未来のクルマを作ってみよう タミヤ「ソーラー発電工作セット」を組み立てる |
タミヤから発売中の「ソーラー発電工作セット」。キャパシターを内蔵する電気自動車。キャパシターへの蓄電(充電)は、ソーラーパネル(太陽電池)で行うなど未来感たっぷり。価格は4410円 |
■電気を蓄える車
プラモデルやRC(ラジオコントロール)カー、ミニ四駆で知られるタミヤは、「ソーラー工作シリーズ」「ソーラーミニチュアシリーズ」など、ソーラーパネルを使った工作キットや、ソーラーカーのミニチュアを数多く製品化している。これらは基本的には、ソーラーパネルとモーターを直接つなぐもので、ソーラーパネルに光が当たっている間だけモーターに電気が供給され動作するするものだった。
それに対して、今回紹介する「ソーラー発電工作セット」は、ソーラーパネルで発電した電気を、「キャパシター(コンデンサー)」に蓄電し、それを使うスタイル。事前に蓄電されていれば、動作させるときには光が当たっていなくてもかまわないのだ。「キャパシターに電気をためて使う」というのは、あまりピンとこない人もいるかもしれないが、自動車の室内照明によくある「スイッチを切ったあと、少し時間をおいてから照明が切れる」という残光ランプも、キャパシターによる蓄電が利用されている。ソーラー発電に加え、そうした蓄電、放電の仕組みもあわせて理解できるのが、この製品の特徴と言えるだろう。
ソーラー発電工作キットに含まれる全パーツ。ホワイトや、半透明の樹脂部品はABS製。電装品は組み立て済み。駆動部用にグリスも付属する | これが完成写真。奥がソーラーパネルの付いたチャージステーション、手前左がモーター駆動車、そして手前右がカート |
■組み立ては簡単
製品は組み立て式キット。部品構成は、プラモデルのようなランナー枠の「樹脂部品」と、ソーラーパネル、モーターとキャパシターが組み込まれた基板といった「電装品」、さらにネジ類といった内容。電装品はほぼ完成済みなので、組み立て作業は樹脂パーツの切り離しと、ネジ止めがほとんど。唯一結線する部分も、リード線の皮剥きがされているなど、手の掛からないように配慮されている。説明書も分かりやすく、切り出しの必要な部分や、間違えやすいネジや「O(オー)リング」などは原寸図で示されている。組み立てに用意する道具はニッパー、プラスドライバー、ハサミ、カッターナイフ。ハサミ、カッターナイフはどちらかがあれば済むだろう。できればピンセットも用意しておくのがお勧めだ。
■チャージステーション
組み立ては、ソーラーパネルを搭載した「チャージステーション」から始まる。プラモデルの要領でランナーからパーツを切り取って、ネジ止めとはめ込みで進んでいく。ソーラーパネルの向きを変えるためのボールジョイントは、Oリングが組み込まれ、角度を変えやすく、固定できるようになっている。
ソーラーパネルの固定は付属の両面テープで、四隅に指定の大きさに切り分けて使う。その後、ベース部にソーラーパネルのジョイント部と、コネクター基板を取り付け、それぞれを結線。これは両方のリード線を寄り合わせてねじり、付属のゴムチューブを被せる。シンプルだが、意外にしっかり固定できる。ベース裏にはリード線を固定できる溝も付いているので、完成後もふらつくようなことはない。
■モーター駆動車
モーター駆動車は前1輪、後ろ2輪の3輪車。それぞれプーリー状のホイールで、Oリングをはめることで、ゴムタイヤとしている。前輪は車軸を保持するプレートがそのまま左右にスイングする構造で、ネジ止め軸を中心に左右2段階に角度が固定できるようになっている。
実際、遊ぶときにはどちらかに旋回させクルクル回すように走らることが多いだろう。キャパシターの付いた基板は、充電用のコネクター、モーターまで取り付けられた状態なので、そのまま基板をシャーシーにネジ止めするだけで済む。モーター軸にはプラ製ピニオンギアを差し込む。ここは付属のグリスを塗っておく。駆動部での注意は、プラ製のギアのゲート(ランナーとつながる細い部分)が側面に付いている点。ここはパーツを切断する際に、歯の面を切らないように、また、側面にゲートが残らないようにする。シャフトにもグリスアップを忘れずに。
下側シャーシーに各パーツを取り付けたら、上側のボディーパーツをネジ止め固定。これで、モーターや第2ギアのシャフト位置が固定される。ボディーも外装以上の役割があるので、これを外した状態では走行できない。このボディー取り付けで駆動車は完成だ。さらに駆動車で牽引する「カート」も付属する。これには単1形乾電池(130g)を乗せて、引っ張ることができる。ちなみにモーター駆動車の諸元は、全長122mm、全幅: 57mm、ホイールベース: 94mm、リアトレッド: 41mm、重量:35g。組み立ては、1時間程度で終えられるだろう。
■走行性能
完成したら早速駆動車をチャージスタンドに取り付け、お日様に当てて充電開始。このとき、駆動車のスイッチは「OFF」にする。充電がどの程度できているかは見た目では判断できない。説明書では、「太陽(晴れ)の約80000ルクスで3~5分程度。薄曇りの約30000~80000ルクスで約5~15分」で一杯になるとのこと。この程度の時間だと、明るいところに設置して、何か用を足している間に充電できているといった感じだろう。ほぼ快晴の昼間に30分ほど日の当たる室内で充電した後、駆動車のスイッチを「ON」にして、走行開始。
コネクター位置を合わせて、駆動車をチャージステーションに取り付ける | 「ソーラー発電工作セット」の完成。ソーラーパネルに光を当てて、発電、蓄電開始 | モーター駆動車のスイッチ部。発電、蓄電中はスイッチを「OFF」にしておく |
牽引用のカートも用意されていて、これはカートを取り付けた状態 | チャージステーションの背面にはカートを立てておくスタンドもある |
走行開始直後は軽快な感じ走っていく。だが1分過ぎくらいからパワーダウンが始まり、徐々にスピードが落ちて行く。それでも、意外に止まりそうにない。そして2分を超えると超トロトロ走行になり、丁度3分というところで完全停止した。車体が軽い(35g)ということもあり、パワーが落ちても意外に走り続けるようだ。旋回半径を変えたり何度か走行させてみたが、約3分をというのが最長の走行時間だった。
■蛍光灯でも走る?
太陽光で発電できるなら、室内の蛍光灯では無理なのか? 説明書では蛍光灯(光源から1.8m)を想定して、蓄電も走行も「不可」となっている。そこで、光源をソーラーパネルに近付けて試してみることにした。使用した蛍光灯は丸形のデスクライト。12Wの球形蛍光管タイプだ。これをソーラーパネルとの距離10cmほどにし、30分充電してみた。これでスイッチを入れてみたところ、走った! 30秒ほどでかなり遅くなったものの、完全停止まで約1分半走ることができた。これなら普段デスク付近に置くだけで、意外に充電できるのではないだろうか。
蛍光灯で発電し蓄電できるのかを実験。デスクライト(12Wの球形蛍光管)を約10cmに近付けて30分放置した。1分以上走ることができた |
■オリジナルマーキングに挑戦
ひと通り走行テストをしたところで、さらにお遊び。見た目が寂しいので、車体にステッカーを貼ってみることにした。使うのはインクジェットプリンターで印刷できるシール紙、エレコム「フリーカットラベル」のA4サイズ。一般のラベル製作などに使うものと同じで、切り分けがされてない1枚タイプだ。マークは「Car Watch」のロゴにしてみた。これを大小の大きさにレイアウト。プリンターはキヤノンのMP610を使い、用紙は後ろのトレイからの手差しで印刷。5mmごとに大きさを変えてみたが細かいほうもキレイに印刷され、表面を軽く引っかいても色が剥がれることなく良好な仕上がり。これを一つずつ切り抜き、配置や大きさは考えながら貼っていた。さらにキャパシターにも「蓄電池」と追加。こんな風にちょっと手を加えるだけで、面白さや愛着が増したりする。
手軽な工作で、ソーラー発電や、電気自動車の仕組みが味わえる「ソーラー発電工作セット」。電動でありながら「電池」を買ったり消費しないですむ利点も、こうして遊んでみると分かりやすい。
年末のお休みに、こんなアイテムで楽しみながらクルマとエネルギーについて考えてみるのはいかがだろう。
■URL
株式会社タミヤ
http://www.tamiya.com/japan/
製品情報
http://www.tamiya.com/japan/news/news0812/news3.htm#75024
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