平成21年東京消防出初式リポート
陸・海・空の立体的な消火活動を展示

1月6日開催



 東京消防庁毎年恒例の年頭行事、出初(でぞめ)式が、1月6日に東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で行われた。今年のテーマは、「広げよう地域の連携 高めよう防災力」だ。式には、東京23区および多摩地区の各消防署に所属する各種消防車に加え、消防ヘリコプターや消防艇なども集結。さらに、江戸消防記念会による、江戸時代の火消しから伝わるはしごのり演技なども行われた。消防演技を中心にその模様を紹介する。

出初式の起源は約350年前までさかのぼる
 出初式の起源は、江戸時代の1659年(万治2年)にまでさかのぼる。当時の江戸の町は、その2年前の1657年(明暦3年)に「明暦の大火」に包まれ、未だに焦土という状況。苦しい復興作業を続けている町民たちを励まそうと、当時の老中の稲葉伊予守正則が定火消(じょうびけし:江戸時代の消防組織)総勢4隊を率いて上野東照宮前で1月4日「出初」を行って気勢を上げたことが契機となったのだそうだ。それ以来、正月の恒例行事となり、現在まで受け継がれているというわけである。

 1953年から1月6日に行なわれるようになり、近年は車両数も増え、消防ヘリや消防艇も参加するようになったことから、1998年からビッグサイト(東3および6ホールに隣接した東駐車場のAおよびB)で開催されている。各地でも消防出初式が年頭に行われるが、元祖とも言える東京が近年は毎年6日なのに対し、全国的に見ると1日早い5日に行う地域も多いようである。

出初式で行われる内容
 出初式は、前半に音楽隊やカラーガーズ隊(女性隊員で編成されたドリルチーム)、各種消防隊員による入場行進および演技、消防学校の学生による小隊操練、そして消防総監の挨拶などが行われる。その後、メインとなる各種消防車による行進=機械部隊分列行進だ。

 続いて、江戸消防記念会による木遣り行進・はしごのり演技。地上から10mはあろうかという竹ばしごの上で命綱なしの演技が行われ、会場が歓声と拍手喝采による盛り上がりを見せたところで、クライマックスの消防演技に移った。

カラーガーズ隊。パレードなどを通して防災の啓蒙活動などを行っている消防隊員らによる徒列部隊等分列行進の様子消防庁総監や隊長らが乗ったトヨタ「ランドクルーザー」が続く
来賓用は日産「セドリック」。消防庁らしく真っ赤なボディのものと、純白の2種類今回も「頑張れ消防応援団」による激励が行われ、俳優の田中邦衛さんらがトヨタ「クラウン」に乗って現れた機械部隊分列行進の出番を待つ各種消防車両たち
消防ヘリは4機編隊で登場。この機体は「かもめ」江戸消防記念会によるはしごのり演技の様子。この高さ命綱なしでこんなアクロバティックなことをする

 消防演技は、東駐車場に地震で倒壊した形の斜めにかしいだ建物、がれきに埋もれた2台の乗用車、4階ほどの高さのビルなどが建てられ、それらを用いて行なわれる。地元地域の消防団の小型消防車たちがまず駆け付け、次に消防庁で最も機動力のあるバイク部隊「クイックアタッカー」が先陣を切って現場に到着。クイックアタッカーが収集した情報を基に、主力のポンプ車が複数台駆け付け、実際に放水して鎮火を行うという具合だ。

 さらに、化学工場を模した建物からの出火に対しては、東京消防庁の所属車両中で最も高価なハイテク装備をした化学車が登場し、除洗活動を行った。宇宙服を思わせるようなデザインの、バイオハザードの最高レベルとなるレベル4対応防護服を装着した隊員も出場した。また、日立製作所が開発し、昨年10月から正式に東京消防庁で1機が運用されている、双腕重機も登場し、その2本の鋼鉄の腕でがれきを次々に撤去。クレーン車は被災車両役のトヨタ「チェイサー」を軽々とつり上げて見せている。そして最後は、4階建てのビルから逃げ遅れた人を救出するという流れ。

 隊員がロープを使って屋上までほぼ腕力のみで上り、最後は上階の窓から複数名の隊員がロープでラペリング(懸垂降下)して脱出。これら陸地での演技と同時進行で、海上でも空と海の共同の消火及び救助活動が進行。今回は、隅田川や東京湾で営業している水上バス(東京都観光汽船)の1隻が火災を起こし、乗船客が海に投げ出されたという設定だ。

 消防ヘリから隊員が実際に海まで降りて救助活動を行い、水上バスに複数台の消防艇が放水を行うという内容だった。演技中は、指揮車の近くに陣取った隊長の指示もスピーカーで流されるなど、非常に緊張感があり、観覧していた若い女性たちからも「かっこいい!」と歓声が上がっていた。演技の後には複数のポンプ車が海に向かって一斉放水。そして、はしご隊が30~40mのはしごを延ばしての演技が行なわれ、終了となった。

消防演技スタート。最初は、消防通報した消防少年団の中学生が、震災で傾いて火が出た建物の消火から消防団の軽自動車ベースの消防車が次に駆けつける。狭い路地でも入れるのがポイントこちらも消防団の消防車。東京は大型地震が想定されるため、こうした地元の消防団の活動が重要
かなり火が出ている雰囲気クイックアタッカー登場。バイクならではの機動力を活かし、真っ先に現場に駆け付ける。実にカッコイイ主力のポンプ車も次々と到着
本格的な消火活動の開始地震による津波で船体が破損、燃料が漏れて出火した水上バス消防ヘリ「つばめ」が隊員をつり下げながら登場。海に落ちた乗客の救助を行う
「はまかぜ」ら消防艇も複数が現場に駆け付ける。空と海との立体的な救助・消火活動だ複数の消防艇による放水で水上バスの消火活動を行う続いては化学工場が被災し、有毒ガスの被害を受けた労働者が逃げ出してきたという設定
消防団が駆け付けるが手に負えないので、特殊災害対策車などが出動指揮隊車。年代によってかなり車種は異なり、こちらは4~5年前納入の日産「エクストレイル」東京消防庁のポンプ車にはすべてレベル3の防護服が常備されており、NBC(核・生物・化学)対策は日本で最も進んでいる
化学機動中隊「HAZ-MAT」に備えられている、バイオハザードレベル4の防護服を来て活動する隊員たち化学汚染を受けた人たちを除洗するためのテント。1時間に100人ほどの除洗能力がある次は、がれきの下敷きになった乗用車から救助活動するという設定。クルマはトヨタ「マークII」
何台もの救急車が駆け付けたところクレーン車で被災車両を撤去するべく、牽引の準備。車両は、トヨタ「チェイサー」クレーン車がチェイサーを撤去中
日本に1台の双腕重機も駆け付け、最大で約2tを持ち上げられるというパワーで次々とがれきを撤去続いては、ビルから逃げ遅れた人たちの救助活動。ロープを伝って隊員が上っているところ要救助者を救助したところ
要救助者は、現地に設営された救護所に担ぎ込まれる余震が想定され、ビルの倒壊の危険性があるため、隊員に脱出の指示。ラペリングで降りる最後は、はしご車やポンプ車が放水して消防演技終了

 昨年はちょうど日曜日ということもあり、非常に多くの人が訪れたが、今年は残念ながら平日。それでも、観客席は朝9時30分の開始を前に早くも8割から9割方が埋まり、最終的には立ち見も出るほどの観覧者が集まった。

  

URL
東京消防庁
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/
平成21年出東京消防出初式
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/inf/h20/2008-1130-22/

(デイビー日高)
2009年1月7日