NEXCO中日本、有識者を集め「新東名夢ロード懇談会」を開催
開通前の路線を使った実証実験や自動運転も含めた新貨物輸送について議論

5回目となる新東名夢ロード懇談会は、初めて委員全員が顔をそろえた形でおこなわれた

2009年4月14日開催



 NEXCO中日本(中日本高速道路)は、新東名(第二東名)高速道路を「世界をリードする高速道路システム」とするために、有識者を集め各種サービスの提案や方向性について話し合う「新東名夢ロード懇談会」を、4月14日に開催した。

 新東名夢ロード懇談会は、政策研究大学院大学の森地茂教授を座長に、トヨタ自動車技監の渡邉浩之氏や、東京大学生産技術研究所の池内克史教授など、全11名を委員として迎え、2007年7月より開催。今回で5回目となる。

 これまでの会合では、新東名の各種サービスについての概要が話し合われたが、2012年度の新東名一部区間完成を控え、今回はより具体的な内容について検討が行われた。

新東名夢ロード懇談会の挨拶を行う座長の森地教授懇談会の内容を発表するNEXCO中日本の企画本部 岡邦彦氏(写真左)と建設業務本部 源島良一氏(写真右)

 今回の議題は、開通前の高速道路を使って行う各種サービスの「実証実験計画(案)について」と、専用レーンを使ったトラックの連結走行や隊列走行などを行う「新しい貨物輸送システムのロードマップについて」、そして、安全性や利便性を向上した「休憩施設に関する検討状況」の3つ。

開通前の高速道路を使って行う実証実験計画
 実証実験に関しては、新東名の浜北IC(インターチェンジ)から森町PA(パーキングエリア)間の約9kmの土工橋梁区間と、掛川PAを中心に掛川第一トンネルと金谷トンネルを含む約8kmのトンネル連続区間の2区間で、2009年10月より順次開始する。民間企業と共同で研究を行い、道路の安全性向上やサービス向上のための技術開発を行うと言う。

約9kmの土工橋梁区間と約8kmのトンネル連続区間の2区間で実証実験を行う。資料提供はNEXCO中日本(以下同)試験は今年の10月から順次開始される。車両開発が必要な隊列走行実験は2011年以降に開始

 具体的な実験の内容としては、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用して情報提供をするシステムや、新型LEDを使ったマルチカラー情報板、新型舗装や橋梁の長寿命化のための技術試験、貨物車の連結走行や隊列走行試験、新型特殊車両による路上の落下物の回収や、照明の清掃など。また、新東名が山間部で人家も少ない場所を多く通るため、通信事業者との連携を取り、休憩施設への無線基地局の配置や、高速移動中のデータ通信状況の確認などを行うと言う。

実証実験を行う内容

ITS車載器の車速情報や、路上カメラからの情報を元に、速度超過の警告や渋滞末尾情報の提供などを行い、その実用性を評価するPAなどで通路を横断する歩行者を関知し、照明で照らすことで、夜間や雨天時でもドライバーからの視認性の向上を図る
道路上に設置される非常電話の回線を利用した多機能情報装置の検討。路側表示板やスピーカーを使った音声による警告を行う従来の3色に代わり、7色表示可能なマルチカラー表示板を使い、渋滞情報や通行止めの情報などを表示。その有効性を評価する
掛川PAに5分で40km、10分で60kmの走行分が充電可能な電気自動車用給電スタンドを設置。その操作性や使い勝手を評価する熱と光を反射して蓄熱を抑え、夜間の放射熱を低減する各社の環境対応型舗装を使い、その費用対効果や耐久性、実用性を比較する
消費電力が小さいセラミックメタルハライドランプや長寿命のフィラメントなしランプを使ったトンネル照明の実用性を評価するトイレなど休憩施設の快適性向上を図る。自走式清掃ロボットや、パウダーコーナーの設置などを行い、改善点を抽出する
交通情報だけでなく防災情報や観光情報も提供する情報モニターを設置。アンケートの分析により改善点を抽出する別途開発している車両を用いて、隊列走行や連結走行の実走行実験を行い、横風などに対する走行安定性の実験や、一般車との錯綜時の安全性について検証する
路上の落下物を、車両から降りることなく自動で回収する車両の実験。作業が可能な速度の検証や落下物の回収状況をテストする舗装下の防水材や接着材のタイプや構造による橋梁の長寿命化を比較する
水蒸気の気泡を含んだ噴流(キャビテーション噴流)を噴射することで50km/h走行での照明灯具等の清掃を行う車両の試験

 また、実証実験に関しては、一般利用者への公開も検討していると言う。そのほか、試験で使用していない期間は、地元警察や自治体と協力して、交通安全セミナーやエコドライブセミナーを開催したり、関連企業からの要望があれば、技術開発やデモンストレーションの場として、実証実験区間を提供すると言う。

貨物輸送のロードマップについて
 新東名は物流車両の利用が多く想定され、またトラック運転手の高齢化が進む中で、幹線輸送システムの抜本施策が必要とされている。そこで、全線開通する2020年度以降の運用を目指した、トラックの連結走行や隊列走行などのあり方について話し合われた。

 連結走行や隊列走行に関しては、機械的に荷車を連結した連結走行では、従来からある2台の荷車を連結したフルトレーラーのほかに、3台の荷車を連結し、専用レーンを走行する「トリプルス」。隊列走行としては、車載のレーダーセンサーを使って隊列走行する任意隊列、車車間通信や路車間通信を使って専用レーンを隊列走行する有人電子隊列、さらにこれを進化させ、先頭車両以外は無人で隊列走行する無人電子隊列などが考えられる。

連結車両や隊列走行のイメージ。上が機械的に連結した連結走行のイメージで、下が電子機器で先行車を追従させる隊列走行のイメージセンサーや車路間通信などを使った隊列走行では、将来的には先頭車両以外は無人の隊列走行を目指す

 また、トラック専用レーンを使う場合には、その形態として、専用レーンを右側にするか左側にするか、右側にする場合、出入口に専用のランプを設けるか、また、一般車線との区分に物理的な障壁を設けるかが大きな選択肢となる。物理的な隔壁を設け、専用のランプを作るケースが最も安全ではあるが、インフラ整備にコストが掛かる。しかし専用ランプがなければ、流入時、流出時に一般車と交差することになり、事故の危険が増える。これに関しては、将来的には自動追従システムなどを使った自動運転になることを見越してのインフラ整備をすべきとの意見があがった。

トラック専用レーンの設置位置や隔壁の有無、専用ランプの有無によって、4つのパターンが考えられる4つのパターンにはそれぞれ一長一短があり、実証実験でも安全性や一般ドライバー受容性について確認が行われる
専用レーンを右にするか左にするかで、ICやPAでの一般車との錯綜の仕方が変わる

 さらに、高速輸送と幹線輸送の切り替え基地として、両拠点となる首都圏と中部圏に拠点ターミナルの設置を検討するほか、中間地点となる静岡エリアにも中間ターミナルの設置を検討している。ターミナルの設置場所などに関しては、実際に利用する民間企業の意見を聞いた上で調整するとしている。

休憩システムに関する検討
 SAなどの休憩施設も、新しい高速道路の施設として、また新東名に期待される役割を踏まえたレイアウトが提案された。

 新しい休憩施設では、車と人の動線に配慮し、駐車場から商業施設へのアクセスする際、車道の横断回数が1回になるようにすることや、大型車と小型車の駐車場の分離、スムーズに駐車マスへと誘導する満空情報の提供、バス専用マスの設置のほか、環境への配慮として、アイドリングストップに寄与する給電システムを整備したり、さまざまな利用者に満足してもらえるよう、施設ごとに地域特性を生かしたテーマを持たせ個性化したりするとした。

新規休憩施設の設置位置。2012年度に開通する引佐JCT(ジャンクション)~御殿場JCT間を優先して工事が行われている新規の休憩施設の開発コンセプト
静岡SA上りのレイアウトに見る開発コンセプト。車道横断回数を減らすため、小型車駐車マスのレイアウトを見直したり、バスには専用の駐車マスが設けられたりする従来のSAの問題点。歩行者と車の動線が各所で交差するほか、大型車と小型車の駐車マスが隣接するため、大型車マスへ小型車が駐車したりその逆の状況が発生したりする
新東名の利用客を想定して、従来にはないサービスを提供するほか、各エリアの特徴を生かして、それぞれの休憩施設に特徴を持たせると言うトラックドライバーの利用が多く見込まれるため、コインシャワーやコインランドリーを設置したユーティリティスペースを設ける

(編集部:瀬戸 学)
2009年 4月 16日