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新型インプレッサで映画「君の名は。」のモデルとなった立石公園を訪ねて

スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX」で雪道&ロングドライブ

新型インプレッサでゲレンデタクシーを取材してきました

 2月4日~5日に長野県 エコーバレースキー場で開催されたスバル(富士重工業)の「ゲレンデタクシー2017」。このイベントは、スバルのSUV「レガシィ アウトバック」「フォレスター」「XVハイブリッド」にリフト代わりに同乗できるというものだ。

 開催4年目になり、多くの人が楽しんでいたのは関連記事「スバル SUV+ミシュラン スタッドレス『X-ICE XI3』の走破力を楽しめた『ゲレンデタクシー2017』」でお伝えしたとおり。本記事ではこのエコーバレースキー場へ行くために使用した取材車である新型「インプレッサ」での訪問記をお届けする。

SGP採用第1弾となる新型インプレッサ

 新型インプレッサは、次世代のスバル車の骨格となる「SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバルグローバルプラットフォーム)」を採用した第1号車であり、同社が2014年に中期経営ビジョン「際立とう2020」で掲げた“スバルブランドを磨く6つの取り組み”の一環として開発されたものになる。

 その特徴は、「スバル史上最高レベルの総合性能進化」「将来の電動化にも対応し、全車種の開発を1つのプラットフォーム設計構想で実現」の2点で、実際に登場した新型インプレッサでは、車体・シャシー各部剛性の大幅な向上による走りの進化、静粛性の向上、安全性能の向上が図られている。とくに分かりやすいのは、歩行者保護エアバッグをボンネット跳ね上げ機構を用いず全車標準装備としていることで、一から新たに設計し直したプラットフォームならではの装備となっている。

 エコーバレースキー場は当たり前だが降雪地にあり、そこへ行くためにはスタッドレスタイヤが必須。チェーンを装着するのもありだが、シンメトリカルAWDの4WD機構を持つスバル車には、4輪ともに適切なグリップが発揮できるスタッドレスタイヤがお勧めだ。スバルから借りた試乗車に装着されていたのは、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX」で、車型はインプレッサ G4 2.0i-S EyeSight。4WD機構としては軽量・高効率なアクティブトルクスプリットAWDを備えている。

装着タイヤはブリヂストンのスタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX」。アイスブレーキ性能ピカイチのベストセラータイヤ

 エコーバレースキー場に東京から行く場合は、中央自動車道で諏訪IC(インターチェンジ)を目指すことになる。もう1人の取材スタッフを大宮近辺でピックアップし、圏央道(首都圏中央連絡自動車) 桶川北本ICから高速道路へ。ちなみに大宮近辺から関越自動車道や中央道を目指す場合、以前は国道16号(西大宮バイパス)経由で関越道 川越ICからというのが定番だったが、現在は国道17号バイパスとなる上尾道路が桶川北本ICまで開通しているため、新大宮バイパスを北上すれば桶川北本ICにスムーズにアクセスできる。とくに冬の関越道は鶴ヶ島JCT(ジャンクション)を先頭とする渋滞が早朝に起きやすいため、中央道に行くには圏央道経由のほうが渋滞回避の点でもお勧めだ。

 今回もそのルートを通り、渋滞知らずで八王子JCTから中央道に合流。諏訪ICを目指して新型インプレッサを走らせた。

静かな室内空間を手に入れた新型インプレッサ

 新型インプレッサで高速走行を行なっていると、すぐに気がつくのが圧倒的な静粛性だ。従来は気になっていたリニアトロニックCVTから発する高周波音も聞こえることはなく、スバル車とは思えないほど静か(失礼!!)。スタッドレスタイヤの走行音は入ってくるものの、従来のインプレッサと比べると1クラスも2クラスも上の静粛性を実現している。

 また、ボディ剛性も高くステアリングを切れば切っただけクルマが反応し、向きを変えようとしてくれる。ただし、装着されていたタイヤはスタッドレスタイヤ。VRXはアイスブレーキ性能や静粛性、直進性や転がり抵抗はスタッドレスタイヤとして非常に高いレベルにあるものの、グリップするトレッド面がしなやかな作りになっており、タイヤ由来の遅れは感じる。逆に言えば、そのような感覚も伝わってくるほどのボディ剛性を実現しており、静かでありながらクルマとの対話が楽しめ、運転していて疲れの少ないクルマになっている。

中央道を諏訪方面にひた走る。白線がチェーン装着走行車のためかかすれており、EyeSight (ver.3)の白線認識機能も手こずっていた

 そして、この新型インプレッサでうれしいのは先進安全装備である最新の「EyeSight (ver.3)」を装備していること。先代のインプレッサも後期モデルではEyeSight (ver.3)を搭載していたが、電動パーキングブレーキを装備していないことから一部機能に制限があり、また、ステアリング操作をアシストしてくれるアクティブレーンキープは装備されていなかった。新型インプレッサは、さすが新型ということでフルスペックのEyeSight (ver.3)となっており、アドバンスドセイフティパッケージ装着車であれば、EyeSightのステレオカメラによるハイビームアシスト(ハイビーム/ロービーム自動切り替え)も行なってくれる。

 高速道路走行では、EyeSight (ver.3)の全車速追従機能付クルーズコントロールとアクティブレーンキープにより快適走行。最新のシステムを備えた、新世代のクルマの走行感を満喫することができる。ただ、中央道は降雪によりチェーン装着車が走るせいか白線が消えている箇所があり、そのような箇所ではカメラ認識によるアクティブレーンキープが働かなくなる。消えたり、消えなかったりが、白線認識したり、白線認識しなかったりにつながりリズムよく走れなかった区間が存在したほか、アクティブレーンキープがやや強めに働くのか、ゆるやかな蛇行運転となる区間が存在した。

 アクティブレーンキープについてスバル開発者に確認したところ、新型インプレッサではレヴォーグからロジックを変更しており、より半径の小さい(Rのきつい)コーナーでもレーンキープできるようになっているとのこと。アシスト能力の強化が図られていたわけだが、それがVRXのしなやかなトレッド面と相まって応答遅れのような状態となり、好ましくないと感じるような状況になったのかもしれない。スタッドレスタイヤは夏タイヤに比べてアイス・スノー性能を重視するためタイヤ接地面の剛性が低く、アスファルト路面ではステアリング入力に対する応答遅れがどうしても発生してしまう。人間だと「あー、遅れるからこんなもんか~」で調整できる部分だが、EyeSight (ver.3)の場合そのような適応型の処理はまだ組み込まれていない、もしくは調整し切れていないのだろう。いずれにしろ諏訪ICへ向かう区間は白線がかすれているところが多く、車線認識をOFFにして走る方が気楽に走れる感じだった。機械の優れているところ、人の優れているところを、いろいろ考えさせられた走行区間だった。

 ちなみにこの新型インプレッサには、オプションとはなるもののセンターコンソールのマルチファンクションディスプレイと連動するナビゲーション「パナソニック ビルトインナビ(『ナノイー』付8インチ)」が装着されており、AV性能も充実。このナビは音楽CDやDVDはもちろん、192kHz/24bitのハイレゾファイルも再生でき、高音質で快適な音楽空間をインプレッサにもたらしてくれる。USB接続も可能だが、それにはHDMI/USB/AUX入力端子を集約できる外部入力ユニットをさらにオプション装着する必要があり(USB充電端子はあったが、USB入力はない仕様だった)、今回はSDカード経由でハイレゾ再生を楽しんだ。

 ドライブのお供に選んだハイレゾ楽曲は、2016年に日本で最も売れたハイレゾ楽曲のほか、映画「君の名は。」で宮水三葉の声を担当した上白石萌音さんの「chouchou(シュシュ)」。このchouchouはe-onkyoから96kHz/24bitのハイレゾ楽曲が販売されており、その1曲として「なんでもないや(movie ver.)(カバー)」も収録されている。この曲は無音の状態から上白石萌音さんのボーカルのみが立ち上がるのが特徴となっているが、新型インプレッサでは優れた静粛性から、その音楽を心から楽しむことができた。

映画「君の名は。」のモデルとなった立石公園

諏訪市にある立石公園。映画「君の名は。」を鑑賞済みであれば、すぐにあのシーンが思い浮かぶだろう

 映画「君の名は。」に関連する曲を聞いていると立ち寄りたくなるのが映画に縁のある土地。長野在住の友人に教えてもらったのだが、諏訪ICの近くには立石公園があり、そこは映画「君の名は。」のモデルになった公園とのこと。本来は真っ先にゲレンデタクシーの会場へ向かうべきだが、折角なので立石公園に立ち寄ってみることにした。

駐車場は混雑しており、ちょこっと撮影して本来の目的地であるエコーバレースキー場へ

 立石公園の駐車場にクルマを止め、公園側に歩いていくと映画で見たあの風景が広がっている。立ち寄りスポットや鳥の撮影地としても人気があるようで、公園へは多くの人が続々とクルマでやってくる。10分ほど立ち寄り、さくっと撮影をすませ、本来の目的地であるエコーバレースキー場へと向かった。

 立石公園からエコーバレースキー場へ向かうには、霧ヶ峰スキー場や車山高原スキー場前の道を通り白樺湖方面へ向かうのが近道。途中は若干雪が残る状態で、白樺湖に近づくと雪が積もった路面も現われたが、このようなシチュエーションにおいて新型インプレッサ&VRXは絶大な威力を発揮する。ドライ路面では若干ネガな部分が露呈するVRXのしなやかなトレッド面だが、氷ったり、雪が積もったりした不規則路面では、そのしなやかなトレッド面が衝撃を受け止め、包み込むようなグリップを発揮する。新型インプレッサはそのグリップ力を使い切るように走り、曲がり、止まることができる。

雪道でも普通に走って、普通に曲がり、普通に止まる。新型インプレッサ&VRXは雪道ドライブにお勧めの組み合わせだ

 スバル車は前輪軸の直上に一番の重量物であるエンジンが来ており、ブレーキやアクセルによる荷重コントロールに気を使わなくても、しっかりした前輪荷重が得られるのが美点。その結果、ステアリングを切れば切っただけ曲がる力が発生し、スムーズにコーナーをクリアできる。左右の重量配分が均等化されているためブレーキ時もとくに巻き込むような動きは出ず、万が一タイヤがアイス路面でグリップを失ったとしても急速にスピンに陥る可能性も低い。雪道初心者に取っても安心なクルマだし、雪道に慣れている人であれば気楽に運転できるクルマの1つだろう。

雪道では本領を発揮してくれたVRX

 そもそもそのような美点を持っていたスバル車だが、SGPのインプレッサではボディ剛性の向上により、より確実な接地力を発揮しているように思える。荒れた路面の衝撃によりボディがきしむこともなく、VRXの能力を活かし切った走行が可能だ。あまりに普通に走行できるので、過信だけには注意したい。

 今回取材したのはエコーバレースキー場のゲレンデタクシーだが、今週末の2月18日~19日に岐阜県 高鷲スノーパークで東海地区初のゲレンデタクシーが行なわれる。そこでは、現行のスバル SUVによる力強い走りが見られるはずだ。現行のスバル車による雪上踏破能力を体感するとともに、スバルディーラーにおいて新世代プラットフォームとなるSGPを採用した新型インプレッサに試乗してみていただきたい。