日産、「GT-R Spec V」発表会を開催 水野CVE/CPSが語る、「GT-Rならではの進化」とは |
GT-R Spec Vは、2009年型GT-Rを軽量化し、専用のチューニングが施された限定スペシャルモデル。その詳細は関連記事を参照されたい。
発表会ではGT-RのCVE/CPS(チーフ・ヴィークル・エンジニア/チーフ・プロダクト・スペシャリスト)である水野和敏氏が、Spec V、ひいてはGT-Rに込められた意図を語った。
■GT-Rは“生きる力”
「1週間のうち6日間、社長やリーダーとしてものすごく働いている人が、趣味として車に乗る。その半日が、1週間のハードワークを支える、“生きる力”になる」。水野氏はこのように、環境問題や経済問題が取りざたされる現在に、GT-R Spec Vが登場する意義を説明した。「環境を重視した車も重要だが、GT-Rのように“生きる力”となる車を提供することも、日産のようなマルチなメーカーが果たすべき使命」。
「1週間働き詰めで、ほんの1~2時間車に乗る一部の方は、より感動を明確にするために、ポルシェやフェラーリのようなキャラの強い車を好む」。Spec Vはそうしたユーザーのために、「ちょっとエキセントリックな特別な限定バージョン」として開発された。ベースとなったGT-Rとは収益などを切り離した存在だという。
生産台数は「月30台以上は無理」。既報のとおり販売やメンテナンスを行う拠点が全国で7つに限られているが、展示車を全店舗に配備するだけの数も確保できず、全国4カ所の日産ギャラリーのみの展示となる。「こうした商品は、ディーラーに熱血感がなければお客様に迷惑をかける」との考えのもと、取り扱いを希望するディーラーを募集したと言う。
なお、販売拠点は数もさることながら、対応能力も限られているため、Spec Vに興味を持った場合はまずホームページで情報を収集し、それから店舗に行くことが推奨されている。
■進化するGT-R
これについて水野氏は「匠とかクラフトマンと呼ばれる人は、今日作ったものよりも、明日はもっといいものをお客様に提供しなければいけない。明日作ったものよりも、明後日のほうがもっといいものができる。5年目の職人が作った箪笥が10万円で買ってもらえるとしたら、10年目の職人として作った箪笥は50万円で買ってもらえる。20年目の職人として作った箪笥なら、100万円で買ってくれる。日本にこういうモノ作りの車があってもいいと思う」と言う。
2009年モデルで値段が80万円上がったのも、原材料費などの理由ではなく、モノとしてのよさが向上したことを反映したのだと言う。「1年前の価格でも10%以上の利益は出ていたが、僕らが磨き上げた匠の価値に対して値付けして欲しい」という意図で、2009年モデルの価格は決まった。
「だからといって、5年目の箪笥を買った人が馬鹿かと言えば、そうではない。5年目の箪笥でそのよさを知ったら10年目の箪笥に買い換えて欲しい」と水野氏は言う。今現在のGT-Rを買ったユーザーのために、3年間の特別性能保証、アンチチッピング塗装、通常の4倍以上の耐久試験などにより、中古車の価値を維持する努力がなされている。
欧州スーパーカーの、ニュルブルクリンクのラップタイムと価格の関係で説明した水野氏。GT-Rの価値を同じ基準で計れば、Spec Vはお買い得 |
■「人車一体」を実現するには
「電子技術を使うには、その母体となる機械の精度がよくなければならない」という水野氏の考えに基づき、2009年型の改良とSpec Vの設計は行われた。その目指すところは「人車一体」、「フラットコントロール」だ。
「人車一体とは、“人のお尻のすぐ下にタイヤがある”ということ」だが、実際にはタイヤと人の間には、サスペンションをはじめ数百のパーツが介在する。このすべてのパーツの“ガタ”がなくなれば、タイヤと人がつながることになる。
もうひとつの「フラットコントロール」という目標は、「タイヤのミューに頼っていては実現できない。均等荷重で4つのタイヤに常にグリップを作り出す車で、初めてフラットコントロールができる」という考えのもと、均等荷重を作り出せるボディの作り込みやパッケージレイアウトが採用されたという。
■来年は「M Spec」を出す
このように、Spec Vは特殊な一部の層に向けた「走り志向」のバージョンとして登場した。水野氏は、来年もまたGT-Rの進化を示す「M Spec」バージョンを出すと言うが、それがどのようなバージョンになるのかは明らかにされなかった。
■URL
日産自動車株式会社
http://www.nissan.co.jp/
ニュースリリース
http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2009/_STORY/090108-01-j.html
製品情報
http://www.nissan.co.jp/GT-R/SPECV/
関連記事
【2008年12月8日】日産、「NISSAN GT-R」をマイナーチェンジ
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20081208_38236.html
【2009年1月8日】日産、「NISSAN GT-R」のハイスペックモデル「Spec V」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090108_38388.html
(編集部:田中真一郎)
2009年1月9日