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メルセデス・ベンツ定例試乗会

「メルセデスAMG E 53 4MATIC+」

 今年のメルセデス・ベンツ日本は月に1回テーマを決めてイベントを行なっており、ほぼ毎月が試乗会だった。月イチ試乗会は六本木のMercedes me(メルセデス ミー)を起点とすることが多かったが、11月の定例プレス試乗会は品川にある本社を起点として、メルセデス・ベンツ「S 400 d」「メルセデスAMG E 53 4MATIC+」の2車種のテストドライブだった。

 品川から幕張までを往復する試乗コースは首都高速 湾岸線が主な舞台になるが、市街地も一部含まれるので、メルセデスの日常に近い使い方だ。

 最初にハンドルを握ったのはメルセデスAMG E 53 4MATIC+だ。狭い地下の駐車場からスタートするので、用意された左ハンドルのメルセデスはちょっと緊張する。しかし運転しやすいのがメルセデス。E 53 4MATIC+のサイズは、全長4960mm、ホイールベース2940mm、全幅1850mmと大きいが、メルセデス特有のハンドルの切れと絶妙な操舵力、それに視界とのバランスがよく、狭い駐車場もそれほど苦にならない。

 簡単に概略を説明すると、メルセデスAMG E 53 4MATIC+は直列6気筒 3.0リッターターボに48VのISGを組み合わせたマイルドハイブリッド。過給機には電動スーパーチャージャーとツインスクロールターボを備えて、場面に応じて使われる。これらすべての装備をAMGらしいパワーに充てることもできるが、E 53 4MATIC+ではこの余力を快適性やドライバビリティに振り向けている。

 もともとメルセデスAMGはパワーだけでなく街中のドライバビリティにも優れており、その柔軟性はアクセルを強く踏んだ時の爆発力を想像させないものだが、E 53 4MATIC+はさらにフレキシビリティに富んだ仕上がりになっている。

 例えば街中での発進では、48Vのマイルドハイブリッドがサポートするのでレスポンスよく走り出し、少し回転が上がったところで電動スーパーチャージャーが力を発揮して、自然な出力の上昇をみせる。さらに、中高回転になるとツインスクロールの排気ターボが大きなトルクと鋭いレスポンスを出す。これら3つのシステムが連携して、大排気量車のように粘り強く、自然吸気エンジンのようにシャープで滑らかなレスポンスをE 53 4MATIC+に与えている。このエンジンの柔軟性にも助けられて、すぐに長年乗り慣れたかのようにドライブできる。

 高速道路の合流ポイントでアクセルを強めに踏むと、勇ましいエキゾーストノートと共に、立ちどころに追い越し車線まで2t弱のボディをサッと運んでくれる。4本出しのエキゾーストはだてではない。

4本出しエキゾーストの片側。ただの飾りではなかった

 4MATICに+(プラス)が付いたのは、これまでの前後トルク配分をよりアクティブに50:50から0:100まで可変させることで、スポーツドライビングでも安全にFRらしく走らせられるというものだ。ただし、オンロードを普通に走った限りではこれまでの4MATICとの違いを感じ取ることはできなかった。雪道などまた別のチャンスがあれば幸いだ。

 エアサスは可変バネレートになって、ブレーキングやコーナリング時などにスプリングレートを高めるので安定性はさらに高い。また、可変ダンパーは伸び/圧の単独バルブを持っており、なかなか凝ったシステムだ。そんなことを考えながら心地よい室内を満喫するあまり、危うく降りるべきIC(インターチェンジ)を過ぎそうになってしまった。

心地よい室内を演出するオーディオは「Burmesterサラウンドサウンドシステム」。メルセデスAMG E 53 4MATIC+には標準装備される

 幕張の「mamenakano」で最高にうまいコーヒーを飲んだ後の復路は、日本初登場となるS 400 dに乗る。さらに大きなSクラスは、全長5125mm、全幅1900mm、ホイールベース3035mmというビッグサイズだ。こちらも左ハンドルだったが、走り出してしまうとメルセデスマジックか、ドライバーにはサイズによる圧迫感は感じない。

 新しいディーゼルは「OM656」型と呼称される直列6気筒 3.0リッターディーゼルターボのモジュラーエンジン。つまり、2.0リッター4気筒ディーゼルの6気筒版で、82.0mm×92.3mmのボア×ストロークも共通だ。700Nmもあるこのエンジンはまさにトルクの塊。2tを超えるS 400 dを粛々と、悠然と走らせる。高速道路をシュルシュルと走るS 400 dのキャビンは静粛という言葉以上に快適だ。クッションストロークのたっぷりとしたシートは柔らかいだけではなく、腰への負担が少ない。

直列6気筒 3.0リッターターボ「OM656」型エンジン。最高出力250kW(340PS)/3600-4400rpm、最大トルク700Nm(71.4kgfm)/1200-3200rpmを発生させる。現地で写真を撮り忘れてしまったので、カタログの写真で……

 たっぷりとしたトルクを低回転でユルユルと出すOM656型エンジンで湾岸線を流すと本当に気持ちがよく、全車速追従クルーズコントロールの相乗効果で蕩けるような気持ちになる。高速道路を降りてからしばし渋滞区間があったが、S 400 dは加減速も滑らか。ストレスはほとんど感じない。さすがに芝浦あたりの狭い1車線道路ではサイズを感じたが、ライントレース性に優れた車体で緊張感なく走れた。

 大画面のナビゲーションに導かれて、無事品川のメルセデス・ベンツ日本の本社まで帰り着き、メルセデスとのショートトリップは終わった。ちょっと心豊かになった半日だった。