設を契機とした再開発事業も行われる。再開発事業では、再開発エリアを「O-Path(オーパス)目黒大橋」と名付け、大橋JCTの脇に地上25階と地上41階のビルを建設。また、大橋JCTの屋上を公園として整備して開放する予定だ。

大橋JCTは、国立競技場のグラウンドとほぼ同じ広さとなる大橋JCTも含めた再開発事業の模型
地上25階のビルは東急不動産などがマンション「プリズムタワー」として販売する大橋JCT付近の国道246号交差点。既設の歩道橋から大橋JCT屋上公園への通路も建設される予定

見学会では、大橋JCTの地上区間のほか山手トンネルと接続する地下区間も公開された。地下区間は、地盤の掘削と「セグメント」よ呼ばれるトンネル内壁の設置を同時に行う「シールド工法」によって建設されており、建設には専用の掘削機「シールドマシン」を利用する。地下区間建設で利用されたシールドマシンは、直径が12.94m、重量が2000tで、掘削スピードは1分間に2cm。掘削土量は14万8000m3に及ぶ。また、地下区間も地上区間と同様に上下線が2層構造となっており、1台のシールドマシンで上層部のトンネルを建設したのちに、地下にてシールドマシンをUターンさせて下層部を建設する。

地下区間の上層部のシールドトンネル。中央環状新宿線から3号渋谷線に向かう車線となる下層部のシールドトンネル。3号渋谷線から中央環状新宿線に向かう車線となる部分
シールドマシンの模型シールドマシンの概要
シールドマシンをUターンさせた時の動画も公開されていたシールドマシンをUターンさせる際に利用されたベアリングボールシールドマシンによって掘削された土丹。土丹とは砂質粘土が堆積によって石のように凝固したもので、大橋JCT地下15m以深の地層は大半が土丹層だという
下層部のシールドトンネル内部の模様
シールドマシン先端部分の内側の模様。この先、山手トンネルとつながる予定だシールドトンネル内壁に設置されたセグメント。シールドマシンによって掘削と同時に設置される

URL
首都高速道路株式会社
http://www.shutoko.jp/
特定非営利活動法人シブヤ大学
http://www.shibuya-univ.net/ 
首都高速道路中央環状線
http://www.c2info.jp/index.html
大橋ジャンクション 
http://www.c2info.jp/junction/ohashi/ohashi.htm
おとなの社会見学05 ~首都高速道路 山手トンネル編~
http://www.shibuya-univ.net/class/detail.php?id=237

(編集部:大久保有規彦)
2008年9月24日