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ヤナセが取り扱うモデル以外もOK。クラシックカーをレストアする「ヤナセ クラシックカー センター」開所式

テュフの「クラシックカーガレージ認証」取得

2018年6月22日 開催

「オールドタイマー」「ヤングタイマー」の2ジャンルでクラシックカーをレストアしている「ヤナセ クラシックカー センター」

 ヤナセのグループ会社であるヤナセオートシステムズは6月22日、幅広いクラシックカーのレストアを行なう「ヤナセ クラシックカー センター」(神奈川県横浜市都筑区川向町1117)の開所式を開催した。

 ヤナセのレストアサービス拠点であるヤナセ クラシックカー センターでは、これまでにヤナセが取り扱ってきたモデルにとどまらずレストアに対応。4月5日から営業を開始しており、30年以上前に製造された「オールドタイマー」、約20~30年前に製造された「ヤングタイマー」の2ジャンルでクラシックカーの修復・復元を実施している。

 また、6月22日には、幅広い分野で認証を行なっている第三者検査機関「テュフ ラインランド ジャパン」から、11カテゴリー、150項目以上の基準に基づく監査を実施して内容を証明する「クラシックカーガレージ認証」が発行されたほか、営業開始当初はなかったサービスの受け付けエリアなどが整備され、来賓なども招いたお披露目として開所式が執り行なわれた。

開所式の冒頭では来賓によるテープカットを実施

「クラシックカーを売り買いする場を整備したい」と井出社長

株式会社ヤナセ 代表取締役社長 井出健義氏

 テープカット後に行なわれた主催者挨拶では、ヤナセ 代表取締役社長の井出健義氏が登壇。井出氏は、ヤナセはこれまでもレストアのサービスを大阪、横浜などで行なってきたが、今回から正式に組織化して事業として取り組むことになった理由は4点あると説明。まず、ヤナセではコーポレートスローガンとして「クルマはつくらない、クルマのある人生をつくっている」を提唱して活動しており、そのスローガンを具現化するのがヤナセ クラシックカー センターであると解説。

 近年ではクルマがデジタル化、電動化、自動化といった進化に突き進んで激しい開発競争が繰り広げられており、この流れは自動車技術の本流になると述べつつ、一方でクルマが持つ魅力は「人や物の移動手段」としてだけでなく、とくに自分たちが扱っている輸入車については「趣味や遊び」としての楽しさを持っているとアピール。また、昨今では社会の消費スタイルが「ものの消費」から「ことの消費」にシフトしていることに触れ、「走る喜びを感じるクルマ」「見て胸がときめくクルマ」といったクルマが「ことの消費」に相当するのではないかと語り、クルマの持つ1つの価値としてこれからも必ず残っていくだろうと分析。103年目の歴史に入ったヤナセでは、そんなクルマを愛するユーザーに「クルマのある人生」をこれからも楽しみ続けてもらうため、ヤナセ クラシックカー センターでも貢献していきたいと述べた。

 2点目として、井出氏は海外にある「クラシックカーを楽しむ文化」を日本にも導入していきたいと語り、さらに将来的には「クラシックカーを売り買いする場を整備したい」とコメント。まだ日本にクラシックカーの需要がどれだけあるのか分からないとしつつ、ヤナセでは海外メーカーとの関係性からさまざまな技術情報を持っており、古い部品の調達も可能だとアピール。なによりヤナセには社会的な信用度があり、自分たちが率先して動いていかなければ欧米のような市場を育てることはできないとした。

これからもユーザーに「クルマのある人生」を楽しみ続けてもらうため、ヤナセ クラシックカー センターで貢献したいと語る井出氏

 3点目になるのは「技術の伝承」。ヤナセの社内でもクラシックカーの整備などが可能な人材が少なくなっており、テスターなどを使うことで故障診断が容易な現代のクルマとは違い、アナログなクラシックカーを直すためには熟練の技術が必要だと井出氏は説明。そんな「匠の技」を残していくにはきちんとした組織を作って後継者を育てることが必要で、その機会を得る場としてもヤナセ クラシックカー センターは機能することになるという。

 最後の4点目は「社会的貢献」だと井出氏はコメント。現代的なクルマは画一的になってきており、将来的にはドライバーのいない自動運転車が道路を占有していくかもしれないと井出氏は語り、一方でクラシックカーが公道を優雅に走る姿はクルマの文化や歴史を見る人に感じさせ、クルマに憧れるファンを作るきっかけになるのではないかと解説した。

 最後に井出氏は「舞台は整えることができました。これはこのクラシックカー センターに関わる皆さんへのお願いですが、クラシックカーの事業ほど中身が問われるものはないと思います。技術力や熱心さが問われると思いますので、お客さまの『クルマのある人生』をより輝かせるため、そして直したクラシックカーがより輝いて光を放つよう、皆さんで団結して頑張っていきたいと考えております」とコメントして挨拶を締めくくった。

株式会社ヤナセオートシステムズ 代表取締役社長 江花辰実氏

 また、ヤナセ クラシックカー センターの代表となるヤナセオートシステムズ 代表取締役社長の江花辰実氏は「このヤナセ クラシックカー センターは、輸入車のクラシックカーにお乗りのお客さまに、『クルマのある人生』を長くいつまでも乗っていただき、さらに乗る楽しみだけでなく、歴史的に価値のある大切なクルマを持ち続けていただく『持つ喜び』も『クルマのある人生』として楽しんでいただくお手伝いとして事業を始めました。設備としてのスタートは小さなものですが、クラシックカー センターの受け付けをするだけではなく、板金塗装や世界のいろいろな場所から部品を調達するなど、ヤナセグループ全体やヤナセオートシステムズがこれまでに培ってきた経験や知識などを結集して、大切なクラシックカーをいつまでもお持ちいただけるようお手伝いしていきたいと思います」とコメントした。

来賓として祝辞を述べた株式会社トノックス 代表取締役社長 殿内荘太郎氏。レストアを通じたヤナセと自社の関係を説明し、今後も協力していきたいと語った
ヤナセのOBを代表して登壇した妻谷裕二氏。車内の輸送用にヤナセで初めてレストアした輸入車のエピソードなどを紹介
テュフ ラインランド ジャパン株式会社 運輸・交通部長 有馬一志氏(左)からヤナセの担当者にクラシックカーガレージ認証・認証書が手渡された
ヤナセ クラシックカー センターの担当となるサービス部のスタッフの紹介

ヤナセ クラシックカー センターの車両補修も担当する「ユニット工場」「BP工場」見学会

 開所式の終了後には報道関係者向けの事業所内見学会が実施され、新設されたヤナセ クラシックカー センターのサービス受付エリア、トランスミッションやサスペンション、ステアリングなどの修理を担当する「ユニット工場」、ボディリペア(板金)やペイント(塗装)を担当する「BP工場」などが紹介された。

ヤナセ クラシックカー センターのサービス受け付けエリア。左側のピットスペースに対象となるクルマを駐車して、右側のスペースでオーナーから希望などを聞き取りする。2つのスペースの間にある壁に、ベンツ歴代モデルのフロントグリルが飾られていた
すでに整備作業中となっているこの車両は、1969年式のメルセデス・ベンツ W100 600 プルマン
トランスミッションなどの修理を担当する「ユニット工場」。解説は株式会社ヤナセオートシステムズ サービス部 ユニットサービス課の芝崎広明氏が担当
ATを分解整備する工程。迷路のように見えるのは、ATの油圧経路
整備のために分解されたメルセデス・ベンツ 190EのAT
再構成されたATの動作確認を行なうテスターも完備されている
作業が完了したATなどは棚に並べて保管される
「BP工場」の板金・塗装作業場
軽微な板金作業や、ボディを塗装するために不要なパーツの取り外し作業などが行なわれている
塗装ブースでは、塗料が付いてほしくない部分にマスキングを行なう
塗装前にボディに細かい凹凸を刻み、塗料が食いつきやすくする「足付け」工程
塗装を行なう直前に、板金部分の仕上がりを最終確認
塗装ブース内で実際にドアパネルを塗装するシーン
塗装ブースは温度設定が変更可能で、塗装されたパーツをそのまま内部で熱乾燥。80℃前後の温度で1~2時間乾燥させる
塗装後の研磨工程。イエローのスポットライトを当てて状態をチェックしながら作業していた
研磨後の車両の採取確認ブース。天井には蛍光灯やLEDなど3種類の光源を備え、異なる光を使ってボディのコンディションをチェック
このほか、ヤナセ クラシックカー センターとは直接関係ないが、ヤナセオートシステムズが新たに取り組みを始めた福祉車両の解説も行なわれ、2台の車両を紹介。こちらはイスラエル製の「TMN R11」という車いす収納アームを備えた車両
ラゲッジスペースの運転席側後方に設置されたモーターにより、ドライバーが運転席に移動した後に車いすを固定すると、アームが動いてラゲッジスペースに車いすを収納する
ステアリングに並行して設置されたオレンジ色のリングは手動運転用のアクセルリング。右手側にあるオレンジ色のノブはブレーキの操作用で、この2つを追加することで手動運転が可能になっている
TMN R11の操作パネル
イタリア製の「フィオレラリフト」を装着したVクラス
ラゲッジスペースの片側に設置されたアームで最大360kgまでのリフトアップが可能。ただし、スロープはフロアの高さまでリフトアップして車いすが車内に移動した後、手動で折りたたむ必要がある。そこからさらにモーター駆動でスロープを車内に立てて格納する
アームの基部に操作パネルが用意されるほか、リモコンでも操作可能
アーム基部のロックを解除することで、立てたスロープが90度回転可能。車いすを固定したり、ラゲッジスペースの活用で利用される機能になるという

「オールドタイマー」「ヤングタイマー」の車両展示

開所式の会場内で展示された1951年式のメルセデス・ベンツ W136 170S カブリオレB(左)と1952年式のフォルクスワーゲン Type1(右)

 このほかに会場では、ヤナセ クラシックカー センターでのレストア対象となる「オールドタイマー」7台、「ヤングタイマー」2台の計9台が車両展示された。

1951年式のメルセデス・ベンツ W136 170S カブリオレB
1951年式のメルセデス・ベンツ W136 170S カブリオレB
1952年式のフォルクスワーゲン Type1
1952年式のメルセデス・ベンツ W136 170S
1958年式のメルセデス・ベンツ W180II 220S
1958年式のメルセデス・ベンツ W180II 220S
1963年式のメルセデス・ベンツ W112 300SE ラング
1972年式のメルセデス・ベンツ W100 600
1989年式のメルセデス・ベンツ R107 560SL
1991年式のメルセデス・ベンツ R129 500SL

【お詫びと訂正】記事初出時、クラシックカーガレージ認証を日本初取得したと記述しましたが、これは間違いでした。お詫びして訂正させていただきます。