NEXCO中日本、紀勢自動車道大宮大台IC~紀勢大内山IC開通式
新規開通区間の動画も

 

2009年2月7日15時開通

 三重県の紀勢自動車道、大宮大台(おおみやおおだい)IC(インターチェンジ)と紀勢大内山(きせいおおうちやま)IC間10.4kmが2月7日15時に開通した。

 NEXCO中日本(中日本高速道路)が管轄する紀勢自動車道は、大阪府松原市から紀伊半島の沿岸部をぐるっと回って伊勢自動車道に接続する近畿自動車道紀勢線(全長約336km)のうち、伊勢自動車道の勢和多気JCT(ジャンクション)から紀伊長島IC(仮称)まで全長約34kmの高速自動車国道だ。

崎トンネル上空から紀勢大内山IC方面(NEXCO中日本提供)近畿自動車道紀勢線のうち、勢和多気JCTから紀伊長島ICまで全長約34kmが紀勢自動車道今回開通したのは大宮大台ICから紀勢大内山ICまでの10.4km

 紀勢自動車道は、2006年3月11日に勢和多気JCTから大宮大台ICの約13.4kmが開通、約3年の時を経て紀勢大内山ICまでの区間が延長されたことになる。これで全長約34kmのおよそ7割が完成。残りの紀伊長島IC(仮称)までの区間は2012年度までの開通を目指している。

 今回開通した区間10.4kmは、トンネルが7カ所(計6.4km)、橋梁が5カ所(計1.2km)と7割以上が構造物区間の典型的な山岳道路で、追い越しが可能な4車線(片側2車線)区間の1.4km以外はすべて暫定2車線(上下線、各1車線)となっている。平行する国道42号線と比較した場合、時間で約10分、距離で約4km短縮された。

 NEXCO中日本は開通の効果として、災害や異常気象時、救急や火災・交通事故などの緊急時の際に国道の代替路として、開通区間の沿線地域や東紀州地域の生活基盤確保に大きく貢献することや、尾鷲方面から高度な救急医療を行える第三次救急医療機関(伊勢市)までの搬送時間短縮や救急医療施設の選択肢が増えるなど、救急医療体制を支援につながるとしている。さらに観光地である、世界遺産に指定された熊野古道を有する東紀州地域への交通アクセスが向上し、広域観光の支援や、生活圏域の拡大、地域開発の発展や物流の効率化にも寄与することを期待している。

 事実この地区は日本有数の多雨地帯で、尾鷲の年間降水量は東京、名古屋と比べ2倍以上と多く、国道42号線が大雨による通行止めや土砂災害による寸断のような事態となると、地域全体が陸の孤島となってしまう。この点を見ても、紀勢自動車道に対する地元住民の期待は大きい。

紀勢大内山ICの料金所大宮大台ICまでは10km、名古屋までは137kmだ
崎トンネルから6連続でトンネルが続く。少し間隔があって7つ目のトンネルを抜けると大宮大台ICトンネル入り口の看板。今回開通区間のほとんどがトンネルだと分かる

 開通に先立ち10時から紀勢大内山ICに近い崎トンネルの入り口で開通式典が開催された。式典には野呂昭彦三重県知事、坂口力衆議院議員、田村憲久衆議院議員、三ツ矢憲生衆議院議員など地元国会議員に加え、矢野弘典NEXCO中日本代表取締役会長が出席した。

 最初に壇上に立ったNEXCO中日本の矢野会長は、紀勢自動車道が国道42号線とともに、三重県東紀州地域の生活・文化の発展、産業・経済の振興に必要不可欠であると同時に、災害時の救援、復旧支援の際の交通機能としても、日常の救急医療のサポートとしても“命の道”として重要な役割が期待されること、さらには熊野古道など観光資源に恵まれたこの地域のアクセス向上による発展に寄与したいと語った。また、20年に1度行われる伊勢神宮「式年遷宮」(次回は2013年)までに、残る紀伊長島ICまでの開通に全力をつくすことを明言した。

 続いて壇上に立った野呂三重県知事も「式年遷宮」の話題に触れ、2013年の三重県への来訪者数を年間5000万人とし、1日も早い紀勢自動車道の全線開通を三重県としてもバックアップしていくことを宣言した。三重県出身の坂口力衆議院議員は昭和30年代に地元大台町の診療所の医師として勤めた頃の思い出を振り返り、裏道を使って苦労した時代からは想像できないくらい便利になったと語った。式典は集まった約400名の関係者による万歳三唱で締めくくられた。

式典会場前ではNEXCO中日本の社員による琴と尺八の演奏で来場者をお出迎え会場には約400人の関係者が集まったNEXCO中日本の矢野会長は紀勢自動車道を“命の道”と語った
野呂三重県知事は紀勢自動車道の全線開通を県としてバックアップしていくことを宣言坂口力衆議院議員は若き日を振り返り、便利になったと語った最後は参加者全員で万歳三唱が行われた

 式典終了後、崎トンネルの手前で鋏入れ(テープカット)と同時にくす玉開披、風船放天、花火打上が一斉に行われた。続く通り初めは女性白バイ隊員を先頭に関係者が崎トンネルを抜け大宮大台ICまでの約10kmを走り抜けた。

崎トンネルの手前で、鋏入れと同時にくす玉が割られ、風船も舞い上がった通り初めは女性白バイ隊員を先頭に関係者が崎トンネルを抜け大宮大台ICへ

開通前動画開通後動画 

 15時の一般の開通時刻には紀勢大内山ICで100台以上の車の列ができていた。一番先頭は2日前から並んだとのこと。開通後も続々と車が乗り入れ、その列は国道42号線までつながり、20分を経過しても途切れることはなかった。紀勢自動車道に対する地元の期待を目の当たりにした感じだ。

15時の開通時刻前には長蛇の列ができた開通5分前。1番乗りの人は2日前から並んだと言う15時開通。ETCは使わず発券機で通し番号1番をもらい、パーキングで撮影して記念に残すとのこと

 大宮大台ICと紀勢大内山ICが開通する2日前、2月5日に勢和多気JCTと大宮大台ICに間に奥伊勢PA(パーキングエリア)もオープンした。上下線とも駐車スペースは小型車22台・大型車7台、トイレ、売店、自販機が設置されている。太陽光発電を採用したり、造成中に発生した岩を車止めに使用したりするなど環境に配慮する取り組みが行われている。

奥伊勢PA。地元の木材が多く使われている屋根に取り付けられた太陽光パネル発電量、CO2削減量が表示されている
歩道部分への車の進入を防ぐ石は造成時に掘り出したものを流用しているトイレもきれいで、お湯で手洗いも可能

 さて、名古屋在住の筆者も過去に国道42号線を走って、紀伊長島町の近くの孫太郎キャンプ場や那智勝浦(和歌山県)へ行ったことがある。その印象はやはり「遠い」の一言だ。記憶では名古屋市内から勢和多気ICまで高速を使い、国道42号線を通って那智の滝まで6時間ほどかかった。特に今回開通した紀勢大内山ICから紀伊長島までは、途中の荷坂峠から紀伊長島までの高低差が250mありドライバーに対する負担は大きい。

 この地域は観光地も多く、世界遺産の熊野古道は紀勢大内山ICから車で10分ほどで荷坂峠ルートやツヅラト峠ルートにたどり着く。有名な那智の滝、那智大社だけでなく、その近くの太地町にあるくじら博物館ではくじらを目の前で見ることやシャチのショーが見られる。途中にある日本最大規模の棚田とも言われる「丸山千枚田」は季節ごとに訪れてみたいと思いつつ、やはり遠さに二の足を踏んでいる。

 遠いと言うのは正しくないかもしれない。距離的に名古屋から那智の滝まで250km程度。東京より近いが、移動時間は倍近くかかっていた。今回、紀勢大内山ICから少し先の荷坂峠まで走ってみたが、眼下に見える紀伊長島の町までかなり近くなったと感じた。さらに2012年度に開通が予定されている紀伊長島ICまで高速道路でつながれば、グッと近く感じるだろう。地元住民の生活の足としてはもちろん、観光資源の豊富な地域なので、1日も早い完成を期待したい。

紀勢大内山ICのすぐ先では紀伊長島ICに向け工事が進んでいる紀勢大内山ICから10分ほど走ると熊野古道荷坂峠入り口の看板がある少し歩くと古道の雰囲気がある
峠付近から紀伊長島の町を見下ろすことができる紀伊長島から峠を登る国道は高低差250m、つづら折れの険しい道だ高速道路から見下ろすと大内山川の清流が見える。交差するのはJR紀勢本線
紀伊長島ではマンボウを食べることができる(2005年撮影)那智の滝。落差133m、華厳滝、袋田の滝と共に日本三名瀑に数えられている(2005年撮影)三重の塔と那智の滝(2005年撮影)
那智大社(2005年撮影)太地町くじら博物館のシャチのショー(2005年撮影)丸山千枚田。日本最大規模の棚田とも言われている(2005年撮影)
七里御浜。熊野灘に面し20数km(約7里)続く。アカウミガメの産卵地としても知られる(2005年撮影)
七里御浜のパノラマ写真(2005年撮影)

URL
中日本高速道路
http://www.c-nexco.co.jp/
ニュースリリース
http://www.c-nexco.co.jp/info/others/081119162935_2.html
紀勢自動車道
http://www.kisei-expwy.com/

(奥川浩彦)
2009年2月9日