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松田秀士のMINIワンメイクレース「MINI CHALLENGE JAPAN」参戦レポート

日本国内では2018年から本格的なシリーズ戦としてスタート!

「MINI CHALLENGE JAPAN」にフル参戦します

 今回は、いつもの試乗インプレッションではなくレースのお話。どちらかというとレースカーのインプレッションも含めた、ちょっと濃いお話だ。

 というのもボクは2018年、「MINI CHALLENGE JAPAN」というレースイベントにフル参戦することになったのだ。正式名称は「MINI CHALLENGE ASIA.2018 JAPAN SERIES」。開催地は富士スピードウェイ、筑波サーキット、岡山国際サーキット、スポーツランドSUGOで、富士スピードウェイのみ開幕戦と最終戦の2回開催される。今回は、その開幕戦(5月13日)富士戦と第2戦の筑波戦(6月10日)に出場した参戦レポートと、MINI CHALLENGE JAPANの詳細をお届けしよう。

 レースは基本的に予選と決勝を同日に行なうワンデーレースだが、第2戦 筑波サーキットでは2レースを行ない、第1レースの上位6台をリバースグリッドで第2レースをスタートさせるなど、盛り上げる内容となっている。第3戦の岡山国際サーキットでは2日間のイベントとなり、2レースが行なわれる。また、第4戦のスポーツランドSUGOでは筑波サーキットと同じ方式で2レースが開催される予定だ。そして最終戦を富士スピードウェイで開催する。このようにして、5回のイベントで1デー2レース開催を含めると全8戦でシリーズを戦うのだ。ちなみにMINI CHALLENGEは現在本国である英国と中国でシリーズ戦が開催されていて、多数の参加者を集めている人気イベントという。日本では2018年から本格的なシリーズ戦としてスタートした。

 使用されるマシンだが、新型MINI F56 JCWがベース車両。そう、あのJCW(ジョン・クーパー・ワークス)だ。エンジンこそノーマルを流用しているが、中身はまるでベツモノ。といってもエンジン自体のパワーは220PS程度に抑えられていて、これは耐久性を考慮してのこと。しかし、ターボやコンピュータなどの補器類はレース用のものに置き換えられている。エンジンの最高回転リミットは7500rpm。富士スピードウェイでの最高速は220km/hだった。

日本では2018年から本格的なシリーズ戦としてスタートしたMINI CHALLENGE。参戦車両は新型MINI F56 JCWをベースに、随所にレースカーに必要な装備が奢られる
松田秀士氏がドライバーを務める5号車の外観。タイヤはピレリのワンメイク

 トランスミッションはQuaiFe製の6速シーケンシャルミッション。シーケンシャルミッションとはちょうどオートバイの足踏み式シフトチェンジを手で行なうようなもので、ドライバー左側(MINIは右ハンドル)にあるシフトセレクトバーを前後に動かしてシフトする。手前側に引くとシフトアップで、前方に押すとシフトダウンされる。このときクラッチペダルを踏まなくてもシフト操作が可能なので、Hパターン式に比べるとシフトラグが小さく素早いシフトチェンジが可能となる。つまり、ラップタイムが短縮できるのだ。F1マシンなどのパドルシフトは、シフト操作そのものをパドルがスイッチとなり空気圧などを介して機械的に行なうもの。その意味でMINI CHALLENGEマシンの方式は今となっては若干クラシカルなタイプだが、その分ちょっとしたコツでより正確で素早いシフトチェンジが可能となる。言い換えれば、ゲーム感がなくリアルスポーツ。シフト操作に汗を覚える。

 汗をかくのはシフト操作だけではなく、ブレーキも。ブレーキはペダル踏力を倍増するブースター(マスターバック)が取り外され、前後輪2系統に分割された2つのマスターシリンダーをペダルが直接押すタイプ。従って強い踏力が必要だ。このシステムにすることで、前後輪2系統の2つのマスターシリンダーを繋ぐバーにバランサー機構を取り入れることにより、ドライバーがコクピットから前後ブレーキバランスの配分をコントロールすることができるのだ。また、ABSは取り外されているので、ブレーキングはドライビングテクニックの見せどころでもある。

 さらに、コーナリング中などラフなアクセル操作をした時に自動的にエンジン出力を調整してくれるトラクションコントロール機構も取り外されている。つまり、できるだけドライバーのテクニックによって優劣がつく、いわゆる“クルマ性能本位”の競技ではない“人本位”のレースを目指したマシン造りが行なわれているのだ。だからMINI CHALLENGEのレースは奥が深く面白い。SUPER GT GT300クラスにはGT3規格のマシンが多数参加しているが、これらのマシンにはABSもトラクションコントロールも装備されている。いわゆるプロのレースでさえそのような状況だから、MINI CHALLENGEマシンはレーシングカーのデフォルトのような存在と言えるだろう。MINI CHALLENGEマシンを乗りこなすことができれば、フォーミュラカーも乗りこなすことができるはずだ。

レーシングマシン然としたインテリア

 MINI CHALLENGEマシンはベースのJCW同様にFFマシン。そこに機械式のLSDが組み込まれている。このことがMINI CHALLENGEマシンを非常にアグレッシブなドライビングカーに変貌させている。コーナリングで限界域まで攻め込んでいても、アクセルを踏み込めばコーナリング中のフロント内輪にも積極的に駆動が伝わり、フロントの両輪でグイグイと引っ張ってくれる。一般的にLSDを装備したスポーツ系のFF車でもある程度の前輪トラクション感は味わえるものだが、レース用機械式となるとその効果はバツグンで、アクセルON時とOFF時では極端にそのハンドリング特性が変わる。

 従って、MINI CHALLENGEのコーナリングはコーナーに進入し始めたらアクセルに足を乗せて、フロントのトラクションを効果的に引き出しながらコーナリングするのが速く走らせるコツ。パワーをかけ過ぎるともちろんアンダーステアが発生してタイムロスするが、消極的でもフロントタイヤの性能を生かせずタイムロスする。ある程度積極的なドライビングスタイルが要求されるのだ。このあたりが駆動方式は違えども、フォーミュラマシンと共通する部分だろう。

5月13日に行なわれた開幕戦(富士スピードウェイ)では参戦ドライバーが挨拶を実施。国内外のドライバーが“MINI最速”をかけて勝負!
MINI CHALLENGEのキャンギャルがレースに華を添えてくれる

第2戦(筑波)では初のお立ち台

 さて、開幕戦(富士)ではブレーキバランスのミスセットなどがあり、まだクルマを把握しきれず予選は6位。予選まではドライ路面だったが、レースが始まる16時ごろには激しい雨模様となり、ペースカースタートのままローリングラップを数周重ねたあと危険との判断でそのままレース中止となった。それにより予選順位がそのまま決勝の順位。戦わずして残念である。

開幕戦での予選の様子
予選の結果、ポールポジションは96号車の山田遼選手が獲得。2位は16号車の一條拳吾選手、3位は32号車の村田信博選手となった。本戦では激しい雨が降り、赤旗中断になったため決勝レースの結果は予選結果がそのまま反映される形に

 続く第2戦(筑波)では第1レースが5位。そして第2レース(第3戦)は第1レースの6位までがリバースグリッドスタートとなり、ボクはフロントロー2位からのスタート。第1レースのドライ路面から一転大雨のレースとなった。レースは20分間+1周の距離。スタートでうまくトップに立ち、後半までトップを守るが、その後若くて速いドライバーにパスされて3位で初めてのお立ち台となった。レース結果よりも、バトルを楽しめたことが大きな収穫。雨という悪コンディションながら、とにかくとても楽しめる内容だった。

 MINI CHALLENGEにはレンタルマシンが用意されていて、車両への保険も完備される。初心者でもデータロガーを使うなどドライビングの指導も受けられる。興味のある方はぜひ! ボクとバトルしましょう!!

筑波戦(第2戦)は6月10日に開催
第2戦はドライでの戦いとなった
リバースグリッドスタートとなった第3戦は大雨だったが、3位でフィニッシュ。初めてのお立ち台となった
今後のスケジュールとしては7月28日~29日に岡山国際サーキットで第4戦/第5戦が、8月26日にスポーツランドSUGOで第6戦/第7戦が、12月8日~9日に富士スピードウェイで第8戦が行なわれる予定。レースに興味のある方やMINI好きは参戦&観戦してみてはいかがだろうか?