国交省、ASV(先進安全自動車)の試乗会
お台場に30台のASVが集結

会場に集結したASV全車
2009年1月30日
東京臨海副都心



 国土交通省は1月30日、東京臨海副都心地区で「ASV」(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)を報道関係者に公開し、公道試乗を行った。

 ASVは、国土交通省自動車交通局主導のもと、交通事故削減を目標として1991年度から開発されてきた安全運転支援技術。あくまでドライバーの運転を支援するシステムで、システムが車を完全制御するのでなく、安全運転についての情報をドライバーに提供したり、自動車の制御を補助したりすることを、理念としている。

 ASVはまず、自動車に搭載したセンサーなどで情報を収集し、安全運転に役立てる技術の開発から始まった。この研究は現在では、自動ブレーキング、ACC(Adaptive Cruise Control:車間距離維持機能などを持つクルーズコントロール機能)レーンキープアシスト、ふらつき警報、横滑り制御などの技術として結実し、製品化されている。

 2001年度からは、自動車同士や、歩行者が持つ発信器、道路に設けられたセンサーなどと通信することで、車載センサーだけでは得られない情報を収集して安全運転に役立てる技術が開発されている。具体的には、たとえば見通しの悪い場所で、ドライバーから見えない位置に車両がいる場合、その車両と通信したり、路上のセンサーでその車両を検知したりして、その車両の存在をドライバーに知らせる。

 東京臨海副都心では1月初旬から、ASVを含むITSの大規模実験が行われているが、今回の試乗はこれにあわせて行われたもの。

 同乗走行は、報道関係者を各社の車両に振り分けて同乗させ、青海地区周辺を走行。公開されたのは、自動車同士が通信し、情報を交換することで、ドライバーに見えない位置にいる車両の情報を与える技術のデモンストレーション。インフラを必要とする路車間通信のデモは行われなかった。

記者が同乗したスイフト ASV-4センターコンソールに設けられたカーナビのディスプレイルーフに設けられた車車間通信用アンテナとGPSレシーバー。安全運転支援を行うべき交差点とそうでない交差点などを識別するために、GPSによる位置情報が使われる
左折時(左の方向指示器を出しているとき)に左後方に2輪車を検知すると、巻き込みに注意という警報が表示され、音声でも案内される。この場合は2輪車もASVで、車車間通信機能を持っており、2輪車が自車の存在をスイフト ASV-4に伝えると、スイフト ASV-4は警報を発する
このほかの警報。写真左は右折時に、死角にいる対向車の直進車を警報しているところ。右は見通しの悪い交差点での出会い頭衝突を防ぐため、右から来る車両の存在を通知している


 次の動画は、見通しの悪い交差点にさしかかったところ。右から三菱自動車のASV「D5」がやってくるのを検知して、カーナビが「右からの車に注意しましょう」と警報を出す(警報後にD5が前を横切っていくのが見える)。

 記者はスズキの「スイフト ASV-4」に同乗した。同車のASV装備は通信用のアンテナのほかにはカーナビのみ。カーナビのソフトウェアを車車間通信に対応させ、通信で得た情報を元に、「右からの車に注意」などの警報をカーナビ画面表示と音声でドライバーに伝えて安全運転を支援する。

 同乗走行で見ることができたのは、「出会い頭衝突防止」「右折時衝突防止」「左折時衝突防止」の3つ。出会い頭衝突防止は、見通しの悪い交差点にさしかかり、交差する道路を通行する車両がいると、「右からの車に注意」などの警報が出される。右折時衝突防止は、右折時に直進してくる車両やバイクについての警報を出す。左折時衝突防止は、左折時の2輪車の巻き込みを防止するもの。

 出発会場となった青海地区の駐車場には、ASVを開発している国内自動車メーカー(2輪車メーカー含む)14社と、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンのASVが合計約30台集結し、各社各様のASVの実現方法を展示した。

トヨタはエスティマとレクサスLSの計4台のASVを持ち込んだ
日産はフーガとティーダ、ノートを計4台
ホンダホンダは2輪のASVも

マツダスバル三菱自動車
スズキはスイフトとワゴンRを用意スズキの2輪ASVダイハツ
メルセデス・ベンツフォルクスワーゲン日野自動車
いすゞ日産ディーゼル三菱ふそう
ヤマハの2輪ASVカワサキ
ワゴンRの運転席。メーターナセルの上にある5つの窓は、ドライバーをモニターするカメラ。警報によりどのような反応を示すかを解析し、警報のタイミングや出し方を改良する日野自動車のバスの内部。実験用の機器を多数搭載している。この車にもドライバーの反応を撮影するカメラが搭載されている
車車間通信用アンテナの取り付け方は各社各様。2本のアンテナによるダイバーシティ方式がほとんどだが、三菱自動車のみ、車体の前後端に1本ずつのアンテナを取り付ける方式を採る

メルセデス・ベンツの内部。カーナビ画面に大きく警報を表示する。デモカーなので、同じ警報を表示するリアシート用のディスプレイも装備されているマツダもカーナビ画面に警報を割り込ませる。各社とも、画面を注視させないように、警報画面は簡略で分かりやすい図形を表示するのみにとどめている
三菱自動車のD5の内部。ダッシュボード上に警報専用の大きな表示器を付けているが、カーナビディスプレイに同時にノーズカメラの映像を表示して、ドライバーが相手車両をより確認しやすくするためにこうしている。表示器のアイコンは、警報の種類や、相手車両の種類によって変わる
2輪車でライダーに警報する手段もいろいろ。左の2枚はスズキのもので、メーターパネルのディスプレイと、スピーカーからの音声を使う。右はホンダで、メーターナセルに沿って付けたイルミネーションが光ることで、どちらの方角に車両がいるかを伝える仕組み。音声はBluetoothでライダーのヘルメット内のイアフォンに伝える
三菱ふそうの運転席。トラックはカーナビがほとんど普及していないため、乗用車のようにカーナビの画面に警報を表示することができない。この車両は実験車なので外付けの大きなディスプレイに警報を表示しているが、実際にはメーターパネル内のマルチディスプレイに表示することになる

URL
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/
ニュースリリース(PDF)
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000022.html
ASV
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/index.html
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(編集部:田中真一郎)
2009年1月30日